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第2章 公共図書館のネットワークの現状

 本章では、まず、前章で述べた公共図書館の新しい役割を検討する上での前提として、調査研究の対象と範囲について記述している。次に、公共図書館が本来どのような特長を有しているのかについて記述している。また、国内や海外の先進事例から公共図書館がどのような地域課題の解決に取り組むのが適切か、について検討する。

1. 調査研究の対象と範囲
(1)  検討対象とする「図書館」
 本報告書において調査研究対象とした「図書館」とは、保有する豊富な資料群を活用し、地域住民の窓口や各種の情報源のハブとして機能する施設としての、公共図書館としている。一般に地域社会における公共図書館には、以下のような特色があると考えられる。
利用者が資料・情報に接することのできる場所が多い。
平成14年度社会教育調査によると、平成14年10月1日現在、公共図書館は全国に2,742館設置されており、公民館の18,819館(類似施設含む)や博物館5,363館(類似施設含む)より少ないものの、毎年100館程度増加している公共施設である。
更に、常設コンピューター端末の導入状況で比較すると、公共図書館は全体の92.4パーセントの施設に設置されており、これは、公民館(類似施設含む)の45パーセントや博物館(類似施設含む)の55.5パーセントよりも高い。
地域の誰もがいつでも利用できる。
図書館法第17条に規定されているように、公立図書館は、入館料や他の図書館資料の利用に対するいかなる対価を徴収してはならないと定められている。
開館時間内であれば、地域外でも誰でも入館・閲覧することができる。(通常は、行政区内の在住者、通勤・通学をしている人が多い。)また、最近では、公共図書館へのアクセス利便性、公共図書館未設置自治体住民への図書館サービス提供等を考慮しながら、周辺自治体の在住者に対しても、入館、利用者登録、資料貸出等同様の利用を可能としている公共図書館が増加している注釈10
資料・情報を幅広く利用できる。
公共図書館では、図書、定期刊行物、及び視聴覚資料等、媒体を問わずに多種多様な資料を利用することができる。また、来館した公共図書館にない資料であっても、相互貸借の手続により他の公共図書館所蔵の資料を利用することができる。
   一般的に「図書館」といわれている施設として、公共図書館以外に、小学校、中学校、及び高等学校にある「学校図書館」、大学や病院等にある「大学図書館」や「病院図書館」(例:東京女子医科大学病院「からだ情報館」、聖路加国際病院「さわやか学習センター」等)、「国立国会図書館」、及び専門図書館(例:アジア経済研究所図書館、日仏会館図書室、及び財団法人味の素食の文化センター/食の文化ライブラリー等)がある。これらの公共図書館以外の「図書館」については、公共図書館を中心(“ハブ”)にするネットワーク形成を推進していく上での外部連携機関の一つとしてとらえている。
 更に、既存の公共図書館の枠組に囚われず、より機能(詳細は、「第2章公共図書館のネットワークの現状2.公共図書館の特長」を参照)を拡張させ、情報メディアセンター機能や電子図書館機能を併せ持つ「図書館」もある。
情報メディアセンター機能:情報拠点としての図書館以外に、美術や映像文化の活動拠点としてスタジオやギャラリーが併設され、情報の起点・交流点となる複合施設の中心的役割を果たす公共図書館。
国内における事例としては、「結城市民情報センター(茨城県結城市)」等がある。
電子(バーチャル)図書館機能:ICTを活用し、従来の公共図書館の機能やサービスを電子的にも提供するハイブリッド的な図書館。公共図書館の館内のパソコンを通じて、外部データベースやインターネットとの接続を容易にしたり、公共図書館が保有する資料・情報を電子化し、館外からでも資料・情報の検索・予約を可能にしたり、インターネット上に仮想の図書館を設け、司書が電子メールやチャットルーム等を通じて利用者からの問い合わせに答えたり(デジタル・レファレンス・サービス)、検索テーマ別に図書・雑誌、有用なウェブサイトや専門機関の連絡先を紹介したりする、機能。
例えば、Digital Reference Education Initiative(米国シラキュース大学のウェブサイト内にあるデジタル・レファレンス相互協力ネットワークの団体)注釈11では、公共図書館や学校図書館向けにデジタル・レファレンス・サービスに必要なスキルや研修ツールを設けている。また、大学の研究活動から始まったInternet Public Library注釈12ではレファレンス・サービス、インターネット上で使える有用な情報の紹介等のサービスを提供している。

注釈10  例えば、佐賀市立図書館の場合、佐賀中部広域連合市町村圏内の18市町村(佐賀市含む)の在住者が、利用者登録が可能である。
注釈11   Digital Reference Education Initiative
注釈12   Internet Public Library

(2)  公共図書館情報ネットワークの考え方
本研究のテーマである公共図書館を中心(“ハブ”)とした地域公共ネットワークとは、地域内の多種多様な情報資産(人、資料、情報、組織等)がするために形成される、豊かな情報利活用や情報共有を実現する社会基盤と位置づけている。こうした地域における情報資産の重層的なネットワークが構築されることにより、情報資産を活用することによる地域社会への寄与範囲が拡大すると考えられる。また同時に、地域外の“ハブとなっている公共図書館”と連携することで、更なる情報共有を目指していくことも可能となる。
 従って、本研究会で表現している“ネットワーク”は、単なるコンピューターネットワークやインターネットを意味しているのではく、資料のネットワーク、人・組織のネットワーク、或いは物流ネットワークといった、情報を必要とする利用者に対して適切な情報を提供するために作り上げられるさまざまな資源(人、資料、道具、及び場所)を有機的に結び付けたものである。本研究会では、現在、公共的な投資によって整備・構築されている情報通信ネットワーク基盤(「地域公共ネットワーク」注釈13)の上に、利用者の要求に応じた情報を的確に提供できるように、人、資料、道具、及び場所を有機的に統合して構成された公共ネットワークを定義していくことになる。

注釈13  総務省が推進している、「e-Japan戦略2」(平成15年7月2日IT戦略本部決定)に掲げられている「次世代情報通信基盤の整備」等の具体的な取組を展開するための、地域における市役所、学校、図書館等の施設を幅広く高速ネットワークで結ぶ地域イントラネット基盤施設整備事業等による地域公共ネットワークの全国的事業のこと。

  図1 有機的に結合されたネットワークの概念図

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-- 登録:平成21年以前 --