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1.調査研究の背景

1.   「視聴覚教育メディア研修カリキュラムの標準案」(平成17年度案)の作成に至る経緯
 
(1)   「視聴覚教育メディア研修カリキュラムの標準」(昭和48年)
   「視聴覚教育メディア研修カリキュラムの標準」は、視聴覚教育メディアのハードウェアとソフトウェアの急速な発展を見て、これの教育利用を促進するには、関係する人材の育成が不可欠と考えられた。この趣旨を生かすために、昭和48年に「視聴覚教育メディア研修カリキュラムの標準」が通知された。この「標準」では、研修を3段階に分けて、「初級」「中級」「上級」という3種のカリキュラムが受講者の習熟度によって設定された。つまり、基本的な知識や技術から、より高度なものへと、各視聴覚教育メディアごとに示されている。例えば、映画、テレビなどの知識と技能の標準が3段階に分けて記され、さらに、研修を担当する組織として、「初級研修」は市町村に、「中級研修」は都道府県に、「上級研修」は国によると配分されている。

(2)   「視聴覚教育メディア研修カリキュラム」(平成4年)
   平成4年に至り、昭和48年度の「研修カリキュラムの標準」の改定が行われた。この改定の特徴は、「研修1」と「研修2」という種別で標準が示され、「研修1」は、視聴覚教育メディアを活用する教育現場の実践者を対象とし、「研修2」は教育現場の実践者の研修を立案し、実施する指導者のためのものとしている。つまり、「研修1」と「研修2」の相違は、視聴覚教育メディアに関わる知識や技能の相違を分類基準とするのでなく、研修受講者の性質の相違を基準としたものであった。「研修1」では、各メディアの知識や技術の研修が主であるのに対して、「研修2」は、例えば、研修計画の作成や、研修のためのマニュアル作りなどの研修事項が挙げられている。

(3)   「視聴覚教育メディア研修のカリキュラムの標準の改正に向けた基礎調査」
   平成14年に至り、先の「標準」(平成4年)以来10年を経ており、視聴覚教育メディア関連の状況が大きく変化していたことから、研修担当者から新たな「標準」を求める声が上げられてきた。そこで、『「視聴覚教育メディア研修カリキュラムの標準」の改正に関する調査研究』(文科省委嘱事業)が始まった。14年度には、基礎調査として、研修カリキュラムの標準が必要かどうか。地方や国などの研修主体の分担制、研修内容の自由選択性、カリキュラムの基準に関する基本的課題が質問紙と訪問調査によって吟味された。

(4)   平成15年度版「視聴覚教育メディア研修カリキュラムの標準案」の作成
   平成15年度に、先年度の基礎調査の結果を基にして作成されたのが、『平成15年度標準案』(以下、「平成15年度標準案と呼ぶ」)ある。その成果は、『「視聴覚教育メディア研修カリキュラムの標準」の改正に関する調査研究』の報告書(日本視聴覚教育協会刊)が発表された。
 「平成15年度標準案」では、研修の目標、研修受講者、研修日数、他の研修条件を勘案して、研修実施者が研修内容や方法を自由に選ぶことができるように、「研修項目」や「研修事項」が一覧となっている。さらに、各研修事項に含まれる「研修細目」が挙げられ、研修実施者の便宜が図られている。具体的には、22の研修項目、66の研修事項、261の研修細目が挙げられており、研修実施者のための、いわば「指導要領」、または「マニュアル」の役割となる「基準」が示されている。つまり、従来の「研修カリキュラムの標準」とは異なり、研修実施者に必要な研修事項などを示して、これを基にして、研修目標、受講者、研修日数などを勘案して、手作りの研修が行えるようになっている。さらに、研修計画の立案と実施がいっそう容易となるために、研修目的別と研修対象者別の研修事例が示されている。研修目的別では、例えば「管理者としての情報教育推進のための知識と技能の習得」などや、対象者別では、例えば「社会教育担当主事」を対象とする「社会教育のためのメディア活用講座」とか、「司書・学芸員」を対象とする「コンピュータ・ネットワークの活用講座」などが、その一例である。目的別が11例、対象者別が30例挙げられている。

2.   カリキュラムの評価
   研修カリキュラムなど、一般的にカリキュラムの開発では、形成的評価(formative evaluation)が必須とされている。つまり、当該カリキュラムの適否は、これによって学習する学習者の反応によって判断される。カリキュラムを作るための評価、形成するための評価というわけである。開発の手続きとしては、カリキュラム案をまず作り、これを対象とする学習者に試行し、学習者の反応を得て、カリキュラムの適否を評価する。この手続きは、新薬の開発に類似している。つまり、動物実験や臨床実験を行って、その効果が確かめられた後、実際の患者に使用される。カリキュラムの開発にあたっては、形成的評価は必須とされるものの、現実的には種々の困難のために、その事例はきわめて少ない。特に、「平成15年度標準案」を基にするカリキュラムでは、「研修目的」「研修対象」および「研修内容」を組み入れたカリキュラムは多数であり、そのそれぞれについて形成的評価をあらかじめ実施することは、ほぼ不可能である。
 カリキュラムの作成に関して、形成的評価が困難な場合には、専門家による意見を基にする評価(理論的吟味)、思考実験的に「実施したと仮定して」考える評価(経験的吟味)、あるいは、海外などの事例をもとにする評価(比較的吟味)などで代行することができる。

3.   「平成15年度標準案」の特徴と問題点
   一般的に言って、明確な「標準」が一度定められると、それに従っていれば無難だという安心感がある。「平成15年度標準案」に先行する二つの標準は、選択の幅はあるものの、固定された標準ということができる。しかし、「平成15年度標準案」では、それぞれの研修担当者が、研修のねらいと研修者の性質から、研修を立案し、実施する際に手がかりとなるための要領が示されている。ここでは、研修内容の選択、各内容の扱い方の濃淡、研修時間の配分など、研修担当者の自由な選択を基本としている。この点が、従来の「標準」と異なるところである。

 「平成15年度標準案」の特徴を、以下のようにまとめることができる。
(1)  研修内容の選択性を採用していること。
(2)  「標準」は、研修実施のための参考資料と位置づけていること。
(3)  研修内容や研修事項に、それぞれ「研修細目」と「学習事項」を付して、参考となる資料を大幅に増やしたこと'。
(4)  研修の実施組織(市町村、都道府県、国)の分担性についての考え方を一部採用していること。

 以上の特徴に関して、例えば、「自由選択制」などに関して、専門家や研修担当者の意見を徴しておかなければ、有用な標準とならないと思われる。このような考え方、または危慎から、以下のような考え方も確かめておく必要があると考えられた。

(1)  研修内容の自由な選択に対して、研修の現場では、従来型の研修内容の固定化が望まれてはいないか。
(2)  固定化された「標準」が望まれれば、一種類でなくとも、複数個の、例えば、「基本の」「基礎の」「上級の」標準を作成してはどうか。
(3)  研修内容として、「研修細目」や「学習事項」を付す必要があるかどうか。「平成4年の標準」のように、大項目の記載に留めることの可否は。

 以上のような考え得る課題や問題点を明らかにするために、調査を進めることとなった。

4.   「平成15年度標準案」の研修項目、事項、細目の修正
   教育メディア状況の急速な変化を考えると、「平成15年標準案」に盛られている研修の「項目」、「事項」、および「細目」の一部修正が既に必要となっているかもしれない。特に、「事項」と「細目」での変更が予測されるので、加えるべきものと、削除すべきものを調べる必要がある。この作業によって、これまでも議論されてきた、教育メディアの状況に応じた「標準」の修正についての示唆が得られると思われる。

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