おのみち子育てガイドブック改訂版の作成(広島県尾道市)

おのみち子育てガイドブック改訂版の作成

1  自治体・団体名: 広島県尾道市,尾道市教育委員会

2  自治体・団体の概要
 尾道市は,瀬戸内のほぼ中央,広島県の東南部に位置する。人口は15万人余りで,古くは港町として栄え,830余年の歴史がある。平成17年3月には御調郡御調町・向島町と,平成18年1月には因島市・豊田郡瀬戸田町と合併し,芸予諸島の一部をなす島しょ部と沿岸部及び北の内陸盆地から構成される。

3  地域の特徴
 市民総参加による子どもの見守りを推進する「こども110番」事業や防犯パトロールなど,地域全体で子どもの安全を見守ろうという気運が高い。また,民生委員児童委員などが中心となって運営されている子育てサークルが市内に約20サークルあり,「子育てサロン」などの名称で,主に就園前の育児中の母親の交流の場として,平均月に1~2回程度活動している。

4  連携の取組状況
1 連携にいたるまでの経緯等
「かがやき21」による子育てガイドブックの発行
 平成14年3月,男女共同参画推進自主活動グループ「かがやき21」のメンバーが児童センター・母親クラブなどと協力して,「にこにこ子育てガイドブック」を発行した。この情報誌は,尾道市においては,子育て情報誌としてまとめた初めての冊子である。
 内容は,主に医療機関や保育所(園)・幼稚園,公園などの関係施設情報と子育てサークル活動を掲載したもので,市が実施している子育て関連情報の掲載はわずかだった。
 その後,保健師や子育て支援センターなどの行政職員が資料提供・原稿作成に協力し,第二版が平成16年12月に発行された。
 子育てやしつけのヒントとなる解説ページを設けるなど新たな工夫がなされたが,行政機関が発信する子育て関連情報の掲載は十分ではなかった。

改訂版への動き
 合併により市域が大幅に拡大したことから掲載情報の更新と充実が求められ,改訂版の作成が必要となった。

2 連携した取組の具体的内容・方法・実施状況
内容・方法
改訂版ガイドブックは,次の視点で内容を充実することとした。
  1. 行政が実施する子育て関連の情報を分かりやすく掲載する。
2. 子育て支援団体が実施する活動を掲載する。
3. 家庭教育の実践に役立つ情報を掲載する。
利用対象者は,就学前の子どもを持つ親に絞って作成することとした。更に,家庭教育支援総合推進事業の一環として,家庭教育への市民意識を高めるため,編集にあたっては,新たに実行委員会を立ち上げ,事務局を生涯学習課内に設置した。
 実行委員は,前述の「かがやき21」メンバー,生涯学習課・子育て支援センター・児童館・健康推進課の各行政職員,社会福祉協議会職員のほか,民生委員児童委員や積極的に子育て支援活動を行っている子育てサークル・母親クラブ代表者で構成した。
開始年度
平成17年度
対象
就学前の子どもの保護者
実施状況
 平成17年9月,情報誌作成実行委員会を発足,発行までに5回の実行委員会を開催し,掲載情報の選別,情報収集の方法・発行部数・配付方法の協議,編集を行い,平成18年3月に発行した。
 具体的には,グループごとに関係機関などへの聞き取り調査やアンケート調査を行って情報を収集,原稿にまとめ,委員会から選出された編集委員が全体の構成・コンテンツづくり・デザイン・色,形態の決定,原稿の編集・校正作業を行った。

ガイドブックの概要
  項目 内容
1 目的 子育て支援団体と行政が連携して,子育て中の保護者に育児情報・家庭教育に役立つ情報の提供
2 対象 就学前の子どもの保護者
3 ページ数 56ページ(カラー)
4 発行者 尾道市地域家庭教育推進協議会
5 編集者 尾道子育て情報誌作成実行委員会
6 発行日 平成18年3月1日
7 発行部数 6,500部
8 配付機会 母子手帳交付時及び子育て支援課窓口での各種申請時に子育て中の保護者に配付。家庭教育支援講座の実施機会に参加者に配付。その他,関係施設や子育てサークルなどでの活用。
9 構成
1 赤ちゃんがやってくる!   5 絵本を読もう
2 子育てのために 6 元気な体をつくろう
3 あそぼう・学ぼう 7 小・中学校になったら
4 保育施設と幼稚園を探す 8  MAP(エリア別)
関係機関・支援施設・支援団体一覧

家庭教育に役立つ情報の掲載
 就学前に身につけておきたい基本的生活習慣に関連した次の三項目を掲載した。
 一つ目は「読む習慣」に役立つ情報として,図書館案内,ブックスタート・読み聞かせボランティア活動の紹介,絵本・育児図書を紹介する項目。
 二つ目は「食生活」を充実させるために,離乳食の進め方や生活リズム・朝ご飯の大切さについての項目。
 三つ目は「遊びと学び」に役立つ情報として,ふれあい遊びの紹介,子育てサークルの活動紹介,親子で安心して遊んだり学んだりできる施設情報“おでかけスポット”の項目を掲載した。

おのみち子育てガイドブック

おのみち子育てガイドブック   おのみち子育てガイドブック

3 連携した取組に至る過程での課題や工夫した点・対処法
行政機関と子育て支援団体両方の情報の整理
 情報には,行政サービスだけでも,福祉保健部の健康推進課・児童課(現子育て支援課),社会福祉課,市民生活部市民課など,複数の担当課に及んでいる。また,合併に伴い掲載地域が大幅に拡大し,社会福祉協議会など民間支援団体やボランティアグループが実施している子育て支援サービスも様々あり,多岐に及ぶ情報を扱うこととなった。
 それらを分かりやすく整理し掲載するための手順,コンテンツをどのようにまとめるか,全体の構成が課題となった。

工夫した点・対処方法
 関係機関や民間施設,子育てサークルからの聞き取りやアンケート調査などにより情報を収集,必要に応じて資料提供を依頼し,およその情報量を把握したうえで,全体の構成や各項目名,コメントについて議論を重ねた。
 多方面にわたる情報を利用者に分かりやすく提示するため,全体をテーマ別に分類し,各章に親しみやすいタイトルをつけた。各項目には,利用者の立場に立ったコンテンツごとにまとめた。特に,妊娠から出産までを時間軸で構成し,必要な育児サービスを一目で分かるように整理した。
 必要に応じて,育児相談担当職員や栄養士,保育士,小児科医師などの専門家から原稿作成などの協力を得て,より具体的で読みやすい構成を心がけた。

4 連携した取組の成果
 生涯学習課と福祉保健部担当課が互いの業務内容を確認し,子育てに関する課題や親のニーズを話し合う機会となった。
 社会福祉協議会をはじめ,子育て支援団体が行っている育児相談や子育て学習会などの支援活動情報を効率的に収集することができた。行政だけでは,地域内で自主活動をしている子育てサークルの活動状況について調査することが困難であったが,民生委員児童委員による各サークルへの聞き取りや会員へのアンケート調査の実施により,多くの子育てサークルの活動をとりまとめ,紹介することができた。
 一方,ガイドブックの作成という共通の作業を通して,子育て支援団体や子育てサークルの関係者同士が地域を越えて交流し,運営上の悩みや活動の課題について意見交換する機会となった。

5 連携した取組の課題
利用者のニーズ調査
 ニーズ調査の範囲が一部の育児中の親にとどまった。更に効果的に活用してもらえる情報誌作成のためには,より幅広く利用者の調査を行うことが望まれる。

行政内部の連携
 ガイドブックを作成するうえで最も重要な工程は,内容を吟味して掲載情報を整理することである。そのためには,福祉保健部担当課と連携して十分な協議を行わなければならない。

他の媒体との併用
 冊子による情報は最新情報への更新が難しい。尾道市では,希望する登録者に対し,子育てに関する様々な情報を携帯電話にメール配信する「Kids情報送信サービス」が平成17年10月から開始された。こうした事業の充実を図り,担当課と連携した情報提供を進めていく必要がある。

5  今後の方向性や展望
家庭教育支援の体制づくり
 両親が共働きになっている家庭が増えている現代では,子育てを負担に感じている母親や,子育てに不安を抱える親が多い。特に,市外からの転入者で若い夫婦と乳幼児という核家族世帯の多い地域ではその傾向が強い。
 行政だけでは,こうした育児に悩む親に直接働きかけを行うには限界があり,民生委員児童委員や福祉保健委員,管理栄養士などが,子育ての身近な相談者としての役割を担っていくことが期待される。
 こうした状況を踏まえて,子育て支援ボランティアの人材育成など,各行政担当課が連携した総合的な家庭教育支援体制の整備が必要である。
 子育てサークル活動やPTA活動の学習機会を活用した「子育て学習会」の開催など,市民の自主的な学習機会の場を広げ,より地域活動に密着した家庭教育支援の充実に向け,子育て支援団体と協力した子育て情報ネットワークの構築を目指していきたい。

総合的な子育て情報サイト構築への取組み
 子育てガイドブックの作成活動がきっかけで,社会福祉協議会を母体とする「市民参加型の子育て情報サイト構築」の新規事業が始まった。
 この事業は,行政情報サイトである「おのみち子育てねっと」と,公募による育児中の母親31名がワークショップをもとに作成した市民参加型のポータル情報サイト「おのみちしるべ」の2つの情報サイトを構築する取組みで,平成19年2月に開設を予定している。

6  担当者連絡先
 尾道市教育委員会生涯学習課人づくり推進係 国本
 〒722-8501広島県尾道市久保一丁目15-1
  TEL  0848-20-7444  /  FAX  0848-37-3004
  E-mail shogai@city.onomichi.hiroshima.jp

前のページへ 次のページへ


 

-- 登録:平成21年以前 --