行動する社会教育委員をめざして-町の子育て支援事業を調査・研究して-(神奈川県大井町)

行動する社会教育委員をめざして-町の子育て支援事業を調査・研究して-

1  自治体・団体名: 神奈川県大井町,大井町社会教育委員会議

2  自治体・団体の概要
 大井町社会教育委員会議は年5回の会議と班別に分かれた小委員会を年4~5回開催している。毎年テーマを決め,自主的に生涯学習の現状や課題を調査・研究し「行動する社会教育委員」をめざしている。平成16年から2年間,生涯学習後期実施計画に係わる進捗状況の調査・研究をし,教育委員会へ提言を行った。本年度は,生涯学習推進計画の見直し策定に鑑み,2年間の調査・研究を踏まえて,新たに子育て支援について調査・研究することになった。

3  地域の特徴
 大井町は神奈川県の西部,足柄上郡の東部に位置し,東西5.62キロメートル,南北5.18キロメートル,総面積は14.41平方キロメートルを有している。南は小田原市,西は酒匂川を境として開成町に,北は松田町と秦野市に,東は中井町にそれぞれ接しており,横浜市からは約50キロメートル,東京都心からは約70キロメートルの距離にある。
 町の東西を東名高速道路が走り,北東部には大井松田インターチェンジを有するほか,東名高速道路と湘南地域を連結する重要な路線である国道255号が南北に走り,そのほか県道6路線が町内の主要な道路網を構成している。
 一方,鉄道は沼津と国府津間を結ぶJR御殿場線が国道とほぼ平行するように走り,町内には上大井駅と相模金子駅がある
 地勢的に見ると,大きく西部の平坦地,東部の丘陵地によって構成されている。西に広がる平坦地は酒匂川を経て箱根連山に達し,北は丹沢山塊,東は大磯丘陵に囲まれ,南は小田原市を経て相模湾に望んでいる。
 気候は全地域を通じて大差なく,冬季においても寒冷な北風はほぼ防がれ,年間を通して寒暖の差が少なく,住環境に適し,各種作物,果樹などの栽培も行われ,太陽と水と緑が調和した豊かな自然環境にある。
 人口は17,505人,人口に占める構成比は年少人口(0~14歳)16.5パーセント,生産年齢人口(15~64歳)68.5パーセント,老年人口(65歳以上)15.0パーセント,平均年齢40.03歳(いずれも平成17年1月1日)と比較的若い世代が多い町である。また出生率は16.23パーセント(平成17年度)で県内でも上位を占めている。また,町内の幼稚園児や保育園児数も増加傾向にあるとともに,放課後児童クラブ(学童保育)への入所希望者も年々増えている。

4  連携の取組状況
1 連携にいたるまでの経緯等
 大井町社会教育委員は公民館運営審議委員を兼ねており,女性9人,男性7人の計16人で構成されている。町教育委員会では,平成11年7月および平成13年7月の社会教育法の一部改正を受けて,それまで子育て支援団体から1名の委員を推薦していただいていたが,その枠を広げて3名の子育て支援団体および子育て支援団体元役員からの登用を行った。

2 連携した取組の具体的内容・方法・実施状況
 本年度,社会教育委員会議では生涯学習推進計画を見直し策定するための素案づくりとして,大井町の生涯学習の現状を改めて調査・研究することになり,子育て支援団体関係者から登用された委員が中心となって,子育て支援センターと「ぞうさんくらぶ」の見学および町が行っている子育て支援事業の調査を行った。
 見学では施設の様子や活動状況,職員との話し合いを行った。一方,町が行っている子育て支援事業の調査では,担当職員に話を聞いたり調査表を配付したりした。そして,それをまとめ,生涯学習推進委員会議で提言するとともに生涯学習推進計画に反映させることになった。以下が調査したことをまとめたものである。

子育て支援に関する調査・研究をして

 現状
(ア) 少子化,核家族化,共働き世代の増加など大きく変化する現代社会において子育て支援事業の必要性はますます高まっている。そのような中,大井町においても関係機関で多種多様な子育て事業が推進されている。
a  「ぞうさんくらぶ」「のびっこくらぶ」のように就学前の児童を対象として,親同士の交流や仲間づくりを支援し,育児不安の解消を図る場として活用する事業が多い。
b  父親が参加できる事業が少ない。
c  子育て支援センターでは,育児不安や悩みについての相談,情報提供など地域全体で子育てを支援するセンター機能として運営されている。
d  同じく地域の力を活用するものに,育児の援助を行ないたい者と受けたい者とを結ぶファミリーサポートセンター事業を実施している。
e  就労と子育てに悩んでいる人はかなり多く存在していると考えられる。

 課題
(ア) 多様化する子育てに対応した事業の推進を図るとともに,今後は単独機関事業に留まらず,関係機関の連携と地域子育て支援力をますます強化していく必要がある。
a  ファミリーサポートセンターでは,支援会員の増加を図り,保育サービスとして地域に浸透させていく必要がある。(PR不足の解消)
b  子育て支援センターでは,土曜日の開館や時間延長ができればよいと考える。
c  支援事業の開催曜日を検討して,父親(男性)も参加できるようにしたい。(妊婦ジャケット着用の体験など)
d  特別支援を必要としている子どもへの対応や支援事業があまりないように思われる。
(イ) 地域での子育て関連団体(PTA,子ども会,各スポーツ団体,幼児サークル等)の活動を促進するためには,行政との連携や団体同士の連携あるいは支援が必要と思われる。
a  政府が6月にまとめた「新しい少子化対策」では,小・中・高校で保育体験や子育てを理解する教育を推進している。2009年度までにすべての保育所,児童館,保健センターで中高生に乳幼児とふれあう機会を提供できるようにするとしている。このことから中学生のボランティアやベビーシッターなど若い世代に在宅シッターをお願いすることができればよいと思う。
b  町全体の子どもの様子を把握するには,学校や地域など各方面との連携が必要と思われる。例えばニコニコパトロールの方たちの目を通して子どもたちの様子が見えてくることもある。

 主な子育て支援事業
(ア) 子育て健康課
事業名 目的・内容等 参加者・利用者数 今後の方針
ぞうさんくらぶ 初めて子育てをする母親同士の交流の場として毎月1回開催している。 17年度 283人
18年度 67人
(4~6月)
今後は,転入者など,交流の機会が少ないと思われる方への周知の方法を検討し,参加者の増加を推進する。
のびっこくらぶ 1歳児とその親を対象に,友達づくりとリフレッシュの場として毎月2回開催している。 16年度 494人
(約247組)
17年度 532人
(約266組)
18年度 186人
(4~6月)
(約93組)
今後は,広報等による呼びかけを充実させることで,多くの方に事業への参加を促進していきます。
子育て支援センター 子育て家庭等の育児不安や悩みついての相談,地域の保育資源の情報提供など,地域全体で子育てを支援する機関として運営している。 16年度 6543人
17年度 8057人
18年度 1286人
(4~6月)
利用者の増加をめざすために,事業の周知を充実させるほか,育児相談体制の充実を図る。
ファミリーサポートセンター 育児の支援を行いたい人と支援を受けたい人が会員となり,育児について助け合う会員組織。お子さんの預かり,施設までの送迎等を主な支援内容としている。 16年度 744人
17年度 663人
18年度
 4月 37人
 5月 58人
PR活動を積極的に展開することにより,支援会員を増やし,制度の充実を図る。
マタニティスクール 新しい生命を迎える準備をする教室として年に6コース(1コース4日間),妊婦やその夫を対象に開催している。 16年度
 母親 195人
 父親 19人
17年度
 母親 151人
 父親 17人
18年度(4~6月)
 母親 22人
 父親 5人
今後は,より多くの方に参加してもらうため,お勤めしている方の参加を容易にするなど,内容の充実と周知の強化を図る。
親子相談 心理相談員による子育てや子どもの発達についての相談や療育に関する相談等を毎月1回実施している。 16年度 15組
17年度 22組
18年度 7組
(4~6月)
今後は,就園・就学してからも育児相談の場として利用できるよう,事業の普及を強化していく。
新生児訪問指導 原則,第一子のいる家庭を訪問し,保護者に子どもの健康管理と育児の相談を行っている。 16年度 86組
17年度 80組
18年度 30組
(4~6月)
今後は,第二子以降のいる家庭や転入者に対する訪問を含め,全数訪問をめざす。

(イ) 生涯学習課
事業名 目的・内容等 参加者・利用者数 今後の方針
幼児家庭教育学級(委託事業) 幼児教育や家庭教育の充実のため,子育ての方法・教養・学習を深めることや児童生徒の心理,行動などを学習することを目的として各幼稚園への委託事業として行っている。 16年度
 幼 847人
 小・中 389人
17年度
 幼 690人
 小・中 626人
18年度
 幼 201人
 小・中 241人
(5~9月)
今日的課題である人権・同和教育や子どもたちの食の問題などの教室を開催するように今後も積極的に働きかけるとともに合同開催についても促す。
すこやか学級 乳幼児の子育てをしている保護者を対象に,毎年3回シリーズでテーマを決めて行っている。 16年度 79人
17年度 62人
18年度 85人
(全3回)
他の市町村ではあまり行われていない事業であり,子育てについて大変参考となる教室なので今後も継続していく。また,講義だけでなく活動や実習が伴うように企画する。
放課後児童クラブ 留守家庭児童の健全育成を図ることを目的に放課後帰宅しても保護者等が家にいない小学1~3年生の児童を預かっている。 16年度 40人
17年度 60人
18年度 80人
(定員数)
現施設の今後の方向性を決めるとともに,新たに施設場所を増設し,適正な人数を預かり児童の健全育成に努める。

3 連携した取組の成果
 子育て支援団体関係者から登用された委員が中心となって,子育て支援施設や子育て支援事業の見学を行い,観て,聴いて調査したことが,生涯学習推進計画に反映され,さらにはそれが事業となって現れていくとともに,今後の事業の進捗状況を社会教育委員の目で見守っていくことができる。

4 連携した取組の課題
 本年度,生涯学習推進計画を見直し策定するために子育て支援について調査・研究してきたが,限られた事業の見学しかできなかったことが課題として残った。

5  今後の方向性や展望
 昨年12月に改正された教育基本法では,「家庭教育」に関して国や地方公共団体が家庭教育支援に努めるべきであるという旨の規定が設けられ,今後,子育て支援事業や家庭教育支援事業がより重要になってくる。そこで,さらに事業の充実を図るための調査・研究を続けていき,社会教育委員会議と行政が連携して子育て支援事業や家庭教育支援事業をさらに推進していきたい。

6  担当者連絡先
 大井町教育委員会生涯学習課 小林
  TEL   0465-85-5016
FAX 0465-82-3290
E-mail shougaku@town.oi.kanagawa.jp

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