小・中学校等への就学について

小学校等の課程を修了していない者の中学校等入学に関する取扱いについて(通知)

28初初企第7号
平成28年6月17日


  各都道府県教育委員会教育長
  各指定都市教育委員会教育長
  各都道府県知事
  附属学校を置く各国立大学法人の長                                    殿
  義務教育諸学校を設置する学校設置会社を所轄する
  構造改革特別区域法第12条第1項の
  認定を受けた各地方公共団体の長

文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長
串田 俊巳
                                                                                   (印影印刷)

小学校等の課程を修了していない者の中学校等入学に関する取扱いについて(通知)

  標記のことについて,文部科学省では,従前より「中学校は,小学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする」との学校教育法(昭和22年法律第26号)第45条の規定にのっとり,小学校等の課程を修了した者が中学校等に進学することを予定しているとの考え方に基づき対応してきているところです。
  このことに関し,小学校等の課程を修了していない者(以下「小学校未修了者」という。)が中学校等へ入学を希望する事案には近年様々な状況変化が見られます。例えば,保護者による虐待や無戸籍といった複雑な家庭の事情等により,居所不明となったり,未就学期間が生じたりするケースが明らかになってきており,この中には小学校等を未修了のまま中学校等への進学を希望する者も含まれているものと考えられます。また,海外から帰国した子供について,重国籍や日本語能力の欠如等により保護者の就学義務が猶予又は免除されて,外国人学校の小学部等に通った後に中学校等への進学を希望する事案や,外国籍の子供が外国人学校の小学部等に通った後,経済的な事情や居住地変更等の事情により,中学校等への入学を希望する事案等も生じてきています。
  このような状況に照らし,小学校未修了者の中学校等への入学について,下記のような取扱いとすることが適切と考えられますので通知します。
  各都道府県知事及び都道府県教育委員会教育長におかれては域内の市町村教育委員会,学校,学校法人に対して,各指定都市教育委員会教育長におかれては域内の学校,学校法人に対して,各国立大学法人の長におかれては附属学校に対して,構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては域内の株式会社立学校及びそれを設置する学校設置会社に対して,本通知の趣旨,内容について周知するとともに,適切に指導,助言,援助を行っていただくようお願いします。

1.小学校未修了者の中学校等への入学については,当該小学校未修了者が中学校相当年齢に達しており,次のような特別の事情を有する場合には,認めることが適当と考えられること。
(1) 保護者による虐待や無戸籍といった複雑な家庭の事情や犯罪被害等により,学齢であるにもかかわらず居所不明となったり,未就学期間が生じたりした子供が,小学校未修了のまま中学校相当年齢に達してから中学校等への入学を希望する場合
(2) 不登校等により長期間学校を欠席する間に,やむを得ない事情により小学校未修了のまま小学校相当年齢を超過した後,通学が可能となり,中学校等への入学を希望する場合
(3) 病弱や発育不完全等の理由により,小学校相当年齢の間は就学義務の猶予又は免除の対象となっていた子供が,中学校相当年齢になってから就学が可能な状態となり,小学校未修了のまま中学校等への入学を希望する場合
(4) 海外から帰国した子供が,重国籍や日本語能力の欠如といった理由により,就学義務の猶予又は免除の対象となって外国人学校の小学部等に通った場合で,その子供が中学校段階から中学校等への進学を希望する場合
(5) 日本国籍を有しない子供がいったん外国人学校の小学部等に通った後,経済的な事情や居住地の変更等といった事情により,中学校段階から中学校等への転学を希望する場合
(6) 戦後の混乱や複雑な家庭の事情などから義務教育未修了のまま学齢を超過した者の就学機会の確保に重要な役割を果たしている中学校夜間学級等に,小学校未修了者が入学を希望する場合

  なお,上記のような場合は,学校教育法施行令第20条に規定する「保護者に正当な事由がないと認められるとき」や同第21条に規定する「就学義務を怠っていると認められるとき」には該当しないものであること。

2.小学校未修了者の中学校等への入学を認めるに当たっては,当該未修了者が,未就学期間があったことにより,学習内容にまとまった欠落があるなど,日々の教職員による指導において補充的に対応するだけでは十分な支援ができない場合も考えられる。このため,市町村教育委員会と学校とが協力し,必要に応じて地域の学校支援組織やNPO等の民間団体とも連携しつつ,生徒の状況を踏まえた個別の支援計画や教材を準備し,放課後や長期休業日の活用も含め,修業年限全体を通じた組織的・計画的な学習支援や進路指導を行うことも検討すること。
  また,当該生徒が児童養護施設へ入所している場合や,貧困,虐待,ネグレクトなど特別な生活上の課題を抱えている場合には,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカーといった専門職員や児童相談所等の関係機関と緊密に連携しつつ,生徒の立場に立ったきめ細かな支援を充実させること。
  各都道府県教育委員会においては,市町村教育委員会の意見を聴いた上で,当該生徒の在籍校における学習指導上・生徒指導上の課題の状況を総合的に判断して必要と認められる場合は,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置に係る補助や国・都道府県の教職員定数の加配など各種の人的支援措置の活用も考慮しつつ,当該在籍校の指導体制の充実に努めること。 


別添 参考法令

(別添)

参考法令

○ 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)

  第十七条 保護者は,子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから,満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで,これを小学校,義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。ただし,子が,満十二歳に達した日の属する学年の終わりまでに小学校の課程,義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部の課程を修了しないときは,満十五歳に達した日の属する学年の終わり(それまでの間においてこれらの課程を修了したときは,その修了した日の属する学年の終わり)までとする。
  2 保護者は,子が小学校の課程,義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから,満十五歳に達した日の属する学年の終わりまで,これを中学校,義務教育学校の後期課程,中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う。
  3 前二項の義務の履行の督促その他これらの義務の履行に関し必要な事項は,政令で定める。

  第三十六条 学齢に達しない子は,小学校に入学させることができない。

  第四十五条 中学校は,小学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする。
 
  第四十九条の六 (略)
  2 義務教育学校の後期課程における教育は,第四十九条の二に規定する目的のうち,前期課程における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,義務教育として行われる普通教育を施すことを実現するため,第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
 
  第六十三条 中等教育学校は,小学校における教育の基礎の上に,心身の発達及び進路に応じて,義務教育として行われる普通教育並びに高度な普通教育及び専門教育を一貫して施すことを目的とする。

  第七十二条 特別支援学校は,視覚障害者,聴覚障害者,知的障害者,肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して,幼稚園,小学校,中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに,障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。

○ 学校教育法施行令(昭和二十八年十月三十一日政令第三百四十号)

  第二十条 小学校,中学校,義務教育学校,中等教育学校及び特別支援学校の校長は,当該学校に在学する学齢児童又は学齢生徒が,休業日を除き引き続き七日間出席せず,その他その出席状況が良好でない場合において,その出席させないことについて保護者に正当な事由がないと認められるときは,速やかに,その旨を当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する市町村の教育委員会に通知しなければならない。

  (教育委員会の行う出席の督促等)
  第二十一条 市町村の教育委員会は,前条の通知を受けたときその他当該市町村に住所を有する学齢児童又は学齢生徒の保護者が法第十七条第一項又は第二項に規定する義務を怠つていると認められるときは,その保護者に対して,当該学齢児童又は学齢生徒の出席を督促しなければならない。
  
○ 経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)(昭和五十四年八月四日条約第六号)
  第十三条
 1 この規約の締約国は,教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は,教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に,締約国は,教育が,すべての者に対し,自由な社会に効果的に参加すること,諸国民の間及び人種的,種族的又は宗教的集団の間の理解,寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。
 2 この規約の締約国は,一の権利の完全な実現を達成するため,次のことを認める。
  (a)初等教育は,義務的なものとし,すべての者に対して無償のものとすること。
   (b)種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は,すべての適当な方法により,特に,無償教育の漸進的な導入により,一般的に利用可能であり,かつ,すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
    (c)~(e) (略)
 3・4 (略)

○ 児童の権利に関する条約(平成六年五月十六日条約第二号)
  第二十八条
 一 締約国は,教育についての児童の権利を認めるものとし,この権利を漸進的  にかつ機会の平等を基礎として達成するため,特に,
   (a) 初等教育を義務的なものとし,すべての者に対して無償のものとする。
   (b) 種々の形態の中等教育(一般教育及び職業教育を含む。)の発展を奨励し,すべての児童に対し,これらの中等教育が利用可能であり,かつ,これらを利用する機会が与えられるものとし,例えば,無償教育の導入,必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置をとる。 
    (c)~(e) (略)
 2・3 (略)

お問合せ先

初等中等教育企画課教育制度改革室

電話番号:03-5253-4111(内線:2007)

(初等中等教育企画課教育制度改革室)

-- 登録:平成28年06月 --