小・中学校等への就学について

義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学を希望した場合の対応に関する考え方について(通知)

27初初企第15号
平成27年7月30日

  各都道府県教育委員会教育長
  各指定都市教育委員会教育長  殿
 


文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長
串田  俊巳

(印影印刷)

義務教育修了者が中学校夜間学級への再入学を希望した場合の対応に関する考え方について(通知)
     

  従来文部科学省では,義務教育諸学校に就学すべき年齢を超えた者の中学校への受入れについては,ホームページ等において「中学校を卒業していない場合は就学を許可して差し支えない」との考え方を示してきましたが,一度中学校を卒業した者が再入学を希望した場合の考え方については明確に示していなかったところです。
  このような状況の中,様々な事情からほとんど学校に通えず,実質的に十分な教育を受けられないまま学校の配慮等により中学校を卒業した者のうち,改めて中学校で学び直すことを希望する者(以下「入学希望既卒者」という。)が,中学校夜間学級(以下「夜間中学」という。)に入学を希望しても,一度中学校を卒業したことを理由に基本的に入学を許されていないという実態が生じています。
  本来,社会で自立的に生きる基礎を培い,国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うといった義務教育の目的に照らせば,義務教育を受ける機会を全ての者に実質的に保障することが極めて重要です。しかし,平成26年に文部科学省が実施した「中学校夜間学級等に関する実態調査」においては,全ての夜間中学において,入学希望既卒者の入学が認められていないという事実や,いわゆる自主夜間中学や識字講座といった場において不登校等により義務教育を十分に受けられなかった義務教育修了者が多く学んでいるといった事実が明らかとなったところです。
  また,平成26年に厚生労働省が実施した「『居住実態が把握できない児童』に関する調査」や平成27年に文部科学省が実施した「無戸籍の学齢児童生徒の就学状況に関する調査」の結果等によれば,親による虐待や無戸籍等の複雑な家庭の事情等により,学齢であるにもかかわらず居所不明となったり,未就学期間が生じたりしている者が存在することが明らかになっています。
  さらに,文部科学省が実施した「平成25年度『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』」の結果によれば,不登校児童生徒に対し,学校復帰に向けた学校外での個人の努力を評価し学校における指導要録上出席扱いとすること等,児童生徒の立場に立った柔軟な取扱いも広く行われており,学校に十分に通わないまま卒業する生徒が今後も生じてくるものと考えられます。
  このような状況を踏まえると,入学希望既卒者については,義務教育を受ける機会を実質的に確保する観点から,一定の要件の下,夜間中学での受入れを可能とすることが適当であると考えられます。
  ついては,入学希望既卒者の夜間中学への入学許可に当たっての基本的な考え方を下記のとおりとしましたので,市町村教育委員会におかれては,これらの考え方を参考に,各夜間中学の収容能力に応じて,可能な限り受入れに取り組まれるようお願いします。
  各都道府県教育委員会教育長におかれては,所管の学校及び域内の市町村教育委員会に対して,指定都市教育委員会教育長におかれては,所管の学校に対して,本通知の趣旨・内容について周知するとともに,適切に指導・助言を行っていただくようお願いします。

 記


1.市町村教育委員会は,入学希望既卒者があったときは,入学を希望する理由や既に卒業した中学校における具体的な就学状況について,入学希望既卒者本人及び既に卒業した中学校の設置者等に確認した上,入学の可否を総合的に検討すること。その検討の結果,当該入学希望既卒者が,以下の要件に該当すると認められる場合は,各夜間中学の収容能力に応じて,積極的に入学を認めることが望ましいこと。
 

 不登校や親による虐待等により中学校の課程の大部分を欠席していた又はそれに準ずる状況であった等の事情により,実質的に義務教育を十分に受けられておらず,社会で自立的に生きる基礎を培い,国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うといった義務教育の目的に照らして,再度中学校に入学を認めることが適当と認められる

 

2.入学を認める入学希望既卒者は,基本的には,不登校や親による虐待等により中学校の課程の大部分を欠席していた者を想定しているが,例えば下記のようなケースも考えられるため,入学の許可に際しては,出席日数等の一律の外形的な基準によって決定するのではなく,個々の事情に応じて柔軟に判断することが望ましいこと。
  (1) 指導要録上,十分な出席日数が記録されていても,いわゆる保健室登校であったり,いじめ・病気などにより落ち着いた環境で授業を受けられなかったりしたケース
 (2) 指導要録の保存年限が過ぎて廃棄されていたり,当時の生徒の状況を知る教職員が全て異動していたりといった事情により,卒業した学校における就学状況が把握できないケース
  (3) 転居や転校を繰り返す間に未就学期間が生じたなどの事情により,過去の指導要録全体が引き継がれておらず,就学状況の全体が把握できないケース  
  (4) 修業年限の相当部分が未就学であったり,就学義務の猶予又は免除を受けていたりするなど学籍が作成されていない期間が長期にわたり,指導要録において出席・欠席日数が十分に記録されていないケース                    
  (5) 学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けることなどにより指導要録上出席扱いがなされ,中学校卒業を認められたものの,夜間中学に通うことにより学び直しを行うことを強く望んでいるケース
 

3.特に学齢期に不登校を経験した者など,入学希望既卒者の中には,もう一度学校という場で学ぶことに不安を抱えている者や,夜間中学への入学を含め,今後の進路の選択に悩みを抱いている者も多いと考えられる。市町村教育委員会及び夜間中学を置く中学校は,こうした者から夜間中学への入学希望の提出に先立って相談があった場合は,入学希望既卒者の立場や心情に配慮した対応が望まれること。また,その際,例えば夜間中学の見学や試験登校を認めるなど,きめ細かな対応に努めること。

 

4.なお,入学希望既卒者の夜間中学への受入れに当たって想定される基本的な手順(別添)を作成したので参考とされたいこと。

お問合せ先

初等中等教育企画局初等中等教育企画課教育制度改革室

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-- 登録:平成27年07月 --