セカンドスクール
平成元年度に学校経営検討委員会で提言されたセカンドスクールは、翌年度からの「セカンドスクール構想委員会」「同構想策定委員会」の検討を経て、3年間の試行の結果、平成7年度から全小学校の第5学年で、また平成8年度からは全中学校の第1学年においても本格実施し、現在に至っている。
セカンドスクールは、武蔵野市立小学校の第5学年と中学校の第1学年全員が、通常の授業(ファーストスクール)では得られない体験による学習を、授業の一部として自然豊かな農山漁村に長期滞在して実施する。
各校は、第一学期または第二学期の期間中に、小学校は6泊7日から9泊10日、中学校は4泊5日を、総合的な学習の時間のほか、理科、社会、国語等を実地にて体験する授業として教育課程に位置付け、年間指導計画に織り込んでいる。
セカンドスクールは、自然との触れ合いを通して、物質的な豊かさの中で失われてきている自然と人間との共生、環境保全の必要性、自然に対する畏敬の念などについて体験し、自然を大切にしようとする態度を育てる、長期の宿泊による生活時間を活用し、生活上の自立に必要な知識・技能や生活習慣を身につけるとともに、一人一人の子どもの創意を喚起し、情操を涵養し、個性の伸長を図る、学習の場を移し、自然や地域の特性を活かした教材開発や学習方法を工夫し、一人一人の子どもに新たな興味・関心を喚起し、学習のつまずきを克服するとともに、体験に裏付けられた生きた学力の向上を図る、自主的な集団生活や地域の人々との交流を通じて、子どもたちの相互の協力や子どもと教師との間の信頼関係と人間関係を深め、また保護者や地域の人々に対する感謝の念を育てる、ことを目的とし、山形県、新潟県、富山県、長野県、群馬県等で実施している。
教育委員会では、年度当初に学校の担当教員に説明会を行い、実施の留意点を確認している。また、前年度に提出する実施計画及び教育課程の届出と実施年度に行うヒアリングにより、各校の予算と実施内容を把握し、調整と指導、助言を行っている。
本校は武蔵野市のほぼ中央に位置し、JR中央線三鷹駅の北、徒歩20分程の住宅街に位置している。学校の西側には畑が点在し、なし・ブルーベリー・栗などの栽培農家もある地域である。しかし、農業を営む家庭の児童は現在在籍していない。
平成15年度から本校では、現在実施している群馬県利根郡川場村で、7泊8日(現在は5月の下旬から6月初旬)のセカンドスクールを実施している。
川場村は、世田谷区と健康村協定を結び、20年以上前から小学校5年生を対象にした移動教室を実施している地域である。また、地域に根ざした民宿が古くからあり、村役場や観光協会の協力を得ることができる環境にある。
また、村の名前のように、身近に手頃な川があったり、りんごやブルーベリーなどの果樹栽培が盛んであったり、手頃な範囲の中で様々な自然体験活動が可能な場所である。本校では、自ら進んで、活動したり学習したりする力を育てる、ファーストスクールで学習した事柄を、自然の中で検証したりさらに深めたりする、家庭を離れて生活することを通して、自立心を養う、長期に渡る集団生活の中で、一人一人のよさを認め、互いに協力し合うことの大切さを学ぶ、の4つを「ねらい」として、長期宿泊体験教室を実施している。
セカンドスクールを終了した5年生の報告会に参加する。(4年の2学期に、同じ川場村で実施するプレセカンドスクール「2泊3日」への興味関心を高める)
プレセカンドスクール(10月中旬)の実施
りんご狩り体験、稲刈り体験、乳搾り体験 など
川場村の詳しい場所や地理的な特徴を調べる。川がたくさんあることや、果樹栽培が盛んなことを知り、自分で調べたいことを明確にしていく。
調べたい課題を中心に、活動班を編成し「学習テーマ」を決めていく。その後、川場村との比較をしたりするために、農協や学校近くの畑に行ってインタビューをしたり、図書室で参考図書を活用し調べたりしながら、学校付近の様子について調べ、まとめたことを発表する。
セカンドスクールの活動内容は、大きく分けて「テーマ別班活動」「全体での体験活動」「宿舎での活動」の3つの活動がある。
事前学習で各個人の課題を元に活動班を編制し、班ごとに大きなテーマを設定し課題探求活動を実施する。
各班のテーマは「川場村のブルーベリーのつくり方」「川場村の川棲むに生き物」「川場村のりんごはどんなりんごなのか」「川場村の名産(野菜・山菜)を調べる」「果物の川場村ならではの育て方を調べる」「川場村の川の生き物」計6つのテーマは、民宿ごとに分かれている。
現地では、これらのテーマに造詣の深いインストラクターや各民宿の方々にご支援いただき、テーマに沿った課題解決に向けた活動が、午前または午後(1回3時間程度)に合計5回程実施している。自分たちが調べたいことを膨らませながら、インストラクターの協力をいただき、いきいきと追求している。
昔ながらのわらぞうり作り体験をした。インストラクターの方から、ぞうりの作り方を丁寧に教えていただいた。
限られた時間の中で一足作り上げることは無理であろうとの判断から、半分以上を事前に作っておいていただき、最後の仕上げを子どもたちが行うように工夫し実施した。器用な子どもは、小さいながらも見よう見まねで一足完成させる者もいた。自分のぞうりをその場ではき、嬉しそうに歩き回っている姿が印象的だった。
お世話になる民宿から田んぼを借りて、全員で田植えを行った。昨年稲刈りをした場所でもあるため、実りの秋をイメージしながら活動することができた。
田植えを初めて経験する子どもがほとんどで、苗の持ち方から一つ一つ教えていただいた。また、川場村の米がおいしい理由などを教えていただき、充実した活動となった。
2つのりんご栽培農家に分かれ、りんごの摘果作業を体験した。
直径2〜3センチメートルほどに成長した小さなりんごの実を、中心果だけを残し、周りの実を専用のハサミで摘んでいく作業で、子どもたちは「なぜわざわざ育ちかけの実を切り落とすのだろう」という疑問があった。農家の方から、大きくおいしいりんごを作るために必要な作業であることを教えていただいた。
おいしいりんごを収穫するための、工夫や努力を学ぶことができた。
自分たちが生活・活動している川場村や周辺の地形などを、一望することができる雨乞山に全員で登った。
頂上からは、赤城山・榛名山などの山々や沼田市の地形、赤城山麓の土地の利用、4年の時に散策した村内の場所などを確認し、有意義な体験を行った。
川の水を利用している釣り堀で、一人一匹ニジマス釣りを体験する。
そのニジマスをすぐに、塩焼きにして食べるとき「さっきまで生きていたのにかわいそう」と言う子どももいた。普段学校給食などでは聞かれない感想で、改めて「いただきます」の意味を考えるいい機会となった。
各民宿ごとに、お父さんやお母さんに教えていただきながら、昔から地域などで行っていたそば打ちなどに挑戦した。ほとんどの子どもが初めての経験で、そばを恐る恐る切ったり、機械から出てくるうどんに歓声をあげていた。どの民宿でも、自分で作った食事はおいしかったと報告してくれた。
民宿のお父さん方に講師役になっていただき、状差しを制作した。普段なかなかゆっくりとふれ合う時間がなかった、民宿のお父さんやお母さんとふれ合いながら、釘の打ち方や紙やすりのかけ方などを教えていただいた。その後、それぞれの思い思いに、マーカーペンなどを利用して絵やメッセージを描き、思い出に残る作品を仕上げた。
基本的には、本部宿舎(ホテルSL)で生活する。全体活動では、集合場所に各民宿から送ってもらう子どもたちと合流できるようにし、インストラクターの方と協力して活動を支え、記録等をする。
テーマ別班活動は、事前に活動場所を確認しておき、教員は手分けをして活動記録や行動観察をし、必要に応じて指導員などに助言をする。
夜回りの実施については、夕食後各民宿を回り、今日の反省や活動記録のチェックを行うとともに、健康カードの確認等を看護師ともども毎晩行う。
また、指導員からの連絡に応じて、必要物品を届けたり児童の指導に当たっている。
実施後、6月半ばにはテーマ別班活動のまとめをし、4年生児童並びに保護者向けて、セカンドスクール報告会を実施している。
お世話になった民宿の方々を学校にお招きし、4年生が収穫した米を使って、餅つきなどを行う、川場交流会を実施している。
7泊8日と長期になるので、身の回りの片付け等がしっかりとできるかが大きな問題となる。また、1学期中の実施については、指導員の確保が年々難しくなってきている状況もある。
-- 登録:平成21年以前 --