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2.(1)14.兵庫県教育委員会/兵庫県立南但馬自然学校

心豊かな人作りに向けて

兵庫県の「自然学校」の取組について

 昭和63年度から、兵庫県では全国に先駆けて、「自然学校」という事業名で自然の中での長期宿泊体験を取り入れている。この取組は平成3年には、県内すべての小学校において、5年生が5泊6日の自然体験を中心とした長期宿泊体験を経験するという形で実施されることとなった。
 任意参加ではなく、「全員参加」という形をとり、「自然学校」での共同生活を誰もが経験することによって、普段の学校では先生も知らなかったような友達との付き合いや児童の得意分野が浮かび上がり、それを全ての学校で十分把握することができるようになる。このことは、その後の学級経営や学習指導等の教育活動に生かしていくために大変重要なことである。
 全県・全員参加を実現するためには、予算の確保もさることながら、全県約5万人の児童を受け入れる施設の確保が問題になってくる。また、食物アレルギー(児童や保護者にとっては大きな問題)などの身体的負担を持つ児童の参加に際しては、施設や専門家からの支援を得たり、活動中は友人からも理解を得て支援してもらうことが重要である。当然、一緒に活動することになる先生や家族にも、心と体の準備が必要である。
 何より重要な課題は、教室を離れての1週間で具体的に何をさせるのか、というカリキュラムの問題である。「自然学校」のねらいは何か、具体的なプログラムへどう生かすか、成果はどう評価するのか、ということをはっきりさせなければならない。プログラムづくりでは、児童自身の参画も重要なポイントである。児童自らが、自分の「自然学校」でどんな活動をしたいのか、できるのか。それはどのように具体化するのか。そして、終わってから自分にどんな変化が生まれたのかを自分自身で評価し、一生の思い出とすることが「自然学校」の大切なねらいである。
 このようなことを検討するため、県内に多く設置されている青少年教育施設の中でも、「自然学校」事業の中核となる施設として平成6年に開校したのが、「南但馬自然学校」である。

【南但馬自然学校が行う、自然学校実施中の支援】

入校式での生活オリエンテーション

  • 健康面、安全面についての留意事項
  • 校内救急体制の確認と医療機関について
  • 危険な生き物について
  • 南但馬自然学校の自然の紹介(職員が実物や写真を使って紹介)

活動前のオリエンテーション

  • 野外炊飯、サイクリング(MTB)、基地作り、テント設営(テント泊)等については安全面に重点を置きオリエンテーション(安全指導)を行う。

担当者連絡会

  • 実施期間中、毎日16時20分からその日の担当引率者と週担当指導主事が打ち合わせを行う。
<確認事項>
  • 児童の参加状況(途中参加、途中帰宅)及び児童の健康状態
  • その日の夜、翌日のプログラム(活動)
  • 宿直者との引き継ぎ
  • その他

病院受診等に係る連絡

  • 指導主事(保健担当)、自然学校救急員(非常勤職員)が児童の健康状態を把握するとともに、病院受診等の場合は、医療機関への連絡を行う。

【自然学校実施後の支援】

実施報告書、食事アンケートの提出

〔利用校から本校〕

  • 利用校は、自然学校実施後(10日以内)に実施報告書を提出する。
  • 提出された実施報告書を統計処理し、資料として活用する。

参加児童全員の実施後の健康状態の確認

〔本校から利用校〕

  • 指導主事(保健担当)が、児童の状況(受診後の経過等)を担任に確認する。

出前講座の実施

  • 自然学校の事後反省会、自然学校後の発展的学習、自然学校発表会等に出向き指導助言を行う。

【南但馬自然学校がめざす「自然学校」の基本理念】

【5泊6日のゆとりの中で学校では得難い体験をすることによる成果】

  • 自然学校推進事業検討委員会まとめより
  • (1)自然の美しさや神秘性、厳しさなど様々な自然とのふれあい、自然に対して興味・関心を抱くとともに、豊かな感性や知的好奇心、探究心をはぐくんでいる。
  • (2)自分のことは自分で行うなど自主的に物事を行う態度や、わがままを押さえて行動するなどの協調性等、社会性が発達する上で大切な役割を果たしている。
  • (3)これまで気づかなかった自分自身や他者の長所や能力などを発見する機会となっている。
  • (4)最後までやり遂げた経験や、つらいことを我慢したり相談したりした経験を通して、忍耐力や問題解決能力を育てる機会となっている。
  • (5)活動を通して得た成就感や達成感、保護者と離れて共同生活を送った経験は、自立心をはぐくむ機会となっている。
  • (6)親元を離れての生活は、家庭を見つめるよい機会となり、ふだんの生活で親や身の周りの人たちにいかに世話になっているか気づかせるとともに、それらの人々に感謝する心をはぐくんでいる。
  • (7)健康や安全確保に心掛ける態度・能力をはぐくむとともに、規則正しい生活を通して基本的な生活習慣を大切にする意識を培う機会となっている。
  • (8)自然や地域社会を対象にした体験活動は、人間としての在り方、生き方を考えさせる機会になっている。

指導事例−みんなの中でかがやく人に−

  • 本校では様々な自然体験プログラムを、教育目的に応じて紹介することができる。ここでは、そのうちの一つについて紹介する。

◇みんなの中でかがやく人に

 子どもたちにとって自然学校の5泊6日の体験は、これまで経験のない長期間における仲間との集団生活の場であり、様々な道徳的価値に触れ、感じ、考え、心を動かす豊かな体験の場である。この体験により得た潜在的な価値を顕在化することで体験が自らの未来を拓く価値ある行為へと発展、深化していく。

◇ぼくらはプロデューサー

 自然学校のプログラムが教師主導でつくられ、実施されたとき、子どもたちはその一つ一つをこなすことに終始する場合がある。子どもの自主性という視点から自然学校をとらえ、より広い選択の機会をつくったり、子どもがプログラムを考え、実行できる場を確保したりすることにより、自主的な態度が育ち、「子どもたちの自然学校」となっていく。
 そこで、特別活動での活動を発展・深化させる過程に自然学校を位置付け、実施することにより、「ゆとり」と「自然・人・地域とのふれあい」の中で学校生活を豊かにするための自主性と実践力を高めていきたい。

活動事例1:それでいいのか−身近な集団における自分の役割の自覚と、責任について考えよう−

(1)ねらい

 身近な集団における自分の役割を自覚し、責任をもってそれを果たそうとする態度を養う。

(2)展開

(3)留意事項

  • ア 「聞いて聞いて」の指導について
    • 一人一人の意欲をみんなで認め合い、励ましていくようにする。
    • 学級の係や当番活動だけでなく、委員会活動や家庭・地域での活動にも目を向けていけるようにする。
    • すべての児童のよいところが紹介されるように配慮する。
  • イ 道徳の時間の指導にあたって
    • 討論には、自分の立場を明確にし、参加する。
    • 考え方に変化があったり揺れ動きを見せたりする子どもの思いをきっかけにして、さらに深い考えを引き出していく。
  • ウ 次の活動に向けて
    • 自然学校を楽しいものにするためには、自分の役割を自覚し、きちんと責任を果たしていくことが大切である。

活動事例2:みんなのために−身近な集団に進んで参加し、自分の役割責任を主体的に果たすことについて考えよう−

(1)ねらい

 身近な集団での活動に進んで参加し、自分の役割を自覚し、主体的に責任を果たそうとする態度を養う。

(2)展開

≪学習指導案≫
1 主題名

みんなのために

2 ねらいと資料

『みんなの中で君がかがやく』(出典:文部省道徳教育推進指導資料4))

3 主題設定の理由

 自然学校を終えた子どもたちの心は、多様な経験ができた満足感や自分たちで協力し合い生活できた成就感に満ちている。この機会に、自然学校で味わった感動を共有し、本主題について話し合い、考えを深めることは、今後の集団生活において意義のあることである。この資料は、子どもたちへのメッセージとして書かれたものである。ここでは、自然学校での体験を踏まえて筆者の主張について話し合う。そのとき、筆者の述べていることをよく理解できるように、以前に学習した資料「ごはんがこげる」や自らの体験や身近な事例などを取り上げる方法も考えられる。これら具体的な内容をもとに話し合うことで、価値の自覚を深める。そして、最後に子ども自身の考えを資料を参考にしながらまとめる。あるいは、資料で提案されていることに関わって、これからどういうことをしようと思っているかをまとめられるようにする。

4 学習指導過程

(略)

5 他の教育活動などとの関連
  • (1)学級における係活動やクラブ活動や委員会活動、また、家庭における仕事の分担など、集団における役割責任について、日記や作文などで得た情報を機会をとらえて紹介したり、個別に励ましたりすることが、意欲を継続させるために大切である。
  • (2)学校行事や様々な体験活動に主体的に関わり、活躍できる場を多くつくることが学習を発展させる上で大切である。

(3)留意事項

  • ア 事前に気をつけること
    • 自然学校で体験したことを振り返り、友達と共感できる機会をもてるようにする。
  • イ 次の活動に向けて
    • 今後の家庭生活や学校生活で主体的に責任が果たせるよう、一人一人が課題を見つけ、実践していけるように支援する。

独自プログラムの例

(1)施設散策オリエンテーリング『南但馬に残された謎の暗号文を解読せよ!』

 自然学校初日(入校日)の活動として、施設散策オリエンテーリングを開発し、紹介している。

ねらい

  •  南但馬自然学校の施設内(自然散策路は含まない)をオリエンテーリングしながら散策することで、各エリア(本館・食堂棟・生活棟・キャンプ場)及び建物の配置(どこに何があるか)、各エリアをむすぶ経路を知り、施設内の位置関係を把握させる。
  •  自然学校初日(入校日)のアプローチとして、オリエンテーリングの途中に、問題解決ゲーム(イニシアティブゲーム)や自然体感ゲーム等を組み入れることで、自然や人とふれあうことの意識づけ(動機づけ)を図る。

実施方法

  • 1 「ポイントの地図」(図1)と「ワークシート」(図2)を配り、オリエンテーリングの方法を説明する。

    図1

    図2
  • 2 オリエンテーリングに出発する。
    • 「ポイントの地図」を見ながら、施設内に設置された120のポイントを探す。
    • ポイントに記された文字(ひらがな1字)をワークシート1に書き込んでいく。
    • ポイント(建物)の名前と説明文をワークシート2にメモしていく。
  • 3 20箇所のポイントのいずれか2箇所でゲーム(問題解決ゲーム・自然体感ゲーム)を実施する。そのゲームをクリアすると、暗号文を解読するための重要なヒントが獲得できる。
  • 4 獲得したヒントをもとにワークシート1に書き込まれた暗号文を解読する。
  • 5 ミッション(指令)を実行できたら、ゴール!
  • 暗号文は『大屋根広場で麦わら帽子をかぶった先生とみんなで握手する』となっている。6振り返りこのオリエンテーリングを実施し、感じたことやわかったことなどをグループ(班)毎に話し合ったり、発表することで、活動の共有化を図る。
  • 「グループ(班)のみんなと協力できたかな?」(ポイントを探す時、ゲームの時)
    「建物の名前や配置(場所)はわかったかな?」(各ポイントの説明文をもとにして質問する)
    「自然や人(友達)とふれあえたかな?」「何か新しい発見があったかな?」
    オリエンテーリングは大屋根広場から出発する。大屋根広場に集合した子どもたちに、本校職員がオリエンテーリングの実施方法と注意事項として、1グループ(班)のみんなで一緒に行動すること(単独行動禁止)、2施設内の自然にふれながらゆっくりと散策すること、3森に棲む危険な生き物に注意すること等を説明する。子どもたちは、名探偵さながらに暗号文解読のツアーに出かけて行く。

 子どもたちは、ポイントの地図とにらめっこしながら、ポイントを探し当てていく。本館には生きたマムシを飼育しているが、その水槽の前で、頭の形や模様を観察する子どもたちもいる。中には、イラスト地図と実際の建物の大きさやエリアの広さが若干違うので、ポイントに辿り着くのに四苦八苦するグループ(班)もある。それでも、ほとんどのグループ(班)が、完成させた暗号文をゲームで獲得したヒントをもとにして解読し、ゴール地点の大屋根広場で麦わら帽子をかぶった先生と握手をしてミッション(指令)の完了に歓声をあげている。
初日の活動として、施設を散策することで、子どもたちは建物や活動場所のおよその位置関係を把握することができ、また、散策の途中に南但馬の自然に出会ったり、人(友達)とふれあうことで、自然学校で実施する様々な活動に対するモチベーションを高めることができている。
今後も、散策のエリアを朝来山の森(本校の敷地内であり、自然観察路が整備されている)に広げたオリエンテーリングや各ポイントで自然や人とふれあうことのできるクイズ、ゲームを設定したオリエンテーリングなどを開発していきたい。

(2)自然物クラフト『ひのきーホルダー(檜の下枝でアクセサリーを作ろう)』

 多くの学校が自然学校のプログラム(活動)として、自然の中から素材を集め、それを使って「自然物クラフト」を実施している。
 その「自然物クラフト」にちょっとした工夫を加えることでより深まりのあるプログラム(活動)にできないものかと開発、紹介しているのが『ひのきーホルダー(檜の下枝でアクセサリーを作ろう)』である。
 本校の野外炊飯場は杉や檜の林の中に整備されている。そのエリアの除伐、下枝打ち作業で出た檜の下枝をよく観察すると、枝の根本から30センチメートル程のところまで、中心に美しい赤身の部分が確認できる。その下枝を使って「自然物クラフト」ができないかと考え、開発したのがこの『ひのきーホルダー』である。
 枝の部分といっても檜の材質は少し堅く、子どもたちは、おおまかな形に整える工程に悪戦苦闘である(特に曲面に加工するのは難しいようである)。サンドペーパーで磨くという工程は、ただひたすら磨くという作業ではあるが、子どもたちは夢中になって磨き、個性豊かなアクセサリーに仕上げていく。活動中の工作室には、檜のとてもいい匂いが漂っている。
 今後、施設内の朝来山をフィールドとして整備し、林業体験としての「下枝打ち」の体験から始まり、自分たちが枝打ちをした檜の下枝を使って、アクセサリーを作るという一連のプログラムの流れを開発していきたいと考えている。


-- 登録:平成21年以前 --