教育職員に係る係争中の争訟事件等の係属状況について -平成16年4月1日現在-

初等中等教育企画課

 平成16年4月1日現在における教育職員に係る係争中の争訟事件等の継続状況について、その調査結果の概要を紹介する。各都道府県・指定都市(以下「県市」という。)における争訟等に係る事務処理の参考とされたい。
 なお,この調査は,各県市から報告のあった教育職員(公立の小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,盲学校,聾学校又は養護学校の校長,教頭,教諭,助教諭,養護教諭,養護助教諭,講師,実習助手及び寄宿舎指導員)に係る係争中の争訟事件等をまとめたものである。
 本年の状況を昨年と比較すると,次のことがいえる。

  1  行政事件(民事事件を含む。以下同じ)訴訟の係属状況については,全体の件数はほぼ同数であるが,教育職員数は大幅に増加している。これは,兵庫県で新規に提訴された減額給与支給支払等請求事件に係る原告数などが影響したものである。
  2  不利益処分の審査請求については,新規の申立件数,全体の係属数ともに微増である。また,関係教育職員数は、過去の請求事案の一部取下げ等により減少している。
  3  刑事事件訴訟については,全体の係属件数,新規の提訴件数ともにわずかに増加している。
  4  勤務条件に関する措置要求については,件数,関係教育職員数ともに微増である。


1 行政事件

(1)  概要
    表1は,教育職員を当事者とする行政事件訴訟の県市別の係属状況をまとめたものであり,図1は,平成7年以降の行政事件訴訟の係属状況を図示したものである。
 行政事件訴訟が係属している県市は25県市(前年比6県市減),全体の係属件数は96件(前年比6件減),関係教員数は3,702人(前年比1,641人増)である。
 なお,平成15年度中に,新たに提起された行政事件訴訟の件数と関係教育職員数は、53件(前年比同),1,780(前年比64人増)である。
  表2は,行政事件訴訟の係属状況を請求内容別にまとめたものである。件数は,教育職員からの損害賠償等請求の事案が37件(38.5パーセント)で最も多く,次いで,学校事故等で教育職員が被告になっている事案が18件(18.8パーセント),懲戒処分取消(無効確認)請求事案が17件(17.7パーセント)となっている。関係教育職員数でも,その他の事案(北海道の時間外勤務手当等請求事件:1,529人、兵庫県の減額給与支払等請求事件:1,104人など)を除いて、教育職員が原告となっている損害賠償事案が771人(20.8パーセント)で最も多く占めている。この中の主なものには、東京都における入学式等の国旗国歌の実施に係る職務命令による精神的損害の賠償を求めるものなどがある。
  表3及び表4は、これらの訴訟のうち,控訴又は上告されているものの内訳である。
 控訴審については、16件が係属中であり,上告審については,16件が係属中である。
  表5は、行政事件訴訟のうち,教育職員が行った争議行為に関連して,地方公務員法37条等違反を理由として行った懲戒処分の取消(無効確認)請求訴訟の係属状況をまとめたものであり,件数で6件(前年比2件減),関係教育職員数で109人(前年比13人減)が係属中である。

(2)  内容別係属状況
   内容別係属状況は,次のとおりである。
 
 1  懲戒処分取消(無効確認)請求事件
 
 ・ 争議行為に関するもの
6件(北海道) 109人(うち新規4件42人)
 ・ 職務専念義務、職務命令違反及び信用失墜行為等に関するもの
11件(東京,神奈川,愛知,大阪市,北九州市) 40人(うち新規9件13人)

 2  分限処分取消(無効確認)請求事件
 8件(千葉,東京,神奈川,三重,札幌市) 8人(うち新規5件5人)

 3  転任処分取消(無効確認)請求事件
 3件(東京,神奈川,岐阜) 3人

 4  人事委員会の判定取消(無効確認)請求事件
 2件(茨城,名古屋市) 2人(うち新規1件1人)

 5  地位確認等請求事件
 1件(京都市)(新規) 1人

 6  損害賠償等請求事件(教育職員が原告となっているもの)
 37件(宮城,茨城,群馬,東京,神奈川,愛知,三重,京都,兵庫,奈良,広島,大分,札幌市,名古屋市,京都市,大阪市,北九州市) 771人(うち新規23件605人)

 7  学校事故等に係る損害賠償請求事件(教育職員が被告となっているもの)
 18件(埼玉,東京,神奈川,岐阜,大阪,兵庫,広島,大分,さいたま市,京都市,福岡市) 125人(うち新規6件6人)

 8  その他
 
 ・ 謝罪広告等請求上告事件
1件(群馬) 0人(※ 原告、被告とも元教職員)
 ・ 減額給与支払等請求事件
1件(兵庫)(新規) 1,104人
 ・ 公文書非公開決定処分取消請求上告事件
1件(大分) 1人
 ・ 退学処分取消請求事件
3件(東京) 3人(うち新規2件2人)
 ・ 非常勤講師免職処分取消請求事件
1件(東京)(新規) 1人
 ・ 時間外勤務手当等請求事件
2件(北海道,広島) 1,533人
 ・ 辞職承認処分取消等請求事件
1件(岩手) 1人


2 不利益処分審査請求

(1)  概要
    表6は、不利益処分審査請求の県市別の係属状況をまとめたものであり,図2は,平成7年以降の不利益処分審査請求の係属状況を図示したものである。
 平成16年4月1日現在で不利益処分審査請求が係属している県は35県市(前年比同)で,全体の係属件数は433件(前年比16件増),関係教育職員数は271,529人(前年比1,444人減)である。なお,平成15年度中に,新規に提起され事案は45件(前年比11件増)78人(前年比2人増)である。
  表7は、不利益処分審査請求の係属状況を請求内容別にまとめたものであり,例年のように、懲戒処分取消請求事案が,件数で83.1パーセント、関係教育職員数で99.7パーセントと大部分を占めている。
  表8は,不利益処分審査請求のうち,争議行為に係る懲戒処分の取消を求めた審査請求の係属状況をまとめたものであり,21県市で206件が係属しており,関係教育職員数は268,771人である。これは,懲戒処分取消請求事案の中で,件数で57.2パーセント,関係教育職員数で99.3パーセントを占めており,また,審査請求全体の中でも,件数で47.6パーセント,関係教育職員数で99パーセントを占めている。

(2)  内容別係属状況
   内容別係属状況は、次のとおりである。
 
 1  懲戒処分取消請求
 
1  争議行為に関するもの
 
 ・ 勤務評定実施反対ストライキ
3件(山形,埼玉,福岡) 28人
 ・ 昭和41年10月21日いっせい休暇闘争
1件(鹿児島) 894人
 ・ 昭和42年10月26日いっせい休暇闘争
2件(福岡,鹿児島) 258人
 ・ 昭和43年10月8日いっせい休暇闘争
5件(埼玉,福岡,鹿児島,北九州市) 7,280人
 ・ 昭和44日7月10日,11月13日ストライキ
6件(埼玉,高知,福岡,鹿児島,北九州市) 14,468人
 ・ 昭和46年5月20日,7月15日ストライキ
3件(福岡,宮崎,北九州市) 10,687人
 ・ 昭和47年5月19日ストライキ
9件(福島,埼玉,福岡,宮崎,鹿児島,北九州市) 9,029人
 ・ 昭和48年4月27日,7月19日,9月20日ストライキ
8件(福島,千葉,高知,大分,宮崎,鹿児島,大阪市,福岡市) 1,932人
 ・ 昭和49年4月11日,4月13日,5月23日ストライキ
18件(岩手,福島,埼玉,千葉,岐阜,大阪,高知,福岡,佐賀,大分,宮崎,鹿児島,大阪市,北九州市,福岡市) 32,519人
 ・ 昭和50年12月10日,昭和51年3月9日ストライキ
19件(北海道,岩手,福島,埼玉,千葉,岐阜,大阪,福岡,佐賀,大分,宮崎,鹿児島,大阪市,北九州市,福岡市) 21,106人
 ・ 昭和51年4月20日ストライキ
10件(岩手,大阪,福岡,大分,宮崎,鹿児島,北九州市,福岡市) 13,051人
 ・ 昭和52年4月15日,11月24日,12月20日ストライキ
17件(北海道,岩手,埼玉,千葉,和歌山,高知,福岡,佐賀,大分,宮崎,鹿児島,札幌市,北九州市,福岡市) 48,992人
 ・ 昭和53年4月25日ストライキ
10件(千葉,和歌山,高知,福岡,大分,宮崎,鹿児島,北九州市,福岡市) 13,195人
 ・ 昭和54年4月25日ストライキ
8件(千葉,和歌山,高知,福岡,大分,鹿児島,北九州市,福岡市) 1,928人
 ・ 昭和55年4月16日,4月25日ストライキ
10件(埼玉,千葉,大阪,高知,福岡,大分,鹿児島,大阪市,北九州市,福岡市) 450人
 ・ 昭和56年6月4日,10月29日,11月25日ストライキ
17件(福島,埼玉,千葉,大阪,高知,福岡,大分,宮崎,鹿児島,横浜市,大阪市,北九州市,福岡市) 25,759人
 ・ 昭和57年12月16日,12月24日ストライキ
15件(福島,埼玉,千葉,大阪,和歌山,福岡,佐賀,大分,宮崎,鹿児島,横浜市,大阪市,北九州市,福岡市) 17,144人
 ・ 昭和58年5月21日,10月7日ストライキ
7件(千葉,福岡,大分,宮崎,鹿児島,北九州市,福岡市) 23,557人
 ・ 昭和59年10月23日,10月26日ストライキ
18件(岩手,福島,埼玉,千葉,大阪,和歌山,高知,福岡,佐賀,大分,宮崎,鹿児島,横浜市,大阪市,北九州市,福岡市) 26,346人
 ・ 昭和60年4月17日ストライキ
1件(千葉) 4人
 ・ 昭和63年5月24日ストライキ
1件(千葉) 6人
 ・ その他ストライキ
18件(東京,鹿児島) 138人(うち新規2件10人)
2 学力調査実施反対に関するもの
1件(高知) 1人
3 教育課程講習会阻止に関するもの
2件(山形,福岡) 2人
4 指導要領等違反等に関するもの
1件(福岡) 3人
5 指導計画違反等に関するもの
6件(福岡) 12人
6 職務命令・職務専念義務違反・信用失墜行為に関するもの
53件(北海道,埼玉,東京,大阪,広島,高知,福岡,佐賀,大分,鹿児島,大阪市,広島市,北九州市) 1,459人(うち新規3件3人)
7 生徒指導・体罰等に関するもの
5件(大阪,福岡,札幌市,北九州市) 5人(うち新規4件4人)
8 校長着任拒否,校長排斥・執務妨害等に関するもの
13件(福岡) 70人
9 校長・同僚に対する暴行・監禁等に関するもの
8件(千葉、福岡) 20人(うち新規1件1人)
10 研修会の妨害に関するもの
5件(福岡,北九州市) 64人
11 交通違反に関するもの
5件(大阪,広島,高知,熊本) 5人(うち新規4件4人)
12 公職選挙法違反に関するもの
3件(福岡) 5人
13 反戦に関するもの
1件(広島) 5人
14 国旗掲揚・国歌斉唱の実施反対に関するもの
20件(千葉,広島,福岡,北九州市) 155人(うち新規4件13人)
15 無断欠勤に関するもの
9件(千葉,東京,神奈川,愛知,福岡) 13人(うち新規1件1人)
16 学校管理に関するもの
3件(福岡) 8人
17 わいせつ行為に関するもの
7件(北海道,山形,東京,静岡,愛知,沖縄) 7人(うち新規6件6人)
18 その他
12件(福島,千葉,東京,三重,広島,福岡,沖縄,名古屋市,福岡市) 19人(うち新規5件5人)

 2  分限処分取消請求
 
 ・ 免職処分取消請求
6件(東京,高知,岐阜,福岡) 6人(うち新規2件2人)
 ・ 降任処分取消請求
2件(埼玉,東京) 2人(うち新規1件1人)
 ・ その他(適格性欠如審理中)
8件(千葉,東京,三重,京都,大阪,札幌市,名古屋市) 8人(うち新規5件5人)

 3  転任処分取消請求
 57件(秋田,埼玉,千葉,東京,新潟,愛知,広島,愛媛,高知,福岡,長崎,鹿児島,名古屋市,京都市) 888人(うち新規7件23人)

 4  その他
 
 ・ 給与是正・返納処分取消請求事件
1件(東京) 1人


3 刑事事件

(1)  概要
    表9は,刑事訴訟事件の係属状況をまとめたものである。
 平成16年4月1日現在で,刑事事件が係属している県は6県市(前年比2県市減)で,係属件数は10件(前年比2件増),関係教職員は11人(前年比3人増)となっている。なお,平成15年度中に,新規に提起された事案は10件である。

(2)  刑事事件の内容別係属状況
 
 ・ 強制わいせつ事件
2件(神奈川)(新規) 2人
 ・ 傷害事件
2件(和歌山)(新規) 2人
 ・ 業務上過失致死傷事件
4件(宮城,茨城,埼玉,神奈川)(新規) 4人
 ・ 住居侵入事件
1件(埼玉)(新規) 1人
 ・ 恐喝未遂事件
1件(和歌山)(新規) 2人
 ・ 自殺幇助事件
1件(静岡)(新規) 1人


4 勤務条件に関する措置要求

(1)  概要
   平成16年4月1日現在で,勤務条件に関する措置要求が係属している県は10県市(前年比1県 市減),係属件数は149件(前年比4件増),関係教職員数は9,512人(前年比23人増)となっている(表10)。なお,平成15年度中に、新規に提起された事案は84件,105人である。

(2)  内容別係属状況
 内容別係属状況は次のとおりである。
 
 1  給与・諸手当に関するもの
 
 ・ 駐車料金の支給等
5件(愛知)(新規) 5人
 ・ 給与の減額等の取消
1件(山形)(新規) 22人

 2  勤務時間に関するもの
 
 ・ 勤務時間外への適切な措置
84件(愛知,広島,広島市) 3,076人(うち新規54件54人)
 ・ 勤務時間の適正な割り振り
2件(愛知) 17人(うち新規2件2人)
 ・ 休憩・休息時間の保障及び回復措置等
10件(愛知)(新規) 10人
 ・ 研修の要求
4件(千葉,愛知) 4人(うち新規1件1人)

 3  その他
 
 ・ 職専免等の承認
5件(岩手,埼玉,愛知,横浜市) 6,223人(うち新規3件3人)
 ・ 職場環境の改善
25件(愛知,愛媛) 27人(うち新規11件11人)
 ・ その他
13件(千葉,福井,愛知,広島,愛媛,横浜市) 144人(うち新規6件6人)

(初等中等教育局初等中等教育企画課)

 

-- 登録:平成21年以前 --