2.就学校の指定変更[個別事情によらない指定校変更]


(15)学校選択の自由度拡大と学校運営の活性化を目指して(神奈川県横須賀市)

1   制度の概要
 
(1)   導入の経緯
   本市においては、昭和62年の臨時教育審議会の答申以前から、地域の実情に合わせ、指定変更承認地域※を設定するなど通学区域の弾力的な運用とあわせ、個別の理由に対しても基準を明確にし、可能な限り児童・生徒、保護者の『学校を選びたい』という要望に応えられるよう取り組んできた。
 平成13年に実施した「教育に関するアンケート(市民3,000人対象)」の中で、学校選択に関する設問を行い、約62パーセントの市民が「学校を選びたい」と回答した。
 このアンケートの結果を受け、市民参加で策定した『横須賀市教育基本計画』に特色ある学校づくりを進めるうえでの施策のひとつとして学校選択制の導入を位置付けた。
 その後、制度としての具体的な検討を始め、平成15年度入学者から、ブロック内で中学校を選ぶことができる制度を一部地域で試行した。そして、翌年導入地域を拡大し、アンケート等の結果を踏まえ、平成17年度入学者から全市に導入した。
 
主に指定校に隣接した地域のうち、通学距離等を考慮し、教育委員会があらかじめ<指定変更可能な住所><指定変更できる学校>を定めることにより、指定校以外の学校に変更できる地域をいう。

(2)   制度の目的
   学校を選択する側の児童、保護者には、学校や教育に対する意識や関心を高め、併せて選んだという意識を持ってもらうことを期待している。また、選択される側の中学校は、選ばれるようになることで、意識改革が求められる。
 それらが相乗的に作用することで、学校の活性化が図られ、より一層開かれた学校づくりが進むことや、特色ある学校づくりにつながることを期待している。

(3)   制度の概要
   本市における学校選択制は、通学区域制度(学校指定)をそのまま残し、その運用面で児童、保護者のニーズにできる限り応えようとするものである。今までは、住所要件のみで就学する学校が指定されてきたが、この制度により、就学時の学校選択の自由度が高まった。
 選択できる中学校の範囲は、市内を6つのブロックに分け、それぞれのブロック内の中学校とブロック外の隣接している中学校である。
 
<学校選択制の対象となった中学校数及び対象者数>
  中学校数 対象者数
平成17年度 25校 3,745名

2   事務の流れ
 
(1)   手続き
   12月初旬に教育委員会から、住んでいる学区の中学校が指定されている就学通知書が発送される。児童、保護者はその指定に対し、変更の希望がある場合(第2希望まで可)、申し立てをすることになる。したがって、指定校を選択する場合は、手続きを必要としない。申し立てをする際には、「指定変更申立書」、「就学通知書」及び印鑑を持って、教育委員会または市内の各行政センター(9ヶ所)で手続きをする。

(2)   各中学校における学区外からの受入枠
   各中学校には受入可能な人数枠(20人~40人)を設定しており、希望者がこの受入枠を超えた場合は公開抽選で受入者を決定する。
 公開抽選になって、受入枠に入れなかった場合は、待機の登録をするか、住んでいる学区の中学校に就学することになる。待機の登録は、私立中学校への進学や引越しなどで登録した中学の人数が減った場合に受入れるようにするものである。
 なお、学区内の児童や個別の理由で指定変更が認められる児童は、優先して全員が就学できる。
 
<平成17年度スケジュール>
6月上旬~7月中旬 保護者説明会の開催
9月~11月 学校公開
12月初旬 就学通知書送付
12月初旬~15日(木曜日) 指定変更申し立て手続き受付期間
12月19日(月曜日) 就学校決定(第1次)
*抽選がない場合はこの時点で決定
12月26日(月曜日) 公開抽選(受入枠を超えた学校のみ)就学校決定(第2次)
*抽選結果は、該当者に郵送。
1月上旬 指定変更承認通知書の送付
2月中旬 就学説明会

3   実績
   平成17年度では、対象者3,745人のうち8.8パーセントに当たる330人が他学区の中学校を選択した。(平成16年12月22日現在)受入枠を超えた中学校は2校(岩戸中学校・久里浜中学校)あったが、受入者の増減調整の結果、希望者全員を受け入れた。

 
  対象人数 選択人数 備考
平成15年度 484人 23人(4.8パーセント) 一部地域で実施(1ブロック)
平成16年度 1,162人 94人(8.1パーセント) 一部地域で実施(2ブロック)
平成17年度 3,745人 330人(8.8パーセント) 全市で実施(6ブロック)

4   評価等
 
(1)   アンケートの実施
   全市導入後の検証、課題の整理を行い、よりよい制度運営を検討するため、選択した側の児童とその保護者、小学校・中学校教員及び前年度に学校選択を行い、1年が経過した中学1年の生徒、約4,000人を対象に実施し、3,748人(94パーセント)の有効回答を得た。

(2)   課題等
   学校選択制の実施から4年が経過し、児童、保護者及び学校の制度に対する受け止め方が変化してきている。それも、制度を前向きに捉えていることを感じる。
 ただ、まったく課題がないわけではなく、アンケート結果などからも、制度をより充実したものとするための課題が見えている。
 第1に、学校選択に不可欠な情報提供の充実がある。自分たちの責任で学校を選ぶ以上、行きたい学校を決めるための資料が充実しないと、児童、保護者に「選ぶ」という意識が定着しない。
 第2に、教職員の意識改革である。「選ばれる学校」として、その特色づくりがこの制度の狙いのひとつであるが、その取り組みには、学校によって温度差がある。
 また、将来的に検討しなければいけない課題として、中学校の選択の範囲及び小学校への制度導入がある。このように、改善すべき課題はあるが、子どもたちにとって、学校選択制が、親子で将来のことを話す機会をもつことができ、自分のやりたいことができる学校、自分に合う校風の学校が「選べたこと」で生き生きと学校生活を送ることができるきっかけとなることを期待している。

本事例の問い合わせ先
横須賀市教育委員会 管理部総務課
電話 046-822-9751


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