平成29年度「地域とともにある学校づくり」推進フォーラム(東京会場)実施報告

1 大会テーマ

「轍」

2 主催

文部科学省

3 日時

平成29年12月8日(金曜日)午前10時30分~午後4時30分

4 会場

文部科学省 講堂

5 内容

(1)午前10時30分~午前11時45分 プチ熟議

 希望者を対象とした”プチ熟議”を開催しました。
 テーマは、前半「子供たちが未来に期待を持ち、”夢”や”志”を抱いて歩んでいくために、何を大切にしていけばいいのか」、後半「そのためにはどのような取組・仕掛け・改革等が必要か」とし、限られた時間の中ではありましたが、様々な立場の人々が「一つの目標」に向かって熟慮と議論を繰り返しました。 (7名×10グループ、参観者約130名)

(2)午後1時00分~午後1時30分 意見発表

 CSの卒業生4名に登壇していただき、地域の方の存在や関わり、そして学校と地域の連携・協働の必要性について、考えたことや感じたこと、「コミュニティ・スクールだったことの意味がわかった」ということ等について話をしていただきました。
 【概要】
・学校での教育活動に参加していただいている方々が、登下校時の見守り活動をしてくださっており、困った時には助けを求めることができるという安心感につながった。
・様々な場面で地域の方から声をかけていただき、”自分の成長を喜んでくれる人が大勢いる”ことが、地域への愛着となっていった。
・友人との会話の中で、地域に関する話題が増えていった。
・一般的に小中学生、とりわけ小学生は”学校→家庭→学校→…”といったサイクルで生活することが多いと思うが、学校や家庭で学ぶことだけがすべてではなく、自分の場合は地域コミュニティの中で学ぶことも多かった。
・地域の方々とともに活動する中で、様々な可能性を提示していただいた。それがコミュニティ・スクールの魅力の一つであるし、そのことが今の自分の進路選択に役立っている。
・学校周辺の清掃活動やボランティア活動、地域の団体を招いての芸術鑑賞会など、地域の方々と共に活動してきたことが、現在、様々な活動に携わることができていることにつながっている。
・地域の方々に育ててもらった自分が、今度は地域の人として子供たちとともに活動をしていきたい。そして、今の子供たちが大きくなったら、自分と同様に地域の人として活動してほしい。
・地域の方々とのつながりは強みであり、必ず自分を助けることにつながっていく。そのつながりを小中学生のころから作れたことは素晴らしいことだと感じている。
・当時はコミュニティ・スクールであることを何も感じなかったが、大学生となった今、役立ったことが多く、非常に貴重な経験をしていたと思っている。

(3)午後1時30分~午後2時00分 講話

 「なぜ、社会に開かれた教育課程なのか?」をテーマとして、兵庫教育大学教職大学院教授の小西哲也氏(文部科学省CSマイスター)から講話をいただきました。
 【講話の概要】
・コミュニティ・スクールの教職員は、そうでない学校の教職員に比べ「地域の学校支援は教育水準向上に効果がある」と捉える割合が多い。
・大人に学ぶ機会が多いと感じている子供たちが、「大人になったら地域のために何かしたい」と回答した割合は82パーセントにのぼる。
・大人の学びこそが学校改革のカギであり、当事者意識をもつ基盤となる。
・学校は地域の教室であり、授業は地域の文化である。
・地域とともにある学校への転換は、次世代の地域創世の基盤を作ることにつながる。

(4)午後2時10分~午後4時20分 パネルディスカッション

テーマ1「子供たちが創る30年後の日本」
テーマ2「どうすれば子供たちに明るい未来が残せるのか」

〇コーディネーター
 西 孝一郎 氏(京都光華女子大学 准教授、文部科学省CSマイスター)
〇パネリスト
 佐藤 吉郎 氏(福島県大玉村教育委員会 教育長)
 小玉 義明 氏(新潟県見附市立見附特別支援学校 校長)
 吉岡 正志 氏(奈良県奈良市立三笠中学校学校運営協議会 会長)
 志村 友規子 氏(神奈川県横浜市立東山田中学校学校運営協議会 副会長)
 CSの卒業生4名

 コミュニティ・スクールの仕組みによって、大人の「思い」が子供たちにどのように伝わっているのか。

 パネリストの「発言」や「思い」をふまえ、CSの卒業生から、自分なりに感じていることを参加者に伝えていただきました。
 目標やビジョンを共有したうえで進んでいくCSの取組は、「轍」を作るだけでなく、多くの人(当事者)が有機的につながります。そして、子供たちが地域に戻る、地域に貢献するサイクルに変化していきます。

【パネルディスカッションの意見概要】
 <テーマ1 STEP1「Vision」~描いている30年後の姿~>
・現在、”心の教育”、”あいさつ運動”、”小さな親切運動”などの取組を推進しており、これらが結実した姿として、名実ともに日本一美しい村になっている姿を描いている。
・世界遺産が近く歴史ある地域の30年後として、今の子供たちが郷土愛に目覚め、地域社会の中核を担う存在になっている姿を期待している。
・子供たちには、目標達成のために自分と向き合い、幅広い選択肢から自らの力で選択し、自分の選んだ道に責任が持てる人に育ってほしい。
・ふるさとの地域で、自分らしく生きる人になってほしい。また、そのためにも地域社会が、障害のある子供たちの自立と社会参加、社会貢献を支える存在であってほしい。

<テーマ1 STEP2「Passion」~その思いの原動力は~>
・将来を予測することが困難な今、これからの時代をたくましく生き抜いていくための「生きる力」を身に付けさせなければならないと考えている。そのために、地域の教育資源を生かしながら、教職員では担いきれないような教育活動や体験を、子供たちに提供しなければならない。
・”学校づくり”は”地域づくり”であると考え、その同時達成を目指している。
・地域の方々の学校に寄せる熱い思いから、”いい地域はいい学校を育てる”し”いい学校はいい地域をつくる”と考えている。
・子供たちは学校を卒業後、地域で生活する人生の方がずっと長いわけで、様々な支援を必要とする子供たちを真ん中にして、保護者や地域、関係機関と連携・協働しながら、子供たちの地域生活を支える仕組みを作っていきたいと考えている。
・30年後の未来を支える子供たちは「未来」そのものである。今を生きる私たち大人には、未来につながる今を作っていくことが責任である。これまでいただいてきたたくさんの”恩”を、次の代につなげていくことが自分の役割である。

<テーマ2 STEP3「Mission」~”共有”することの難しさ~>
・地域の方々が相互にかかわりあう場を意図的に設定し、共有を図っている。
・コミュニティ・スクール委員会を中心として、フォーラムや各種団体を巻き込んだ新たな学校行事を開催している。
・置かれている立場によって、目標に向かう進め方や景色は違って当たり前であるが、目標は同じであることを忘れないことが大切。
・芯はぶれずに外側は柔らかく。周囲の声を聞きながら軌道修正できるような雰囲気、環境づくりを大切にしている。
・学校運営協議会において、毎回、教職員や生徒会メンバーとの意見交換を行い、”思いを共有”できるようにしている。
・リーダーは”プレイング・マネージャー”でなければならない。ピラミッド型の組織ではなく、フラットなサークル型。リーダーは円の中心にいて、率先垂範を心がけなければならない。
・どのような情報を、誰と共有するかが難しいと感じている。そのため、関係者が集まるネットワーク会議を設定し、情報の共有を進めている。
・学校からの情報発信が重要と考え、各種たよりやHP、各種行事を充実させることで、幅広く情報発信を行っている。

<テーマ2 STEP4「Innovation」~CSの仕組みを生かして~>
・コミュニティ・スクールでは、子供たちを軸に、教職員、保護者、地域の方々が同じ目的を共有することができる。これを強みとして生かすことが重要。
・学校運営協議会が全体をコーディネートしながら、そして、地域学校協働本部と一体となって活動することが、より充実した学校運営の実現につながっていると考える。
・コミュニティ・スクールを基盤とした小中一貫教育を進める中で「中学校3年生の姿に、みんなが責任を持とう」が合言葉になっている。適切な役割分担のもとで学校、家庭、地域の行動指針を作成し、自己責任と当事者意識を持ちながら取組を推進することができている。
・コミュニティ・スクールの仕組みにおいて、学校が支援していただくだけでなく、学校運営協議会の委員となった方にとっても、委員それぞれの活動が充実していくことなどのメリットがあることを知っていただきたい。
・コミュニティ・スクールでは、多面的な角度から学校の在り方を考えていくことが可能になり、また、校外の資源を生かした教育活動の展開も可能となる。実際に、ネットワーク会議への参加者が、年々増加してきている。
・コミュニティ・スクールを活用することで、「社会に開かれた教育課程」に基づいた教育活動を積極的に展開できると考えている。

(5)午後4時20分~午後4時30分 総括

 文部科学省初等中等教育局の木村参事官が、総括を行いました。
  平成16年に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正によりコミュニティ・スクールが制度化されて12年間が過ぎました。この間を振り返ってみますと、国(文科省)も様々な議論を重ねてきましたが、何よりも、全国各地で多くの皆様が、素晴らしいコミュニティ・スクールを作り上げてこられました。このことは、これから新たにコミュニティ・スクールに取り組もうとする人が歩みやすいような「轍」になっているのではないかと感じています。
  また、今の世の中は、変化の激しい予測が困難な時代となっています。10年後、30年後に向けて歩みを進めている中で、「不安」を感じている人も多いのではないでしょうか。それは子供たちも同じです。『子供たちには不安よりも大きな「期待」を抱かせてやりたい。』という思いは、CSの卒業生やパネリストの方々をはじめ、参加者の皆さんも共有していただけるのではないでしょうか。
 子供たちが「大きな期待」を抱きながら迷わずに前に進んでいけるようにするためにも、私たち大人は子供たちに「夢」と「愛」を植え続けなければなりません。そうすることで子供たちは、自分の歩んできた道に「未来へと続く小さな轍」ができていることに気づき、自信をもって新たな一歩を踏み出していくことができると考えています。
  「夢」と「愛」を関係者全員で共有することは、子供たちの「志」や「目標」、そして「明日の笑顔」につながります。今後とも、ぜひ、コミュニティ・スクールの仕組みを、各地域にある「轍」に生かしていただきたいと思います。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付 運営支援企画係

(初等中等教育局参事官付 運営支援企画係)