コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

平成19年度コミュニティ・スクール推進フォーラム事例発表(岩手県岩泉町立岩泉中学校)

学校名 岩泉町立岩泉中学校
所在地 岩手県下閉伊郡岩泉町岩泉字一ツ石4
電話番号 0194-22-2154

1 「学校運営協議会」を導入した理由と経過

 本校は、全校生徒数149名、6学級(特別支援学級含)の小規模な中学校であるが、町内8中学校の中では最大の生徒数である。
 昭和40年代前半は、約600名の生徒数があったことを考えると、過疎化・少子化が顕著に表れている地域と言える。
 学区(地域)は、岩泉小・二升石小・浅内小の3小学校区で構成され、かなり広範囲にわたっている。北部北上山地の山あいに開けた自然豊かな環境にある。全国的に有名な観光名所となっている龍泉洞が学区の北部にある。
 以前から保護者及び地域住民の教育に対する関心は高く、学校行事やPTA活動に積極的に参加する保護者が多い。

 生徒は、素直で明るく、学習や運動(部活動)に積極的に取り組み一定の成果を挙げている。学校内外における問題行動等は皆無である。地域全体も同様、犯罪がほとんどなく穏やかな住民気質を窺い知ることができる。

 保護者や地域住民の理解と協力を得ながら教育活動を営んでいる学校ではあるが、地域住民に対する学校からの情報発信または地域住民の学校教育活動への参画、いわゆる「開かれた学校づくり」という点では、十分と言えるものではなかった。

 そのような中、岩泉町教育委員会が、文部科学省が推奨し、全国の公立学校に展開しようとしていた「コミュニティ・スクール」に着目した。そして、岩泉小学校・岩泉中学校の2校が、平成17、18年度の2年間、文部科学省の研究委託を受け、コミュニティ・スクール事業を推進することとなった。

2 岩泉中学校のコミュニティ・スクールの特色

 中学校は、部活動等で時間的な制約があり、特色あるダイナミックな活動を展開するには思い切った教育課程の編成に着手しなければならない。
 特に、本校は保護者や地域住民の全面的な支援を得ながら、熱心に部活動に取り組んでいる学校でもある。生徒の多くは、朝練習(時期的)・そして夕方遅く(午後7時に終了)までの練習といった日常生活を送っている。また、週休日にあっても練習試合や大会への参加等活発に行っており、教員も同様その指導・引率でかなり多忙である。

 コミュニティ・スクールを推進するにあたって、まず重視したのは地域住民の「経営参画」である。
 学校運営協議会に対する学校運営計画の説明及び承認においては、計画または学校生徒の現状に対して、地域住民の代表としての10人の委員からさまざまな意見・提言をいただくこととしている。年間5回の会議を計画しているが、それ以外にも逐次、各委員に情報を提供し、意見・提言をいただくこととしている。

 次に、地域住民と学校及び生徒との「協働」である。
 以前から本校は福祉活動に積極的に取り組んでおり(スノー・バスターズ、介護ボランティア等)、さらにここ数年は地域活動にも積極的に参加している。町主催の「未来を育てる植樹祭」への1年生全員参加。老人介護施設での合唱披露、歳末助け合い芸能祭への出演。1月厳冬期に行われる「みずまつり」では、2年生が立志式・龍舞行列と10年以上にわたりまつりの主役となって参加している。

 さらに、昨年度から「地元学」の一環として学校隣接の畑(借地)に「ふれあい花壇」[ふれあい農園」を生徒の取り組みよりに作成し、そこに地域の数人の高齢者(花づくり、畑づくりのプロ)をゲストティーチャーとして招き生徒との交流を図っている。
 今年度は、地域住民から(保護者でもあるが)図書ボランティアの申し入れがあったり学校からの働きかけで、豊富にある校地内樹木の剪定を行う「環境整備隊」を公募し、編成している。

 このように、岩泉中学校のコミュニティ・スクールの特色は、保護者・地域住民の学校及び生徒への積極的な支援、生徒の地域活動への積極的な参加を、本校(中学校)の実状に応じて、無理なく双方向の関係がコミュニティ・スクールの推進によって形成されてきているということである。

3 過去の課題と克服方法

 (1 学校運営協議会を導入した理由)でも触れた通り、学校及び生徒と保護者・地域住民との一定の双方向の関係が確立されている本校ではあるが、学校からの情報発信等いわゆる「開かれた学校づくり」が意図的に推進されていたかという点で、不十分さは否めない。
 さらに学校評価という面では懇談会(学年・学級懇談会、地区懇談会)等で断片的に、それも口頭で把握する程度であった。学校評議員制度も導入していなかった。

 その改善方法として、情報発信の面ではまず学校通信の定期発行(毎週金曜日)がある。以前は、保護者にのみ配付していたものを、各地区行政連絡員並びに班長の協力をあおぎ学区内全戸回覧をすることとした。内容について地域の方々から、反応いただくこともしばしばある。
 次に、学校行事や授業参観への地域住民への参加案内である。
 体育祭や文化祭などの学校行事はもちろんのこと(以前から関心をもって来校する地域住民が多数あった)、授業参観を週休日に開催し、保護者の多数の参加と合わせて、地域住民にも参観できる体制を整えた。もちろん、学校運営協議会の委員にも案内を出しているが、毎回出席率は高い。これも、情報発信のひとつととらえている。

 学校評価については、一昨年より保護者対象に「学校評価アセスメント」を年2回実施し、集計結果をPTA等の機関会議、または通信等で保護者に公表している。
 保護者の中には、情報が不十分なため、回答ができないとの反応もあったりで、ましてや地域住民の評価となると、困難さがある。

4 コミュニティ・スクールによる成果と携わっているものとしての実感

 成果としてあげられる1点目は、学校により一層の「開かれた学校づくり」の機運が高まってきたということである。前述の学校通信の定期発行に加え、学年・学級通信、進路通信、部活動ごとの通信、進路通信等々、ほとんどが保護者対象ではあるが、以前より頻度が高まり、教職員スタッフにも変容が見られてきた。
 地域行事等に進んで参加するスタッフも多く見られる。

 2点目は、地域住民の学校への関心が高まってきているという実感である。校外生活における生徒の動向が、瞬時に情報として学校に寄せられるようになったし、学校を気軽に訪ねてくる地域の方も増えてきた。(それでも「学校の敷居は高い」との意識は根強くあるようだが)。中には、休日や早朝・夕方などのちょっとした時間に、校地内の草取りをしたり、校庭の整備をしたりという場面も見られるようになった。

 何よりの成果は、学校運営協議会の役割と機能である。
 協議会委員は、昨年度までの2年間委託事業を推進した際の委員とほぼ同じメンバーである。初めは、学校運営協議会の何たるかも理解できず、また学校の現況もよく周知できていないことから、やや消極的な参加態度に見えたが、会合を重ね、シンポジューム(2回開催)や、先進地視察を経験する中で、次第に客観的・建設的な提言をいただけるようになった。
 今年度から、町の指定(3年)を受け、正式に委員として任命(任期:2年)いただいたこともあり、なお一層「学校経営への参画」が期待されるところである。

5 今後に向けて(検討課題、取り組み予定等)

 以下の5点を今後の課題としてとらえている。

(1)学校運営協議会の立場と役割をより明確にし、学校経営への参画を客観的かつ主体的なものとして位置づけること。そのための、学校からの情報発信の方法に工夫と改善を加えること。
(2)生徒と地域住民との「協働」の場と時間を確保すること。「岩泉に生まれ、暮らしながらも、岩泉をあまりにも知らない生徒」が多い中、地域住民(特にも高齢者)との共同作業並びに交流を通して、「地元学」へと結びつけていく構想並びに計画化を図り、特色を創り出していくこと。
(3)地域住民が一定の情報を得、学校を評価できるまでのプロセスを策定すること。
(4)校内の組織体制と、コミュニティ・スクール組織の連動を図り、教職員スタッフ一人ひとりの役割を明確にし、意識の高揚を図ること。
(5)町当局(町教委)や岩泉小学校との連携をより密に図り、情報の交換と活動の交流を図ること。

6 おわりに

 本校は、以前から地域に見守られそして支えられて学校教育活動が行われてきたととらえている。その基盤のうえに、さらにコミュニティ・スクールとして制度化することにより、効率的かつ効果的な学校運営が展開されることをねらいとしている。
 人事権を始め、いくつかの課題を抱えてのスタートとなったが、「生徒のために」「生徒にとって」を常に念頭において実践を積み重ねていきたい。

-- 登録:平成23年11月 --