コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

平成19年度コミュニティ・スクール推進フォーラム事例発表(山口県萩市立田万川中学校)

学校名 萩市立田万川中学校
所在地 山口県萩市大字下田万1070番地
電話番号 08387-3-0556

1 なぜ「学校運営協議会」制度を導入したのか(個別の事情等)

学校運営協議会設置の背景

●統合中学校の学校観と新校舎建築の基本コンセプトを具現化する新しい学校運営システムとして、学校運営協議会の導入を図る。

(1)統合中学校の学校観(←地域における協議を経て)

・学校は、子どもの夢や希望を育む場である。
・学校は、生徒と教師だけのものではなく、保護者や地域住民もともに学び育つ場である。

(2)新校舎建築の基本コンセプト

●自ら学ぶ環境としての学校

→全ての教科に専用教室を配置し、各教科の専門性を追求するとともに、生徒・教師の幅広いニーズに対応できる学校とする。(教科教室、学習メディアゾーン)

●生徒の生活環境としての学校

→ホームベースは、生徒が楽しく、安らげる空間構成とするとともに、敷地環境を生かしながら、自然を五感で感じ取れる学校とする。(心の教室)

●地域の生涯学習の拠点としての学校

→地域への施設開放と学校運営の共存が可能な校舎構造とし、乳幼児から高齢者までが楽しく集える学校とする。(地域開放図書館、地域研修室等)

(3)3つのゾーンと開かれた学校づくり

3つのゾーンと開かれた学校づくり

中学校統合及び学校運営協議会設置の経緯

□平成3年3月 田万川町基本計画に中学校統合の必要性が謳われる。
■平成9年8月 学校教育懇話会が設置され、統合協議が本格的に始まる。
□平成11年7月 町内40会場で、中学校統合に向けて地区懇談会を開催する。
■平成11年10月 中学校統合推進委員会が設置される。
□平成13年6月 新校舎建築計画指導を東洋大学長澤悟教授に依頼する。
■平成13年10月 中学校建設研究委員会が設置される。
 [開かれた学校専門部会・学習活動専門部会・学校建築専門部会]
■平成15年4月 田万川町立田万川中学校を開校する。(多磨中と小川中の統合)
□平成15年9月 新校舎建築工事に着手する。
◆平成16年6月 「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正
■平成17年1月 新校舎の竣工式を行う。田万川町教育委員会からコミュニティ・スクールの指定を受ける。
□平成17年3月 萩市との合併により萩市立田万川中学校となる。
■平成17年4月 平成17、18年度コミュニティ・スクール推進事業調査研究校(文科省)の指定を受ける。
■平成18年4月 萩市教育委員会からコミュニティ・スクールの指定を受ける。 

2 自校のコミュニティ・スクールの特色(ここが他校とは違う点、ここは汎用性がある点等)

■他校とは違う点

(1)学校運営協議会が学校評価の実施内容・方法等を検討・実施し、学校改善の提言を行う。

 学校評価の実施内容・方法等について学校運営協議会で協議を重ね、学校評価アンケートを実施。調査対象は生徒62名、保護者56名、教職員12名、地域住民166名の合計296名。学校運営協議会はその結果を踏まえ、学校改善に向けた提言を発表した。

(2)学校運営協議会委員が研究授業に参加し、教職員と研究協議を行う。

 全教職員が学校ボランティアの参加・協力による研究授業を実施。学校運営協議会委員も研究授業を参観し、授業後、授業改善に向けた研究協議を行っている。

(3)家庭・地域社会への貢献に努める。-生涯学習支援と子育て支援-

●生涯学習支援の一環として、保護者・地域住民を対象に、夏休み、本校教職員が指導者となって、「中学校の授業体験」(地域開放学習講座)を実施している。
●子育て支援の一環として、「教育を考える懇話会」「教育講演会」を開催し、保育園や小中学校の保護者、地域住民等の学習の場を提供している。また、「子どもの生活リズム向上を図る地域ぐるみの運動」として、「早寝・早起き・朝ごはん運動」を展開。「朝飯前だ!朝食大作戦!!」と称して、生徒・保護者・地域住民による朝食調理実習や簡単朝食レシピ集の作成・配付に取り組んでいる。

(4)地域住民による本校施設の利用促進を図る。

●現在、「脳をよみがえらせる学習会」「編み物教室」「木版教室」等、10の生涯学習団体が地域開放ゾーンの各施設を連日、利用している。また、生涯学習の活性化に資するため、生涯学習推進懇話会や生涯学習団体の作品展示等を行っている。
●図書館は土曜日・祝日以外の毎日9時~19時の間、開館しており、地域住民へも閲覧・貸出を行っている。また、ボランティア団体が乳幼児へ絵本の読み聞かせを行ったり、月に1回図書館だよりを地域全戸に配付したりして、図書館の利用促進を図っている。

■汎用性がある点

(1)学校運営協議会を年間10回、19時~21時に開催し、各種事業の内容検討及び進捗状況等について協議している。
(2)「学校へ行こうの日」(地域参観日)を開催し、生徒・保護者・地域住民の授業評価の結果から学習指導に関するニーズを把握。また、学校評価や「教育を考える懇話会」等において、保護者・地域住民の意見・要望等の聴取に努め、事業に反映させている。
(3)学校だより「田万川中だより」を月に1回発行し、地域全戸に配付している。

3 過去の課題と克服方法

過去の課題と克服方法

●3つの重点プロジェクト

A 豊かな学びの教育推進プロジェクト

豊かな学びの教育推進プロジェクト

B 心に響く道徳教育推進プロジェクト(平成19、20年度文部科学省研究指定校)

心に響く道徳教育推進プロジェクト(平成19、20年度文部科学省研究指定校)

C 家庭・地域教育力の活性化推進プロジェクト

家庭・地域教育力の活性化推進プロジェクト

4 コミュニティ・スクールによる成果と携わっているものとしての実感(手応え)

●生徒意識調査から

 平成17年5月と平成18年10月の生徒意識調査を比較すると、「学校生活が楽しい」と回答した生徒が74パーセントから95パーセントへ、「家庭生活が楽しい」については77パーセントから87パーセントへ、「自分のふるさとが好き」については60パーセントから74パーセントへと上昇した。

●授業評価から(4点満点)

 生徒による評価では、「発問や説明の丁寧さ」が3.5から3.7へ、「授業のねらいの明確化」が3.3から3.7へ、「学習意欲を引き出すための工夫」が3.3から3.6へ、「授業内容のわかりやすさ」が3.4から3.6へと上昇した。その結果、「授業を受けての充実感」が3.2から3.5へ、「学習への集中力」が3.4から3.6へ、「学習への積極性」が2.9から3.4へと高まった。

●子どもの生活リズム向上を図る地域ぐるみの運動から

 「毎日欠かさず朝食を食べている」生徒の割合が、76パーセント(平成18年6月)から86パーセント(平成19年4月)へと上昇し、朝食摂取率は98.1パーセントにまで向上した。また、本校と保育園・小学校の200家庭を対象とした調査では、「朝飯前だ!朝食大作戦!!」によって、朝食のメニューに変化があった家庭は全体の40パーセントを数え、また、36パーセントの家庭で朝食に対する意識が変わった。

●地域住民による本校施設の利用状況から

 生涯学習団体による平成18年1月~12月の本校施設利用回数は242回、利用者数は1,890名であった。また、同期間の本校図書館利用者数は14,252名で、そのうち本校生徒が52パーセント、地域住民が39パーセント、小学生が5パーセント、乳幼児が4パーセントであった。

●教職員・保護者・地域住民の意識の変容から

 教職員の意識はこの5年間で大きく変容し、今では保護者・地域住民との連携・協働に極めて熱心である。また、「地域の子どもは地域で育てる」という教育風土が、家庭・地域社会に醸成されつつあることも事実である。

5 今後に向けて(検討課題、取組予定等)

●より広範囲に保護者・地域住民のニーズを把握する方法を検討する。また、学校運営協議会委員が生徒・保護者・地域住民と直接対話する場の工夫を図っていきたい。
●保護者・地域住民の一層の参加・協力を得るため、学校ボランティア等をコーディネートしていくシステムの構築を検討していきたい。
●保護者・地域住民から愛される地域密着型の教育を展開していきたい。

-- 登録:平成23年11月 --