コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

平成19年度コミュニティ・スクール推進フォーラム事例発表(熊本県宇土市立網田小学校)

学校名 宇土市立網田小学校
所在地 宇土市下網田町1842
電話番号 0964-27-0006

1.なぜ「学校運営協議会」制度を導入したのか(個別の事情等)

(1)児童の実態から

 総じて明るく素直で、あいさつもよくでき、男女を問わず仲がよく運動好きの子が多い。一方、粘り強さや耐性の不足、長いメディア視聴時間、野外で遊ばない子どもの増加、家庭で手伝いをする児童の減少、奉仕体験や異年齢・異世代間交流の不足、多様な文化体験活動やスポーツに触れ親しむ機会の減少などが見られた。

(2)本校教育の推進から

 保護者世代の本市中心部への流出等により児童が激減している地域の現状から、「魅力ある学校づくりを通して、過疎化防止と地域の活性化を」といった大きな期待と負託が本校に寄せられ、平成17年度から文部科学省より研究開発学校としての指定を受け、小中一貫教育に取り組んでいる。小中学校の教師交流や新設教科の設置など、新たな教育を推進していくにあたり、これまで以上に保護者・地域住民への情報発信と連携が必要とされた。

(3)地域の実情から

 本校区は、網田教育の里づくり推進会議、児童通学合宿実行委員会、みんなの寺子屋活動など、地域における子育てに関するボランティア活動が盛んであり、学校教育への関心が高く協力的な地域である。日頃の交流を通して、「我が子が卒業すると学校は疎遠になってしまうから、学校・家庭・地域のつながりを密にして欲しい。」、「学力の充実と逞しく生きる力を育んで欲しい。」、「郷土を愛し、網田に生まれ網田小学校で学んでよかったと思える子に育って欲しい。」・・・等、地域の思いが伝わりコミュニティ・スクールを推進していく上での環境が整っていた。

2.本校のコミュニティ・スクールの特色

(1)学校運営協議会にて、保護者や地域住民の意向を取り入れた協議を深め、効果的な実施体制の構築を図る。
(2)地域の教育力を生かした6つのコミュニティからなる「いきいきプラン」を実践し地域に信頼される、開かれた学校づくりを推進する。
(3)保護者や地域住民から信頼される開かれた特色ある学校づくりの観点から、学校運営協議会による外部評価を集約し、また、その結果と以後の改善の具体策を公表することで、学校としての説明責任を果たしながら、保護者や地域との更なる信頼関係の確立を図る。

3.過去の課題

(1)本校は平成17年度にコミュニティ・スクール推進委員会を構成し、協議を重ねてきた。その結果次のような課題が明らかになってきた。
○学校運営協議会と家庭・地域・教職員の連携の在り方
○校区のボランティア組織との連携の在り方
○学校運営協議会をはじめ学校経営に関する評価方法の研究
○個人情報の保護や、児童の安全確保の推進
○学校・家庭・地域の連携や地域人材活用の推進
○学校運営協議会における経費面の確保

4.克服方法

(1)学校・家庭・地域の役割の明確化

○学校
 豊かな心、確かな学力、自己表現力、健康と体力
○家庭
 しつけ、家族の一員としての役割分担、早寝・早起き・朝ご飯
○地域
 遊ぶ力・学ぶ力(耐える力や段取り力、コミュニケーション能力等)

(2)地域が望む網田の子ども像の設定。

めざす子ども像
○好奇心を持って意欲的に取り組む子ども
○自分の考えを自信を持って表現できる子ども
○夢に向かって努力する子ども
○最後まで粘り強く取り組む子ども

郷土を愛し、志を持って社会の中で活躍する心豊かでたくましい人間

(3)情報(課題・目標・内容)の共有化

 学校運営協議会制度について、保護者会をはじめ婦人会、老人会、嘱託会、振興会等、機会ある毎に説明を行うなど啓発に努めた。地域へは学校通信、コミュニティ通信等を通して啓発に努めた。

(4)6つのコミュニティの実践

 地域の子育てボランティアによる行事・活動と学校の取り組みを融合させて、6つのコミュニティに整理・統合した。
1.地域啓発コミュニティ
2.図書、NOメディアコミュニティ
3.地域啓発コミュニティ
4.文化体験コミュニティ
5.スポーツコミュニティ
6.学校地域安全コミュニティ。

(5)個人情報の保護

 宇土市学校運営協議会規則第18条に「委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。委員を退いた後も、同様とする」と規定されている。
 そこで学力向上対策として導入したアシスタントティーチャー制においては、ボランティアの保護者の方々が直接個人情報に触れる機会が多いため、個人情報保護の観点から、学校運営協議会委員に準ずるものとして説明し、理解を得ている。

(6)学校評価の取組

ア 学校評価の考え方
 保護者や地域住民から信頼される開かれた特色ある学校づくりの観点から、学校運営協議会による外部評価を集約し、また、その結果と以後の改善の具体策を公表することで、学校としての説明責任を果たしながら、保護者や地域との更なる信頼関係の確立をめざす。

イ 本年度の学校評価
 自己評価、外部評価を行い学校改善に向け、学校評価システムの確立をめざし取り組んだ。評価結果は集計・分析し、対応策を示し、学校、家庭、地域へ結果を公表した。

ウ 網田小学校学校運営協議会規則第9条に「協議会では、学校の自己評価に対して、外部評価を行う。」と規定した。

(7)学校運営協議会の経費面の確保については、宇土市学校運営協議会規則で、委員の(報酬)として規定され、必要な予算措置を講じていただいた。

5.コミュニティ・スクールによる成果と課題

(1)成果

ア 学校運営協議会について
  • 学校運営協議会を定期的に開催したことにより、運営協議会委員の方々を通して家庭・地域の声を幅広く収集でき、学校運営の充実・改善に生かすことができた。
  • コミュニティ通信の発行により家庭・地域の課題解決意欲が高まった。
  • 三者共同の一貫した子どもたちを育てる方針を明確にできた。
イ 「いきいきプラン」について
  • 6つのコミュニティの取組は、学校の敷居を低くし、誰もが学校に来やすい雰囲気をつくることができた。
  • 6つのコミュニティの年間計画を作成したことにより、計画に従って確実に推進することができた。
ウ 学校評価について
  • 評価項目の精選、評価の算定方法の明確化、アンケート結果の集計・考察等を通して、学校改善に生かす学校評価システムが構築できた。学校評価の網田スタイルが見えてきた。
  • 保護者アンケート・児童アンケート、学校運営協議会による外部評価などを受けて、教職員に、地域の声を生かして学校改善をはかろうという意識が深まった。

(2)課題

ア コミュニティ年間計画・学校評価年間計画の改善に努め、より充実した三者共同の活動にしていきたい。また、各コミュニティは地域のボランティアの方々に支えられておりコミュニティサポーターを幅広く募るとともに地域の子どもは地域で育てる意識の高揚に努めていきたい。
イ アシスタントティーチャー制を今後長く継続していくために、指導内容や方法、事前打ち合わせ、活動日や時間設定の在り方などを工夫しながら、誰でも気軽に参加できる体制づくりを構築する。更にアシスタントティーチャーとしての参加・協力を広く募り、特に高齢者の方々の豊かな知識と経験の導入に努めたい。
ウ 学校評価におけるPDCAのマネジメントサイクルを継続的、計画的に実施し、学校評価システムの確立に努めたい。

-- 登録:平成23年11月 --