コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究成果発表会資料 京都市立御所南小学校

学校名 京都市立御所南小学校
所在地 京都市中京区柳馬場通夷川上る五町目242
電話番号 075-223-0148

1 実践研究のテーマ

夢がひろがる地域の学校
―確かな力・豊かな心をもつ子どもの育成と新たな地域コミュニティの創造を目指して―

2 研究の推進体制

体制図

3 実践の成果と課題

(1)学校と地域住民の参加による協議組織の活用について

 御所南小学校は9つの学区が統合した学校であり,地域の団体代表者も9人ずつおられる。このような豊富な人材を生かし,具体的な活動を中心として取り組んでいけるように,地域学校協議会「御所南コミュニティ」を発足させた。地域学校協議会「御所南コミュニティ」は,現在71名の委員から構成されている。

1.地域学校協議会「御所南コミュニティ」の組織

 ア.児童を育てる視点から12の「コミュニティ」(小グループ)
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」は,児童をどのように育てていけばいいのかという視点から,12の「コミュニティ」(小グループ)に分かれて活動している。

  1. 文化コミュニティ
  2. 福祉コミュニティ
  3. スポーツ・コミュニティ
  4. 町づくりコミュニティ
  5. 国際コミュニティ
  6. ジュニア・コミュニティ
  7. コンピュータ・コミュニティ
  8. 図書館コミュニティ
  9. 学びコミュニティ
  10. 表現コミュニティ
  11. 健康コミュニティ
  12. 環境コミュニティ

イ.学校の課題から3つの「委員会」
 御所南小学校は,統合した学校であるということから,いくつかの課題をもっている。1つめの課題は,地域と学校との新しい結びつきをつくるということである。2つめは,この地域に中学校新校舎・複合施設の建設が予定されていることから,幼小中連携の必要性という課題である。3つ目は,保護者と学校との結びつきを強めるという課題である。
 そこで,地域学校協議会「御所南コミュニティ」をこれら学校の課題ごとに3つの委員会に分け,上記の「コミュニティ」(小グループ)をそれぞれに位置づけた。

  •  地域コミュニティ委員会 … 地域と学校との結びつきという課題:主に地域の方で構成
    子ども体験ランドなどの地域・学校共催事業の企画運営
    (文化・福祉・スポーツ・町づくりコミュニティ)
  • 幼小中コミュニティ委員会 … 幼小中の連携という課題:主に幼稚園,小・中学校保護者で構成
    平成18年度完成予定の中学校新校舎・複合施設の検討
    (国際・ジュニア・コンピュータ・図書館コミュニティ)
  • スクール・コミュニティ委員会 … 保護者と学校との結びつきという課題:主に小学校の保護者構成
    サマーカレッジなどの保護者・学校共催事業の企画運営
    (学び・表現・健康・環境コミュニティ)

ウ.企画と評価を中心とした「理事会」
 12の「コミュニティ」(小グループ)の部長は,3つの委員会の委員長(1名)と副委員長(3名)をそれぞれ兼ねている。この委員長・副委員長と学校長・学校代表5名を合わせて18名で理事会を構成している。
 理事会では,委員会や「コミュニティ」(小グループ)の企画を行い,活動や学校教育の評価を行うようにしている。

2.地域学校協議会「御所南コミュニティ」の運営

ア.委員の公募
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」の委員は,地域代表やPTA代表などから選出するとともに,地域全体を対象に公募することにした。(現在の公募委員21名)これは,地域や保護者とのつながりを深めるとともに,より積極的に地域学校協議会「御所南コミュニティ」の活動が進められるようにしたいと考えたからである。

イ.教職員と協働して
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」の活動は委員だけで行うのではなく,御所南小学校の教職員と委員が一体となって進めるようにした。これにより,学校教育と地域学校協議会「御所南コミュニティ」の活動の連携が,より密になると考えた。現在,委員と学校の比率は,ほぼ「地域1:保護者1:学校1」となっており,バランスのとれた運営ができている。

ウ.月に1度の定例会議
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」の会議は,月に1回程度,2時間の時間設定で行っている。前半は「コミュニティ」(小グループ)の部会,後半は委員会としている。また,地域学校協議会「御所南コミュニティ」の会議の前に,理事会を開き,予算を承認したり「御所南コミュニティ」の企画を行ったりしている。

エ.共同授業や共同事業の企画・運営
 共同授業としては,これまで出会えなかったような方を招いて授業をしている。地域学校協議会「御所南コミュニティ」がコーディネートすることにより,人との出会いの幅が広がった。また,算数ボランティアを募集しての授業支援など,学校からの働きかけでは難しかったことにも取り組めるようになった。

共同事業としては,児童とボランティアの方を合わせて1200名にもなる「御所南子ども体験ランド」などがある。共同事業で,これまでとは違うかかわり方で児童に接してもらうことにより,地域の方により深く児童を理解していただくことができるようになった。

3.地域学校協議会「御所南コミュニティ」の成果

ア.活動を通して学校教育への理解
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」では,書類や説明から学校教育を理解するだけでなく,実際の活動を通して学校教育への理解を深めてもらえるようになった。たくさんのボランティアも集まり,「御所南コミュニティ」のメンバーだけでなくボランティアの方にも,活動を通して学校に対する理解を深めていただけるようになった。

イ.理解に立った学校評価
 活動を通して学校教育をよく理解してもらった上で,年度末に地域学校協議会「御所南コミュニティ」による評価ワークショップを行った。「コミュニティ」(小グループ)の視点ごとに,教職員と共に児童の実態を話し合いながら評価していくようにしたので,具体的な学校評価を行うことができた。

ウ.理解に立った教員人事参画
 学校に対する深い理解は,共に学校の方向を探るという姿勢や,これからの学校教育への責任感にもつながった。
 この将来展望と責任感の上で,公募教員,公募非常勤講師の面接を行った。地域学校協議会「御所南コミュニティ」委員の方の質問事項は,学校を共につくっている自覚を感じさせるものだった。

(2)学校の裁量権の拡大に関する取組について

1.特色ある学校づくりに向けた教職員人事の充実

 ア.人事懇談の実施
 本市では,全市立学校の教職員人事にあたって,3度にわたる個別の人事懇談を実施し,各校長の意見を十分に聞き取っているが,一層充実した教職員人事が行えるよう,通常の人事懇談に加え,別途校長からの具申を受けるなど学校との連携を図っている。

イ.教員公募の実施(平成15年度から実施)
 校長が自校の教育活動の充実を図る上で必要とする人材を市立学校教員の中から確保するとともに,教員の意欲と専門性を生かすことにより,特色ある学校づくりの一層の充実を図るため,実施している。
 募集にあたっては,学校が教育目標や求める人材等を提示した募集要項を作成し,全校に配布するようにした。(平成16年度は2名が教員公募で赴任)
 選考については書類選考及び面接により行うが,地域学校協議会「御所南コミュニティ」の代表も面接のメンバーになるなど,地域・保護者の参画を得ている。

ウ.非常勤講師公募の実施(平成14年度から実施)
 上記の教員公募と同様に,学校で任用する非常勤講師について公募を実施した。平成15年度は7人,平成16年度は9人の講師を任用した。

エ.「副教頭」の設置(平成15年4月から設置)
 学校運営を円滑かつ機能的に推進し,学校教育力の向上を図るため,校務分掌上,管理職に準ずる「副教頭」を設置した。「副教頭」は教頭を補佐し,校務を分担するとともに,教職員の指導等を行うこととしている。
 平成16年4月からは,「配置を希望する学校」についても校長の具申に基づき配置できるように拡大し,校長を中心とした指導体制の充実と教職員組織の活性化が図られている。

オ.主任選任手続きの緩和(平成14年度から実施)
 これまで実施していた「主任」の選任にあたっての学校と教育委員会との「事前協議」を廃止し,「届出制」とした。

カ.希望転任制度(教員版「フリーエージェント(FA)制」)の実施(平成15年度から実施)
 校長が自校の学校づくりに求める人材を確保できるとともに,教員も自らの意欲や能力,経験をより一層生かせる学校を選択できるようにするため,実施している。(平成16年度の希望転任制度による異動は全市で110名)
 <実施方法>教員が自己の目指す教育や得意分野,専門性を記入した自己アピール書を提出する(「FA宣言」)。各校長はその中から求める人材を指名して,直接話し合い,異動を決める。複数校からの指名を受けた教員はその中から希望校を選ぶことができる。(採用後10年経過し,現任校で3年以上勤務した教諭が対象。)

2.学校裁量予算の拡充及び執行の評価

 ア.「21世紀の学校づくり」推進事業の実施
(平成13年度から実施。※平成16年度から「みやこ学校創生事業」として充実・発展して継続実施される。)
 学校が21世紀の学校づくりに向けた各校独自の明確なビジョンを持ち,家庭・地域と連携し,創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開することにより,その成果を全市に広め,全市的な教育力の向上を図ることを目的に実施している。
 実施にあたっては,自校の児童・生徒や地域の実態に応じて独自の教育課題を設定し,その達成に向けて取り組むべき研究・実践活動を計画するとともに,予算についても,学校が独自に計画の実施に必要な経費の執行計画を立案し,それに応じて教育委員会が経費を配分するという方法をとることにより,学校裁量を拡大している。
(3年間で計約400万円の経費を配分)

イ.「合算執行」の事業範囲拡大(平成15年度から実施)
 本市では,平成15年度から学校運営に必要な経常的な経費のすべてについて,経費の総額の範囲で自由に事業ごとの執行枠や費目を校長の裁量で決めることができるようにしている(「合算執行」)。このことにより,光熱水費など管理的経費を節減し,図書整備費など教育活動予算に上積みできることとなった。(平成16年から全市に拡大)

ウ.校長専決権限の拡大(平成15年度から実施)
 校長専決権限を試行的に下表の通り大幅に拡大し,図書の購入,高額教材の購入及び施設整備について学校の必要性に応じて迅速に対応でき,より円滑な学校運営を可能とした。

  変更前 変更後
物件,労力その他の調達決定及び契約並びにこれらに伴う経費の支出決定 図書の購入 40万円以下 150万円以下
その他の物件 40万円以下 100万円以下
建物,設備及び構内地の小規模な修繕の決定及び契約並びにこれらに伴う経費の支出決定 50万円以下 100万円以下

エ.予算執行の評価
 校内での予算執行についての評価に加え,地域学校協議会「御所南コミュニティ」の理事会においても,その使途を明確にし,執行についての評価を行っている。

4 今後の計画

(1)「学校運営協議会」への発展

 地域学校協議会「御所南コミュニティ」の活動では,地域・保護者の学校教育参画という課題について,手探りながら考え,学校運営の在り方を明らかにしてきた。今後は,その成果を踏まえ,学校運営協議会を設置し,地域の特色を生かした運営を行い,これまでの地域学校協議会「御所南コミュニティ」と「学校運営協議会」との関係等を探っていきたい。

(2)地域学校協議会「御所南コミュニティ」の継続・更新

 地域学校協議会「御所南コミュニティ」ができて,ほぼ3年間が過ぎた。この間,各組織の代表者の変更や公募者の追加などで,いくらかのメンバー変更があった。しかし,基本的には同じメンバーで3年間を過ごしてきた。今後は,このメンバーをある程度継続し,また効果的に更新しながら,地域学校協議会「御所南コミュニティ」の活動を続けていけるようにしたい。

-- 登録:平成23年11月 --