コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

実践研究実施報告書、研究開発実施報告書 京都府京都市立御所南小学校

都道府県名 京都市
学校名 京都市立御所南小学校

1 実践研究の概要・成果及び課題

実践研究のテーマ
 夢がひろがる地域の学校
 - 確かな力・豊かな心をもつ子どもの育成と新たな地域コミュニティの創造を目指して -

1.研究の推進体制
 研究を推進するにあたっては,地域学校協議会「御所南コミュニティ」と学校,そして運営委員会の3者が連携できるようにした。
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」の活動に教職員も加わることにより,両者の連携を密にした。また,運営委員会には,京都市教育委員会代表や教育関係者,学校長に加えて,教員代表も参加し,学校と運営委員会,さらには運営委員会と地域学校協議会「御所南コミュニティ」の関係が深まるようにした。
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」には,地域代表や保護者代表だけでなく,公募やボランティア団体からなど,幅広く人が集まるようにした。また,多くの人材が効果的に力を発揮できるように,地域学校協議会「御所南コミュニティ」や学校の取組で,部会による運営を重視するようにした。

研究の推進体制

2..実践の成果と課題
【研究の概要】
(2)学校と地域との連携について
 地域・保護者と学校との連携を深め,共に学校教育をつくっていけるように,地域学校協議会「御所南コミュニティ」を設置した。「御所南コミュニティ」の構成は,次の通りである。
「御所南コミュニティ」を設置するにあたっては,人数やその役割などを考え,多くの人が目的をもって活動できるようにした。

実践の成果と課題

1.活動を中心とした12のコミュニティ
 御所南小学校は,9つの学区が統合した学校であり,地域の代表者も9人ずつおられる。このような豊富な人材を生かし,具体的な活動を中心として取り組んでいけるように,71名の委員から構成される地域学校協議会「御所南コミュニティ」を12のコミュニティに分けることにした。ここでの「コミュニティ」は,ボランティア・コーディネーター(世話役)を指す。12のコミュニティは,次のようなものである。

  1. 文化コミュニティ
  2. 福祉コミュニティ
  3. スポーツ・コミュニティ
  4. 町づくりコミュニティ
  5. 国際コミュニティ
  6. ジュニア・コミュニティ
  7. コンピュータ・コミュニティ
  8. 図書館コミュニティ
  9. 学びコミュニティ
  10. 表現コミュニティ
  11. 健康コミュニティ
  12. 環境コミュニティ

 これらのコミュニティを4~9名ずつで構成することにより,少人数での活発な活動につながると考えた。

2.課題を中心とした3つの委員会
 御所南小学校は,統合した学校であるということから,いくつかの課題をもっている。1つは,もともと9つあった地域と現在の学校との結びつきである。2つめの課題は,この地域に新中学校の開校が予定されていることから,幼小中の連携ということである。3つ目の課題は,広い校区から集まる保護者と学校との結びつきである。
 そこで,地域学校協議会をこれらの課題ごとに3つの委員会に分けることにした。
 まず,地域と学校との結びつきという課題から,地域の方を中心にした「地域コミュニティ委員会」を置いた。ここでは,子ども体験ランドなどの地域・学校共催事業の企画運営をすることにした。この委員会には,上記の文化・福祉・スポーツ・町づくりコミュニティの委員が入るようにした。
 次に,幼小中の連携という課題から,幼稚園,小・中学校の保護者の方を中心とした「幼小中コミュニティ委員会」を置いた。ここでは,この地域で平成18年度完成予定の新中学校の施設を検討することにした。この委員会には,上記の国際・ジュニア・コンピュータ・図書館コミュニティの委員が入るようにした。
さらに,保護者と学校との結びつきという課題から,小学校の保護者の方を中心とした「スクール・コミュニティ委員会」を置いた。ここでは,サマーカレッジなどの保護者・学校共催事業を企画運営することにした。この委員会には,上記の学び・表現・健康・環境コミュニティの委員が入るようにした。

3.企画と評価を中心とした理事会
 12のコミュニティの部長は,3つの委員会の委員長(1名)と副委員長(3名)をそれぞれ兼ねるとともに,12名の委員長・副委員長と学校長,学校代表(5名)を合わせて18名で理事会を構成することにした。
 理事会では,委員会やコミュニティの企画を行い,活動や学校教育の評価を行うようにした。また,理事会では,公募教員や公募非常勤講師の面接など人事にかかわること,学校予算を承認することなど,学校の裁量権拡大に向けて取組を進めた。

4.委員の公募
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」の委員は,地域代表やPTA代表などから選出するとともに,地域全体を対象に公募することにした。(公募委員21名)
  これは,地域や保護者とのつながりを深めるとともに,より積極的に地域学校協議会(御所南コミュニティ)の活動が進められるようにしたいと考えたからである。
公募の条件としては,御所南小学校の校区に住んで,御所南小学校の教育に積極的にかかわってくださる人,及び,御所南小学校の教育にかかわってくださったことのある方,というようにした。

5.教職員と一体となった運営
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」の活動は委員だけで行うのではなく,御所南小学校の教職員と委員が一体となって進めるようにした。教職員の希望を聞いて,年度当初に各コミュニティに分かれて入ることにしている。
各コミュニティ(小グループ)につき2~3名の教職員が入ることにより,学校教育と地域学校協議会「御所南コミュニティ」のつながりが,より密になっていった。

6.PTA活動との関連
 PTAの専門部から「御所南コミュニティ」の委員を選出するような部会をつくり,地域学校協議会「御所南コミュニティ」とPTAの活動を関連づけるようにしている。
 学びコミュニティにはPTA教養文化部から,表現コミュニティにはPTA広報部から,健康コミュニティにはPTA保健体育部から,環境コミュニティにはPTA地域環境部から,それぞれ2名ずつ委員が入るようにし,相互の連携を図っている。

7.全体で集まる会議形式
 12のコミュニティ(小グループ)が,それぞれに会議をもつのではなく,必ず地域学校協議会「御所南コミュニティ」が全体で集まって,会議をすることにした。
 これは,活動のための刺激を互いに受けるということで有効だった。特に,活動が始まって間もない頃は,他のコミュニティ(小グループ)の活動に刺激を受けて,自分のコミュニティ(小グループ)の活動を考えることが多かった。
 また,コミュニティ(小グループ)間で,活動の温度差が生じにくいということもあった。現在,それぞれのグループに大きな差がないのは,これによるところが大きい。
 さらに,それぞれのコミュニティ(小グループ)間の連携がとりやすい,ということがある。他のグループがどのような活動を行っているのか,その場で確認できるということが,連携を生んでいった。

8.コミュニティ(小グループ)ごとの活動
 各コミュニティ(小グループ)のメンバーを少人数にすることにより,それぞれの委員の存在感が出やすいようにした。コミュニティ(小グループ)の委員の数は,4~9人とし,教職員を含めても10人以下となるようにした。
 小グループでの話し合いは,非常に活発なものとなり,どの委員もなくてはならない存在となっていった。また,小グループでの活動は,委員全体の出席率を上げ,全体のやる気が高まる大きな要因となっている。

9.月に1度の定例会議
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」の会議は,月に1回程度,定例で開くようにした。これは,会議の案内等の事務的な仕事を少なくするためと,前述の全体会議にするためである。
 コミュニティ(小グループ)ごとに集まって会議をすると,各委員の都合に合わせることができるが,案内の準備,場所の設定等が各コミュニティ(小グループ)になってしまうので,負担が増える。必要な時には,定例会議以外にも集まることがあるが,基本的には定例会議を利用している。
 会議の時間は2時間で,時間配分は次のようになる。
 ・全体会……20分程度
 ・各コミュニティ部会……1時間程度
 ・3つの委員会……30分程度
 ・事務連絡……10分程度 

(2)学校の裁量意見の拡大に関する取組について
1.特色ある学校づくりに向けた教職員人事の充実
(ア) 人事懇談の実施
 本市では,全市立学校の教職員人事にあたって,3度にわたる個別の人事懇談を実施し,各校長の意見を十分に聞き取っているが,一層充実した教職員人事が行えるよう,通常の人事懇談に加え,別途校長からの具申を受けるなど学校との連携を図っている。

(イ) 教員公募の実施(平成15年度から実施)
 校長が自校の教育活動の充実を図る上で必要とする人材を市立学校教員の中から確保するとともに,教員の意欲と専門性を生かすことにより,特色ある学校づくりの一層の充実を図るため,実施。
 募集にあたっては,学校が教育目標や求める人材等を提示した募集要項を作成し,全校に配布。(募集人数については,若干名)→ 16年4月に2人,17年4月に1人が異動
 選考については書類選考及び面接により行うが,地域学校協議会の代表も面接のメンバーになるなど,地域・保護者の参画を得ている。

(ウ) 非常勤講師公募の実施(平成14年度から実施)
 上記の教員公募と同様に,学校で任用する非常勤講師について公募を実施。
15年4月に7人,16年4月に9人の非常勤講師を任用するとともに,17年4月から3人の非常勤講師講師を任用。

(エ) 「副教頭」の設置(平成15年4月から設置)
 学校運営を円滑かつ機能的に推進し,学校教育力の向上を図るため,校務分掌上,管理職に準ずる「副教頭」を設置。「副教頭」は教頭を補佐し,校務を分担するとともに,教職員の指導等を行う。16年4月からは全市に拡大して副教頭の設置を認めており,小学校12校,中学校6校に設置。

(オ) 主任選任手続きの緩和(平成14年度から実施)
 これまで実施していた「主任」の選任にあたっての学校と教育委員会との「事前協議」を廃止し,「届出制」とした。

(カ) 希望転任制度(教員版「フリーエージェント(FA)制」)の実施(平成15年度から実施)
 校長が自校の学校づくりに求める人材を確保できるとともに,教員も自らの意欲や能力,経験をより一層生かせる学校を選択できるようにするため,実施。
<実施方法>教員が自己の目指す教育や得意分野,専門性を記入した自己アピール書を提出する(「FA宣言」)。各校長はその中から求める人材を指名して,直接話し合い,異動を決める。複数校からの指名を受けた教員はその中から希望校を選ぶことができる。(採用後10年経過し,現任校で3年以上勤務した教諭が対象。)→16年4月に1人が異動

2.学校裁量予算の拡充及び執行の評価
(ア) 「21世紀の学校づくり」推進事業の実施(平成13年度から実施)
 学校が21世紀の学校づくりに向けた各校独自の明確なビジョンを持ち,家庭・地域と連携し,創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開することにより,その成果を全市に広め,全市的な教育力の向上を図ることを目的に実施。
 実施にあたっては,自校の児童・生徒や地域の実態に応じて独自の教育課題を設定し,その達成に向けて取り組むべき研究・実践活動を計画するとともに,予算についても,学校が独自に計画の実施に必要な経費の執行計画を立案し,それに応じて教育委員会が経費を配分するという方法をとることにより,学校裁量を拡大している。
(3年間で計約400万円の経費を配分)
※平成16年度からは「みやこ学校創生事業」として充実し,実施している。

(イ) 「合算執行」の事業範囲拡大(平成15年度から実施)
 本市では,これまでから学校運営に必要な経常的な経費のうち,図書整備費,教材費,校教具整備費,経常費,実習材料費,便所清掃費の6事業については,これらの経費の総額の範囲で自由に各事業ごとの執行枠や費目を校長の裁量で決めることができるようにしている(「合算執行」)。
 16年度からは,さらに光熱水費,通信運搬費,環境整備費も含め,すべての経常的な経費について合算執行が可能となるよう範囲を拡大した。このことにより,光熱水費など管理的経費を節減し,図書整備費など教育活動予算に上積みできることとなった。
 また年間執行計画を前年度に立案することにより,従来4月に実施されていた暫定配分(4月5月分の予算)や6月に実施されていた年間配分予算を年度当初にすべて受けられるよう変更。このことにより,年度当初から教育活動に必要な物品の購入など,適時に予算を執行することが可能となった。16年度から全市に拡大し実施している。

(ウ) 校長専決権限の拡大(平成15年度から実施)
 校長専決権限を試行的に下表の通り大幅に拡大し,図書の購入,高額教材の購入及び施設整備について学校の必要性に応じて迅速に対応でき,より円滑な学校運営を可能とした。

変更前 変更後
物件,労力その他の調達 図書の購入 40万円以下 150万円以下
決定及び契約並びにこれ
らに伴う経費の支出決定 その他の物件 40万円以下 100万円以下
建物,設備及び構内地の小規模な修繕

の決定及び契約並びにこれらに伴う経

費の支出決定

50万円以下 100万円以下

(エ) 予算執行の評価
 校内での予算執行についての評価に加え,地域学校協議会「御所南コミュニティ」の理事会においても,その使途を明確にし,執行についての評価を行った。

3.その他の取組

(ア) 学校の裁量により,2期制及び長期休業期間の弾力化が図ることができるよう,学校管理運営規則を改正。(平成14年12月)→15年度から2期制を実施
(イ) 平成15年度から小学校1学年における35人学級を実施するとともに,平成16年度には小学校2学年においても35人学級を拡充した。

(3)多彩な指導者の有機的な連携
1.基礎ティーチャー
 TT教員と常勤講師を基礎ティーチャーとし,3~6年生の各学年に配置した。基礎ティーチャーは,学級担任と連携して,基礎的な学習内容が確実に理解できることを目指した。
 毎朝15分間のかがやきタイムの指導,毎日の課題確認,教科学習における個別指導,課題作成等を行った。

2.基本ティーチャー
 学級担任を基本ティーチャーとした。基本ティーチャーは,TT教員と連携して,基本的な教科内容及び総合的な学習の指導を行うことにした。
 ティーム・ティーチングの効果的な活用により,個に応じた追究をサポートしていくようにした。

3.共同ティーチャー
 教科や総合的な学習で一緒に授業を行ってくださる地域の人材を共同ティーチャーとした。共同ティーチャーは,学級担任やTT教員と連携して,子どもの学習をつなぎあわせていくことにした。
 共同ティーチャーの幅は,これまで協力してくださった方をもとにして,地域学校協議会(御所南コミュニティ)により広げていけるようにした。

4.専門ティーチャー
 教科や総合的な学習以外の特別活動やクラブ活動で,発展的な指導をしてくださる人材を専門ティーチャーとした。専門ティーチャーは,教職員と連携して,子どもの力を伸ばしていけるようにした。
 専門ティーチャーの幅は,これまで協力してくださった方をもとにして,地域学校協議会「御所南コミュニティ」の力により広げていけるようにした。

(4)小中連携(一貫)に向けた取組
御所南コミュニティのジュニア・コミュニティの提案により,小中連携活動が行われるようになった。

1.小中地域清掃活動
 中学生をリーダーとして,小中学生が合同で地域清掃活動を行った。縦割りグループで行ったので,自然に中学生がリーダーとなり,積極的に清掃することができた。地域の方からも声をかけていただき,地域の一員としての自覚につながるような活動になった。

2.オープン・スクール
 京都御池中学校のオープン・スクールを実施し,小学生が中学校の学習を体験できるようにした。中学生の楽しい学習を経験した子どもたちは,中学校に対する希望をもち,これまで以上に中学校へ行くのを楽しみにし始めた。

3.カリキュラム連携
 同じ中学校区である高倉小学校・京都御池中学校とともに「小中合同研修会」を定期的に実施し,小中学校一貫カリキュラムの検討を始めた。義務教育期間の学びの連続性を確保しようと考えて,社会科部会,理科部会,数学部会,表現・芸術部会,人権・道徳部会,英語部会,言語・読書部会,IT教育部会,総合的な学習部会の9部会をつくり,カリキュラムを検討している。

【成果】
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」の運営により,地域との連携が密になるだけでなく,共同のカリキュラム編成・実施によって,充実を図ることができた。
 また,学校の裁量権の拡大にともない,校内体制を柔軟に構成することなどが可能になり,TT教員と担任との連携により,基礎・基本の定着が確かなものになった。 

(1)地域・保護者と学校との連携 -地域学校協議会「御所南コミュニティ」-

1.共同授業の企画・運営
 平成14年度の計画を元に,平成15年度から16年度にかけて,多くの共同授業に取り組んだ。

共同授業では,これまでの出会えなかったような人に出会えた。学びコミュニティの企画で,トライアスロン選手に来ていただいて,自分の考えを話してもらうとともに,水泳の授業を行った。また,芥川賞作家の方に来ていただいて,句読点の打ち方を学んだ。このような人との出合いが広がったのが,一つの成果である。
 共同授業では,これまで学校ではできにくかったことに取り組むこともできた。学びコミュニティの企画で,2年生の算数ボランティアを募集し,かけ算九九の指導を行った。このような取組は,学校からの働きかけでは難しいところがある。しかし,コミュニティがボランティアを組織することによって,楽しく取り組め,効果も上がった。
 このように,これまで出会えなかったような人と出会い,これまでできにくかったことがスムーズにできるようになったのが,共同授業の成果である。

2.共同事業の企画・運営
 休業土曜や長期休業中には,多くの共同事業が行われた。
 共同事業では,人と人とのつながりが生まれた。町づくりコミュニティの町家探検では,地域の方と少年補導の方とのつながりができ,スポーツ・コミュニティのレッツ・ウォークでは,体育振興会の方と教職員とのつながりができた。
 また,地域の方に児童を理解していただくことができた。これまでとは違うかかわり方で児童に接してもらうことにより,児童の考え方や行動に感心してもらい,同じような視点から見ることができるようになった。
 このように,共同事業によって,人と人とのつながりが広がり,児童を見る視点がしっかりしてきた。さらに,16年度の教育研究発表会については,学校と「御所南コミュニティ」の共催で実施し,「御所南コミュニティ」の委員である保護者・地域の代表から実践報告をいただくなど,学校とともにこれまでの取組を発表することができた。

3.活動を通して学校教育を理解
 これまで,地域の方や保護者の方には,学校からお願いして授業協力をしていただくということが多かった。授業協力をしてくださった方は,児童の反応もわかり,理解を深めてくださっていた。しかし,この理解をまとめて,次の活動につなげていくことは難しかった。
 御所南コミュニティができたことにより,具体的な授業や事業を通して,今まで以上に学校教育への理解が深まった。たくさんのボランティアも集まり,御所南コミュニティのメンバーだけでなくボランティアの方にも,学校に対する理解をしていただけるようになった。
 御所南コミュニティというきっかけが,いくつものところで,理解・参画してくださる方の輪を広げているのである。 

4.理解に立った学校評価
 書類や説明からだけで理解していただくのではなく,一緒に活動する中で,学校教育への理解を深めていただいた。その理解に立って学校評価を行ってもらうと,「なんとなく」という勘ではない学校評価をしていただけるようになってきた。
 年度末に行う評価ワークショップでは,児童の実態をよく理解して,評価を行ってもらっている。

5.理解に立った教員人事参画
 学校に対する深い理解は,共に学校の方向を探るという姿勢や,学校のこれからへの責任感にもつながった。
 この将来展望と責任感の上で,公募非常勤講師,公募教員の面接を行った。コミュニティ委員の方の質問事項は,学校の一員としての自覚を感じさせるものだった。

6.地域・保護者の参画意識の高まり
 さまざまな教育活動の企画・実施を,学校と共に行うことにより,地域の方・保護者の学校教育への参画意識が高まってきた。それは,「御所南コミュニティ」に参加されている方の言葉にも現れている。

 この御所南コミュニティが発足して3年になりますが,当初,私達地域の人間がどうして学校と関わることができるのか,まったく思いもつかなかったのですが,毎月1回の先生を交えての部会での話し合いの中で,我々が住んでいる地域そのものが勉強の場になることを教えられ,自分達の身の回りを見回したら,先ほどの文化コミュニティの形になっていったのです。
 そして,マップ作りのように具体的な作業に入ると,先生方と協力していくことで,先生との間に親近感がわき,今まで感じていた壁のようなものがなくなっていきました。
 そして,「ものづくり名人を訪ねよう」になると,先生と子どもの接し方を直接見るようになります。優しさと厳しさの使い分けも微妙で,なるほど,こうして指導するのかと,納得し,先生も教育の職人だなあと思わせられることがしばしばありました。 

(2)学校の裁量権の拡大
・学校との密接な連携のもとでの教職員人事
・教員公募の実施
・教員版FA制(希望転任制度)の実施
・講師の募集・選考
・非常勤講師の弾力的な活用
・主任の選任に伴う事前協議制を届出制へ移行
・副教頭制を十分に生かした学校教育力の向上
・学校裁量予算の拡充(合算執行範囲の拡大)
・校長の専決権限の拡大
・校長の裁量予算の拡充(合算執行範囲および校長専決権限の拡大)と予算執行の評価
・2期制の実施(平成15年度より)

(3)指導者の有機的な連携
 基礎・基本から応用・発展への道筋を明確にし,指導を確かにしていくために,指導体制の改善に取り組んできた。指導体制としては,担任とTT教員,さらには保護者や地域の指導者との連携が考えられる。これらの指導者が複数で指導した場合,その効果が「1+1>2」となるようにしたいと考えてきた。 
 そのために,まず,指導者の役割分担を明確にした。もちろん,役割分担だけで指導を行えるわけではないが,役割を意識することにより,責任をもって指導を行えるようになると考えた。
 もう一つは,指導体制をいくつかに分けて考えたということである。一つの方法だけで効果をあげていくのは難しいので,さまざまな指導体制を組み合わせて取り組み,効果を出せるように考えた。 

1.算数における少人数指導
 学級担任とTT教員の比重が等しい指導体制である。学級担任とTT教員の連携により,算数を中心にした少人数指導を行ってきた。少人数で指導することにより,一人一人に届く授業を実現していく。単元をすべて少人数指導で行うのではなく,単元の途中に課題選択やコース選択を取り入れて,効果的に少人数指導を行っていくようにしてきた。

2.理科等における一部教科担任制
 TT教員に比重をおいた指導体制である。教科の専門性を高め,指導の充実を図るため,一部教科担任制をとっている。中学年では理科,高学年では理科・音楽で教科担任制をとり,TT教員が主体となって教材準備を行い,授業も行っている。担任は,TT教員の補助にまわり,個別指導や授業の進行の補助を行っている。

3.かがやきタイムにおける共同指導
 TT教員に比重をおいた指導体制である。朝の15分間を使ったかがやきタイムでは,詩の朗読や読書,計算や表現活動など,基礎的な力をつける指導を行っている。活動の計画をTT教員が立てて,実施の主体となっていくようにしている。また,職員の朝会を早めることによって,朝の時間の指導を全員で行えるようにしている。

4.教科における複数指導
 担任に比重をおいた指導体制である。算数を中心に,TT教員と複数で指導を行うようにしている。授業の進行は担任が行い,基本的な力をつけるようにする。TT教員は個別指導にまわるとともに,家庭学習との連携がはかれるように,学習内容の確認を行う。 

5.コミュニティ創造科における課題別指導
 担任とTT教員の比重が等しい指導体制である。コミュニティ創造科では,教材の開発や指導を,学級の枠をはずして行う。したがって,3~4名の担任と1名のTT教員が共同で教材開発し,指導を行うことになる。この場合の指導は,主に課題別の指導である。児童が追求する課題をいくつかにまとめ,そのまとまりの指導を分担して行うようにしている。 

6.補充時間における少人数指導
 担任とTT教員の比重が等しい指導体制である。1年~3年は,週に1時間程度,補充学習に充てている。補充学習は,主に算数と国語を行い,児童一人一人が十分に理解できるまで学習ができるようにしている。TT教員は教材作成にあたり,学級の半分の児童を分担して,個別指導を行うようにする。 

7.家庭学習における連携指導
 TT教員に比重をおいた指導体制である。TT教員は,担任との連携のもと,算数を中心に家庭学習を作成し,実施する。翌日には回収してチェックを行い,間違いのあった児童には,わかるまで教えるようにしている。TT教員は,学年全体の傾向もわかった上で問題を作成するので,効果が上がりやすい。 

8.地域・保護者の方との共同指導
 地域・保護者の方と学校の教職員との比重が等しい指導体制である。コミュニティ創造科の授業では,地域や保護者の方が授業協力者として来てくださったり,共に授業内容を考えてくださったりしている。これらの方と学校の教職員が一体となって指導を行うことにより,地域・保護者の方と児童とのかかわりが深まり,学校への理解も深まっていく。 

(4)二期制
 二期制を導入したことにより,欠時の解消を含めて,授業時数として12時間程度確保することができた。授業時数の確保という点での効果だけでなく,二期制が学校の取組全体を見つめ直すきっかけとなった。
 例を挙げると,個人懇談の実施時期がある。従来,2学期の最後(12月)に実施していたが,前期終了後の秋休み(10月)に実施するようにした。これにより,前期の学習を振り返って,後期の学習を考えるという位置づけがはっきりした。また,午前中授業にして懇談を行っていたのが,その必要がなくなり,欠時も減るということにつながった。
 このように,二期制を実施することにより,これまでの枠組みを見直し,活動の意味を考えることができた。

(5)小中連携
 小中連携活動のスタートは地域学校協議会「御所南コミュニティ」のジュニア・コミュニティだった。ここで,幼稚園・2つの小学校・中学校の教務主任が話し合うことが多くなった。その後,御所南コミュニティに加えて,月に1度程度,合同教務主任会を行うようになり,小中連携の在り方を探るようになった。
 これがさらに発展して,現在は「小中合同研修会」として,2ヶ月に1度,2小学校1中学校の校長,教頭,すべての教員が集まり,カリキュラムの連続性を大切にして,小中連携(一貫)教育のあり方を探っている。
 これにより,小中学校のつながりが深まり,互いに取組を理解した上で,自校の取組を進めることができるようになった。

【今後の課題】
(1) 地域学校協議会「御所南コミュニティ」理事会を学校運営協議会に地教行法の一部改正を受けて,平成16年11月に京都市教育委員会規則を定め,御所南小学校を「学校運営協議会を設置する学校」として指定した。「学校運営協議会」のもとに,ボランティアなど学校教育に直接かかわるような「企画推進委員会」を置くのが特徴である。御所南小学校では,これを受けて,地域学校協議会「御所南コミュニティ」と学校運営協議会の関係を,右のように考えた。学校運営協議会のあり方は,地域学校協議会「御所南コミュニティ」の理事会より,さらに学校運営の性格が強いものであるかと考えるが,今までの取組をもとに進めていきたい。

地域学校協議会「御所南コミュニティ」

(2) 御所南コミュニティの継続・更新
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」は,56人から始まり,現在71人となった。
 この大きな組織が,効果的に運営されていくためには,これまでの立ち上げとは違い,「継続と更新のシステム」をつくりあげる必要がある。
 3年間の研究が終わろうとしている現在も,「御所南コミュニティ」の活動は活発である。活発な時期だからこそ,「継続と更新のシステム」は必要なのだと感じる。 

1.「御所南コミュニティ」委員の継続と更新
 まず大切なのが,「御所南コミュニティ」委員が,継続したり更新されたりしていくことである。
地域代表(自治連合会長)の継続と更新については,年度が終わる時に代表の会議を開き,次年度のコミュニティの分担を決め直すようにする。
 地域団体(体育振興会等)の代表者の継続と更新については,年度が終わる時に,団体の代表者と担当コミュニティの 委員が集まり,次年度のコミュニティ委員を決めるようにする。
 PTA専門部からは,新年度当初のクラス委員会で,コミュニティ担当者を決め,「御所南コミュニティ」に参加するようにする。
 公募委員については,継続を基本とするが,新年度当初に,新たな公募案内を配り,募集する。
 現在の各コミュニティ部長については,2年程度で引き継いでいくことにする。2年目には,次年度の部長になる予定の人と一緒に活動ができるようにしておく。
 このような継続と更新の仕組みが,ほぼできてきている。
 今後は,これをより明確にしていきたい。

2.「御所南コミュニティ」活動の継続と更新
 「御所南コミュニティ」の活動は,3年目を終え,ほぼ安定したものになりつつある。しかし,同じ活動で終わってしまうようになると,活動が停滞していくことも考えられる。
 現在のように,活動が活発な時に,「継続と更新のシステム」を確立しておきたい。
 年度末の1月から3月にかけて,各コミュニティでは,次年度の計画を立てている。この時のベースになるのが,前年度の計画と,実施した結果の反省である。
 ここで多くの活動は「継続」されていく。「更新」あるいは「新規」の活動を入れていくには,一部分は必ず「新規」活動を入れるというような約束が必要になるかもしれない。
 ただ,同じような活動であっても,コミュニティによっては,螺旋状に活動の質が高まっていることも多いので,必ずしも「新規」活動が必要だと言いきれないところもある。
 このようなことを考慮した上で,活動の継続と更新をはかっていきたい。

3.小中連携を考えた継続と更新
 京都市の指定により,隣接する高倉小学校,及び御所南小学校を含む2小学校が行く京都御池中学校にも,「学校運営協議会」が設置されている。
 それぞれの学校運営協議会の構造や置かれている部会は違うものの,同じように地域・保護者と学校との連携・協働を目指した組織である。
 したがって,小中連携を考えた上で,これらの組織が有機的に連携できるようにしていかなくてはいけないと考えている。
 2小1中学校の学校運営協議会の働きと,それぞれの関係を整理して,よりよい継続と更新ができるようにしていきたい。

(2)学校の裁量権の拡大
1.特色ある学校づくりに向けた教職員人事の充実
・副教頭制を十分に活かした学校の教育力の向上と研究体制の一層の充実
・教員・講師公募の拡充と評価
・教員版FA制の定着と評価

2.学校裁量予算の拡充及び執行の評価
・学校裁量予算の拡充及び執行の評価
・学校裁量予算や専決権限の拡大を生かした特色ある学校づくりの推進

(3)指導者の有機的な連携
 コミュニティ・スクールを目指した取組は,学校の力を高め,結果として多数の児童を集めることになっている。今後は小中連携の観点も踏まえつつ,学校施設の活用も含めて,指導者がどのように連携しながら対応していくのかが課題となっている。

(4)幼・小・中の連携
 御所南小学校の卒業生が進む中学校が統合し,平成15年度に一つの中学校(京都御池中学校)となった。この中学校の新校舎は平成18年度にできる予定である。幼稚園は先に統合して,御所南小学校に来る子どもたちのかなりの部分を占めている。地域での取組が一つにまとまっていくためにも,この幼稚園,小学校,中学校との連携をどのように推進していくかが課題である。
 現在始まっている「小中合同研修会」によるカリキュラム連携が,実際の活動となっていくのが平成17年度である。これまで,地域学校協議会や小中連絡会で築いてきた連携の土台に立って,地域全体の子どもの育ちを見守っていきたい。

(5)学校評価の充実
 今年度,児童・教員・保護者の評価を連動させていくようにした。これにより,それぞれの取組の成果を振り返ることができた。
 今後は,この3年間の取組を振り返り,どのような力がどのような方法によりついてきたのかということを明確にしていきたい。
 そのために,評価集計支援システムを導入をしている。マークシートをつくり,その読み取りにより集計を行うようにして,児童へのフィードバックを早くしている。

-- 登録:平成23年11月 --