コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

実践研究実施報告書、研究開発実施報告書 広島県尾道市立土堂小学校

都道府県名 広島県
学校名 尾道市立土堂小学校

1 実践研究の概要・成果及び課題

実践研究のテーマ
 「学社連携・融合による児童の確かな学力と豊かな心を育むカリキュラム」
 「学校裁量権拡大についての研究開発」
 -コミュニティ・スクールを導入した地域に生きる学校づくり-

土堂小学校ミッションステートメント

  1. 基礎・基本を大切にし,確かな学力を育む学校
  2. 国際化と尾道のアイデンティティーを追求する学校
  3. コミュニケーション能力を育てる学校
  4. 学ぶ力と遊ぶ力を育む学校
  5. 児童・保護者・地域がともに学ぶ学校

1 研究の推進体制

1.研究組織の概要

研究組織図

2.土堂小学校研究担当者

職・職名 氏 名 学級担任等 教科領域等 備考
校長 陰山 英男   理科・視聴覚教育  
教頭 金丸 真智子   家庭・総合的な学習  
事務長 大名 清之   事務全般  
教務主任 藤井 浩治 TT・専科 書写・生徒指導 地域学校コーディネーター
郷土科担当
保健主事 三島 諭 第6学年 体育・特別活動  
研究主任 綾目 かおる 第2学年1組 算数・道徳  
学力研究主任 平田 修 TT・専科 理科・総合的な学習 情報科担当
教諭 金子 京子 第1学年1組 音楽・障害児教育 学年主任
教諭 山根 智香子 第2学年2組 図工・道徳 育休
教諭 島田 幸夫 第2学年2組 図工・道徳  
教諭 森下 理奈 第1学年1組 生活・健康教育  
教諭 梶田 典子 第3学年 国語・学校図書館教育 育休
教諭 山崎 敬史 第3学年 国語・学校図書館教育  
教諭 山根 僚介 第4学年 算数・視聴覚教育  
教諭 藤井 弘之 第5学年 社会・生徒指導  
教諭 遠崎 聖恵 TT・専科 音楽・学校図書館教育 英語科担当
教育補助員 田窪日出男   英語・図書・環境教育 市費
教育補助員 奥田 眞理   算数・情報教育 市費

2 実践の成果と課題

(1)学校と地域との連携について

1.保護者や地域住民の参加による協議組織の活用について

○協議組織名
「土堂小学校地域学校協議会」

○協議組織の役割
 地域学校協議会は、学校経営改善及び学校経営参画のために、校長に対して教育方針及び経営方針等に関する事項について建議を行い、年度末にはこれについて評価を行う。

○協議組織の構成・委嘱
・地域学校協議会委員の数は15名以内とする。
・地域のニーズを反映させるために、次の分野及び年齢層の委員をもって構成する。
 分野・・・地域代表、保護者代表、学術、文化、歴史、経済、福祉、生活等に関する分野
 年齢層・・・大学生・20歳代・30歳代・40歳代・50歳代・60歳代・高齢者の各年齢層
・委員は運営指導委員会が推薦し、教育委員会が委嘱する。

○開催回数、協議内容
第一年次  3回開催
・土堂小学校概要紹介  
・本研究事業内容の説明
・土堂小学校教育内容  
・ミッションステートメントの建議

第二年次  3回開催
 ・各学期の教育内容、教育活動について、アンケート調査、授業観察等に基づいて説明
 ・ミッションステートメントに基づいた教育がなされているか協議及び評価を受ける

第三年次  2回開催
・平成16年度の学校経営方針について
・1学期ミッションステートメントの達成状況と2学期以降の取り組みについて
・3学期各種検査やアンケート調査に基づく3ヵ年の成果について評価

○ 協議結果の学校運営・教育活動への反映状況等
・ミッションステートメントに対して

  1. 確かな学力を育成する学校 NRT学力テスト結果の向上
  2. 国際化と尾道のアイデンティティの確立 郷土科と英語科の学習と教材化
    土堂っ子太鼓の継承
  3. コミュニケーション能力を育てる学校
    縦割りなど多様な集団を生かした教育活動
  4. 学ぶ力と遊ぶ力を育む学校
    各家庭と連携した健康作り
  5. 児童・地域・保護者が共に学ぶ学校
    多様な講師を招いた学習会

・新しい実践にチャレンジする学校
1.一人一台のパソコン学習
2.1年生からのそろばん学習
3.読み書き計算の反復学習の日常化(学校独自のモジュール学習)

2.地域人材の活用について・・・積極的に活用でき、教育効果を高めることができた。
一年生 ・・・ 地域老人会、女性会、土堂公民館長
二年生 ・・・ 地域老人会、土堂公民館長、野菜作りに詳しい近所のお年寄り、元小学校長
三年生 ・・・ シルバーガイド、保護者、地域の絵手紙名人
四年生 ・・・ 尾道大学講師・学生、土堂地区民生委員
五年生 ・・・ 宅配業者、ネットワークセンター職員、テレビアナウンサー
六年生 ・・・ シルバーガイド、尾道テゴー座、美術館長、地域の方、尾道税務署、合併協議会委員、土堂地区民生委員

3.その他
・各分野専門家に学ぶ(講演講師・ゲストティーチャーとして)
そろばん塾講師、ALT、留学生、FMFアメリカ人教師、林芙美子研究者、英語教材会社アルクより講師授業及びショー、本校出身多田監督及び製作映画、櫻井よし子氏、川島隆太教授、池谷直樹体操選手
・各分野専門家に学ぶ(保護者対象講演講師)
正木健男教授、和田秀樹氏
・地域施設の活用 ・・・ 尾道市立美術館、千光寺公園とその周辺、土堂公民館、有名な画題個所、古寺めぐりコース、寺社
地域と共催の行事 ・・・ 町民運動会、社会協議会健康祭り、体育協議会オリエンテーリング

(2)学校の裁量権の拡大に関する取り組みについて
1.人事・・・校長の経営方針が生かされ、教育的効果が高かった。
・校長任用候補者の特別選抜の実施
・公募校長によるミッションステートメントの実現
・公募校長の経営ビジョンに賛同する教諭の公募
・校長の経営ビジョン・研究内容に賛同する非常勤講師の募集(市費)

2.教育課程・・・特色ある学校づくりを支える独自の教育課程編成で効果を上げることがで
・モジュール授業による基礎学習指導の徹底
・特設三教科による多様な学びの追求

3. その他
・週一日の学校共同事務室での共同事務が定着し学校裁量経費の一元的管理が進んだ。
・塾や教材会社など従来交流のなかった団体や組織等とも交流を行い、教育課程に新しい視点を持ち込むことができた。

(3)課題
・人事・・・校長の経営方針が生かされ、教育的効果が高かった。
・特設三教科のカリキュラムの整備と授業を効率的に行うための教材作り
・モジュール授業の改善とさらに基礎力を高めるための指導法の確立
・多様な授業を確立していくためにさらなる地域人材の発掘
・実践研究から,本格的な地域運営学校への移行
・実践内容の公開と実践を広げるための広報活動
・学校共同事務室の組織と役割の整理

2 研究開発の概要

研究開発の課題
 学社連携・融合による児童の確かな学力と豊かな心を育むカリキュラム
 ・学校裁量権拡大についての研究開発
 -コミュニティ・スクールを導入した地域に生きる学校づくり-

○研究のねらい
・21世紀の国際社会を生きるための確かな学力を身につけた子供の育成
・地域を愛し、生涯にわたりたくましく生きる子供の育成

 「尾道」という町の独自性を生かし、「土堂」という地域のニーズに基づき、地域が運営に参画する新しいタイプのコミュニティスクールの開発をする。様々な分野から教育委員会が委嘱した「土堂小学校地域学校協議会」が建議したミッションステートに基づく学校づくりをする。
 特色ある教育課程では、ミッションステートメント達成のため、現行教育課程の教科や時数の枠をはずし、柔軟な教育課程を編成する。

○研究内容

  1. 「国際化と尾道のアイデンティティを追求する」「コミュニケーション能力を育てる」ために,「郷土科」「英語科」「情報科」の特設三教科を設置し、指導の充実と教材開発及びカリキュラム作成をする。
  2. 「基礎・基本を大切にし、確かな学力を育む」ため、週3単位時間を15分の9モジュールに分け、反復学習を全校で組織的・計画的に実施する。
  3. 「学ぶ力と遊ぶ力を育む学校」「児童・保護者・地域がともに学ぶ学校」のために、縦割り集団を生かした学習や特別活動、及び学習会を実施する。

○成果

(1)特設三教科について
・豊富な教材や教具・機器に恵まれ、新しい時代に対応する学びとして教育活動を展開できた。
・「郷土科」 ・・・ 尾道の町への理解が進み,そのすばらしさを解説,発信でき、地域と連携した教育を行うことができた。
・「情報科」 ・・・ パソコン百台設置による1人1台の環境の整備により、低学年からのローマ字入力学習が可能となり、キーボード操作の習熟が進んだ。他の学習の土台となり、有効な文具として活用できるレベルに高まった。基本ソフトの活用能力が身についた。
・「英語科」 ・・・ 教材整備・開発が進み、モジュール学習との相乗効果により、英語暗唱力やヒアリング能力が向上した。

(2)基礎学力定着に向けての取り組みについて
・一単位時間(45分)3モジュールのリズムが定着し、モジュール学習はほぼ定着したといえる。
・反復学習の新しい学習方法・教材開発ができ、基礎学習能力を高めることができた。
(学力診断テスト(NRT・CRT)の通過率全国比110以上)
・プリント学習の評価・分析・作成を非常勤講師がすることにより授業改善に役立てた。
・モジュール学習のための機器や教材に恵まれ、スムーズに学習を進めることができた。

(3)縦割り集団を生かした学習や特別活動・地域学習会について
・全教育活動において、専門的技術・知識を有する学識経験者や大学生,塾講師、アドバイザー、アシスタント、ボランティア等を積極的に導入し,魅力ある教育活動を展開した。
・地域外の人材も含めて,様々な識者を招き,保護者・地域の人たちと共に学習会を開催した。
・学年末保護者・児童アンケートにおける満足度調査では、「大変満足」「ほぼ満足」の割合が8割以上に達した。

○問題点
・基礎学力の定着をめざしたモジュール授業については,授業スタイルの確立はほぼ定着したが、モジュールで使用する教材については、学年の系統を整理し6年間を見通した実践となるようにする。
・モジュール学習も、特設三教科も、学習内容が個々の教師の取り組みの域から出ていないので、学校全体のものとなるようシステム化する。また、教材がまだ不十分である。
・新しい内容への取り組みが多く、授業構成や指導計画への研修が十分でない。
・カリキュラムは修正しつつより良いものを求めてきたが、今後も修正が必要である。
・縦割り活動や、地域・保護者と共に活動する内容がまだ不十分なので検討を進める。
・「ほっとかん」のさらなる有効的活用の検討をする。

資料 <平成16年度カリキュラム教育課程表>

区分 年間授業時数
1学年 2学年 3学年 4学年 5学年 6学年
教科 国語 272 280 245 245 195 190
社会 70 85 90 100
算数 124 165 150 150 150 150
理化 70 90 95 95
生活 30 30
音楽 68 70 60 60 50 50
図画工作 68 70 60 60 50 50
家庭 60 55
体育 90 90 90 90 90 90
総合 0 0 0 0
英語科 27 25 35 35 35 35
郷土科 20 20 25 25 25 25
情報科 15 20 35 35 35 35
道徳 34 35 35 35 35 35
特別活動 学級活動 34 35 35 35 35 35
児童会活動 (6) (6) (6) (6) (6) (6)
ク・委活動 (22) (22) (22)
学校行事 (82) (66) (69) (72) (72) (78)
  782
(88)
840
(88)
910
(88)
945
(78)
945
(78)
945
(84)

-- 登録:平成23年11月 --