コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)

実践研究実施報告書、研究開発実施報告書 三重県津市立南が丘小学校

都道府県名 三重県
学校名 津市立南が丘小学校

1 実践研究の概要・成果及び課題

実践研究のテーマ
学校の自主性・自律性の確立をめざす新しいタイプの学校づくのシステムの構築

1 研究の推進体制

(1) 実践研究推進会議
 本実践研究は、学校の裁量権の拡大や保護者・地域住民の学校運営への参画など新しいタイプの学校づくりのためのシステムの構築についての研究であるため、三重県教育委員会津市教育委員会、南が丘小学校及び南が丘地域教育委員会(地域学校協議会)が連携・協力のもとその推進に当たっていく必要がある。そこで、実践研究推進会議を設置し、それぞれの代表が参加し、研究内容についての共通理解を図りながらその推進について協議する。

(2) 組織
 委員は、学識経験者・三重県教育委員会・津市教育委員会・南が丘小学校・南が丘地域教育委員会、保護者により構成

(3) 研究推進のイメージ

 研究推進イメージ

2 実践の成果と課題

(1)学校と地域との連携について
1.保護者や地域住民の参加による協議組織の活用について
○名称 : 「南が丘地域教育委員会」(Me)
○委員構成 : (12名)

 委員構成

○部会:「学校協働部会」「地域連携部会」「安全部会」「コミュニティファンド事業部」
○目的:家庭・地域・学校の連携、学校運営・教育への参画 等
○学校との関係:学校との緊張感のある協働関係
○委員会・部会開催:年間40回以上開催
○主な活動内容
・学校外部評価と学校への「提言」
 昨年度末に全保護者・地域関係者を対象にアンケート調査を実施し、その結果をもとに学校に対し、よりよい学校づくりに生かすため外部評価としての「提言」を行った。
・「夏休み子ども教室」の開催
 夏休みに地域主導による学習教室を「防災教室」「平和教室」「料理教室」「川の水質調査の4講座開催し、親子のふれあう一機会とした。
・「教職員とMe委員との懇談会」の開催
 新しいタイプの学校づくりや今後の協働のあり方について協議。
・「地域の子どもを語る会」
 地域の団体やサークル関係者の集いを企画し、交流を図るとともに、子どもたちへの支援について協議した。
・コミュニティ・ファンド
 Me独自の長期展望に立った資金調達を図り、学校や地域の教育活動を支援していくという試みで、地域の商店等に協力を要請し具体的活動を展開している。
・広報「子どもがいちばん」の発行
 地域教育委員会の活動状況を保護者や広く地域に発信するため、2か月に一回発行している。(平成16年度1月現在20号発行)

○「保護者・地域の学校運営への参画」
 学校と南が丘地域教育委員会は「緊張感のある協働関係」を維持しつつ、「保護者地域の学校運営への参画」をすすめてきた。学校が年間計画を作成し、Meとの協議を経て保護者者・地域に対し、4月に説明会を開くことから1年がスタートする。10月には、前半の学校評価をもとに後半の学校運営について中間報告を行う。年度末には保護者・地域のアンケートと自己評価にもとづき、Meからの「提言」を受け、それを次年度に生かしていくという1年を通した「保護者・地域が参画するシステム」が定着した。

地域・保護者の学校運営への参画構造図

 地域・保護者の学校運営への参画構造図

2.地域人材の活用について
○人材確保の内容
・スクールサポーター: 学習活動に参加し、教師の子どもへの指導・支援を補佐する。
・ゲストティーチャー: 専門的な知識や技術などを指導する。
・スクールボランティア: その他、学校の環境整備(校内清掃、本箱作りなど環境整備)や本の読み聞かせ、図書入力などの協力。

○登録者数及び活用状況 (平成15年12月31日現在)

  登録者数(人) 活動状況(のべ人数)
スクールサポーター 20 29
ゲストティーチャー 9 15
ボランティア 42 202
市教育委員会   6
大学生(三重大生)   8
個別依頼   35
合計 71人 295人

 3.その他
○学校公開デーの開催(実施回数・期日等)
 保護者・地域の方々に、自由に学校生活を参観していただき、理解・支援・参加を促すために、一日学校を公開する計画を立てた。
 平成15年度は、できるだけ多くの保護者・地域の参加が得られるよう、年7回、全曜日において、終日自由参観を実施した。その結果、毎回のべ500~600人以上の保護者が参観し、祖父母、地域の方々も含め多くの参加を得ることができ、学校教育への理解が深まった。しかし、子どもたちの緊張を考えたり、兄弟関係の多い保護者の方が月に何度も来校されたりすることを考慮し、平成16年度は、月に1度は、学校に来て頂けるよう計画し実施している。
○学校説明会
 本校の学校目標・教育構想などを、保護者地域の方々に発信し、特色ある教育の実践を理解していただき、支援・参加を呼びかけることを目的に実施し、教育実践への説明責任をはたしてきた。

4.成果と課題
 南が丘地域教育委員会(通称:Me)は、平成14年8月に設置されて2年半が経過した。Meは、平成15年度から「学校協働部会」と「地域連携部会」を設置し、部会での計画案を委員会で協議するという形で活動をすすめてきた。平成16年度からは、「安全部会」を設置し、Meの組織力を生かして、地域全体で子どもたちを育む活動を展開し始めている。
 Meの最大の目的は、保護者・地域の学校運営への参画である。そのためMeは学校との信頼関係を最も大切にし、「緊張感のある協働関係」を維持するとともに、学校外部アンケートをもとにして年度末の学校への「提言」など積極的な学校への意見具申が行われてきた。学校は「提言」を重く受け止め、その実現に向けて実践しながら、協働関係を推進してきた。このような協働により、保護者・地域が学校運営に「参画」している実感を得、学校としてもさらなる学校教育の向上を図る体制を作り上げる必要が生まれてくる。このようなシステムの継続により、本校は「保護者・地域のニーズに応える学校」になりつつあると考えている。また、教育活動への参画という点でも、学習指導や学習環境整備等で積極的な協働が行われている。このような2つの側面をもった参画が積極的に行われることで、一層学校が開かれたものとなり、大きな教育効果をもたらしてきたと考える。
 この「参画」のシステムをつくるに当たっては、Meが学校との協議の場だけでなく、実際に子どもたちの教育に関わったり、地域間の連携や学校と地域のパイプとなる活動をしたりしていることに大きな意義があると考えている。Meが学校と共に教育に関わることにより、子どもたちを学校と共通の視点で見ることができ、またその結果として、地域・家庭の教育力の向上や学校に対する関心が高まることも期待されると考えている。
 現在、Meの活動は地域づくりにも重点を置きつつある。まさにその地域の中での役割をMeが担おうとしているといえる。その考えの延長線に「コミュニティファンド事業」がある。この事業は、学校教育や地域での活動支援の目的もあるが、地域や保護者がファンドに参画することによって、地域全体で教育支援をしていくという意識の高揚を図ることに最大の目的がある。様々な課題はあるが、大きな成果が望まれるところである。
 これらのMeの活動により、学校は「閉鎖的」というイメージは払拭され、「開かれた学校」へと変わりつつある。また、保護者・地域の学校に対する意識も大きく変わり、互いの信頼感が深まっていると考えている。  

(2)学校の裁量権の拡大に関する取組について

1.選択教科の実施
○ ねらい
 選択教科は、「子ども一人一人の興味・関心を生かし、のびのびと楽しく学びながら長所や可能性を伸ばす。また、小学校高学年で、主体的な学習態度を身につけさせ、中学校における選択能力の基礎を育てる。」というねらいをもって新設した。本校は教科担任制を実施しているため、各教科の指導と関連させながら、より基礎的・補充的・発展的な授業を展開していくことができる。さらに、地域ボランティア登録者が大変多く、内容も多種多様であり、地域の人々の学校教育への参画を求める声がある。そのことにより、子どもたちがより専門的な知識や技術にふれることができ、児童の興味・関心が引き出され、充実した授業ができると考えた。

○ 目標
(1) 自分らしさを発揮して、伸び伸びと楽しく学ぶことができる。
(2) 興味・関心をもって、主体的に学習に取り組むことができる。
(3) 自らが選択することにより、新しい自分を発見したり、自信をつけたり、可能性を見つけたりすることができる。  

○ 平成15年度 選択教科の取り組み
(1)実施期間 前期 5月19日~7月10日 後期 9月9日~11月6日
(2)実施時間 全26時間 オリエンテーション1時間+2時間(90分)×6回
(3)講座数 21講座 

○ 平成16年度 選択教科の取り組み
(1)実施学年  5・6年生
(2)実施期間  10月8日(金曜日)~11月11日(木曜日)
(3)実施時間  13時限 オリエンテーション1時間+2時限×6回
(4)講座担当者   1年・2年・5年・6年各担任、担任外、ゲストティーチャー
 ※ゲストティーチャーを迎えている講座は、ゲストティーチャーと教師の複数担当とする

(5)講座数  19講座

(6)講座内容
 ○ 各教科に基づく。
 ○ 発展的な学習内容、基礎的・補充的な学習内容のものとする。

(7)評価の方法   
・学校自己評価
 各講座「単元、題材」「ねらい」「学習内容」の実施計画書を作成する。
 毎時、講座終了後に本時の評価を行い、今後の指導の手直しをする。
・児童への評価
 「学習の記録」(観点別)を作成し、それに基づいて各児童別に評価する。
 学習指導要領の観点に沿ったものであること。また、発展的な内容の講座については相応の観点にすること。

○ 成果と課題
 教師とゲストティーチャーとのうち合わせ時間をしっかりとったことにより、授業のねらいを共に理解し合え、児童の興味・関心や、児童一人ひとりにそった充実した授業を展開することができた。
 「選択した教科のおもしろさを見つけた」「自分がこんな事もできたんだという驚きを感じた」「もっとやってみたい」「苦手な教科が好きになった」等さまざまな児童の感想がよせられた。このことからも、選択教科の基礎的・補充的、発展的な学習内容は、個人に応じた教科内容を選択できるので、児童の興味・関心を引き出すとともに、さらなる向上心・追究心を育むことができたといえる。また、授業後の振り返りは、次時への指導内容に生かすことができ、児童の能力や長所を引き出すことにつながった。
 しかし、児童へのきめ細やかな対応をするために、全ての講座に教師とゲストティーチャー、あるいは教師と教師の担当複数制が望まれる。また、講座担当者は、学級担任や教科担任との連携を一層密にとることにより、児童一人ひとりの実態把握に努め、ゲストティーチャーとも打ち合わせをしっかり行い、学習内容の充実に努めていくことが必要である。  

2.英語科の新設
○趣旨
 本校は、津市教育委員会によるALTの派遣により、児童が英語に親しむ教育を一定の期間実施してきた。この取り組みは短時間ではあったが、子どもたちは英語の発音を聞いたり、海外の文化に触れたりすることにより、英語のおもしろさに強い関心を示し、充実した効果的な時間となった。多くの子どもたちが英語を話せるようになりたい・できるならネイティブな話し方をしたいと思っている実態もある。また、地域からの国際的な視野に立った英語教育への期待があることから、本校の特色づくりのひとつとして英語科を新設した。
 英語をネイティブな音とアクセントとリズムで話せることが、英語でコミュニケーションをとるうえにおいてきわめて有効と考え、音声面での学習能力と感覚に優れている小学校1年生より実施した。

○目標
・ネイティブの発音を聞き、英語を本来の音とアクセントとリズムで話すことができるようになる。
・英語に対する興味・関心をもち、英語に親しみ、積極的にコミュニケーションを楽しむことができる。

○指導形態と指導者の役割(3人体制による授業形態)
HRT(Home Room Teacher・・・担任教師)
・学校で作成した指導案をもとに、イニシアティブをとりながら児童の実態にあった授業づくりをする。
・ETの力を借りて、ネイティブな発音を定着させる。
 ET(English Teacher・・・英語指導教師)
・児童にネイティブな音やリズム、口の動かし方、息のつぎ方等を、自然に身につけさせる。
 JT(Japanese Teacher・・・日本人英語教師)
・担任とETとの連携がスムーズにいくよう通訳をする。
・必要に応じ、ETと児童との意思疎通を図る。
・発音の部分での補助をする。

○1時間の授業の展開
Greeting → Song → Phonics → Review → New words → Game →
はじめの挨拶  歌   音声練習  前時の復習  今日の学習  Newwordsをつかって
Today's expressions → Song → Greeting
New wordsの確認    歌   終わりの挨拶

○指導案
・指導案をもとに英語担当者と学級担任との打ち合わせを行い、授業のねらいについて共通理解する。
・指導案は、3人体制で行うにはなくてはならないものである。
・英語部会が低・中・高のパターンで作成する。
・各担任の個性や工夫が生かせる指導案にする。

○評価
・教師の振り返り
授業終了後に、本時における振り返りを行い、次時の指導に生かす。
・児童の振り返り
各児童が、授業終了後に本時における振り返りを行う。

○児童への評価
「学習の記録」に、関心・意欲・態度の観点で評価する。

○成果と課題
 本校の英語科の特色である3人体制において、それぞれの役割を生かすことができた。
 担任は、授業のイニシアティブをとることにより、学級の児童にあった授業を展開することで、児童の知識定着や安心感を与えることにつながった。
 ETは、ネイティブな発音を発することにより、児童の手本となり児童の発音の向上につながった。JTは、HRT・ET間、ET・児童間のコミュニケーションがスムーズにとれるよう手助けをするだけでなく、発音指導の面においても協力できた。
 来年度、それぞれの役割を生かしながら、より一層児童の実態にあった授業を展開するためには、さらに入念な打ち合わせを行うことが必要である。
 また、年度途中におけるフォニックスの導入等のカリキュラムの更新は、児童に発音を意識づける要因のひとつとなり、口やあご・舌を駆使して発音しようと試みる姿が見うけられるようになった。低学年においても絵本や歌等で英語に親しみながら楽しく学習することができた。本年度は、低・中・高のカリキュラムで行ったが、来年度は各学年におけるカリキュラムが必要となる。
 評価においては、授業終了後に児童・教師ともに振り返りを行った。それをもとに次時の指導や指導案作成に生かしたり、カリキュラム見直しのひとつの資料として生かしてきた。児童への評価は、本年度は英語を実施した初年度でもあり、指導内容や指導方法も研究の段階であるため、関心・意欲・態度の観点のみの評価を行った。来年度は評価内容・評価方法についてさらに研修を深めていきたい。

3 教育委員会による取組の成果と課題

(1) 小中一貫教育特区の申請・認定による今後の教育効果
1.保護者・地域住民の学校運営への参画の地域全体への拡大
 実践研究校の校区は1小学校1中学校の校区であり、小中一貫教育特区の申請・認定を受けて、平成17年度から実施する。このことにより、実践研究校における保護者・地域住民の学校運営参画の取組を、隣接する中学校区にも拡大し、その成果をより一層実効あるものとし、地域における学校・保護者・地域住民が一体となって子どもたちの育成を図ることができる。

2.一貫性のある生きる力の育成をめざす教育の実現
 小中一貫教育特区のモデル地域となることで、これまで実践研究校で取り組んできた小学校における選択教科や英語科といった小中学校で一貫性のある生きる力の育成をめざす教育活動をより進めたり、南が丘地域教育委員会から提言される保護者・地域住民の学校の教育活動に対する種々のニーズを小中学校の相互連携の中で対応することが可能となる。

(2) 学校評議員の見直し-地域組織の活用へ
 南が丘地域教育委員会の取組により、これまでの学校評議員の在り方を見直し、学校評議員に代わって、地域組織などの活用ができるようにした。平成16年度は3校で地域組織を学校評議員として登録し、活動を行ってきた。学校運営に対して意見や助言等を行うだけでなく、組織が学校や地域住民と一体となって子どもたちに対する教育活動を行うことができ、特色ある開かれた学校づくりの推進を図ってくることができた。

(3) 3年間の取組成果の検証
 本研究を中核として平成14年度より取り組んできた3年間の津市における教育改革の取組成果の検証を行い、これからの新しい公立学校づくりに向け、平成16年12月に「教育改革フォーラムin津」を開催した。特にパネルディスカッションでは、慶応大学大学院教授金子郁容氏をコーディネーターとし、文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長前川喜平氏、立教女学院短期大学助教授河邉貴子氏、三重大学教育学部助教授岡野昇氏、本市教育長をパネリストとして、これからの公立学校づくりについての議論を行った。これまでの実践研究校における取組を紹介するとともに、会場に集まった本市教職員をはじめ、保護者、一般市民らとともに、地域における新たな学校づくりについての意見交換を行うことができた。

2 研究開発の概要

 研究開発の課題
 学校の独自性を生かし柔軟な教育課程の編成と子ども一人一人の学びの状況等に応じた学習システムの構築による確かな学力の向上

○研究のねらい
 当校の校区は1中学校1小学校であり、小中一貫教育を見据える中で、地域の特性や保護者のニーズに主体的に対応し、子ども一人一人の個性を伸長するために小学校における選択教科と英語科の新設・学校の独自性を生かした柔軟な教育課程の編成・小学校高学年における教科担任制の実施など、子どもたち一人一人の学びの状況に応じた学習システムの構築の研究を行い、確かな学力の育成をめざす

○研究内容
 選択教科については、平成14年度、小中一貫教育を見据える中で、小学校5・6年生で全教科(体育を除く)と英語の試行を実施した。平成15年度には、「総合的な学習の時間」の授業時間を活用して本格実施し、中学校における選択能力の基礎を育てることをねらいとした。平成16年度には、「総合的な学習の時間」の授業時間を一部変更して、すべての教科における選択教科を継続して実施した。具体的には、教科の補充的な講座や児童の興味関心を生かした発展的な講座など21講座を開設し、学校の教職員の他、地元大学生や地域の外部講師、ゲストティーチャー等40名で担当し、前期6回・後期6回の授業を90分の枠で実践した。また、講座ごとに「自己評価表」を作成し、児童に対しては観点別に「学習の記録」を作成し、その効果的な指導のあり方について研究をすすめた。また学校自己評価を導入し、子どもたち一人一人の学びの状況に応じた学習システムの構築などの研究を行い、確かな学力の育成をめざしてきた。
 「英語科」については、平成15年度、地域からの国際的な視野に立った英語教育への期待の大きさから、本校の特色の一つとして、1年生から6年生まで位置づけた英語科新設にむけての試行を実 施した。本校の目指す英語科は、「小学校低学年からネイティブの音を聞き、復唱することにより、英語を本来の音とアクセントとリズムで話すことができる。」ことと「英語に対する興味・関心を持ち、英語に親しむ心情を育て、積極的にコミュニケーションを楽しむ態度と豊かな情操を養う。」が目標である。この取組を通して、子どもたちは、英語の表現のおもしろさや新しく聞く発音に強い関心を示すとともに英語が使える子どもの育成のための効果的な時間となった。
 平成16年度は、平成15年度の英語の試行をふまえ、全学年週一回を見通した英語科の新設、引き続き小学校高学年における選択教科、教科担任制を実施し、本校独自の柔軟な教育課程の編成や学習システムの構築等の研究を行い、確かな学力の向上を目指してきた。

○成果と課題
 選択教科については、教師とゲストティーチャーとのうち合わせ時間をしっかりとったことにより、授業のねらいを共に理解し合い、児童の興味・関心や、児童一人ひとりにそった充実した授業を展開することができた。
 「選択した教科のおもしろさを見つけた」「自分がこんな事もできたんだという驚きを感じた」「もっとやってみたい」「苦手な教科が好きになった」等さまざまな児童の感想がよせられた。このことからも、選択教科の基礎的・補充的、発展的な学習内容は、個人に応じた教科内容を選択できるので、児童の興味・関心を引き出すとともに、さらなる向上心・追究心を育むことができたといえる。また、授業後の振り返りは、次時への指導内容に生かすことができ、児童の能力や長所を引き出すことにつながった。
 しかし、児童へのきめ細やかな対応をするために、全ての講座に教師とゲストティーチャー、あるいは教師と教師の複数担当制が望まれる。また、講座担当者は、学級担任や教科担任との連携を一層密にとることにより、児童一人ひとりの実態把握に努め、ゲストティーチャーとも打ち合わせをしっかり行い、学習内容の充実に努めていくことが必要である。
 英語科については、本校の英語科の特色である3人体制において、それぞれの役割を生かすことができた。
 担任は、授業のイニシアティブをとることにより、学級の児童にあった授業を展開することがで、児童の知識定着や安心感を与えることにつながった。ETは、ネイティブな発音を発することにより、児童の手本となり児童の発音の向上につながった。JTは、HRT・ET間、ET・児童間のコミュニケーションがスムーズにとれるよう手助けをするだけでなく、発音指導の面においても協力できた。来年度、それぞれの役割を生かしながら、より一層児童の実態にあった授業を展開するためには、さらに入念な打ち合わせを行うことが必要である。
 また、年度途中におけるフォニックスの導入等のカリキュラムの更新は、児童に発音を意識づける要因のひとつとなり、口やあご・舌を駆使して発音しようと試みる姿が見うけられるようになった。低学年においても絵本や歌等で英語に親しみながら楽しく学習することができた。本年度は、低・中・高のカリキュラムで行ったが、来年度は各学年におけるカリキュラムが必要となる。
 評価においては、授業終了後に児童・教師ともに振り返りを行った。それをもとに次時の指導や指導案作成に生かしたり、カリキュラム見直しのひとつの資料として生かしてきた。児童への評価は、本年度は英語を実施した初年度でもあり、指導内容や指導方法も研究の段階であるため、関心・意欲・態度の観点のみの評価を行った。来年度は評価内容・評価方法についてさらに研修を深めていきたい。

-- 登録:平成23年11月 --