特定大学技術移転事業の実施に関する指針

(平成10年8月5日 文部省・通商産業省告示第1号)
平成14年6月27日 文部科学省・経済産業省告示第14号
改正 平成20年12月1日 文部科学省・経済産業省告示第8号

大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(平成十年法律第五十二号)第三条第一項の規定に基づき、同法第二条第一項に規定する特定大学技術移転事業の実施に関する指針を次のように定めたので、同法第三条第四項の規定に基づき公表する。

一 特定大学技術移転事業の推進に関する基本的な方向

 大学(高等専門学校及び大学共同利用機関を含む。以下同じ。)には、我が国の研究資源の多くが集中しており、高い研究水準と技術革新を生み出す大きな潜在能力が存在している。このため、大学における技術に関する研究成果(以下「特定研究成果」という。)を、特許制度等を活用することによって効率的に民間事業者へ移転し、産業界において有効に活用を図ることは、新たな事業分野の開拓及び産業の技術の向上にとって極めて重要であり、喫緊の課題である経済構造改革の強力な推進に大きく寄与するものである。
また、こうした大学から産業界への技術移転の促進は、大学にとっても産業界からの情報や資金の還流等を通じて研究活動の活性化が図られる点で有益である。
したがって、本事業の健全な発展を図ることにより、特定研究成果の企業化及び社会における有効活用を促進するとともに、その結果得られる資金等を大学における研究活動のために役立てる好循環の仕組みを構築していくことが必要である。

二 特定大学技術移転事業を実施する者の要件に関する事項

 特定大学技術移転事業を実施する者は、株式会社、有限会社、一般社団法人、一般財団法人、特定非営利活動法人、学校法人その他の法人(日本国内に住所又は居所を有する外国法人を含む。)であって、本事業の趣旨に沿った運営を図ることができるものとする。

三 特定大学技術移転事業の内容及び実施方法に関する事項

(一)特定大学技術移転事業に必要とされる業務内容

 特定大学技術移転事業は、特定研究成果を発掘し、評価し、及び選別し、当該特定研究成果の活用を行うことが適切かつ確実と認められる民間事業者に対して移転する事業であって、産業界からの情報や資金の還流等を通じて大学における研究の進展に資するものである。
具体的には、特定大学技術移転事業を実施する者は、次の1から4までに掲げる一連の業務を、自らの組織内においてすべて行うか、又は当該業務の一部を適確かつ円滑に実施することができる委託先に委託すること等により、責任を持って遂行することとする。
5から8に掲げる業務については、1から4までに掲げる業務に附帯して行う場合に限り、特定大学技術移転事業として行うことができる。

1 企業化し得る特定研究成果の発掘、評価、選別等

  • イ 大学や研究者との提携関係を築くことにより、特定研究成果の安定的な供給を受けること。
  • ロ 提携関係を有している研究者等からの情報提供を受け、又は自ら情報の収集・発掘を行い、市場ニーズを踏まえながら、事業の実現可能性、収益性及び特許化可能性の観点から特定研究成果の評価及び選別を行うこと。
  • ハ 大学や研究者から「特許を受ける権利」等の形態で特定研究成果を譲り受ける場合等においては、事業の実現可能性、収益性及び特許化可能性等を十分検討した上で行うこととし、譲り受けた特定研究成果については可能な限り特許権等の取得を図るよう努めること。
  • ニ 特許出願等を行わない場合や保有する特許権等について特許料等の納付を停止しようとする場合は、特定研究成果の譲渡を受けた相手に権利を返還するよう努めること。

2 特定研究成果に関する情報の提供等

  • イ 大学や研究者から譲り受けた特定研究成果のうち企業化の可能性が高いと評価したものについて、当該特定研究成果の活用が期待される民間事業者に対して情報提供を行うこと。
  • ロ 情報提供に際しては、特定の民間事業者に対して不当な差別的取扱いをすることのないよう努めること。
  • ハ 会員制を採用し、会員に対して優先的に特定研究成果についての情報提供を行う場合は、会員になるための条件において不当な差別的取扱いをすることなく、広く会員を募集するよう努めること。
  • ニ 特許出願等の出願公開前における情報提供等については、発明等の新規性の喪失等を回避するため、その内容の秘密保持に十分注意すること。

3 特許権等についての民間事業者への実施許諾等

 大学や研究者から譲り受けた特許権、実用新案権、回路配置利用権等に係る発明等については、自ら実施することなく、企業化の意思のある民間事業者に対して積極的に譲渡、専用実施権の設定、通常実施権の許諾等を行い、当該発明等の企業化を通じた効率的な収益の実現を図ること。

4 実施料等収入の還流等

  • イ 特定研究成果の民間事業者への移転を通じ、資金面において研究活動の活性化に寄与するため、その実施料等の収益を研究者のみならず大学に対しても寄附その他の方法により一定割合を還流すること。
  • ロ 研究者及び大学に対する収益の配分及び還流の方法について広く公表すること。

5 経営面での助言

 特定研究成果の移転先の民間事業者に対して税務、会計、法務その他経営に関する事項について助言を行うこと。

6 技術指導等

  • イ 特定研究成果の移転先の民間事業者に対して技術指導、特定研究成果の周辺技術に係る技術情報の提供等を行うこと。
  • ロ 特定研究成果の周辺技術に係る研究開発等を行うこと。

7 金融面での支援

 特定研究成果の移転先の民間事業者に対して特定研究成果の企業化に必要な資金調達先の紹介、特定大学技術移転事業の対価として新株、新株予約権又は新株予約権付社債等の引受け及び当該引受けに係る株式、新株予約権(その行使により発行され、又は移転された株式を含む。)又は新株予約権付社債の保有等を通じ、当該民間事業者の資金調達の円滑化を図ること。

8 その他特定研究成果の効率的な移転に必要な業務

 5から7までに掲げる業務を効率的に行うための共用施設の運営その他の特定研究成果の効率的な移転に必要となる業務を行うこと。

(二)経営方針の策定及び中長期的事業計画の作成

 特定大学技術移転事業を実施する者は、基本的な経営方針を策定するとともに、将来にわたって当該事業を存続させることを前提として、当該事業の実施に関する中長期的な事業計画を作成することとする。

(三)適切な人材の確保

 特定大学技術移転事業を実施する者は、事業を適切かつ確実に遂行するため、業務全体の内容を責任を持って監督し得る能力を有する常勤の役職員を一名以上確保することとする。また、特許等に関する知識が豊富な者や、技術のマーケティング及びライセンス活動の能力があると考えられる人材を配置するよう努めることとする。

(四)その他

 特定大学技術移転事業以外の事業を同一の主体が併せて営む場合は、特定大学技術移転事業に係る取引とそれ以外の事業に係る取引に関する経理を区分するなど特定大学技術移転事業に係る経理を明確化することとする。

四 大学における学術研究の特性その他特定大学技術移転事業の実施に際し配慮すべき事項

(一)大学における学術研究の特性等への配慮

 大学は次代を担う人材の養成と学術研究の推進を基本的な役割としている。また、学術研究は本来、研究者の自由かったつな発想と研究意欲を源泉として展開されることによって初めて優れた成果を期待できるものである。このため、特定大学技術移転事業を実施する者は、常に、研究者の自主性や大学の主体性を尊重するとともに、これら大学が行う教育や学術研究に支障を来すことのないよう十分に配慮することとする。

(二)中小企業者への配慮

 中小企業者は、機動的な意思決定が可能なため、新技術の企業化に適しており、大企業においては死蔵されてしまうような市場規模が小さい技術を活用することが可能であることから、特定研究成果を活用し新規産業を創出していく主体として重要な役割を有するものである。このため、特定大学技術移転事業を実施する者は、特定研究成果の活用に関する情報の提供及び実施許諾等に際し、中小企業者に対して不当な差別的取扱いをすることのないよう適切に配慮することとする。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課

(科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課)

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