大学における教育内容等の改革状況について(令和元年度)

文部科学省では、令和元年度の大学における教育内容等の改革状況について調査を行い、この度、その結果を取りまとめましたのでお知らせいたします。

1.調査目的

大学における教育内容・方法の改善等の実施状況について定期的な調査を実施し、国民への情報提供に努め、各大学のより積極的な教育内容等の改善に関する取組を促す。

2.調査方法等

・調査対象:国公私立786大学(短期大学、令和元年度に学生の募集を停止した大学を除く。)
・調査方法:文部科学省ホームページに調査票・回答票等を掲載し、全大学に回答依頼の文書を発出。各大学の記入後に回答票を回収、集計。
・回答率:97%(763大学が回答。うち、学部段階の母数は国立82大学、公立85大学、私立575大学の計742大学)

3.調査結果

1 概要

<進展が見られた事項>
 近年各大学によって取り組まれるようになり、全国的にはまだ普及していないが、進展があった事項は以下のとおりである。
・学部段階において、カリキュラム編成上の取組としてナンバリング(※1)を実施している大学数
… H27:265大学(36%)→ R01:451大学(61%)
・学部段階において、異なる授業科目で教える内容が重複するのを避けるため、教員間で、授業科目の内容を調整している大学数
… H27:421大学(56%)→ R01:480大学(65%)
・学部段階において、一部の科目をルーブリック(※2)により明示している大学数
… H27:95大学(12.7%)→ R01:209大学(28.2%)

<特記事項>
(1)三つの方針に基づいた大学教育の質の向上のため取組
 大学において育成すべき力を学生が確実に身に付けるためには、三つの方針(卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針)に基づいて個々の授業科目等を越えた大学教育全体としてのカリキュラム・マネジメントを確立し、教育課程の体系化・構造化を行い、学生等へ分かりやすく示すこと、学修成果に関する情報の把握・測定を通じた教育内容の質向上に向けた取組を行うことが重要である。平成29年度から三つの方針の一体的な策定・公表が各大学に義務付けられ、また令和2年1月には、学修者本位の教育の実現を図るための取り組むべき事項と留意点をまとめた「教学マネジメント指針」(中央教育審議会大学分科会)が策定された。このような中で、年々上昇傾向にあるものの、三つの方針の達成状況を点検・評価している大学は約82%に留まっている状況である。
 また、
・三つの方針に基づく教育の成果を点検・評価するための、学位を与える課程共通の考え方や尺度を策定している大学は約57%
・学修状況の分析や教育改善を支援する体制の構築している大学は約60%
・全学的な教育目標等とカリキュラムの整合性を検証する全学的な委員会を設置している大学は約46%
に留まっており、策定・公表した三つの方針に基づいた具体的な取組の広がりも十分とは言えない状況にある。三つの方針に基づく大学教育の質の向上のための、各大学における具体的な取組の更なる進展が必要である。
 
(2)社会に対して積極的に説明責任を果たしていくための取組
 各大学が、学生や学費負担者、入学希望者等の直接の関係者に加え、幅広く社会に対して積極的に説明責任を果たしていくことが重要である。また、大学教育の質向上という観点からも、情報公表には重要な意義がある。情報公表に関する各種法令(※3)において、情報公表が義務付けられているところであり、本調査では全ての大学において一定の情報公表が行なわれていることが確認されている(教育研究活動等の情報を公表している大学は100%)。
 しかし、
・学生の学修時間を公表している大学は約40%
・大学の教育研究活動を通じた学生の成長実感を公表している大学は約29%
・教員一人当たりの学生数を公表している大学は約63%
に留まっており、「教学マネジメント指針」において社会からその公表が強く求められている上記項目等の公表については、十分とは言えない状況にある。地域社会や産業界、大学進学者等の大学の外部からの声や期待を意識し、社会からの信頼と支援を得るという好循環を形成するため、さらに社会からの評価を通じた大学教育の質の向上を進めるためには、より多元的な情報を公表し、大学全体の姿をできるだけ包括的に描く必要があり、各大学におけるより積極的な取組が期待される。

(3)新型コロナウイルス感染症の影響による遠隔授業を活用した大学数の増加について
 令和元年度末より新型コロナウイルス感染症の影響により、大学においては、遠隔授業の活用が進んだ。令和元年度実績を確認すると、約37%と前年度(約28%)より約10%増加していることが明らかになった。令和2年度調査においては、より多くの大学が実施したことが確認されると予想されるとともに、ポストコロナ時代においても遠隔授業には時間や場所の制約がないなどのメリットがあるとされており、引き続き、各大学において遠隔授業を活用した取組が進展されることが予想される。


 (※1) ナンバリング
カリキュラムの体系性を示す為に、各授業科目に意味づけされた番号を付与すること。

(※2) ルーブリック
米国で開発された学修評価の基準の作成方法であり、評価水準である「尺度」と、尺度を満たした場合の「特徴の記述」で構成される。記述により達成水準等が明確化されることにより、他の手段では困難な、パフォーマンス等の定性的な評価や、質的評価、直接評価に向くとされ、評価者、被評価者による標準化等のメリットがある。

(※3) 情報公表について、学校教育法第113条では、「大学は、教育研究の成果の普及及び活用の促進に資するため、その教育研究活動の状況を公表するものとする。」とされている。また、学校教育法施行規則172条の2において規定する事項を公表することが義務付けられているとともに、その他学生が修得すべき知識及び能力に関する情報を積極的に公表することが努力義務となっている。

お問合せ先

高等教育局大学振興課大学改革推進室

電話番号:03-5253-4111(内線:3334)

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。

(高等教育局大学振興課大学改革推進室)