教育振興基本計画

教育振興基本計画(平成20年7月1日閣議決定)

文部科学省

「教育振興基本計画」が策定されました。

 「教育振興基本計画」は、教育基本法に基づき政府として初めて策定した計画です
 教育基本法に示された教育の理念の実現に向けて、今後10年間を通じて目指すべき教育の姿を明らかにするとともに、今後5年間(平成20〜24年度)に取り組むべき施策を総合的・計画的に推進するものです

◆教育基本法(平成18年12月22日法律第120号)

(教育振興基本計画)

第17条  政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。
2  地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

策定までの経緯

平成12年12月 教育改革国民会議報告
  • 教育改革国民会議とは、21世紀の日本を担う創造性の高い人材の育成を目指し、教育の基本に遡って幅広く今後の教育のあり方について検討するため、内閣総理大臣が有識者の参集を求めた会議です
平成13年11月 中央教育審議会に諮問
平成15年3月 中央教育審議会答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」
平成18年12月 改正教育基本法公布・施行
平成19年2月 文部科学大臣から中央教育審議会に対して審議要請
平成20年4月 中央教育審議会答申
『教育振興基本計画について−「教育立国」の実現に向けて−』
平成20年7月1日 教育振興基本計画閣議決定

今後10年間を通じて目指すべき教育の姿

知識基盤社会の進展や国内外における競争の激化の中で、教育の発展なくして我が国の持続的発展はなく、社会全体で「教育立国」の実現に取り組むことが必要です。

義務教育修了までに、すべての子どもに、自立して社会で生きていく基礎を育てます

○ 公教育の質を高め、信頼を確立します

このため、世界トップの学力水準を目指すとともに、知・徳・体のバランスの取れた力を育てます。また、だれもが安心して子どもを学校に通わせ、優れた教員の下で教育を受けることができるようにします

○ 社会全体で子どもを育てます

このため、家庭の教育力を高めます。また、地域全体で子どもをはぐくむことができるよう、その教育力を高めるとともに、地域が学校を支える仕組みを構築します

社会を支え、発展させるとともに、国際社会をリードする人材を育てます

○ 高等学校や大学等における教育の質の保証・向上を図ります

あわせて、生涯を通じていつでも必要な学習を行うことができる機会の提供を推進します

○ 「知」の創造・継承・発展に貢献できる人材を育成します

このため、世界最高水準の教育研究拠点を重点的に形成するとともに、「留学生30万人計画」の推進をはじめ、大学等の国際化を推進します

目指すべき教育投資の方向

  • 我が国の教育に対する公財政支出は、他の教育先進国と比較して低いと指摘されています
  • 資源の乏しい我が国では人材への投資である教育は最優先の政策課題の一つであり、教育への公財政支出は個人及び社会の発展の礎となる未来への投資です
  • 上記の教育の姿の実現を目指し、OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考の一つとしつつ、必要な予算について財源を措置し、教育投資を確保していくことが必要です

【参考:教育投資における公財政支出の対GDP比の現状】

日本 OECD平均 アメリカ イギリス フランス ドイツ
3.5パーセント% 5.0パーセント% 5.1パーセント% 5.0パーセント% 5.7パーセント% 4.3パーセント%

資料:OECD「図表でみる教育−OECDインディケータ2007」

今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

基本的方向1:社会全体で教育の向上に取り組む

◎ 身近な場所での子育て等の支援

  • →誰もが身近な場所で、地域ぐるみの子育て支援や教育支援を受けたり、こうした活動に参加したりすることができるようにします

◎ 身近な場所での学習機会の充実

  • →学習者が身近な場所で、そのニーズに応じた学習機会を得ることができるよう、大学等における学習機会を確保します

1 学校・家庭・地域の連携・協力を強化し、社会全体の教育力を向上させます

【主な取組】
  • ◆広く全国の中学校区で「学校支援地域本部」など、地域ぐるみで学校を支援し子どもたちをはぐくむ活動を推進します
  • ◆コミュニティ・スクールの設置促進、地域の実情に応じた学校選択制、教育効果を高めるための学校の適正配置など、家庭・地域と一体となって学校の活性化に向けた取組を進めます
  • ◆広く全国の小学校区で「放課後子どもプラン」など、放課後や週末の子どもたちの体験・交流活動等の場づくりを推進します

2 家庭の教育力の向上を図ります

【主な取組】
  • ◆子育て経験者、民生委員や保健師などの専門家が連携し、チームを構成し支援するなど、身近な地域において、きめ細かな家庭教育支援が実施されるように促します
  • ◆幼稚園、保育所や認定こども園を活用した、保護者同士の交流、子育てに関する相談・助言など子育て支援を促します

3 人材育成に関する社会の要請に応えます

【主な取組】
  • ◆小学校段階からのキャリア教育、特に中学校を中心とした職場体験活動や普通科高等学校での取組を推進します
  • ◆専門高校等における職業教育や、大学・短期大学・高等専門学校・専修学校等における専門的職業人や実践的・創造的技術者の養成を推進します
  • ◆産業界・地域社会との連携による人材育成を強化します

4 いつでもどこでも学べる環境をつくります

【主な取組】
  • ◆地域における住民の学習活動の拠点となるよう、図書館・博物館等の活動を支援します
  • ◆公民館等の社会教育施設を「地域の学習拠点」として機能するように促します
  • ◆成人の週1回以上のスポーツ実施率を50パーセントとすることを目指し、地域における身近なスポーツ環境を整備するため、総合型地域スポーツクラブなどの取組を支援します

基本的方向2:個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる

◎ 確かな学力を身に付けた子どもを育成

  • →世界トップの学力水準を目指し、国際的な学力調査等において、学力の高い層の割合を増やすとともに、学力の低い層の底上げを図り、その割合を減少させます

◎ 規範意識、生命の尊重、他者への思いやりなどを培うとともに、法やルールを遵守し、適切に行動できる人間を育成

  • →「学校のきまりを守っている」「学校生活が充実している」「落ち着いて授業を受けることができる」と感じている子どもを増やします

◎ 生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣や意欲、能力を育成

  • →長期的に低下傾向にある子どもの体力を上昇傾向に転じさせ、昭和60年頃の水準への回復を目指します

1 知識・技能や思考力・判断力・表現力、学習意欲等の「確かな学力」を確立します

【主な取組】
  • ◆授業時数や指導内容を増加する新学習指導要領の円滑な実施を図るため、教職員定数の在り方、算数・数学、理科の補助教材の作成・配付などの条件整備について検討します。特に小学校の外国語活動や、中学校における武道必修化、理科の観察・実験等の活動の充実に伴う施設・設備の整備等を支援します
  • ◆学校段階間の円滑な連携・接続の取組の検討など総合的な学力向上策を実施するとともに、教科書の質・量の改善を図ります
  • ◆全国学力・学習状況調査を継続実施するとともに、その結果を活用した学校改善への支援等を行います

2 規範意識を養い、豊かな心と健やかな体を育成します

【主な取組】
  • ◆道徳教育の充実に向けて、指導方法・指導体制等に関する研究や、教材の国庫補助制度等を検討します
  • ◆伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する観点から、伝統・文化等に関する教育を推進します
  • ◆全国体力・運動能力等調査を実施するとともに、体力向上の取組を推進します
  • ◆いじめ等に対する取組を推進するとともに、不登校の子ども等の教育の機会について支援を行います
  • ◆自然体験活動や集団宿泊体験など、様々な体験活動や読書活動を推進します
  • ◆栄養教諭を中核として、学校における食育を推進します

3 教員の資質の向上を図るとともに、一人一人の子どもに教員が向き合う環境をつくります

【主な取組】
  • ◆メリハリのある教員給与体系を推進します
  • ◆教職員配置の適正化や外部人材の積極的な活用など、教員が子ども一人一人に向き合う環境をつくります
  • ◆教員養成・研修等を推進するとともに、教員免許更新制の円滑な実施などの教員の資質向上を推進します
  • ◆指導が不適切な教員に対して厳格な人事管理の実施を促します

4 教育委員会の機能を強化するとともに、学校の組織運営体制を確立します

【主な取組】
  • ◆教育委員会の責任体制の明確化を図るとともにその体制の充実を促します
  • ◆副校長、主幹教諭、指導教諭という新しい職の設置等による学校の組織運営の改善を促します
  • ◆学校評価システムを充実し、その結果に基づく学校運営の改善を促します

5 幼児期における教育を推進します

【主な取組】
  • ◆認定こども園の認定件数2,000件以上を目指すなど、幼児教育を受けられる機会の提供を推進します
  • ◆幼児教育の無償化の検討を含め保護者負担の軽減策を充実します

6 特別なニーズに対応した教育を推進します

【主な取組】
  • ◆特別支援教育、外国人児童生徒等の教育及び海外子女教育を推進します

基本的方向3:教養と専門性を備えた知性豊かな人間を養成し、社会の発展を支える

◎ 学士課程の学習成果として共通に求められる能力を養成

  • →学士課程の学習成果内容等の明確化や厳格な成績評価の導入等大学教育の質を確保するための枠組みを構築します

◎ 「知」の創造・継承・発展に貢献できる人材を育成

  • →国際的な競争力・存在感を備える教育研究拠点を各分野において形成することを目指し、大学における組織的な取組を推進します

◎ 大学の連携等を通じた地域再生への貢献

  • →地域再生の核の形成を目指し、大学等における組織的取組を推進します

1 社会の信頼に応える学士課程教育等を実現します

【主な取組】
  • ◆学士課程で身に付ける学習成果(「学士力」)の達成等を目指し、各大学等において教育内容・方法を改善するとともに、卒業認定も含めた厳格な成績評価システムが導入されるよう支援します
  • ◆各大学等が入学者受入方針の明確化を図りつつ、高等学校段階の学習成果を適切に評価する大学入試の取組を促すなど、高等学校と大学との接続の円滑化を図ります

2 世界最高水準の卓越した教育研究拠点を形成するとともに、大学院教育を抜本的に強化します

【主な取組】
  • ◆世界最高水準の卓越した教育研究拠点の形成を目指し150拠点程度を重点的に支援するとともに、大学院における組織的・体系的な優れた教育の取組を促します
  • ◆若手研究者が活躍できるようにテニュア・トラック制の導入や女性研究者等が活躍できるよう、研究と出産・育児等の両立のための仕組を導入します

3 大学等の国際化を推進します

【主な取組】
  • ◆2020年の実現を目途とした「留学生30万人計画」を関係府省が連携して計画的に推進します
  • ◆大学等の国際活動の充実を図ります

4 国公私立大学等の連携等を通じた地域振興のための取組などの社会貢献を支援します

【主な取組】
  • ◆複数の大学間の連携による多様で特色ある戦略的な取組を支援します
  • ◆生涯を通じて大学等で学べる環境づくりを通じて、大学等における社会人受入れを促します

5 大学の質の向上・保証を推進していきます

【主な取組】
  • ◆教員組織、施設・設備等に関して大学設置基準等の見直しを行うとともに事前評価の的確な運用を進めます。
  • ◆大学等と評価機関が行う効率的な評価方法の開発を促すとともに、認証評価等の大学評価を推進します

6 大学等の教育研究を支える基盤を強化します

【主な取組】
  • ◆大学等における基盤的経費を確実に措置するとともに、科学研究費補助金等の競争的資金等を拡充し、科学技術研究費補助金の間接経費30パーセント措置をできるだけ早期に実現します
  • ◆大学等の教育研究施設・設備の整備・高度化を支援します

基本的方向4:子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備する

◎ 安全・安心な教育環境の整備

  • →子どもたちが安全・安心で質の高い学校施設や教育環境で学ぶことができるようにします

◎ 教育の機会均等の確保

  • →能力があるにもかかわらず経済的理由によって修学が困難な者の教育の機会を確保される社会が実現します

1 安全・安心な教育環境を実現します

【主な取組】
  • ◆大規模な地震が発生した際に倒壊等の危険性の高い小・中学校等施設(約1万棟)について優先的に耐震化を支援するなど、学校等の教育施設の耐震化等の安全・安心な施設環境を構築します
  • ◆スクールガードリーダーを小学校5校に1人程度の割合の配置を目指すなど地域のボランティア等と連携による学校内外の安全確保に関する取組を推進します

2 質の高い教育を支える環境の整備を行います

【主な取組】
  • ◆「学校図書館図書整備5カ年計画」に基づく学校図書館資料の充実や司書教諭の配置など学校図書館の整備を推進します
  • ◆平成22年度までに、校内LAN整備率100パーセント、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数3.6人、超高速インターネット接続率100パーセント、校務用コンピュータ教員1人1台の整備、すべての教員がICTを活用して指導できるようになることを目指すとともに、平成23年の地上デジタル対応など学校の情報化を充実します

3 私立学校の教育研究を振興します

【主な取組】
  • ◆教育条件の維持向上、私立学校に在学する幼児から学生までに係る修学上の経済的負担の軽減、私立学校の経営の健全化の向上のため、私学助成その他の総合的支援を行います
  • ◆世界最高水準の卓越した教育研究拠点の形成への支援などを行う中で私立学校における教育研究を振興します
  • ◆学校法人の自主的な経営改善努力を促すため、経営相談や経営分析を通じた指導・助言などの支援を行います

4 教育の機会均等を確保します

【主な取組】
  • ◆教育の機会均等の観点から、奨学金事業等を推進します
  • ◆学生等に対するフェローシップ等の経済的支援を推進します
  • ◆民間からの資金の受入促進等のために、税制上の措置の活用を促すなどの取組を推進します

教育振興基本計画の推進する際に政府として留意していく点

  • 施策の進捗状況について、定期的に点検を行い、その結果をフィードバックし、新たな取組に反映させるPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルの実践
  • 教育に関する施策に関し、迅速かつ的確な情報の収集・発信、及び、公聴の機会の充実等による国民の意見等の把握・反映

教育振興基本計画Q&A

Q.教育振興基本計画の実施により、学校はどう変わるのでしょうか。

A.一人一人の子どもに教員が十分に向き合うことのできる環境の下で、確かな学力や規範意識、健やかな体を育成するなど、質の高い教育を行い、信頼される学校になります。そのため、新学習指導要領を着実に実施するとともに、教職員配置の適正化や外部人材の積極的な活用を図り、知識・技能や思考力・判断力・表現力、学習意欲等を身につける教育を推進します。また、すべての学校において、耐震化された安全な校舎になるよう支援していきます。

Q.教育振興基本計画の実施を通じて、どのような家庭や地域社会の在り方を目指すのでしょうか。

A.学校だけでなく家庭や地域を含めた全体で教育の向上に取り組む社会の実現を目指します。そのため、家庭教育支援のための専門家チームの派遣や、地域の教育力をいかした「放課後子どもプラン」、「学校支援地域本部」などの様々な取組を通じて、それぞれの教育力を高めることはもちろん、学校・家庭・地域が一体となった教育を推進していきます。

Q.教育振興基本計画の策定により、今後、地方公共団体ではどのように教育行政を進めていくことになるのでしょうか。

A.教育基本法第17条2項では、今後、各地方公共団体は政府の計画を参考にし、地方の実情に応じながら、各自の判断により同法の定める「教育に係る基本的な計画」を策定するよう努めなければならないとされています。
今後、地方公共団体において、各自の「教育に係る基本的な計画」を策定などにより、地域の実情に応じ、教育に関する施策を総合的・体系的に進めていくことが期待されます。

文部科学省ホームページに、教育振興基本計画が掲載されています。ぜひご覧下さい。
https://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/index.htm

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

〒100-8959 東京都千代田区霞が関3-2-2
メールアドレス:shinkou@mext.go.jp

(生涯学習政策局制作課教育改革推進室)

-- 登録:平成21年以前 --