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第1 総合評価

4 評価のまとめ

 今回の調査では、スポーツ振興基本計画に基づき、これまで文部科学省が取り組んできた「我が国の国際競技力の総合的な向上」施策を評価するにあたって、研究会、JOC及び競技団体の協力を得ながら、ロジックモデルを作成し、そのモデルに沿って、施策区分ごとの結果、成果の測定を行った。また、施策の貢献度を測るため、各競技団体に対するアンケート調査を実施したところである。
 このような施策評価の手法は、文部科学省の総合評価としては初めての試みであり、また、競技力向上に関するロジックモデルを策定したことは、今後、論理的な施策立案を可能にし、設計上の欠陥や問題点の発見を容易にするなど、スポーツ界に関する施策を企画・立案する上で意義のあることと考えられる。
 このロジックモデルについては、競技団体からも、「個別の競技種目については必ずしも当てはまらないロジックはあるが、各種競技を包含したものとして考えれば妥当なロジックモデルである」との評価を得ており、今後、必要に応じて修正することはあり得るものの、現段階ではおおむね、実態に即したロジックモデルを作成できたと考えている。
 以下、ロジックモデルの施策区分ごとに、今回の評価結果をまとめた。

1  施策区分ごとの評価結果のまとめ
 
(1)  日常的なトレーニングに関する施策について
   日常的なトレーニングは、国際競技力はもとより競技者の競技力を維持・向上させる基盤を形成するために必要不可欠なものであるにもかかわらず、現状としてほぼ実施できている競技団体は約半分である。
 そのため、7割を超える競技団体が特に国の支援を求めており、引き続き日常的なトレーニングの支援に関する施策を展開していく必要がある。

(2)  一貫指導に関する施策について
   ジュニア世代から一貫した高度な指導を継続して受けることは国際競技力の向上に影響度が大きいと8割を超える競技種目が考えているものの、広く一貫指導を行っている競技団体は1割程度にとどまっている。
 一貫指導体制の構築については、一貫指導システムがどの程度、競技成績に影響を与えたのかについて、日本水泳連盟(シンクロナイズド・スイミング)及び日本卓球連盟に調査を行ったところ、一貫指導を受けている競技者の方が毎年安定した成績を残す傾向にあることが相関分析の結果から明らかになった。また、オリンピックでの成績が良かった種目の方が一貫指導体制の構築の達成度が高いことから、一貫指導体制の構築が競技力の向上に果たす役割は大きいといえ、引き続き一環指導体制の構築を支援する施策を展開していく必要がある。

(3)  強化合宿・トレーニングに関する施策について
   国内外の合宿等で計画的・集中的・継続的にトレーニングを行うことは国際競技力の向上に大きな影響を与えると競技団体の8割が考えており、約9割の競技団体が国の支援が特に必要と考えている。
 文部科学省では、JOCが各競技団体と連携して行う国内外での強化合宿事業等や、オリンピック競技会でメダル獲得の期待の高い競技種目及び重点強化によりメダル獲得が期待できる競技種目を対象として、競技団体が行う国内外での強化合宿事業等に対して助成(重点競技強化事業)を行っている。アテネオリンピック開催前に行われた重点競技強化事業と国際競技成績との相関関係を調査したところ、重点競技強化種目は非重点競技強化種目に比べて成績が向上した種目の割合が著しく高く、メダル獲得の割合も非常に高くなっていることから、国際競技力の向上との間に相関関係があると推察され、強化合宿等が国際競技力の向上に寄与すると考えられることから、引き続きこの施策を展開していく必要がある。

(4)  指導者の養成・確保に関する施策について
   トップレベル競技者への適切な指導・強化は、国際競技力の向上に影響度が大きいと約9割の競技団体が考えており、指導者に求められる高度な専門的能力を整理し、その理論と技術を習得するための研修制度を構築することは有効かつ必要であると考えられる。特に、成績がよい競技団体ほど、若手指導者の安定的・継続的育成が非常にうまくいっており、引き続き指導者の養成・確保に関する施策を展開していく必要がある。

(5)  スポーツ医・科学・情報によるサポートに関する施策について
   JISSが行うTSC事業、スポーツ診療事業及び、スポーツ医・科学事業については、JISSの開所をきっかけとして充実したサポートを受けられるようになったと多くの競技団体が評価している。
 しかし、スポーツ情報事業については、約9割の競技団体が必要と考えているにもかかわらず、JISSを十分に活用しきれず、独自の情報収集や分析等が中心となっている競技団体も依然多いことから、最新の情報技術を強化現場のコーチングや分析に生かす手法の普及を引き続き行っていく必要がある。

(6)  トップリーグの運営に関する施策について
   トップレベル競技者が、定常的に試合に出場することは、国際競技力の向上に影響度が大きいと約7割の競技団体が考えており、現在、この施策を活用している団体にとっての有効性は非常に高いものの、そもそもトップリーグのない団体も多いことから、施策間の優先度や団体間の公平性などを踏まえながら、施策を展開することが求められる。

(7)  国際競技大会の開催及び派遣に関する施策について
   国際経験を積むことは、国際競技力の向上に影響度が大きいと8割を超える競技団体が考えており、オリンピック競技大会等への選手派遣に対する補助事業や、チーム派遣・招待に対する補助・助成事業は、多くの競技種目が活用し、十分な成果を得ていることから、引き続きこの施策を展開していく必要がある。

2  ロジックモデル(セオリー評価)について
 
(1)  ロジックモデル策定の効果
   総合評価を実施するに当たって、ロジックモデルを作成し、それを踏まえて分析及び評価を行うことは、文部科学省にとって初めての試みである。
 今回、ロジックモデルを策定することによって、次のような効果が明らかとなった。

1  国際競技力向上施策の体系的及び論理的な整理
   国際競技力向上施策を各施策区分ごとに分類し、その施策区分のインプット(国際競技力向上施策に関する各事業)、アウトプット(結果)及びアウトカム(効果)1から3の発現状況を明文化することによって、体系的、論理的に整理することができた。
 また、各競技団体に対するアンケート(直近のオリンピック競技大会・今後の国際競技力向上に影響を与えると思われる施策)結果を分析し、競技団体からみて、どのアウトカム1が国際競技力向上(アウトカム3)・基本目標(メダル獲得率3.5パーセント)に対する因果関係が強いと考えられるかを明らかにした。

2  文部科学省以外の施策(外部要因)の明確化
   国際競技力向上施策に関する各事業は、文部科学省が実施するものだけではなく、施策区分のインプット(事業)によっては、他の主体の自主的な活動の結果がアウトカム(効果)に寄与していると考えられることから、それらを明確にすることによって、外部要因として整理することができた。

3  結果・効果分析のための指標の明確化
   アウトプット(結果)、アウトカム(効果)1から3の発現状況の妥当性を検証するためには、どのような指標をどういう方法で収集することが適当か明らかにすることができた。

 上記の結果については、今後、「文部科学省の使命と政策目標(平成17年〜19年度)」中「施策目標7-2我が国の国際競技力向上」の在り方を検討していく必要がある。

(2)  ロジックモデル策定による今後の課題
   今回のロジックモデルの策定では、結果・効果分析のための指標を明らかにしたものの、時間的な制約等により指標の収集が十分に出来なかったこともあり、指標を用いてアウトプット(結果)、アウトカム(効果)の達成状況をどう分析していくかについては、更に検討する必要がある。
 また、アウトカム1からアウトカム2、アウトカム2からアウトカム3に至る体系を論理的に整理したが、それらの因果関係や影響度について、指標を用いて定量的に明らかにすることが出来ず、更なる検討が必要である。

3  評価結果の今後の反映の方向性
   これまで見てきたとおり、文部科学省がスポーツ振興基本計画に基づき、平成13年度以降に実施してきた国際競技力向上施策については、おおむね競技団体からも評価されていることから、引き続き、「早期にメダル獲得率の倍増」の実現を図るため、各種施策を推進していくこととしたい。また、今回の評価結果の詳細については、平成18年度に行うスポーツ振興基本計画の見直しの中に反映させていくこととしている。今回の評価結果を受け、今後の施策展開を推進・改善すべき点は以下に掲げる3点が考えられる。

 平成15年度以降、「ニッポン復活プロジェクト」として新たな枠組みを作り、世界で活躍するトップレベル競技者を育成・強化するために取り組んできた施策のうち、一貫指導システムの構築については、競技団体からの評価が高かっただけでなく、相関分析の結果、競技力の向上につながることが確認されている。本年度末までにはほとんどの競技団体において、トップレベルの競技者を組織的・計画的に育成するための競技者育成プログラムが作成される見込みであり、今後は競技者育成プログラムに基づいた指導理念や指導内容等を地域に普及させることが重要な課題であり、競技団体と地域との連携が必要不可欠である。
 このため、文部科学省としては、今後も引き続き、競技者育成プログラムを地域に普及させるための事業を計画的に実施し、競技団体と地域が連携した一貫指導を実施するための体制の整備を促進することにより、一貫指導システムの早期構築を図ることとしたい。

 また、「ニッポン復活プロジェクト」のもう一つの柱であるナショナルトレーニングセンターの整備については、国内での質の高いトレーニング環境として競技団体からの期待が高く、強化合宿などの集中的なトレーニングが競技力の向上につながることは今回の相関分析でも確認されていることから、トップレベルの競技者が計画的、集中的及び継続的にトレーニングを行う環境を整えることができるナショナルトレーニングセンターの整備を推進することとしている。
 現在、2008年開催予定の北京オリンピックに間に合うようナショナルトレーニングセンター中核拠点施設の整備を進めており、中核拠点で対応できない冬季競技、海洋・水辺系の競技、高地トレーニング等の強化拠点については、既存のトレーニング施設における各競技団体の利用の現状や意見等を踏まえながら、施設の高機能化や中核地点とのネットワーク化などについてもさらに検討していきたい。
 スポーツ情報事業については、JISSを有効に活用してメダル獲得につなげた競技団体がある一方、競技団体独自の情報収集や分析等にとどまり、JISSを十分に活用しきれていない競技団体も依然多い。競技力向上における情報戦略の重要性を認識し、必要不可欠と考える競技団体は8割を超えていることから、引き続き、JISSを我が国のスポーツ情報の中枢機関とする国内外のスポーツ関係機関とのネットワークを確立し、各種のスポーツ情報の収集・分析・蓄積・提供を行うとともに、情報技術の開発と普及を促進して、我が国の国際競技力向上を側面から支援してまいりたい。
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-- 登録:平成21年以前 --