1.ロジックモデルを用いた指標等の調査

1 日常的なトレーニングに関する施策

  競技者の日常的なトレーニングを支援する文部科学省の施策として、「スポーツ振興基金による助成」「トップレベル・スポーツクラブ活動支援」を対象に、インプット⇒アウトプット⇒アウトカム1のロジックモデルに基づいて、効果を分析した。下図は、ロジックモデルの流れに基づいた効果指標について整理したものである。

  図表2‐1 日常的なトレーニングに関する施策の効果を示す指標の流れ
図表2‐1 日常的なトレーニングに関する施策の効果を示す指標の流れ

(1)インプット・アウトプット

  「スポーツ振興基金による助成」は、平成12年度以降継続的に実施されており、毎年3億円前後の予算が措置されている。その結果、助成対象の競技者数は、平成12年度352人、平成16年度318人となっており、やや減少しているものの毎年300人以上の競技者の日常的なトレーニングを支援している。平成12年度は1人あたり84万円/年、平成16年度は74万円/年と1割程度減少している。
 「トップレベル・スポーツクラブ活動支援」は、平成15年度より実施されており、毎年1.2億円程度の予算が措置されている。その結果、平成12年度時点では施策未実施で支援団体数は0であったのに対して、平成16年度は6団体を対象に、競技者の日常的なトレーニングを支援している。平成16年度は、1団体あたり2千万円/年の支援額となっている。

(2)アウトカム1

  アウトカム1の指標として、日常的なトレーニングの状況に関する競技団体の自己評価については、「ほぼ実施できている」団体が49.3パーセントと回答しているが、日常的なトレーニングは国際競技力向上の基盤を形成するものであり、残り49.3パーセントが「一部実施できている」「あまり実施できていない」という状況となっている。一方、アウトカム1に対する施策の寄与度については、強化指定選手に占める「スポーツ振興基金による助成」の対象者の割合が約19.8パーセントとなっている。但し、エリートA、エリートB及びユースエリートに対しては、ほぼ100パーセントの助成がなされている。
  なお、オリンピック出場種目に比べて、不出場種目の実施状況が大幅に低下する傾向にある。

  図表2‐2 日常的・安定的なトレーニングに関する競技団体自己評価
図表2‐2 日常的・安定的なトレーニングに関する競技団体自己評価

2 一貫指導に関する施策

  一貫指導を支援する文部科学省の施策として、「競技者育成プログラム策定のためのモデル事業」「選手の発掘、育成強化に対する支援(スポーツ振興くじ助成)」を対象に、インプット⇒アウトプット⇒アウトカム1のロジックモデルに基づいて効果を分析した。下図は、ロジックモデルの流れに基づいた効果指標について整理したものである。

  図表2‐3 一貫指導に関する施策の効果を示す指標の流れ
図表2‐3 一貫指導に関する施策の効果を示す指標の流れ

(1)インプット・アウトプット

  「競技者育成プログラム策定のためのモデル事業」は、平成13年度から平成14年度まで実施され、毎年1億円以上の予算が措置されていた。その結果、プログラム策定競技数は、平成12年度0だったものが、平成16年度現在で20となっている。
  「選手の発掘、育成強化に対する支援(スポーツ振興くじ助成)」は、平成14年度より実施されており、平成14年度1.02億円、平成15年度2.60億円、平成16年度0.98億円の予算が措置されている。その結果、平成12年度時点では施策未実施で支援団体数は0であったのに対して、平成16年度は31団体を対象に、選手発掘及び育成強化を支援している。平成16年度は、1団体あたり319万円/年の支援額となっている。

(2)アウトカム1

  アウトカム1の指標として、一貫指導体制を構築した競技数については、平成16年度現在で20団体であり、全34団体のうちの58.8パーセントとなっている。自己評価によると、広く一貫指導が行われているとする団体が11.6パーセント、一部では行われているとする団体が63.8パーセントという状況となっている。また、有望な選手の発掘が非常にうまく行っているとする団体が13パーセント、ある程度はうまく行っているとする団体が73.9パーセントという状況となっている。
  一方、アウトカム1に対する施策の貢献度については、競技者育成プログラムの策定に当たって、文部科学省の施策が大きく貢献したとする団体が39.3パーセント、貢献したとする団体が41パーセントという状況となっている。
  なお、オリンピックでの成績の良い種目の方が、有望選手の発掘の達成度が高い傾向にある。

  図表2‐4 有望な選手の発掘に関する競技団体の自己評価
図表2‐4 有望な選手の発掘に関する競技団体の自己評価

3 強化合宿・トレーニングに関する施策

  強化合宿やトレーニングを支援する文部科学省の施策として、「拠点での選手強化を可能とするナショナルトレーニングセンターの整備」「強化合宿事業等に対する補助」「強化事業等に対する助成(スポーツ振興基金助成)」「強化事業等に対する助成(重点競技強化事業)」を対象に、インプット⇒アウトプット⇒アウトカム1のロジックモデルに基づいて、効果を分析した。下図は、ロジックモデルの流れに基づいた効果指標について整理したものである。

  図表2‐5 強化合宿・トレーニングに関する施策の効果を示す指標の流れ(国内合宿)
図表2‐5 強化合宿・トレーニングに関する施策の効果を示す指標の流れ(国内合宿)

  図表2‐6 強化合宿・トレーニングに関する施策の効果を示す指標の流れ(海外合宿)
図表2‐6 強化合宿・トレーニングに関する施策の効果を示す指標の流れ(海外合宿)

(1)インプット・アウトプット

  「拠点での選手強化を可能とするナショナルトレーニングセンターの整備」は、平成13年度0.15億円、平成14年度0.15億円、平成15年度0.14億円、平成16年度42.94億円の予算が措置されており、事業については検討を進めているところである。
  「強化合宿事業等に対する補助」は、平成12年度より実施されており、国内・海外合宿合計で、平成13年度3.76億円、平成14年度4.15億円、平成15年度8.06億円、平成16年度8.06億円(国内合宿4.19億円、海外合宿3.87億円)の予算が措置されている。その結果、平成12年度時点では延べ268,141人日の強化合宿参加、延べ6,056人日の海外合宿参加であったのに対して、平成16年度はそれぞれ延べ604,006人日、延べ31,681人日を支援している。
  「強化事業等に対する助成(スポーツ振興基金助成)」は、平成2年度より実施されており、国内・海外合宿合計で、平成13年度1.10億円、平成14年度1.27億円、平成15年度1.34億円、平成16年度0.77億円(国内合宿0.48億円、海外合宿0.29億円)の予算が措置されている。その結果、平成12年度は延べ10,521人日の強化合宿参加、延べ1,698人日の海外合宿参加であったのに対して、平成16年度はそれぞれ延べ9,325人日、延べ2,079人日を支援している。
  「強化事業等に対する助成(重点競技強化事業)」は、平成15年度より実施されており、平成15年度4.5億円、平成16年度4.1億円の予算が措置されている。その結果、平成12年度時点では施策未実施で支援対象は0であったのに対して、平成16年度は延べ13,399人日の強化合宿参加、延べ9,295人日の海外合宿参加を支援している。

(2)アウトカム1

  アウトカム1の指標としては、すべての国内強化合宿の参加者数が、回答のあった18団体分で、平成12年度27,083人日、同13年度27,261人日、同14年度30,009人日、同15年度39,606人日、同16年度35,365人日となっており、海外強化合宿参加者数が、回答のあった15団体分で、平成12年度14,343人日、同13年度13,330人日、同14年度15,631人日、同15年度17,339人日、同16年度16,714人日となっている。国内・国外ともに、平成16年度のアテネ五輪に向けて、平成14,15年度に合宿参加者数が増えている状況が見て取れる。
  これらのアウトカム1に対する施策の貢献度については、直接比較可能な整合性のあるデータの入手ができなかったものの、平成14年度以降、助成による合宿参加人数が大幅に増えている効果が現れているものと考えられる。

4 指導者の養成・確保に関する施策

  指導者の養成・確保を支援する文部科学省の施策として、「専任コーチの設置に対する補助」「ナショナルコーチアカデミーに関する調査研究(ナショナルコーチ等育成プログラム策定モデル事業)」「スポーツ指導者の育成事業に対する補助(日本体育協会補助)」を対象に、インプット⇒アウトプット⇒アウトカム1のロジックモデルに基づいて、効果を分析した。下図は、ロジックモデルの流れに基づいた効果指標について整理したものである。

  図表2‐7 指導者の養成・確保に関する施策の効果を示す指標の流れ
図表2‐7 指導者の養成・確保に関する施策の効果を示す指標の流れ

(1)インプット・アウトプット

  「専任コーチの設置に対する補助」は、平成12年度から検討が開始され、平成13年度2.88億円、平成14年度3.42億円、平成15年度3.94億円、平成16年度3.94億円の予算が措置されている。その結果、平成12年度時点では専任コーチ24人、専任コーチ設置団体数22団体、競技団体あたりの専任コーチ1.1人/団体であったのに対して、平成16年度は、それぞれ47人、29団体、1.6人/団体となっている。
  「ナショナルコーチアカデミーに関する調査研究(ナショナルコーチ等育成プログラム策定モデル事業)」は、平成15年度より実施されており、平成15年度0.17億円、平成16年度0.17億円の予算が措置されている。その結果は、まだ検討途上であり、具体的な結果は今後の予定である。
  「スポーツ指導者の育成事業に対する補助(日本体育協会補助)」は、昭和46年度より実施されており、平成13年度3.27億円、平成14年度1.41億円、平成15年度1.41億円、平成16年度1.35億円の予算が措置されている。その結果、平成12年度の資格取得者数は473であったのに対して、平成16年度は812人となっている。平成16年度は、資格取得1人あたり17万円を要している。

(2)アウトカム1

  アウトカム1の指標として、強化スタッフに占める資格取得者の割合は、毎年増加しているものと推察される。

5 スポーツ科学・医学・情報によるサポートに関する施策

  スポーツ科学・医学・情報によるサポートを支援する文部科学省の施策として、「JISSが行うTSC事業、スポーツ診療事業、スポーツ医・科学研究事業、スポーツ情報サービス事業(NAASH交付金)」を対象に、インプット⇒アウトプット⇒アウトカム1のロジックモデルに基づいて、効果を分析した。下図は、ロジックモデルの流れに基づいた効果指標について整理したものである。

  図表2‐8 スポーツ科学・医学サポートに関する施策の効果を示す指標の流れ
図表2‐8 スポーツ科学・医学サポートに関する施策の効果を示す指標の流れ

  図表2‐9 スポーツ情報サポートに関する施策の効果を示す指標の流れ
図表2‐9 スポーツ情報サポートに関する施策の効果を示す指標の流れ

(1)インプット・アウトプット

  「JISSが行うTSC事業、スポーツ診療事業、スポーツ医・科学研究事業、スポーツ情報サービス事業(NAASH交付金)」は、平成13年度から開始され、平成13年度18.73億円、平成14年度19.06億円、平成15年度20.24億円、平成16年度19.14億円の予算(平成15年度及び16年度については自己収入含む)が措置され、平成13年10月にJISSが開所している。その結果、平成12年度時点では事業未実施であったのに対して、平成16年度は、TSCサービス利用者1,330人、サポートサービス対象競技数21、スポーツ診療受診者数1,448人、JISSと連携競技数13(研究課題23)、収集情報件数1,700件、提供情報件数365件となっている。

(2)アウトカム1

  スポーツ科学・医学サポートに関するアウトカム1の指標として、団体の自己評価によると、トップレベルの競技者がスポーツ科学・医学サポートを受けているとする割合が42パーセント、一部では受けているとする割合が49.3パーセントという状況となっている。これに対するJISSの貢献度については、JISSとの連携をきっかけにスポーツ科学・医学サポートを受けられるようになったとする割合が31.7パーセント、JISSとの連携でより有効なサポートを受けられるようになったとする割合が55.6パーセントとなっている。
  スポーツ情報サポートに関するアウトカム1の指標として、同じく、団体の自己評価によると、情報の収集・分析・伝達の仕組みについて、十分に確立とする割合が8.7パーセント、ある程度確立とする割合が33.3パーセント、一部の人間に限られているとする割合が44.9パーセントとなっている。また、情報に基づいた戦略立案について、十分に実施できているとする割合が10.1パーセント、ある程度は実施できているとする割合が59.4パーセントという状況となっている。これに対するJISSの貢献度については、JISSとの連携をきっかけに情報戦略を実施できるようになったとする割合が12.5パーセント、JISSとの連携でより有効な情報戦略を実施できるようになったとする割合が41.7パーセントとなっている。
  なお、スポーツ科学・医学サポートについては、夏季種目よりも冬季種目、オリンピック不出場種目よりも出場種目の方が、圧倒的に受けている割合が高くなっている。また、情報収集や戦略立案についても、オリンピック不出場種目よりも出場種目の方が、仕組みの確立状況が高い傾向にある。

  図表2‐10 スポーツ科学・医学サポートの実施状況に関する競技団体の自己評価
図表2‐10 スポーツ科学・医学サポートの実施状況に関する競技団体の自己評価

  図表2‐11 情報収集・戦略立案の仕組みに関する競技団体の自己評価
図表2‐11 情報収集・戦略立案の仕組みに関する競技団体の自己評価

6 トップリーグの運営に関する施策

  トップリーグの運営を支援する文部科学省の施策として、「トップリーグ運営に対する助成(トップリーグ支援事業)」を対象に、インプット⇒アウトプット⇒アウトカム1のロジックモデルに基づいて、効果を分析した。下図は、ロジックモデルの流れに基づいた効果指標について整理したものである。

  図表2‐12 トップリーグの運営に関する施策の効果を示す指標の流れ
図表2‐12 トップリーグの運営に関する施策の効果を示す指標の流れ

(1)インプット・アウトプット

  「トップリーグ運営に対する助成(トップリーグ支援事業)」は、平成15年度から開始され、平成15年度1.89億円、平成16年度1.77億円の予算が措置されている。その結果、平成12年度時点では事業未実施であったのに対して、平成16年度には、8団体のトップリーグの運営を支援している。

(2)アウトカム1

  アウトカム1の指標として、トップリーグでの試合数・出場選手数については、回答のあった7団体分で、平成12年度1,037試合・24,418人、同13年度1,011試合・23,714人、同14年度984試合・21,994人、同15年度931試合・22,304人、同16年度1,180試合・28,195人となっており、平成16年度から上昇傾向にある。トップリーグ支援事業は平成15・16年度開始されており、その効果が現れているものと考えられる。

7 国際大会の開催及び派遣に関する施策

  国際大会の開催及び派遣を支援する文部科学省の施策として、「オリンピック競技大会等への選手派遣に対する補助(JOC補助)」を対象に、インプット⇒アウトプット⇒アウトカム1のロジックモデルに基づいて、効果を分析した。下図は、ロジックモデルの流れに基づいた効果指標について整理したものである。

  図表2‐13 国際大会の開催及び派遣に関する施策の効果を示す指標の流れ
図表2‐13 国際大会の開催及び派遣に関する施策の効果を示す指標の流れ

(1)インプット・アウトプット

  「オリンピック競技大会等への選手派遣に対する補助(JOC補助)」は、昭和32年度から開始され、平成13年度0.41億円、平成14年度1.6億円、平成15年度0.4億円、平成16年度1.37億円の予算が措置されている。その結果、平成12年度は439人であったに対して、平成16年度は654人が国際大会に派遣されている。平成16年度は、1人あたり21万円を要している。

(2)アウトカム1

  アウトカム1の指標として、国際大会への参加延べ人数について、回答のあった19団体分で、平成12年度2,929人、同13年度2,835人、同14年度3,029人、同15年度3,335人、同16年度3,321人となっている。

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