文部科学省では、平成12年9月にスポーツ振興法に基づき長期的・総合的視点から国が目指すスポーツ振興の基本的方向を目指す「スポーツ振興基本計画」を策定している。本計画には、今後10年間で取り組むべき主要な課題に沿って、それぞれの課題に対する政策目標や政策目標を実現するための具体的な施策が定められており、競技スポーツについては、「我が国の国際競争力の総合的な向上方策」を主要な課題として掲げ、次の政策目標及び具体的な施策を定めており、本計画に基づいて、現在、関係団体と連携を図りながら各種施策を総合的に推進している。
政策目標としては、
としている。
その政策目標の実現に向けて必要不可欠な施策として、
が定められている。
また、このための側面的施策として、
が掲げられている。
今回作成したロジックモデルからも分かるように、我が国の国際競技力の総合的な向上方策は、JOC、財団法人日本体育協会(以下、「日体協」という。)、各競技団体をはじめとするスポーツ団体と行政とが連携・協力を図り、それぞれの役割を果たしながら有機的に展開されている。ロジックモデルにおける施策の区分ごとに、施策の実施を含めた現状からその効果と貢献度を考察してみる。
各施策の結果や成果を示す指標のうち、文部科学省で把握可能なデータの収集・分析に加えて、オリンピック競技大会の種目競技団体75種目(34団体)に対してアンケート調査を実施し、その回答を基に分析等を行った。(参照:報告書「第3資料編」)
日常的なトレーニングは、国際競技力はもとより競技者(個人・チーム)の競技力を維持・向上させる基盤を形成するものであり、その重要性は言うまでもない。これを支援する施策としては、「日常的トレーニングに対する助成(スポーツ振興基金助成)」と、「クラブに対する支援(トップレベルスポーツクラブ活動支援事業)」が実施されてきた。
事業名 | 日常的トレーニングに対する助成(スポーツ振興基金助成) |
---|---|
概要 | 競技者が競技技術の向上を図るために自ら計画的に行う日常のスポーツ活動に対する助成。
|
本事業については、63.8パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、56.5パーセントが「必要不可欠」、26.1パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
事業名 | クラブに対する支援(トップレベルスポーツクラブ活動支援事業) |
---|---|
概要 | 企業内のスポーツチームから脱却して、地域との連携や共生を目指すトップレベルのスポーツクラブに対する支援。
|
本事業の対象となりうる8団体でみると、回答のあった7団体全てで「不可欠」、または「必要」と回答している。
本施策区分の「トップレベルを目指す競技者が、日常的・安定的にトレーニングを行うこと」は、最近のオリンピック時点での国際競技力にどのような影響があったかについては、60.9パーセントが「影響度が大きかった」(図表2-37)と回答している。
また、今後の国際競技力の向上に関しても、88.4パーセントが「影響度が大きい」(図表2-41)と回答し、73.2パーセントが「国の支援が特に必要」(図表2-45)としている。
本来、トップレベル競技者は、日常的・安定的にトレーニングを行い、競技力を維持・向上させる環境にいることが望ましいが、これらの施策区分に対する「競技団体の自己評価」をみると、現状として「ほぼ実施できている」が半数程度(49.3パーセント)しかなく、「一部では実施できている」が4割強(43.5パーセント)、「あまり実施できていない」が1割弱(5.8パーセント)というような状況である(図表3-6)。
そのような中、この施策区分の事業を活用している競技団体からの評価は比較的高く、また、今後の国際競技力向上に関する影響度や国の支援の必要性を求める声も高くなっていることから、施策が有効に活用されているとともに要望も高いと考えられる。
スポーツ振興基本計画において、各競技団体はトップレベルの競技者を組織的及び計画的に育成するため、競技者育成プログラムを作成し、それに基づき選手の発掘、育成を行う一貫指導システムを構築することとしている。このため、主に「システム構築に関する調査研究(競技者育成プログラム策定モデル事業)」及び「選手の発掘、育成強化に対する支援(スポーツ振興くじ助成)」の2つの施策が実施されてきた。
事業名 | システム構築に関する調査研究(競技者育成プログラム策定モデル事業) |
---|---|
概要 | 競技特性ごとに発育・発達段階の特徴を踏まえた競技者の育成・強化に関する指導方針や具体的な競技者育成プログラムのモデルを作成するとともに、指導者のためのコーチング方法等を確立するためのモデル事業を実施。
|
本事業については、39.1パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、46.4パーセントが「必要不可欠」、27.5パーセントが「必要」(図表2-51)としている。また、本事業の成果を元に各競技団体においてもプログラムが作成され、平成18年2月現在で、34団体中24団体がプログラム策定済みとなっており、一貫指導の理念が全国の指導者・競技者に普及及び浸透するための各競技団体における指針が徐々に整いつつある状況である。
事業名 | 選手の発掘、育成強化に対する支援(スポーツ振興くじ助成) |
---|---|
概要 | 競技者育成プログラムに基づき、将来性を有する選手の発掘、育成強化を行う事業に対する助成。
|
本事業については、53.6パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、72.5パーセントが「必要不可欠」、13パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
有望選手の発掘については、「非常にうまく発掘できている」とする競技種目は13パーセントと少なく、「ある程度うまく発掘できている」とするところが73.9パーセントとなっている(図表3-7)。
本施策区分の「有望な競技者を、継続的に発掘すること」は、最近のオリンピック時点での国際競技力にどのような影響があったかについては、42パーセントが「影響度が大きかった」(図表2-37)と回答しており、「競技者が、ジュニア世代から、一貫した高度な指導を継続して受けること」については、40.6パーセントが「影響度が大きかった」(図表2-37)と回答している。
今後の国際競技力の向上に関しても、「有望な競技者を、継続的に発掘すること」は、85.5パーセントが「影響度が大きい」(図表2-41)と回答し、30.4パーセントが「国の支援が特に必要」(図表2-45)としている。そして、「競技者が、ジュニア世代から、一貫した高度な指導を継続して受けること」は、85.5パーセントの競技種目が今後の国際競技力の向上に「影響度が大きい」(図表2-41)と回答し、48.2パーセントが「国の支援が特に必要」(図表2-45)としており、有効性、貢献度及び必要性ともに高い施策であるといえる。また、個人種目よりも団体種目、そして、オリンピックでの成績の良い種目の方が有望選手の発掘や一貫指導体制の構築の達成度が高い傾向にある(図表3-31、3-32)。また、「若手競技者の育成は安定的・継続的にうまくいっていますか」という問いに対して、成績がよい競技団体ほど、「非常にうまくいっている」と回答する割合が高い(図表3-32)ことからも、競技力の向上に有効なものであると考えられる。
その一方で、各競技団体の自己評価によると、「広く一貫指導が行われている」とする団体が11.6パーセント、「一部では行われている」とする団体が63.8パーセントという状況(図表3-10)となっており、まだ一貫指導体制のシステムが十分に普及しているとはいえないことから、今後は全国へ普及を図る必要がある。
「一貫指導」については、日本水泳連盟(シンクロナイズド・スイミング)と日本卓球協会を調査対象として競技成績との相関関係を分析してみたところ、それぞれにおいて、一貫指導システムと競技力の間には一定の相関関係が見られた。また、特にシンクロナイズド・スイミングにおいては、「オーディション選考選手」に一貫指導システムとしての効果があると考えられる結果となった。(p.2-22~2-30)
トップレベルの競技者が計画的、集中的及び継続的にトレーニングを行う環境を整えるため、主に「拠点での選手強化を可能とするナショナルトレーニングセンターの整備」、「強化合宿事業等に対する補助」、「強化事業等に対する助成(スポーツ振興基金)」及び「強化事業等に対する助成(重点競技強化事業)」の4つの施策が展開されている。
事業名 | 拠点での選手強化を可能とするナショナルトレーニングセンターの整備 |
---|---|
概要 | ナショナルトレーニングセンター中核拠点としてのトレーニング関連施設の整備。
|
ハード・ソフト両面において充実した機能を有するナショナルレベルの本格的なトレーニング拠点については、スポーツ振興基本計画において、その整備の必要性が示されている。また、「日常的・安定的にトレーニングを行うこと」、「国内外の合宿等で計画的・集中的・継続的にトレーニングを行うこと」は、国際競技力の向上に大きな影響を与えると競技団体も考えており(それぞれ、88.4パーセント、81.2パーセントが「影響が大きい」と回答:図表2-41)、この両方の要件を満たすことができるナショナルレベルのトレーニング施設が求められているものと考えられる。
事業名 | 強化合宿事業等に対する補助 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
概要 | JOCが各競技団体と連携して行う国内外での強化合宿事業等に対する支援。
|
本事業については、76.8パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、78.3パーセントが「必要不可欠」、14.5パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
事業名 | 強化事業等に対する助成(スポーツ振興基金助成) | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
概要 | 競技団体が行う国内外での強化合宿事業に対する助成。
|
本事業については、82.6パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、88.4パーセントが「必要不可欠」、8.7パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
事業名 | 強化事業等に対する助成(重点競技強化事業) |
---|---|
概要 | オリンピック競技会でメダル獲得の期待の高い競技種目及び重点強化によりメダル獲得が期待できる競技種目を対象として、競技団体が行う国内外での強化合宿事業等に対する助成。
|
本事業については、52.2パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、72.5パーセントが「必要不可欠」、15.9パーセントが「必要」(図表2-51)としている。オリンピックにおける成果については、メダル獲得の種目では100パーセントが「活用し、十分な成果が得られた」としており(図表3-53)、大きな成果と高い貢献度があったと考えられる。
事業名 | JISSが行うトレーニング施設提供(NAASH運営費交付金) |
---|---|
概要 | トップレベルの競技者の強化合宿や練習のための施設を提供(施設提供事業) |
本事業については、50.7パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、63.8パーセントが「必要不可欠」、26.1パーセントが「必要」(図表2-51)としている。そのような中で、団体種目において「活用し、十分な成果が得られた」と回答する割合が低く、「活用する必要がなかった」と回答する割合が高くなっている。また、成績で見ると、不出場種目において「活用し、十分な成果が得られた」と回答する割合が低く、「活用したかったが、活用できなかった」と回答する割合が高くなっている(図表3-59)。
本施策区分の「トップレベルの競技者が国内外の合宿等で計画的・集中的・継続的にトレーニングを行うこと」は、最近のオリンピック時点での国際競技力にどのような影響があったかについては、66.7パーセントが「影響度が大きかった」(図表2-37)と回答している。
また、今後の国際競技力の向上に関しても、81.2パーセントが「影響度が大きい」(図表2-41)と回答し、87.5パーセントが「国の支援が特に必要」(図表2-45)としている。
すべての国内強化合宿の参加者数が、回答のあった18団体分で、平成12年度27,083人日、同13年度27,261人日、同14年度30,009人日、同15年度39,606人日、同16年度35,365人日(図表2-5)となっており、海外強化合宿参加者数が、回答のあった15団体分で、平成12年度14,343人日、同13年度13,330人日、同14年度15,631人日、同15年度17,339人日、同16年度16,714人日(図表2-6)となっている。国内・国外ともに、平成16年度のアテネオリンピックに向けて、平成14・15年度に合宿参加者数が増えている状況が見て取れる。全体的な施策の貢献度については、直接比較可能な整合性のあるデータの入手ができなかったものの、平成14年度以降、助成による合宿参加人数が大幅に増えていることから、効果が現れているものと考えられる。
また、重点競技強化種目と非重点競技強化種目の国際競技力の推移を比較し、「重点競技強化事業」と国際競技力の相関関係を分析してみると、重点競技強化種目の方が、シドニーオリンピックからアテネオリンピックにかけて成績が向上した種目の割合が著しく高く、かつ、メダル獲得の割合も非常に高くなっていることから、重点競技強化事業と国際競技力には相関関係があるものと考えられる。(p.2-31~2-33)
トップレベルの競技者に対して適切な指導・強化を行うための、指導者の養成・確保に関する施策としては、主に「専任コーチの配置」、「ナショナルコーチアカデミーに関する調査研究(ナショナルコーチ等育成プログラム策定モデル事業)」、「スポーツ指導者育成事業(日体協補助)」及び「若手スポーツ指導者長期在外研修に対する助成(スポーツ振興くじ助成)」の4つの施策が展開されている。
事業名 | 専任コーチの配置に対する補助 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
概要 | JOCがオリンピック実施競技団体に専任コーチを配置する事業に対する補助。
|
本事業については、63.8パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、73.9パーセントが「必要不可欠」、21.7パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
事業名 | ナショナルコーチアカデミーに関する調査研究(ナショナルコーチ等育成プログラム策定モデル事業) |
---|---|
概要 | トップレベルの競技者等を育成する指導者が、高度な専門的能力を習得するための研修制度(ナショナルコーチアカデミー制度)を創設するための調査研究。
|
事業名 | スポーツ指導者の育成事業に対する補助(日体協補助) |
---|---|
概要 | 日体協が行う、ナショナルチームの強化を支える専門的な指導者、スポーツ障害などに対して適切な指導を行えるスポーツドクター及びスポーツ医科学的基盤に立脚した知識と技能を身につけたトレーナーを養成するための講習会の開催事業に対する補助。
|
本事業については、37.7パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、59.4パーセントが「必要不可欠」、33.3パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
事業名 | 若手スポーツ指導者長期在外研修に対する助成(スポーツ振興くじ助成) |
---|---|
概要 | JOCが若手指導者を長期間海外に派遣し、専門分野について研修させ、将来、我が国のスポーツ界を担う人材を育成する事業に対する助成。
|
本事業については、37.7パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、59.4パーセントが「必要不可欠」、33.3パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
本施策区分の「トップレベルの競技者に対して適切な指導・強化を行うこと」は、最近のオリンピック時点での国際競技力にどのような影響があったかについては、65.2パーセントが「影響度が大きかった」(図表2-37)と回答している。
また、今後の国際競技力の向上に関しても、88.4パーセントが「影響度が大きい」(図表2-41)と回答しており、トップレベル競技者の指導者に求められる高度な専門的能力を整理し、その理論と技術を習得するための研修制度を構築することは有効かつ必要であると考えられる。そして、51.8パーセントが「国の支援が特に必要」(図表2-45)としている。
公認コーチ、アスレチックトレーナー、スポーツドクターの各資格登録者数の合計も、平成12年度には13,836人であったのに対して、平成16年度には16,529人となっており、強化スタッフに占める資格取得者の割合は、毎年増加しているものと考えられる。
医・科学的な指導やトレーニング、メンタル面のサービスやトレーニング、コンディショニングが必要な競技者及び競技団体に対して適切なサポートが行われることと、現場の担当者から競技団体やJOC等の組織に至る各段階において科学的な分析や対戦相手の分析、的確な戦略立案が行われることを目的として、「JISSが行うTSC、スポーツ診療、スポーツ医・科学、スポーツ情報に対する支援(NAASH運営費交付金)」により、次の4つの事業を展開している。
事業名 | TSC事業 |
---|---|
概要 | トップレベルの競技者を対象に、メディカル、フィットネス、スキル、メンタル、栄養等の様々な観点から競技者の心身の状態を評価・診断して、競技力向上に役立つデータやアドバイスを提供。
|
本事業については、62.3パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、75.4パーセントが「必要不可欠」、18.8パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
事業名 | スポーツ診療事業 |
---|---|
概要 | トップレベル競技者を対象に、スポーツ外傷・傷害及び疾病に対する診療、アスレティックリハビリテーション、心理カウンセリング、栄養相談を実施。
|
本事業については、52.2パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、59.4パーセントが「必要不可欠」、31.9パーセントが「必要」(図表2-51)としている。オリンピックの成績でみても、成績がよいほど、「活用し、充分な成果が得られた」と回答する割合が高く、不出場種目においては、「活用したかったが、活用できなかった」という回答が46.2パーセントを占めた(図表3-57)。
事業名 | スポーツ医・科学事業 |
---|---|
概要 | トップレベルの競技者を対象に、客観的で正確な体力レベルやスキル、コンディションの評価、戦略・戦術に関する研究、競技特性や個人に適したトレーニング方法やコーチング手法に関する研究を実施。
|
本事業については、40.6パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、53.6パーセントが「必要不可欠」、36.2パーセントが「必要」(図表2-51)としている。本事業に関しての、団体の自己評価によると、「トップレベルの競技者が医・科学的サポートを受けている」とする割合が42パーセント、「一部では受けている」とする割合が49.3パーセントという状況(図表3-12)となっている。これに対するJISSの貢献度については、「JISSとの連携をきっかけに医・科学サポートを受けられるようになった」とする割合が31.7パーセント、「JISSとの連携でより有効なサポートを受けられるようになった」とする割合が55.6パーセント(図表3-13)となり、JISSの開所をきっかけとしてスポーツ医・科学サポートが充実したものと考えられる。また、夏季種目よりも冬季種目、オリンピック不出場種目よりも出場種目の方が、圧倒的に受けている割合が高い状況(図表3-34)もあり、更に効果的な充実が望まれる。
事業名 | スポーツ情報事業 |
---|---|
概要 | 競技力向上に関する各種情報を収集・加工・蓄積し、競技者・コーチ等に提供。
|
本事業については、34.8パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、42パーセントが「必要不可欠」、46.4パーセントが「必要」(図表2-51)としている。団体の自己評価によると、情報の収集・分析・伝達の仕組みについて、「十分に確立」とする割合が8.7パーセント、「ある程度確立」とする割合が33.3パーセント、「一部の人間に限られている」とする割合が44.9パーセントとという状況(図表3-15)であり、情報に基づいた戦略立案については、「十分に実施できている」とする割合が10.1パーセント、「ある程度は実施できている」とする割合が59.4パーセントとなっている(図表3-16)。これに対するJISSの貢献度については、「JISSとの連携をきっかけに情報戦略を実施できるようになった」とする割合が12.5パーセント、「JISSとの連携でより有効な情報戦略を実施できるようになった」とする割合が41.7パーセントとなっている(図表3-17)。なお、情報収集や戦略立案については、オリンピック不出場種目よりも出場種目の方が、仕組みの確立状況が高い傾向にある(図表3-35)。一方で、今後の国際競技力向上に対する情報サポートの影響度はあまり高くなく(影響度大60.9パーセント:図表2-41)、スポーツ情報事業に対する国の支援の必要性を求める声もあまり高くはない(16.1パーセント:図表2-45)が、スポーツ情報事業は、「必要不可欠」または「必要」とする競技団体が88.4パーセント(図表2-51)となっている。
本施策区分の「医・科学的な指導やトレーニング、メンタル面のサービスやトレーニング、コンディショニングを、必要な競技者および競技団体に対して行うこと」は、最近のオリンピック時点での国際競技力にどのような影響があったかについては、47.8パーセントが「影響度が大きかった」(図表2-37)と回答しており、「現場の担当者から競技団体やJOC等の組織に至る各段階において、科学的な分析や対戦相手の分析、的確な戦略立案を行うこと」については、34.8パーセントが「影響度が大きかった」(図表2-37)と回答している。
また、今後の国際競技力の向上に関しても、「医・科学的な指導やトレーニング、メンタル面のサービスやトレーニング、コンディショニングを、必要な競技者および競技団体に対して行うこと」は、75.4パーセントが「影響度が大きい」(図表2-41)と回答し、46.4パーセントが「国の支援が特に必要」(図表2-45)としている。そして、「現場の担当者から競技団体やJOC等の組織に至る各段階において、科学的な分析や対戦相手の分析、的確な戦略立案を行うこと」は、60.9パーセントの競技種目が今後の国際競技力の向上に「影響度が大きい」(図表2-41)と回答し、16.1パーセントが「国の支援が特に必要」(図表2-45)としている。
トップリーグの運営に関する施策については、トップレベルの競技者が定常的に試合に出場することができるように、平成15年度からリーグを開催する団体に対し、企業の負担を軽減し、リーグの運営改善と活性化を図り、トップリーグの運営に対する支援として「トップリーグ運営に対する助成(トップリーグ支援)」を日本スポーツ振興センターを通じて実施している。
事業名 | トップリーグ運営に対する助成(トップリーグ支援) |
---|---|
概要 | トップリーグの運営に対する助成。
|
本事業については、11.6パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、21.7パーセントが「必要不可欠」、14.5パーセントが「必要」(図表2-51)としている。トップリーグでの試合数・出場選手数については、回答のあった7団体分で、平成12年度1,037試合・24,418人、同13年度1,011試合・23,714人、同14年度984試合・21,994人、同15年度931試合・22,304人、同16年度1,180試合・28,195人(図表2-12)となっており、平成16年度から上昇傾向にある。トップリーグ支援事業は平成15・16年度開始されており、その効果が現れているものと考えられる。
本施策区分の「トップレベルの競技者が、定常的に試合に出場すること」は、最近のオリンピック時点での国際競技力にどのような影響があったかについては、63.8パーセントが「影響度が大きかった」(図表2-37)と回答している。
また、今後の国際競技力の向上に関しても、71パーセントが「影響度が大きい」(図表2-41)と回答し、21.4パーセントが「国の支援が特に必要」(図表2-45)としている。
トップレベル競技者が、目標とする競技会や国際大会を経験することは競技者の競技力を高めるための重要な要素と考えられる。この部分を支援する施策としては、トップレベル競技者の国際経験が積まれることを目標に、JOCがオリンピック競技大会等に選手を派遣する事業に対する補助となる施策「オリンピック競技大会等への選手派遣に対する補助(JOC補助)」、「スポーツ交流事業におけるチーム派遣及びチーム招待に対する補助(JOC補助)」、「スポーツ団体選手強化活動助成におけるチーム派遣及びチーム招待に対する助成(スポーツ振興基金助成)」及び、「スポーツ団体重点競技強化活動助成に対する助成(競技強化支援事業助成)」がある。また、競技団体が行う国際的又は全国的な規模のスポーツの競技会等の開催に対する助成となる「国際競技大会等の開催に対する助成(スポーツ振興基金助成)」並びに、競技団体が行う国際的な規模のスポーツの競技会等の開催に対する助成となる「国際競技大会の開催に対する助成(スポーツ振興くじ助成)」が実施されてきた。
事業名 | オリンピック競技大会等への選手派遣に対する補助(JOC補助) |
---|---|
概要 | JOCがオリンピック競技大会等に選手を派遣する事業に対する補助。
|
本事業については、71パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、87パーセントが「必要不可欠」、8.7パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
事業名 | スポーツ国際交流におけるチーム派遣及びチーム招待に対する補助(JOC補助) | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
概要 | 世界のトップレベルにある諸外国の選手・チームとの交流を通じて実践経験を積み、競技力の向上を図る。
|
事業名 | スポーツ団体選手強化活動助成におけるチーム派遣及びチーム招待に対する助成(スポーツ振興基金助成) | ||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
概要 | スポーツ団体が競技水準の向上を図るため、計画的かつ継続的に行う「国外で開催される対抗試合へのチーム派遣」と「国内で開催される対抗試合への海外チーム招待」。
|
事業名 | スポーツ団体重点競技強化活動助成におけるチーム派遣及びチーム招待に対する助成(競技強化支援事業助成) | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
概要 | スポーツ団体が、期待の高い競技種目及び重点強化によりメダル獲得が期待できる競技種目について重点的・計画的に行う、「国外で開催される対抗試合へのチーム派遣」、「国内で開催される対抗試合への海外チームの招待」。
|
事業名 | 国際競技大会等の開催に対する助成(スポーツ振興基金助成) |
---|---|
概要 | 競技団体が行う国際的又は全国的な規模のスポーツの競技会等の開催に対する助成。 |
本事業については、62.3パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、75.4パーセントが「必要不可欠」、15.9パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
事業名 | 国際競技大会の開催に対する助成(スポーツ振興くじ助成) |
---|---|
概要 | 競技団体等が行う国際的な規模のスポーツの競技会の開催に対する助成。 |
本事業については、36.2パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、53.6パーセントが「必要不可欠」、24.6パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
本施策区分の「トップレベルの競技者が、国際経験を積むこと」は、最近のオリンピック時点での国際競技力にどのような影響があったかについては、76.8パーセントが「影響度が大きかった」(図表2-37)と回答している。
また、今後の国際競技力の向上に関しても、84.1パーセントが「影響度が大きい」(図表2-41)と回答し、69.6パーセントが「国の支援が特に必要」(図表2-45)としている。
トップレベルを目指す競技人口が増えることを目的に、競技団体が行う普及活動等に対して助成する施策として「普及活動等に対する助成(スポーツ振興くじ助成)」が実施されている。
事業名 | 普及活動等に対する助成(スポーツ振興くじ助成) |
---|---|
概要 | 競技団体が行う普及活動に対する助成。 |
本事業については、36.2パーセントの競技種目が「活用し、充分な成果が得られた」(図表2-50)と回答し、56.5パーセントが「必要不可欠」、27.5パーセントが「必要」(図表2-51)としている。
本施策区分の「トップレベルを目指す競技人口を増やすこと」は、最近のオリンピック時点での国際競技力にどのような影響があったかについては、37.7パーセントが「影響度が大きかった」(図表2-37)と回答している。
また、今後の国際競技力の向上に関しても、62.3パーセントが「影響度が大きい」(図表2-41)と回答し、16.1パーセントが「国の支援が特に必要」(図表2-45)としている。
今後の国際競技力向上にどのような影響を与えるかということについては、団体種目のほうが、「影響度が大きい」と回答する割合が高く、傾向としては夏季種目に比べて冬季種目のほうが、「影響度が大きい」と回答する割合が高くなっている(図表3-40)。また、オリンピックに不出場の種目において「活用し、十分な成果が得られた」と回答した種目は無く、90.9パーセントが、「活用したかったが、活用できなかった」と回答(図表3-63)する一方で、「影響度は小さかった」、「影響度はほとんどなかった」と回答する割合が高くなっている(図表3-27)。
ロジックモデルにおけるその他の施策として、「用具、用品の開発」、「選手の選考」、「国際競技団体等への役員等への派遣」等がある。これらの区分において、最近のオリンピック時点での国際競技力にどのような影響があったかについては、「影響度が大きかった」とするのは、「競技大会において、性能の高い用品・用具を使用すること」が37.7パーセント(図表2-37)、「競技大会において、適切な選手が出場すること」が59.4パーセント(図表2-37)、「競技大会において、日本に有利なルールや日程等が採用されること。ルールや採点基準の変更などの情報を素早く入手すること」が24.6パーセント(図表2-37)となっている。また、今後の国際競技力の向上に関して、「影響度が大きい」としているのは「競技大会において、性能の高い用品・用具を使用すること」が50.7パーセント(図表2-41)、「競技大会において、適切な選手が出場すること」が72.5パーセント(図表2-41)、「競技大会において、日本に有利なルールや日程等が採用されること。ルールや採点基準の変更などの情報を素早く入手すること」が39.1パーセント(図表2-41)となっており、逆に「影響はほとんどない」とする割合は7.2パーセント~0パーセント(図表2-41)と、比較的低くなっている。さらに、「国の支援が特に必要」としている割合をみると、「競技大会において、性能の高い用品・用具を使用すること」が3.6パーセント(図表2-45)、「競技大会において、適切な選手が出場すること」が1.8パーセント(図表2-45)、「競技大会において、日本に有利なルールや日程等が採用されること。ルールや採点基準の変更などの情報を素早く入手すること」は0パーセント(図表2-45)となっており、極めて低い割合となっている。以上を踏まえると、現在の施策区分における各事業は、現場のニーズにほぼ添ったかたちで適切に展開されているものと考えられる。
中央競技団体に対するアンケート調査をもとにした達成状況をみてみると「有望な若手競技者が安定的、継続的に育成されること」については、「非常にうまくいっている」という回答の団体が7.2パーセント、「ある程度うまくいっている」団体が79.7パーセントとなっている。また、ジュニア世代の国際大会の成績(過去4年間)によると、半分以上の団体が向上しており、下降した団体は22パーセントとなっている。一方、「有望な選手の発掘」については、オリンピックの成績でみてみると、成績が良い団体ほど、「非常にうまくいっている」と回答する割合が高く、「あまりうまくいっていない」と回答する割合が低くなっており(図表3-31)、「若手競技者の安定的、継続的な育成」についても、成績が良いほど、「非常にうまくいっている」と回答する割合が高く、「あまりうまくいっていない」と回答する割合が低くなっている(図表3-32)。
「トップレベル競技者の競技水準が向上すること」については、国際大会での最高順位(過去4年間)によると、半分弱の団体が向上しており、下降した団体は20パーセントとなっている。
「競技大会においてその時点の競技力が最大限発揮されること」については、「発揮できている」という回答が15.9パーセント、「どちらかと言えば発揮できている」という回答が63.8パーセントとなっている。また、オリンピックでの成績が良いほど、「発揮できている」と回答する割合が高く、オリンピック不出場種目では、46.2パーセントが「発揮できていない」と回答している(図表3-33)。
「競技大会において的確なプランや戦略が実施されること」については、「十分に実施できている」という回答が14.5パーセント、「ある程度実施できている」という回答が69.6パーセントとなっている。また、オリンピック出場種目と不出場種目とでは、不出場種目において「一部の人間に限られている」という割合が多くなっているのが特徴的である(図表3-35)。
4つのアウトカム2は、肯定的な回答が多い傾向であるが、二段階目の回答が多く、現状が十分であるとの認識まではない状況にあると考えられる。
「国際競技力が向上する」については、平成12年度以降のオリンピック競技大会での成績をみてみると、第27回シドニー大会(平成12年)ではメダル獲得率1.94パーセント(金5銀8銅5)で、第28回アテネ大会(平成16年)では同3.98パーセント(金16銀9銅12)、冬季オリンピック・第21回長野大会(平成10年)では同4.88パーセント(金5銀1銅4)、第22回ソルトレイクシティ大会(平成14年)では同0.85パーセント(金0銀1銅1)、第23回トリノ大会(平成18年)では同0.40パーセント(金1銀0銅0)という結果となっている。
直近のアテネ大会とトリノ大会でのメダル獲得率は3.22パーセントとなっており、スポーツ振興基本計画における国際競技力向上施策の基本目標である「平成22年度までにオリンピック競技大会においてメダル獲得率3.5パーセントを実現する」という水準に近づいている。
しかしながら、基本目標の趣旨は、一時点でのメダル獲得率ではなく、安定的に3.5パーセント程度のメダル獲得率を維持することが重要であり、引き続き、さらに国際競技力を高めるための有効な施策展開が必要であると考えられる。
大臣官房政策課評価室
-- 登録:平成21年以前 --