「日本食品標準成分表2010」について第3章の2

2 いも及びでん粉類

 いも及びでん粉類の全般に通じる主な事項は、次のとおりである。

1) <いも類>は、植物の茎や根に由来する地下部の養分貯蔵組織で、塊茎、球茎及び塊根をさす。一般には消化性の多糖類(でん粉)を多く含むが、難消化性の多糖類(イヌリン又はグルコマンナン)を多く含むものもある。<いも類>は野菜類に分類することもできるが、本編では、五訂増補成分表の分類に従い、<でん粉・でん粉製品 >とともに一括した。なお、五訂増補成分表と同様に、球茎のうち「くわい」や、植物の葉に由来する地下部の養分貯蔵組織である鱗(りん)茎(「ゆりね」等)は、野菜類に収載した。

2) 調理した食品は、「蒸し」、「水煮」、「油揚げ」及び「ゆで」を収載し、調理する前の食品(生又は乾)と同一の試料を用いて調理し、分析した。各食品の調理方法の概要を表14に示した。

 以下、食品ごとに成分値に関する主な留意点について述べる。

<いも類>

きくいも<菊芋>

-02001 塊茎、生

 「きくいも」は、キク科キクイモの塊茎であり、イヌリンを含む。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

こんにゃく<蒟蒻>

-02002 精粉

-板こんにゃく<板蒟蒻>

 -02003 精粉こんにゃく<精粉蒟蒻>

 -02004 生いもこんにゃく<生芋蒟蒻>

-02005 しらたき<白滝>

 「精粉」は、サトイモ科コンニャクの塊茎(生いも)を切り干し加工した荒粉を搗(とう)精したものである。食用こんにゃくの原料として用い、直接食用とはしない。グルコマンナンを含む。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「板こんにゃく」は、「精粉」を原料とする「精粉こんにゃく」と生いもを原料とする「生いもこんにゃく」を収載した。「精粉」あるいはいもを生のまま又は蒸煮してから皮をむいてすりおろしたものに水又は温湯を加え、攪拌(かくはん)して糊(のり)状にし、水酸化カルシウム等の凝固剤を加えて型に入れて凝固させ、煮沸して固化させた後、水で晒(さら)したものである。

 「しらたき」は、糸こんにゃくとも呼ばれ、凝固剤を加えてから、熱湯中に絞り出して、細いひも状に固化させた後、水で晒したものである。

さつまいも<薩摩芋>

-02006 塊根、生

-02007 塊根、蒸し

-02008 塊根、焼き

-02009 蒸し切干

 「さつまいも」は、ヒルガオ科サツマイモの塊根である。甘藷(かんしょ)、唐芋(からいも)、琉球芋(りゅうきゅういも)等ともいう。

 「生」の成分値は、肉色が濃黄色から黄白色の品種の分析値に基づき決定した。肉色が橙色の品種では、可食部100 g当たりβ-カロテンを3,000~30,000 μg含むものがある。

 「蒸し」の成分値は、「生」を調理した試料の分析値に基づき決定した。

 「焼き」の成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「蒸し切干」は、剥(はく)皮したいもを蒸した後、薄切りにし、乾燥したものである。乾燥芋、干し芋とも呼ばれる。近年は、乾燥の程度が低く、表面に粉をふいていないものが好まれる傾向がある。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

(さといも類)<里芋類>

 (さといも類)は、サトイモ科サトイモの塊茎(球茎)である。品種が多く、球茎の色沢、形状等の外観がかなり異なる。子芋用品種、親芋用品種及び親・子芋兼用品種に大別される。一般にさといもは子芋(親芋用品種の子芋を含む。)を指し、親芋はその品種名で呼ばれる場合が多い。

-さといも<里芋>

 -02010 球茎、生

 -02011 球茎、水煮

 -02012 球茎、冷凍

 「さといも」は、石川早生、土垂(どだれ)等の子芋用品種の総称である。

 「生」及び「水煮」の成分値は、それぞれ中国からの輸入品を含む試料の分析値に基づき決定した。「冷凍」は、剥(はく)皮、ブランチング(湯通し)の後、冷凍したものである。成分値は、中国からの輸入品の分析値に基づき決定した。

-みずいも<水芋>

 -02013 球茎、生

 -02014 球茎、水煮

 「みずいも」は、九州南部から沖縄にかけて栽培されるもので、田芋(たいも)とも呼ばれる。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

-やつがしら<八つ頭>

 -02015 球茎、生

 -02016 球茎、水煮

 「やつがしら」は、親芋と子芋が分球せずに塊状になる特徴がある親・子芋兼用品種である。成分値は、それぞれ分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

じゃがいも<馬鈴薯>

-02017 塊茎、生

-02018 塊茎、蒸し

-02019 塊茎、水煮

-02020 フライドポテト

-02021 乾燥マッシュポテト

 「じゃがいも」は、ナス科ジャガイモの塊茎である。馬鈴薯(ばれいしょ)ともいう。

 「生」及び「蒸し」の成分値は、それぞれ分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。「水煮」の成分値は、「生」を調理した試料の分析値に基づき決定した。

 「フライドポテト」の成分値は、関係資料1)、「水煮」及び「調合油」の成分値に基づき計算により決定した。

 「乾燥マッシュポテト」は、じゃがいもを剥(はく)皮して、薄切りしたものを、予備加熱及び水冷処理した後、蒸煮し、裏ごしして、フレーク状又は粒状に乾燥したもの、あるいは、乾燥前に脱脂粉乳、品質改良剤、酸化防止剤等を加えたものである。成分値は、輸入品を含む試料の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

(やまのいも類)<薯蕷類>

 (やまのいも類)は、ヤマノイモ科ナガイモ、ヤマノイモ、ダイジョの塊根(多肉根)の総称である。

-やまのいも<薯蕷>

 -いちょういも<銀杏薯>

 -02022 塊根、生

 -ながいも<長薯>

 -02023 塊根、生

 -02024 塊根、水煮

 -やまといも<大和薯>

 -02025 塊根、生

 「やまのいも」は、ヤマノイモ科ナガイモの塊根(多肉根)で、塊根の形状によって区別される品種群がある。

 「いちょういも」は、扁平な形をしたもので、手いもとも呼ばれる。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「ながいも」は、棍(こん)棒状あるいは円柱状をしたものである。成分値は、それぞれ分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「やまといも」は、塊状をしたもので、伊勢(いせ)いも、丹波(たんば)いもとも呼ばれる。成分値は、分析値に基づき決定した。

-じねんじょ<自然薯>

 -02026 塊根、生

 「じねんじょ」は、ヤマノイモ科ヤマノイモの塊根(多肉根)で栽培品もあるが、試料は、自生品を用いた。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

-だいじょ<大薯>

 -02027 塊根、生

 「だいじょ」は、ヤマノイモ科ダイジョの塊根(多肉根)である。成分値は、分析値に基づき決定した。

<でん粉・でん粉製品><澱粉・澱粉製品>

(でん粉類)<澱粉類>

 (でん粉類)は、原料植物の種実、幹、塊茎あるいは塊根に含まれる貯蔵でん粉を精製したものである。

-02028 キャッサバでん粉<木薯澱粉>

-02029 くずでん粉<葛澱粉>

-02030 米でん粉<米澱粉>

-02031 小麦でん粉<小麦澱粉>

-02032 サゴでん粉<サゴ澱粉>

-02033 さつまいもでん粉<甘藷澱粉>

-02034 じゃがいもでん粉<馬鈴薯澱粉>

-02035 とうもろこしでん粉<玉蜀黍澱粉>

 「キャッサバでん粉」は、タピオカフラワー、マニオカでん粉、ユカでん粉、タピオカ、マニオカとも呼ばれ、トウダイグサ科キャッサバの塊根から分離したものである。国内生産は行われていない。成分値は、四訂成分表の成分値に基づき決定した。

 「くずでん粉」は、くず粉とも呼ばれ、マメ科クズの塊根から分離したものである。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「米でん粉」は、イネ科イネの穀粒から分離したものである。たんぱく質を除くため、アルカリ浸漬法を用いて作られる。成分値は、四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「小麦でん粉」は、生麩(しょうふ)、正麩(しょうふ)とも呼ばれ、イネ科コムギの穀粒から分離したものである。小麦のたんぱく質の特性を利用して、小麦粉から生地(ドウ)をつくり、グルテンとでん粉とを分離する方法(マーチン法)を用いて作られる。ドウよりさらにゆるい生地(バッター)をつくり、これを十分に洗浄して、でん粉とたんぱく質を分離する方法(バッター法)等もある。成分値は、四訂成分表成分値に基づき決定した。なお、「小麦でん粉」を生麩(なまふ)と呼ぶ場合には、「生ふ」(01065)は生麩(なまぶ)と呼んで区別する。

 「サゴでん粉」は、サゴフラワーとも呼ばれ、ヤシ科サゴヤシの幹から分離したものである。国内生産は行われていない。成分値は、輸入品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「さつまいもでん粉」は、甘藷(かんしょ)でん粉とも呼ばれ、ヒルガオ科サツマイモの塊根から分離したものである。農産物検査法に基づく農産物規格規程2)では、生でん粉、並でん粉、さらしでん粉に分類されている。本編では、このうちさらしでん粉を対象とした。成分値は、四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「じゃがいもでん粉」は、馬鈴薯(ばれいしょ)でん粉とも呼ばれ、ナス科ジャガイモの塊茎から分離したものである。農産物規格規程2)では、生でん粉、未粉でん粉、精製でん粉、二番粉でん粉、二番粉でん粉精粉に分類されている。本編では、このうち精製でん粉を対象とした。成分値は、四訂成分表成分値に基づき決定した。

 なお、片栗(かたくり)粉と称して市販されているもののほとんどはじゃがいもでん粉で、ユリ科カタクリの鱗(りん)茎から作るカタクリでん粉ではない。

 「とうもろこしでん粉」は、コーンスターチとも呼ばれ、イネ科トウモロコシの穀粒から分離したものである。亜硫酸水溶液に浸漬するウェットミリング法によって製造される。通常のアミロース含量の製品、アミロースを含まない製品(ワキシーコーンスターチ)、アミロース含量が高い製品(ハイアミロースコーンスターチ)がある。成分値は、四訂成分表成分値に基づき決定した。

(でん粉製品)<澱粉製品>

-くずきり<葛切り>

 -02036 乾

 -02037 ゆで

 「くずきり」は、水繊(すいせん)とも呼ばれ、「くずでん粉」(くず粉)で作った麺である。成分値は、それぞれ分析値に基づき決定した。

-タピオカパール

 -02038 乾

 「タピオカパール」は、「キャッサバでん粉」(タピオカ)を球状に加工したものである。成分値は、タイからの輸入品の分析値に基づき決定した。

-はるさめ<春雨>

 -緑豆はるさめ<緑豆春雨>

 -02039 乾

 -普通はるさめ<普通春雨>

 -02040 乾

 「はるさめ」は、元来、中国でマメ科リョクトウ(ヤエナリ)の種子の粉又はでん粉を原料として造られたもので、豆麺、唐?、凍?(とうめん)と呼ばれていた。原料が異なる製品が市販されているため、「緑豆はるさめ」と「普通はるさめ」に分けて収載した。

 「緑豆はるさめ」は、マメ科リョクトウ(ヤエナリ)の種子の粉を原料にした製品と、分離したでん粉を原料にした製品がある。本編では、種子から分離したでん粉を原料としたものを対象とした。成分値は、中国からの輸入品を含む試料の分析値、関係資料3)及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「普通はるさめ」は、じゃがいもでん粉及びさつまいもでん粉を原料としたものである。明礬(みょうばん)や増粘剤(CMC)を添加したものがある。成分値は、分析値、関係資料3)及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

文献

1)  渡邊智子・高橋明子・山内好江:市販冷凍フライドポテトの調理前後の重量及び成分値(未発表)
2)  農産物規格規程:平成13年農林水産省告示第244号
3)  進藤久美子・安井明美:はるさめの無機質(未発表)

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科学技術・学術政策局政策課資源室

(科学技術・学術政策局政策課資源室)