「日本食品標準成分表2010」について第3章の9

9)藻類

 藻類の全般に通じる主な事項は、次のとおりである。

1) 大分類の名称は、原則として原植物の科・属又は種の和名を用いた。

2) 原則として、食べる状態(塩抜き、水戻し等)のものを試料とした。ただし、「わかめ」等は、原藻(生)及び乾燥状態(素干し)の成分値も収載した。

3) 調理した食品は、「水戻し」を収載した。調理する前の食品(生又は乾)も収載した場合は、同一の試料を用いて調理し分析した。各食品の調理方法の概要を表14に示した。

4) 藻類の食物繊維は、寒天質やアルギン酸等の粘質多糖類が多く、分析の際に行う水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の分別が困難であることから、総量のみを定量して示した。

 以下、各食品ごとに成分値に関する主な留意点について述べる。

あおさ<石蓴>

 -09001 素干し

 「あおさ」は、アオサ科アオサ属の総称である。アナアオサが主に食用とされる。「素干し」の成分値は、藻体を水洗いし、天日で乾燥したもの及び市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

あおのり<青海苔>

 -09002 素干し

 「あおのり」は、アオサ科アオノリ属の総称であるが、食用には、スジアオノリを主体として、ウスバアオノリを混ぜたものが用いられる。採取した原藻を水洗いしてから天日乾燥し、一定の大きさに抄(す)きあげた抄(すき)青のりと掛け乾燥した掛(かけ)青のりがある。「あおさ」を青のりと呼び市販されている例もある。また、「ひとえぐさ」を青のりと称する地方がある。成分値は、市販品を試料とし、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

あまのり<甘海苔>

-09003 ほしのり

-09004 焼きのり

-09005 味付けのり

 「あまのり」は、ウシケノリ科アマノリ属の総称である。一般に、市販品ののりは、同属の養殖されたスサビノリ、アサクサノリ等の乾燥品である。

 なお、あさくさのりは「あまのり」の特定の一種を指す名称である。

 「ほしのり」は、「あまのり」を抄いて乾燥したものである。成分値は、市販品の分析値に基づき決定した。

 「焼きのり」は、「ほしのり」を焦げない程度に高温(160~180 ℃)で、短時間(30~60秒)加熱したものである。成分値は、市販品の分析値に基づき決定した。

 「味付けのり」は、「ほしのり」に、しょうゆ、砂糖等を主とする調味液を塗布し、加熱乾燥したものである。成分値は、市販品の分析値に基づき決定した。

あらめ<荒布>

 -09006 蒸し干し

 「あらめ」は、コンブ科アラメ属の海藻である。原藻を乾燥し、蒸煮あるいは湯通ししてから刻んで再び乾燥したもの(「蒸し干し」)を試料とした。成分値は、市販品の分析値に基づき決定した。

いわのり<岩海苔>

-09007 素干し

 「いわのり」は、ウシケノリ科アマノリ属の中で養殖されていない天然のもの、マルバアマノリ、ウップルイノリ、チシマクロノリ、コスジノリ、オニアマノリ、ツクシアマノリ等の総称である。「いわのり」は外海に面した岩盤上等に着生するため、養殖のアマノリと比べ葉体がかたい。原藻を抄(す)いて乾燥し製品とするが、「あまのり」の「ほしのり」と比べ粗雑である。成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

えごのり<恵胡海苔>

-09008 素干し

-09009 おきうと

 「えごのり」は、イギス科エゴノリ属の海藻である。「おきうと」(おきゅうと)は、「えごのり」を主原料とし、これに近縁のイギス、アミクサ等を混合し、煮熟、溶解したものを精製し、ゲル状に固まらせたところてん様の製品である。

 「素干し」の成分値は、「おきうと」の原料として流通している乾燥品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「おきうと」の成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

おごのり<海髪>

-09010 塩蔵、塩抜き

 「おごのり」は、オゴノリ、オオオゴノリ、ツルシラモ、シラモ等のオゴノリ科オゴノリ属並びにその近縁属の食用藻類の総称である。原藻を塩蔵あるいは湯通しした後、石灰漬けとして保存し、それを塩抜きあるいは水洗したものを、生おごのりと呼んで食用とする。自生しているオゴノリ及びシラモを採取し、自分で調理し食中毒で死んだ事例があり、石灰処理をしていない生の「おごのり」は食べない方が無難である。成分値は、市販品を水さらしして塩抜きしたものの分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

かわのり<川海苔>

-09011 素干し

 「かわのり」は、カワノリ科カワノリ属の淡水産の緑藻で、抄(す)いて乾燥し製品とする。生産量が少なく現在ではほとんど流通していない。成分値は、分析値、四訂成分表成分値及び文献値1)に基づき決定した。

くびれづた

-09012 生

 「くびれづた」は、沖縄地方で養殖され、海ぶどうという名称で流通している。成分値は、流水で1分間水洗したものの分析値に基づき決定した。

(こんぶ類)

-えながおにこんぶ

 -09013 素干し

-がごめこんぶ

 -09014 素干し

-ながこんぶ<長昆布>

 -09015 素干し

-ほそめこんぶ<細目昆布>

 -09016 素干し

-まこんぶ<真昆布>

 -09017 素干し

-みついしこんぶ<三石昆布>

 -09018 素干し

-りしりこんぶ<利尻昆布>

 -09019 素干し

-09020 刻み昆布

-09021 削り昆布

-09022 塩昆布

-09023 つくだ煮

 こんぶは、コンブ科コンブ属及びその近縁種の総称である。このうち、食用とされる主なものとして、「がごめこんぶ」、「ながこんぶ」、「ほそめこんぶ」、「まこんぶ」、「みついしこんぶ」「りしりこんぶ」及び「えながおにこんぶ」(らうすこんぶ)を収載した。

 (こんぶ類)の各食品の「素干し」の成分値は、「ほそめこんぶ」及び「えながおにこんぶ」は分析値、その他の食品は分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「刻み昆布」は、昆布を細く糸状に刻んだものである。成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「削り昆布」は、主として、「まこんぶ」を食酢でしめらせて柔軟にし、削って薄片としたものである。「削り昆布」には、幅広い薄片に削ったおぼろこんぶと、糸状に削ったとろろこんぶがあり、それぞれ黒い表皮と白い肉質部の含まれる割合により、色調の白いもの、黒いもの、両者の中間のものがある。成分値は、市販のとろろこんぶ及びおぼろこんぶの分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「塩昆布」は、こんぶを正方形又は短冊形に切ったものを、しょうゆ、たまり、みりん及び砂糖を主体とする調味液とともに煮詰めてから乾燥したものである。成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「つくだ煮」は、しょうゆを主体とする調味液とともにこんぶを煮詰めたものであり、ごまの入っているものを試料とした。成分値は、市販品の分析値に基づき決定した。

すいぜんじのり<水前寺苔>

-09024 素干し、水戻し

 「すいぜんじのり」は、淡水産の藍藻で、抄(す)いて乾燥したものを水戻しして食用とする。養殖素干し品が市販されている。水戻ししたものを収載した。成分値は、分析値に基づき決定した。

てんぐさ<天草>

-09025 素干し

-09026 ところてん

-09027 角寒天

-09028 寒天

 「てんぐさ」は、テングサ科に属するマクサ、オバクサ、ヒラクサ等の寒天原藻の総称である。

 「素干し」の成分値は、市販の寒天原藻の分析値に基づき決定した。

 「ところてん」(心太)は、原藻を煮熟し、濾(ろ)過した液を凝固させて得た寒天ゲルである。「角寒天」、細寒天等に水を加えて煮熟した液を凝固させて作ることもある。成分値は、市販品の分析値に基づき決定した。

 「角寒天」は、原藻を煮熟し、濾過した液を凝固させて得た寒天ゲルを、凍結及び融解による脱水工程を経て乾燥したもので、形状により「角寒天」と細寒天に分けられる。他に工場内で製造される粉末寒天、固形寒天、フレーク寒天等があるが、前記の工程で製造された「角寒天」を試料とした。成分値は、市販品の分析値及び関係資料2) に基づき決定した。

 「寒天」は、「角寒天」、細寒天をゼリー状にして食べられる状態にしたもので、成分値は、分析値に基づき決定した。

とさかのり<鶏冠海苔>

-赤とさか

 -09029 塩蔵、塩抜き

-青とさか

 -09030 塩蔵、塩抜き

 「とさかのり」は、原藻を塩蔵した「赤とさか」と、原藻を石灰水で浸漬処理し、塩蔵した「青とさか」がある。

 「赤とさか」及び「青とさか」の成分値は、それぞれ市販品を流水で水洗し、塩抜きしたものの分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

ひじき<鹿尾菜>

-09031 ほしひじき

 「ほしひじき」は、「ひじき」の原藻を煮熟後乾燥した製品である。成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

ひとえぐさ<一重草>

-09032 素干し

-09033 つくだ煮

 「ひとえぐさ」は、地方によってはあおのりと呼ぶところもある。

 「素干し」は、原藻をそのまま、あるいは水洗後、抄(す)いて乾燥した製品であり、主として「つくだ煮」の原料となるが、一般にはほとんど流通していない。成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「つくだ煮」は、「素干し」をしょうゆを主体とする調味液と共に煮詰めたものである。成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。なお、のりのつくだ煮、いわのりと呼ばれ市販されているものは、「ひとえぐさ」を原料としているものが多い。

ふのり<布海苔>

-09034 素干し

 「ふのり」は、かつては布用の糊をとっていたフノリ科フノリ属の海藻の総称で、フクロフノリ、マフノリ等がある。食用とする場合は、のげのりとも呼ばれていた。乾燥した原藻を水戻しして食用とする。一般の市販形態である「素干し」を収載した。成分値は、市販品の分析値に基づき決定した。

まつも<松藻>

-09035 素干し

 「まつも」は、原藻を抄(す)いて乾燥して製品とする。成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

むかでのり<百足海苔>

-09036 塩蔵、塩抜き

 「むかでのり」は、原藻を石灰水で浸漬処理した塩蔵品及び乾製品がある。近縁種のオオムカデノリとは外観上の区別がつけにくい。成分値は、市販の塩蔵品を塩抜きしたものの分析値に基づき決定した。

(もずく類)

-おきなわもずく<沖縄海蘊、沖縄水雲>

 -09037 塩蔵、塩抜き

 「おきなわもずく」は、ナガマツモ科の海藻で鹿児島から南西諸島に分布し、養殖もされており、一般に塩蔵したものが市販されている。成分値は、市販品を塩抜きしたものの分析値に基づき決定した。

-もずく<海蘊、水雲>

 -09038 塩蔵、塩抜き

 「もずく」は、モズク科の海藻で、一般に塩蔵したものが市販されている。成分値は、市販品を塩抜きしたものの分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

わかめ<若布>

-09039 原藻、生

-乾燥わかめ

 -09040 素干し

 -09041 素干し、水戻し

 -09042 板わかめ

 -09043 灰干し、水戻し

 -09044 カットわかめ

-湯通し塩蔵わかめ

 -09045 塩抜き

-くきわかめ

 -09046 湯通し塩蔵、塩抜き

-めかぶわかめ

 -09047 生

 「わかめ」は、大部分が養殖されている。「生」は、原藻から茎、中肋(ちゅうろく)、めかぶ(成実葉)を除いた部分を試料とし、成分値は、分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。 

 「乾燥わかめ」の「素干し」は、原藻を乾燥したものである。成分値は、分析値に基づき決定した。「素干し、水戻し」は、「素干し」を水戻ししたもので、成分値は分析値に基づき決定した。

 「板わかめ」は、「わかめ」をすのこ、すだれ等の上で平面状に整形し、乾燥したものをいう。成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「灰干し、水戻し」は、原藻に草木灰をまぶして乾燥したものである。成分値は、市販品を水戻ししたものの分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。

 「カットわかめ」は、「湯通し塩蔵わかめ」を食塩水で洗浄後、機械乾燥し、適当な大きさにカットし、袋に密封し、市販されている。成分値は、市販品の分析値に基づき決定した。

 「湯通し塩蔵わかめ」は、原藻を湯通ししてから、冷水で冷却し、塩蔵し脱水したものである。成分値は、市販品を塩抜きしたものの分析値に基づき決定した。

 「くきわかめ」は、「わかめ」を加工する際に除かれる中肋(ちゅうろく)や茎をいう。通常の流通形態である「湯通し塩蔵」を収載した。成分値は、市販品を塩抜きしたものの分析値に基づき決定した。

 「めかぶわかめ」は、わかめ茎基部の両縁にできるめかぶ(成実葉)を切り離したものを、刻んで湯通しした冷凍品等が流通している。成分値は、市販品の分析値に基づき決定した。

文献

 1)  安井明美・小泉英夫・堤 忠一:食用藻類の無機元素組成,食総研報,No.37,163(1980)
 2)  岐阜県工業技術センター:分析結果資料(未公表)

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