実践例3

子供(本人)やその保護者の願いや思いを知るには、どんな機会があるのだろう?

(1) 対応する際のポイント

【保護者に対して】

「焦らず一緒に対応を考えていきましょう。」という姿勢を示すことが、精神的な支えになります。また、子供の指導について信頼や安心感が得られることで、保護者は悩みを語りやすくなり、願いや思いが整理されていきます。

例えば、こんな場面や方法が考えられます。

  • 通級の際の送迎の時の立ち話から
  • 連絡ノートや通級指導に関するアンケート(希望や感想など)等を活用して
  • 個人面談(三者面談)の際に
  • 授業参観や懇談会に出席した時に

【本人に対して】

信頼関係がない中で、いきなり思いや願いを聞こうとしても子供が本音を語りにくい場合があります。子供とのやりとりを通じて、少しずつ信頼関係を構築していきましょう。

例えば、こんな場面や方法が考えられます。

  • 通級による指導の際に
  • アンケート等を活用して
  • 校内で見かけた時に

(2) 具体的な実践例

【概要】

  • F さんは、他のことに気を取られて課題に最後まで取り組まなかったり、早とちりや勘違いから友達とのトラブルに発展しやすかったりする面があります。
  • F さんの保護者からは、人の話を最後まで聞けないことや、友達関係が心配だという話がありました。
  • 通級指導において、F さんから、学校であった楽しかったことや困ったことをじっくり聞くようにし、F さんの話や学校で上手くできたことなどについて、連絡ノートで保護者と共有するようにしました。
  • 保護者からも、家庭での出来事について、会った時に自ら話してくれたり、連絡ノートに書いてくれたりするようになりました。
  • 三者面談では、事前にF さんやF さんの保護者の願い等をアンケートで聞き取った上で、面談に臨むようにしました。
  • 通級担当として初めて面談した際、F さんの保護者は、「家でも話を最後まで聞かずに失敗が多く、上手くいかないと妹に手を出すこともあります。どうしてもF に対する注意や叱責が多くなってしまうんです…。」と話してくれました。「学校でも同じことがあるんじゃないかと…。友達との関係も心配で…。」と続けました。とても悩んでいて辛そうでした。また、早く何とかしたいという焦りも感じられました。そのため、面談では、保護者の日常の大変さや辛さ等を十分に聞き取ることを重視し、「毎日のことなので、お父さんお母さんも大変だと思いますが、良いところもたくさんあるF さんです。一緒に対応を考えていきましょう。」と伝えました。
  • 通級指導では、F さんに、学校であった具体的なエピソードを話す時間を設け、それをじっくり聞くようにしました。F さんが話してくれた内容や、学校であった良いことを、連絡ノートを通じて保護者とも共有するようにしました。
三者面談をするFさんとFさんの保護者と通級担当の女性の画像
れんらくのーと くみ なまえ
〈連絡ノート〉△月×日(〇)本日のメモ 今日は、図画工作の授業で、自分の作品が担任の先生に褒められたことについて話してくれました。特にF さんが時間をかけ、たくさんの色を使って表現した部分を褒められたことが嬉しかったそうです。また、通級指導では、思うようにいかなくても、最後までやろう、という約束を決めて、△△さんと二人でボードゲームを行いました。F さんは、2回のうち1回は負けてしまいましたが、最後までやることができました。
  • 通級指導でじっくりと話を聞く時間を設けることで、F さんは徐々に、楽しいことだけでなく困ったことも話せるようになってきました。
  • 保護者は、F さんが前向きに取り組む様子を見て少し安心したのか、家庭での課題や対応の工夫を話してくれたり、連絡ノートに書いてくれたりするようになりました。
  • 連絡ノートは、在籍学級担任とも共有し、在籍学級や家庭での様子を理解できるようにしました。また、三者面談の際には、事前にF さんとF さんの保護者に通級指導への願いなどについてアンケートを取り、その回答も踏まえて話し合うことで、少しずつ、対応について一緒に考えることができるようになりました。
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