<アインシュタイン>
(Albert Einstein)
ドイツ生まれの物理学者アインシュタインは、1905年、光が金属にあたって電子を放出させる現象を、光が粒のようなエネルギーの塊となって起こしていると考え説明しました。光を粒として考えた光量子仮説です。
<キュリー夫妻>
(Pierre Curie, Marie Curie)
19世紀末、キュリー夫妻は、のちに言う放射能をもつ天然の鉱物について研究しました。二人は1903年ベクレルとともに放射能の研究によりノーベル物理学賞を受賞しました。夫ピエールは不慮の事故でなくなりましたが、妻マリーは1911年、ラジウムおよびポロニウムの発見による化学への貢献とラジウムの性質およびその化合物の研究について、ノーベル化学賞を受賞しました。
<チャドウィック>
(James Chadwick)
1932年イギリスの物理学者チャドウィックは、アルファ(α)線をベリリウムに当てるとでてくる透過力の強い放射線の研究から中性子を発見しました。これにより1935年にノーベル物理学賞を受賞しました。
<トムソン>
(Joseph John Thomson)
1897年イギリスの物理学者トムソンは、真空中で金属板に電圧をかけた時に発生する流れの研究から電子を発見しました。
<仁科芳雄>
(にしな よしお)
仁科芳雄は1937年、日本で初めてのサイクロトロン加速器を建設し、原子核、素粒子研究の基礎を築きました。その流れをくむ研究や実験施設は現在も世界に冠絶する研究成果をあげています。日本の原子核物理の父、とも呼ばれます。
<プランク>
(Max Karl Ernst Ludwig Planck)
ドイツの物理学者プランクは電磁波のエネルギーのやり取りの研究から、エネルギーは最小単位があり、エネルギーはその数でやり取りされると考えました。エネルギーさえも粒として捉えたプランクの量子仮説は量子論の発端となり、1918年「エネルギー量子の発見による物理学の進展への貢献」によりノーベル物理学賞を受賞しました。
<ベクレル>
(Antoine Henri Becquerel)
フランスの物理学者ベクレルは19世紀の終わりごろ、放射能をもつ天然の鉱物を発見しました。1903年に、自然放射能の発見によりノーベル物理学賞を受賞しました。現在も使われている、放射能の強さを表す単位 のベクレル(Bq)はベクレルの名にちなんでいます。
<ヘルツ>
(Heinrich Rudolph Hertz)
1887年ドイツの理論物理学者ヘルツは、金属に光を当てると電荷を帯びた粒子が出てくる現象を発見しました。
<湯川秀樹>
(ゆかわ ひでき)
1935年日本の理論物理学者湯川秀樹は、陽子や中性子を互いに結合させる強い相互作用の媒介となる中間子の存在を予言しました。これにより1949年、日本人として初めてノーベル物理学賞を受賞しました。
<ラザフォード>
(Ernest Rutherford)
1919年イギリスの物理学者ラザフォードは、アルファ線を窒素の核に当てる実験から、陽子を発見しました。1908年、元素の崩壊と放射性物質の化学に関する研究により、ノーベル化学賞を受賞しました。
<レントゲン>
(Wilhelm Conrad Röntgen)
1895年ドイツの物理学者レントゲンは、透過力の高い未知の光を発見し、これをエックス(X)線と名付けました。これにより1901年、第1回ノーベル物理学賞を受賞しました。
<イオン>
原子核に含まれる陽子の数と、周りの電子の数が異なることで電荷を帯びた原子です。陽子の数より電子の数が少なければプラスの電荷を持つ陽イオン(プラスイオン)、多ければマイナスの電荷を持つ陰イオン(マイナスイオン)と呼ばれます。
<エックス線>
透過力が強く目に見えない放射線があることを発見したレントゲンは、未知の放射線であることからエックス(X)線と名付けました。X線は、比較的エネルギーが高い(波長が短い)電磁波で、光の仲間です。真空管のマイスナス電極から発生した電子がプラス電極に衝突するときなどに発生します。医療用などに広く利用されています。
<クォーク>
陽子、中性子などを作る素粒子の仲間です。クォークには6つの種類が存在しますが、この存在を理論で予言した小林誠博士、益川敏英博士は2008年にノーベル賞を受賞しました。陽子は2つのアップクォークと1つのダウンクォークから、中性子は1つのアップクォークと2つのダウンクォークからできています。6種類のクォークの組み合せにより、様々な量子が作られます。
<原子核>
物質を構成する原子の中央に位置します。陽子とほぼ同数の中性子からなり、プラスの電荷を帯びています。原子核の周りには陽子とほぼ同数の電子が雲のように取り囲んでいて、原子は電気的にほぼ中性になります。原子核に含まれる陽子の数を原子番号と呼びます。電子はとても軽いので、原子の質量のほとんどは原子核のものです。
<光子>
19世紀には光は波であるという考えが主流でしたが、20世紀になりアインシュタインらが粒子であると考える「光量子仮説」を提唱しました。量子としての光は光子(photon)と呼ばれます。目に見える可視光のほか、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線なども光子ですが、エネルギーによって呼び名が異なっています。
<質量の素粒子>
すべてに質量を与える量子としてヒッグス粒子が見つかっています。いくつかの種類の存在も予言されています。重力も重力子と呼ばれる量子で与えられると考えられています。
<重粒子>
陽子や中性子よりも重い素粒子が重粒子ですが、中性子と陽子の数がある程度(炭素や窒素程度)大きい原子核を持つイオンを重粒子と呼ぶこともあります。この場合は重イオンとも呼ばれます。加速器を用いた重粒子ビームとして、がん治療や新元素の研究などに利用されます。
<新元素>
自然界には存在しない元素も、量子ビームを使って創成することができます。理化学研究所仁科加速器研究センターで行われた研究で創成された新元素は、2016年にニホニウム(Nh)と命名されました。
<素粒子>
それ以上分割することができない、量子の最小単位をいいます。1964年にそれまで素粒子と考えられていた陽子や中性子も、さらに小さい単位の粒子からできていると提唱され、これらの素粒子がクォーク(quark)と命名されました。クォークは自然界には単独で存在することができず、複合体として陽子や中性子などを構成しています。電子は自然界に単独で存在できる素粒子であり、その仲間としてミュー粒子やタウ粒子、ニュートリノなどがあります。また、素粒子には、物質を作っている素粒子とは反対の性質をもつ反粒子や、力を伝える素粒子など多くの種類があり、電荷、スピン、質量、寿命などによって分類されています。
<タウ粒子>
電子やミュー粒子と同じ仲間で、マイナス1の電荷をもち、電子より3,500倍重い粒子です。加速器実験により1975年に発見されました。タウ粒子が崩壊すると、タウニュートリノ、電子、電子ニュートリノ、もしくはタウニュートリノ、ミュー粒子、ミューニュートリノになります。
<力を伝える素粒子>
力には、電磁気力、弱い力、強い力、重力の4つが存在しますが、それぞれ量子が力を伝えています。電磁気力は光の素粒子である光子が伝えています。
<中間子>
クォークと、その反対の性質を持つ反クォークから構成される量子をいいます。質量が陽子や中性子と、電子の中間くらいと推定されたことから、中間子と名付けられました。湯川秀樹博士が導入した、陽子や中性子を結合させて原子核を作る強い相互作用を持つ中間子はパイ中間子と呼ばれています。
[BelleⅡ測定器] 画像提供:高エネルギー加速器研究機構
茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構の、周長約3kmのSuperKEKB加速器に設置されている粒子測定器で、高さ、幅、奥行きそれぞれ約8 m、重量約1,500トンもあります。SuperKEKB加速器で加速した電子と陽電子の衝突によって生成されたB中間子を測定します。B中間子の崩壊データを測定して収集・解析することで、宇宙初期に起きたとされる素粒子の様々な現象を再現し、未知の粒子や力の性質を明らかにします。
<中性子>
原子核を構成する量子の一つです。1932年にチャドウィックによって発見されました。電気的に中性(ニュートラル)なので中性子(ニュートロン, neutron)と名付けられました。陽子とほぼ同じ重さですが、わずかに中性子の方が重いです。陽子ともに原子核を構成しているときは安定していますが、単独に存在する中性子は約15分でベータ(β)崩壊を起こして陽子になります。中性子の流れは中性子線と呼ばれます。
※ポスターでは、電子を10×10-31として表現したため、「中性子は電子より約1700倍重い」としています。本補遺の質量を用いて算出すると、「中性子は電子より約1800倍重い」と計算できます。
<電子>
陽子や中性子とともに、物質を構成する量子の一つです。マイナス1の電荷を帯びていて、身近に電気の素として存在しています。質量は約9.11×10-31kg。電子(electron)の流れはベータ線(β)とも呼ばれます。原子や分子の性質の多くは、電子の働きによります。マイナスの電荷を帯びた粒子の流れとして1897年にトムソンにより発見されました。1923年にはフランスの物理学者ド・ブロイによって波の性質を持っていることが提唱されました。
※ポスターでは9.11×10-31を約10×10-31として「1kgの100億分の1の100億分の1の100億分の1」と表現しています。
<ニュートリノ>
1930年にパウリにより存在が予言された中性(電荷を帯びない)の素粒子です。中性の意味のニュート(ラル)と、イタリア語で小さなという意味のイノから、「ニュートリノ(neutrino)」と名付けられました。非常に小さく、他の物質と反応することが少ないので、地球も簡単に通り抜けてしまい、幽霊粒子と呼ばれていました。当初質量がないと考えられていましたが、カミオカンデでニュートリノ振動がみつかり、梶田隆章博士が、質量があることを証明して2015年にノーベル物理学賞を受賞しました。
[スーパーカミオカンデ] 画像提供:東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設
世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置。東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設が岐阜県飛騨市神岡鉱山内の地下1,000mに設置してニュートリノなどを観測しています。検出器は、5万トンの超純水を蓄えた、直径39.3m、高さ41.4mの円筒形水タンクと、その壁に設置された光電子増倍管と呼ばれる、約1万3千本の光センサーなどから構成されています。実験目的の一つにニュートリノの性質の解明があり、宇宙の初期に物質がどのように作られたかという謎に迫ります。
<放射光>
高速で運動する荷電粒子の軌道が変化するとき、進行方向に赤外線からX線、ガンマ(γ)線まであらゆる電磁波(光)が放射されます。広いエネルギー領域で、非常に強く、指向性が高い光を得ることができます。この光の量子ビームをとくに放射光と呼んでいます。
<ミュー粒子>
ミューオン(muon)とも呼ばれます。電子の仲間でマイナス1の電荷を帯びていますが、電子より約210倍の重さです。ミュー粒子のビームは陽子加速器施設でつくられ物理化学の研究に利用されます。宇宙からもたくさん降り注いでいて、宇宙のミュー粒子は火山やピラミッドなどの大きな建造物を透視すること(ミュオグラフィー)にも利用されます。
※ポスターでは「ミューオグラフィ」と表記されていますが、「ミュオグラフィ」と読む方が英語のmuographyの発音に近いので、今後は表記もミュオグラフィに統一します。
<陽子>
原子核を構成する量子の一つです。プラス1の電荷を帯びています。陽子を発見したラザフォードは、これを物質の最も基本的な構成要素と考えました。プロトン(proton)と呼ばれ、ギリシャ語で「最初の」を意味する「protos」に由来しています。質量は約1.67×10-27kgで、電子の1800倍もの重さです。
※ポスターでは、電子を10×10-31として表現したため、「陽子は電子より約1700倍重い」としています。本補遺の質量を用いて算出すると、「陽子は電子より約1800倍重い」と計算できます。
<レーザー光>
レーザー発振器を用いて発生させた、波長、位相がそろった光で、強度、干渉性が高い光のビームです。通常の光は放射状に広がっていきますが、レーザー光は広がらずにまっすぐに進みます。波長の長い赤外線や可視光だけでなく、近年は波長の短いレーザー光を発生させる研究が進んでいます。
<レプトン>
クォークとともに物質をつくる量子にレプトンと呼ばれる素粒子があります。原子を構成している電子もレプトンの仲間です。電子は、マイナスの電荷をもった素粒子で、ほかにミュー粒子やニュートリノなどレプトンには6種類の仲間があります。
<核融合>
水素などの軽い原子核が融合してより重い原子核になる核反応のことです。核融合反応の際には、その種類によっては、大きなエネルギーが発生します。太陽活動のエネルギー源は核融合反応です。地球上でわたしたちのエネルギー源として利用するための研究開発も進められています。
<量子ビーム>
たくさんの量子の流れを揃えビーム状にすると、バラバラのときより、強く向きがそろい、使いやすくなります。これを量子ビームと呼びます。量子ビームを作るには多くの場合、加速器が利用されます。加速器には直線加速器、サイクロトロン、シンクロトロンなどいろいろな種類があります。また、ビームにされる量子の種類により、電子ビーム、中性子ビーム、イオンビームなどと呼ばれています。
<量子メス>
重粒子線がん治療装置をより高性能化し、量子をメスのように使う研究が進んでいます。 同時に装置の小型化、低価格化が進めば、先端の治療をどこでも誰でも受けられるようになると期待されます。