3月上旬、今回は写真の撮影者の荒井さんが通う徳島県の阿南工業高等専門学校にお邪魔して話を伺いました。
お話を伺うと、荒井さんたちの自由な発想と、その自由な発想を活かす阿南高専の電気コースで取り組まれている「電気技術イノベーション実習」のシステムが今回の受賞の背景にあることがわかりました。
荒井さんへのインタビューについては、2回に分けてお伝えします。
【先生からの紹介で知ったコンテスト】
― 荒井さん、今回は最優秀賞の受賞おめでとうございます。
荒井 ありがとうございます。
― 今回のインスタ写真コンテストはどのような経緯でお知りになりましたか。
荒井 先生からこんなコンテストがあるよ、と教えてもらいました。コンテスト用ではなくて記録用に撮ったものだったのですが、応募してみました。
― 狙って撮ったものではないところが逆に良かったのかもしれないですね。先生はどのようにこのコンテストを知ったのですか。
藤原 高専機構本部から案内がありました。これは素晴らしいな、と思って「応募してみない?」と誘ってみました。
― 今回初めてのコンテストだったので、こうやって素晴らしいと思っていただいて嬉しいです。
【youtubeでネタを探して実験装置は手作り】
― それでは、荒井さんはどのような経緯でこのような実験を行うことになったのですか。
荒井 毎年文化祭では子供たちに実験教室などを行っています。今まではLEDを使った工作を行っていたのですが、新しい企画を考えようと思いました。youtubeなどにある実験動画を見て、絶縁破壊痕を刻む実験が良いと思いました。アクリル板を使う実験もあったんですけど、アクリル板は高いので(笑)
― 今回の写真を撮った文化祭での実験と同じ実験を行っていただけると聞いていますが、お願いしていいですか。
荒井 はい、それでは実験装置を組んでいますので、実際にやってみますね。まずは、電流を流しやすくするために、木の表面に霧吹きをかけます。
荒井 この装置は、家庭用の電源を3000Vまで昇圧する部分と安全装置、そして木が焦げて煙が出ますので、排煙する部分からできています。全部自分たちで組んだんですよ。
小松 この装置は荒井君たちが作ったんですよ。特に安全装置は一から手作りです。
― さすが電気コースの学生さんですね。
荒井 装置の配置や安全装置などについて、先生方にアドバイスいただいたり、部品の提供をお願いしましたが、基本的に私たちだけで回路の設計を行って作製しました。
小松 私たちは、安全面の確認はしますが、部材の入手から組み立てまで全て学生たちに任せています。簡単なものは学校に揃っているのですが、スライダー(編集部注:装置の白い円柱形のもの)は、他の先生に自分たちで交渉して提供してもらっているんです。木材を使ったのも自分たちの手で全てやることを考えて選択したんでしょうね。
荒井 準備が整ったので、電圧を上げていきますね。
荒井 このように焦げ跡が少しずつ広がっていきます。
荒井 途中で霧吹きをしながら、ある程度焦げが広がったら止めて最後にススを洗い流すと、出来上がりです。
ここにあるのは文化祭で作ったものです。
― 対角線上に同じような模様ができるんですね。
荒井 はい、対角線上に電極を置きますので、その間に電流が流れようとして対角線上に模様が伸びます。実験を行うごとに使う木材の大きさも木目も違いますので、模様も少しずつ違います。
― 実際に模様ができてくる様子は面白いですね
荒井 家族連れで来ていただくので、お子さんにお土産として持って帰ってもらったりしました。ただ、きれいだね、だけではなくて、一般家庭の電源を使ってここまでの焦げ痕ができるということは、一般家庭の電源にも危険があるんですよ、安全対策は重要なんですよ、ということも伝えたかったので、実験の説明と一緒にお話をしました。
- 安全対策について知ってもらうことも重要なんですね。
荒井 普段あまり意識しないからこそ、私たちから説明することは大事だと思います。
― 文化祭ではどのくらいの方が来校されたんですか。
荒井 2日間で200人くらいの方に来ていただきました。
松本 学校全体では2日間で2000人以上の方が来られるんですよ。高専ならではの実験や展示があるので、毎年多くの方に来ていただいています。
【写真の木材は「売って」しまった】
― 実演、ありがとうございました。ところで、今回の写真のもととなった木材はどこにあるんですか。
荒井 実は、先生に売っちゃいました。
- 売ったんですか?
荒井 先生が木材の模様がきれいなので欲しい、ということだったので。私たちは会社の仲間で、実験の企画、運営をすることで電気コース内の仮想通貨ANETコインをもらって会社の運営をしています。だから10ANETコインで譲ったんです。まさかこのような賞をもらうとは思わなかったものですから。
― 会社?コース内通貨?先生、どういうことですか??
小松 実は荒井君は社長なんです。
― 社長?先生まで混乱させようとしてません??
写真のお話を聞いてくと、会社とか社長だとか工業高等専門学校の学生さんとはかけ離れた話になってきました。実は、この会社や社長さんの取組が今回の写真が生まれた背景にあるのです。そして、インスタからeスポーツへと。その話は、次回の記事でお伝えします。