有識者インタビュー
GIGAスクール構想×探究学習➁
(中京大学 教授 泰山 裕 氏)
1人1台端末とクラウド環境の学習活動におけるよりよい活用が、多くの学校で試行錯誤されるようになりました。 今回は、GIGAスクール構想の下での「探究学習」と「情報活用能力の育成」について、中京大学教授・泰山裕先生にお話を伺いました。「デジタルの力でリアルな学びを支える」という考えのもと、「探究学習」を切り口に「端末を活用した授業づくり」や「学習者主体の学びとは何か」を探ります。
(令和7年5月16日掲載)
※ 関連インタビュー:「GIGAスクール構想×探究学習」(東京学芸大学准教授 登本洋子氏)はこちら。
○ 探究学習とGIGAスクール構想の関係
○ 探究学習を支える「情報活用能力」
○ 情報活用能力を伸ばす授業づくり
○ 総合的な学習の時間と各教科等の学びの中で身に付けた力を相互に生かす
○ 探究を通した学びに期待すること
GIGAスクール構想により、児童生徒が1人1台端末を活用できるようになり、総合的な学習の時間のみならず、教科等の学びにおいても、探究的な学習のプロセス(※登本氏インタビュー記事を参考)が格段にスムーズに進められるようになりました(図1)。これまでは、学習者が自分で集められる情報に限界があったり、その整理に時間が掛かってしまったりすることも多く、探究するための時間をしっかりと取ることが難しいこともあったと思います。ですが、インターネット検索やクラウドを通じて、リアルタイムで情報収集、整理、共有が可能になり、これまでの紙中心の活動では実現しにくかった柔軟な探究プロセスが実現しやすくなりました。これにより、子供が自分の興味・関心に沿って学びを深めやすくなり、学習者主体の学びが広がってきています。
一方で、「子供が検索結果を鵜呑みにするのでは——」「表面的な答えを見つけることが目的化するのでは——」といった懸念もあり、思考や整理の過程が省略されることを心配する声もあります。こうした課題が顕在化したことで、授業改善の必要性が再認識され、「情報活用能力をどう育むか」「深い学びとは何か」などが改めて注目されるようになりました。これは、探究学習の質をより高める機会とも言えるでしょう。

図1 いま、求められている学び
探究学習において重要なのは、情報を正しく扱う力です。得た情報をどのように整理し、結論へと導くかという思考や表現のスキルとも深く関わってきます。
また、各教科等での学習活動においても探究のプロセスを意識して、学習の流れを検討したり、その主導権を少しずつ学習者に移行していくことが大切です。「総合的な学習の時間」だけではなく、各教科等の学びでも情報活用能力を発揮することで探究の質が高まり、主体的に学ぶ力が伸びるとともに、より深い理解へとつながると考えられます。
1人1台端末の活用による探究学習には、大きく三つのメリットがあると考えます。
一つめは、子供が自分の興味・関心を深く追究できることです。端末があることで、疑問に思ったことをその場で調べられたり、自分の興味・関心に応じた、必要な情報にすぐアクセスできるため、学ぶ意欲が高まり、主体的な学びへとつながります。
二つめは、協働的な学びの促進です。クラウドでの共同編集や情報共有により、グループでの意見交換やフィードバックが活発になり、コミュニケーションが充実していきます。他者の考えを参考にしながら学ぶことで、従来よりも学びの幅が拡がったり、より深まったりするのです。また、教師が子供に関わる場面においても、一斉指導に割く時間が減少することで、子供一人一人に必要なタイミングで支援ができる環境が整います。
三つめは、教師が個々の子供により深く関われることです。端末のチャットやコメント機能などを使うことで、子供の学習の進捗や理解度、疑問点が可視化され把握できるようになり、個別最適な支援を的確に行いやすくなります。
ただし、これらの前提として、端末を活用するためには基本的な操作スキルなども必要です。タイピングや端末の操作は自然に身に付くものではなく、計画的で日常的なトレーニングが不可欠です。また、操作に不慣れな状態のままでは、子供は情報収集の段階でつまずく可能性があるため、授業内での日常的な活用や、家庭学習を通して慣れる機会を確保することが重要です。端末を十分に使いこなすためにも、その基礎的な使い方等を身に付けることが、探究学習の質を高める鍵となります。

(参考)デジタル学習基盤が可能とする学びの姿(イメージ)
学習者主体の探究学習を進めるには、段階的なアプローチが重要です。いきなり「自分で考えて取り組みましょう」と促しても、子供は戸惑い、探究がうまく進まないでしょう。
従来の授業は、教師が進め方を管理し、全員が同じゴールを目指す「バスツアー型」の学び(図2)が一般的でした。これは、探究の基本的なプロセスを学ぶ準備段階として有効です。そこから学習者主体の学びへ移行するには、まず活動の一部や取り組むテーマを子供が選べるようにし、「自分で決めた」という実感を持たせることが大切になります。そしてそれができるようになったら、次のステップとして、選択の範囲を広げ、子供自身が学びの設計を進められるよう支援していきます。この段階では、教師は伴走者やコーディネーターとして、必要に応じて助言する役割を果たします。

図2 学習者主体の学びに至るには
探究学習では、教師が「手を出しすぎる」ことが子供の学習意欲を低下させる原因になることもあります。例えば、教師が「発表会をしよう」と提案しても、その目的が理解できない子供は興味を失うでしょうし、発表の進め方や内容を細かく指示しすぎると、「結局、先生にやらされている」と感じてしまい、主体性が育ちにくくなります。
上手に探究学習を進めている学校では、教師がさりげなくヒントを与えたり、「発表したい」という気持ちを引き出す工夫をしたりしています。子供が自ら問いを立て、試行錯誤しながら学ぶことが探究学習の本質と言えます。教師の「指示」ではなく、教師が適切な場面で支援し、子供の主体性を引き出すことが求められます。「手放す」ことも重要な教師の役割であり、子供が自ら考え、学びを見守る姿勢が探究学習を成功に導くことにつながります。
ある小学校で、「マスクを作って販売したい」と考えた子供たちが、総合的な学習の時間において探究学習に取り組むという実践事例がありました。「販売可能なマスク」には厳格な基準があり、それを満たすのは容易なことではありません。しかし、子供たちは自ら調べ、意見を交わしながら役割分担を決め、チャット機能等も活用して予算やその基準とのすり合わせを繰り返していました。この活動は、授業時間だけでなく、放課後や家庭学習においても続き、子供たちは1人1台端末やクラウドを活用して、まさに熱中して取り組んでいました。この取組を見て、「子供たちは、大人の問題解決と変わらないレベルの学びができる」と実感しました。
探究学習を通じて情報活用能力を伸ばすには、情報の扱い方を意識させることが重要だと考えています。従来の学習活動にも情報収集や整理の場面はあります。特に、情報の整理・分析の場面では、その学習活動で活用している思考スキル(図3)を、子供自身が意識しながら学習に取り組むことが重要であると考えています。例えば、「今は多面的に見たんだね」「ここでは比較を使ってみよう」といった声掛けを通じて、思考スキルを明確に意識させることが有効です。
また、思考スキルを育むために、授業での思考ツール(図4)の活用が重要です。単に使い方を教えるのではなく、「なぜ、このツールを使うのか」を教師自身が理解し子供に伝えることが大切です。思考ツールにはそれぞれ対応する思考スキルがあります。「比較」「分類」「関連付け」など、授業の目的に応じた適切なツールを選ぶことで、思考の質を深めることができます。教師がその授業や単元で「今回はどの思考スキルを育成したいのか」を明確に捉え、子供に伝えることで、情報活用能力を意識させて育むことができるのです。

図3 思考スキルの一覧

図4 思考ツールの一覧
探究学習による教科の学びの深まりに懸念が生じるのは、探究学習の初めに「学び方を学ぶ」時期が必要なためだと考えます。子供はまず、「情報収集の仕方」「考えの可視化の仕方」「資料の引用ルール」など、探究の基礎となるスキルを身に付ける必要があります。この段階では、各教科等の内容の深まりが見えにくいため、不安を感じることもあるでしょう。しかし、これら基礎をしっかり習得することで、子供は必要な情報を自ら収集し、整理・分析し、考えを深め、表現できるようになります。
「学び方を学ぶ」段階がある程度身に付いたあとは、教科の見方・考え方をはたらかせ、専門的な学びへと移行していきます。教師も専門性を生かし、本格的な探究を促すことが可能になります。そして、最終的には子供が主体的に課題を設定し、教科の見方・考え方を働かせた深い学びが実現できるようになります。また、端末の活用によって高度な知識や技能にアクセスしやすくなります。情報活用能力を活用した探究学習が、教科の学びをさらに豊かにするという好循環を生み出すのです。
情報活用能力、問題発見・解決能力、言語能力の3つは、各教科等の学びを支えるものです。例えば、国語科では言語能力が中心となりますが、適切に情報を収集・活用する力も必要です。社会科では、情報をもとに課題を設定し、解決策を考える過程で問題発見・解決能力が発揮されます。理科では、実験結果の分析や表現に言語能力が求められることもあります。
総合的な学習の時間における探究活動で培った学習の基盤となる力を各教科等に生かし、各教科等で得た知識等を総合的な学習の時間で活用することで、より深い学びへとつながります。
探究学習では、子供が思わぬテーマに没頭することがありますが、その経験こそ「学びに向かう力」を育む大切な過程です。「自分の興味をとことん追究できる子供」は、探究心を持ち続け、主体的に学ぶ力を備えた子供に成長していきます。
GIGAスクール構想により、探究学習を支える環境が整い、教師がこれまで実現したかった学びを提供できるようになりました。この環境を活かし、学習活動において探究のプロセスを何度も回すことで、子供の個性や教師の力を最大限に発揮できると考えます。
また、「ウェルビーイング」の視点からも、子供が自分らしく生き、多様な他者と協調しながらよりよい未来を創り出す力を育むことが期待されています。探究学習と情報活用能力の育成を進めることで、子供の主体的な学びをさらに深めることができるでしょう。
GIGAスクール構想により、1人1台端末が当たり前の時代となりました。その環境を生かすには、探究学習の視点と情報活用能力の育成が不可欠です。探究的な学びを各教科にも取り入れることで、子供の主体的な学びがさらに深まると考えます。本記事が、新しい授業づくりの一歩となれば幸いです。
○ 探究学習を支える「情報活用能力」
○ 情報活用能力を伸ばす授業づくり
○ 総合的な学習の時間と各教科等の学びの中で身に付けた力を相互に生かす
○ 探究を通した学びに期待すること
探究学習とGIGAスクール構想の関係
― GIGAスクール構想によって1人1台端末が整備されたことで、学校現場での探究学習は具体的にどのように変わりましたか?
GIGAスクール構想により、児童生徒が1人1台端末を活用できるようになり、総合的な学習の時間のみならず、教科等の学びにおいても、探究的な学習のプロセス(※登本氏インタビュー記事を参考)が格段にスムーズに進められるようになりました(図1)。これまでは、学習者が自分で集められる情報に限界があったり、その整理に時間が掛かってしまったりすることも多く、探究するための時間をしっかりと取ることが難しいこともあったと思います。ですが、インターネット検索やクラウドを通じて、リアルタイムで情報収集、整理、共有が可能になり、これまでの紙中心の活動では実現しにくかった柔軟な探究プロセスが実現しやすくなりました。これにより、子供が自分の興味・関心に沿って学びを深めやすくなり、学習者主体の学びが広がってきています。
一方で、「子供が検索結果を鵜呑みにするのでは——」「表面的な答えを見つけることが目的化するのでは——」といった懸念もあり、思考や整理の過程が省略されることを心配する声もあります。こうした課題が顕在化したことで、授業改善の必要性が再認識され、「情報活用能力をどう育むか」「深い学びとは何か」などが改めて注目されるようになりました。これは、探究学習の質をより高める機会とも言えるでしょう。

図1 いま、求められている学び
探究学習を支える「情報活用能力」
―「情報活用能力」は探究学習のプロセスの中でなぜ重要で、子供の学びを深めることにつながるのでしょうか?
探究学習において重要なのは、情報を正しく扱う力です。得た情報をどのように整理し、結論へと導くかという思考や表現のスキルとも深く関わってきます。
また、各教科等での学習活動においても探究のプロセスを意識して、学習の流れを検討したり、その主導権を少しずつ学習者に移行していくことが大切です。「総合的な学習の時間」だけではなく、各教科等の学びでも情報活用能力を発揮することで探究の質が高まり、主体的に学ぶ力が伸びるとともに、より深い理解へとつながると考えられます。
―1人1台端末の活用による探究学習のメリットについて教えてください。
1人1台端末の活用による探究学習には、大きく三つのメリットがあると考えます。
一つめは、子供が自分の興味・関心を深く追究できることです。端末があることで、疑問に思ったことをその場で調べられたり、自分の興味・関心に応じた、必要な情報にすぐアクセスできるため、学ぶ意欲が高まり、主体的な学びへとつながります。
二つめは、協働的な学びの促進です。クラウドでの共同編集や情報共有により、グループでの意見交換やフィードバックが活発になり、コミュニケーションが充実していきます。他者の考えを参考にしながら学ぶことで、従来よりも学びの幅が拡がったり、より深まったりするのです。また、教師が子供に関わる場面においても、一斉指導に割く時間が減少することで、子供一人一人に必要なタイミングで支援ができる環境が整います。
三つめは、教師が個々の子供により深く関われることです。端末のチャットやコメント機能などを使うことで、子供の学習の進捗や理解度、疑問点が可視化され把握できるようになり、個別最適な支援を的確に行いやすくなります。
ただし、これらの前提として、端末を活用するためには基本的な操作スキルなども必要です。タイピングや端末の操作は自然に身に付くものではなく、計画的で日常的なトレーニングが不可欠です。また、操作に不慣れな状態のままでは、子供は情報収集の段階でつまずく可能性があるため、授業内での日常的な活用や、家庭学習を通して慣れる機会を確保することが重要です。端末を十分に使いこなすためにも、その基礎的な使い方等を身に付けることが、探究学習の質を高める鍵となります。

(参考)デジタル学習基盤が可能とする学びの姿(イメージ)
―学習者主体の探究学習を円滑に進めるためのステップと教師の役割について教えてください。
学習者主体の探究学習を進めるには、段階的なアプローチが重要です。いきなり「自分で考えて取り組みましょう」と促しても、子供は戸惑い、探究がうまく進まないでしょう。
従来の授業は、教師が進め方を管理し、全員が同じゴールを目指す「バスツアー型」の学び(図2)が一般的でした。これは、探究の基本的なプロセスを学ぶ準備段階として有効です。そこから学習者主体の学びへ移行するには、まず活動の一部や取り組むテーマを子供が選べるようにし、「自分で決めた」という実感を持たせることが大切になります。そしてそれができるようになったら、次のステップとして、選択の範囲を広げ、子供自身が学びの設計を進められるよう支援していきます。この段階では、教師は伴走者やコーディネーターとして、必要に応じて助言する役割を果たします。

図2 学習者主体の学びに至るには
探究学習では、教師が「手を出しすぎる」ことが子供の学習意欲を低下させる原因になることもあります。例えば、教師が「発表会をしよう」と提案しても、その目的が理解できない子供は興味を失うでしょうし、発表の進め方や内容を細かく指示しすぎると、「結局、先生にやらされている」と感じてしまい、主体性が育ちにくくなります。
上手に探究学習を進めている学校では、教師がさりげなくヒントを与えたり、「発表したい」という気持ちを引き出す工夫をしたりしています。子供が自ら問いを立て、試行錯誤しながら学ぶことが探究学習の本質と言えます。教師の「指示」ではなく、教師が適切な場面で支援し、子供の主体性を引き出すことが求められます。「手放す」ことも重要な教師の役割であり、子供が自ら考え、学びを見守る姿勢が探究学習を成功に導くことにつながります。
―実際に、学校ではどのような実践が行われているのでしょうか。
ある小学校で、「マスクを作って販売したい」と考えた子供たちが、総合的な学習の時間において探究学習に取り組むという実践事例がありました。「販売可能なマスク」には厳格な基準があり、それを満たすのは容易なことではありません。しかし、子供たちは自ら調べ、意見を交わしながら役割分担を決め、チャット機能等も活用して予算やその基準とのすり合わせを繰り返していました。この活動は、授業時間だけでなく、放課後や家庭学習においても続き、子供たちは1人1台端末やクラウドを活用して、まさに熱中して取り組んでいました。この取組を見て、「子供たちは、大人の問題解決と変わらないレベルの学びができる」と実感しました。
情報活用能力を伸ばす授業づくりについて
―探究学習を通した情報活用能力を伸ばすための授業づくりのポイントと考えることを教えてください。
探究学習を通じて情報活用能力を伸ばすには、情報の扱い方を意識させることが重要だと考えています。従来の学習活動にも情報収集や整理の場面はあります。特に、情報の整理・分析の場面では、その学習活動で活用している思考スキル(図3)を、子供自身が意識しながら学習に取り組むことが重要であると考えています。例えば、「今は多面的に見たんだね」「ここでは比較を使ってみよう」といった声掛けを通じて、思考スキルを明確に意識させることが有効です。
また、思考スキルを育むために、授業での思考ツール(図4)の活用が重要です。単に使い方を教えるのではなく、「なぜ、このツールを使うのか」を教師自身が理解し子供に伝えることが大切です。思考ツールにはそれぞれ対応する思考スキルがあります。「比較」「分類」「関連付け」など、授業の目的に応じた適切なツールを選ぶことで、思考の質を深めることができます。教師がその授業や単元で「今回はどの思考スキルを育成したいのか」を明確に捉え、子供に伝えることで、情報活用能力を意識させて育むことができるのです。

図3 思考スキルの一覧

図4 思考ツールの一覧
総合的な学習の時間と各教科等の学びの中で身に付けた力を相互に生かす
―子供が主体となった探究学習によって、「本当に教科の学びの深まりに到達できるのか」という心配や懸念について、お考えを教えてください。
探究学習による教科の学びの深まりに懸念が生じるのは、探究学習の初めに「学び方を学ぶ」時期が必要なためだと考えます。子供はまず、「情報収集の仕方」「考えの可視化の仕方」「資料の引用ルール」など、探究の基礎となるスキルを身に付ける必要があります。この段階では、各教科等の内容の深まりが見えにくいため、不安を感じることもあるでしょう。しかし、これら基礎をしっかり習得することで、子供は必要な情報を自ら収集し、整理・分析し、考えを深め、表現できるようになります。
「学び方を学ぶ」段階がある程度身に付いたあとは、教科の見方・考え方をはたらかせ、専門的な学びへと移行していきます。教師も専門性を生かし、本格的な探究を促すことが可能になります。そして、最終的には子供が主体的に課題を設定し、教科の見方・考え方を働かせた深い学びが実現できるようになります。また、端末の活用によって高度な知識や技能にアクセスしやすくなります。情報活用能力を活用した探究学習が、教科の学びをさらに豊かにするという好循環を生み出すのです。
―情報活用能力を含む学習の基盤となる力は、どのように教科の学びに寄与するのでしょうか。
情報活用能力、問題発見・解決能力、言語能力の3つは、各教科等の学びを支えるものです。例えば、国語科では言語能力が中心となりますが、適切に情報を収集・活用する力も必要です。社会科では、情報をもとに課題を設定し、解決策を考える過程で問題発見・解決能力が発揮されます。理科では、実験結果の分析や表現に言語能力が求められることもあります。
総合的な学習の時間における探究活動で培った学習の基盤となる力を各教科等に生かし、各教科等で得た知識等を総合的な学習の時間で活用することで、より深い学びへとつながります。
探究を通した学びに期待すること
―端末やクラウドを活用して探究学習や情報活用能力の育成を進めることについて、期待されていることはどのようなことでしょうか。
探究学習では、子供が思わぬテーマに没頭することがありますが、その経験こそ「学びに向かう力」を育む大切な過程です。「自分の興味をとことん追究できる子供」は、探究心を持ち続け、主体的に学ぶ力を備えた子供に成長していきます。
GIGAスクール構想により、探究学習を支える環境が整い、教師がこれまで実現したかった学びを提供できるようになりました。この環境を活かし、学習活動において探究のプロセスを何度も回すことで、子供の個性や教師の力を最大限に発揮できると考えます。
また、「ウェルビーイング」の視点からも、子供が自分らしく生き、多様な他者と協調しながらよりよい未来を創り出す力を育むことが期待されています。探究学習と情報活用能力の育成を進めることで、子供の主体的な学びをさらに深めることができるでしょう。
GIGAスクール構想により、1人1台端末が当たり前の時代となりました。その環境を生かすには、探究学習の視点と情報活用能力の育成が不可欠です。探究的な学びを各教科にも取り入れることで、子供の主体的な学びがさらに深まると考えます。本記事が、新しい授業づくりの一歩となれば幸いです。