学校の取組例

石川県能美市立浜小学校

 

校務DXと学びのDXがもたらす学校改革の推進

【初等教育資料 令和7年1月号記事】(文責:校長 中野孝子)
(令和7年2月4日掲載)

 
-能登半島地震における子供の自発的な連携
-校務DXがもたらした業務改善と教師のICTリテラシー向上
-KPIに基づく学びのDX促進
 ※ KPI:Key Performance Indicatorの略称

 
 

能登半島地震における子供の自発的な連携

 本校では、令和4年秋より1人1台端末の持ち帰りを日常的に実施し、その活用場面を模索してきた。この取組の意義を感じた事例の1つに令和6年能登半島地震における子供たちの行動がある。
 令和6年元日に能登半島地震が発生し、多くの子供は避難を余儀なくされ、孤立した状況に置かれた。学校はアンケートフォームを使い、子供や保護者の安否確認・住居や通学路の安全確認を速やかに行った。一方で、日頃から端末の持ち帰りを行っていた子供たちは、自ら何ができるかを考え、教師の指示がなくても学習支援ソフトのコメント機能を通じて友達と連絡を取り合って安否を確認し、必要な情報を共有していた。
 
チャットでの子供のやりとり
チャットでの子供のやりとり
 
   このような子供の自発的な行動を知ったのは3学期が始まってからであった。これは、端末の活用による学びが子供たちの自立性や協働的な問題解決能力の育成につながったと考えられる。新たな学びを拓くには、端末の日常づかいを継続し、当校のDXを進めることが必要だと強く感じた。
 
 

校務DXがもたらした業務改善と教師のICTリテラシー向上

 本校ではプレゼンテーションソフト、カレンダーソフト、地図ソフト、ビデオ会議ソフトやチャット機能など様々な汎用的なクラウドツールを校務に幅広く活用している。子供の出欠連絡、授業や行事の進捗状況の共有、大雪警報時における指示伝達、職員会議資料の即時修正など、大量の情報を瞬時に共有しながらリアルタイムで連携している。また様々な会議や研修会の資料、学校からのお便りは、そのほとんどをペーパーレス化している。
 こうしたクラウドの導入・活用は会議の時間短縮、打合せ回数の削減、アクシデントやトラブルの未然防止・早期解決といった様々なメリットを生んでいる。1学期の時間外在校等時間を昨年度の同時期と比べたところ、約6時間の短縮が見られた。加えて印刷によるコピー用紙の使用枚数も大幅に減少した。校務DXの推進によって生まれた時間を子供と向き合う時間だけでなく、授業準備や端末・ソフトに触れる時間等に充てている。
 「こんなに便利なのか!授業でも使ってみよう!」
 このような声が教職員から聞こえてくるようになった。校務DXの推進により、業務の効率化が進む中で、教師のICTリテラシーが向上し、それが授業観の変革や学びのDXにおける新たな工夫へとつながっている。
 
 

KPIに基づく学びのDX促進

 授業では、端末を活用しながら各教科等の「見方・考え方」を働かせる学び方を大切にしている。単なる知識・技能の習得にとどまらず、子供が自ら考え判断できる資質・能力の育成を目指し、一斉指導と個に応じた指導を組み合わせた「セレクト学習」を取り入れて、単元をデザインしている。授業では、クラウドで共有している友達の意見を参考にすることで、新たな気付きを得ながら協働的に学ぶ姿が増えてきた。
 「一人一人の子供がどのように学んでいるのか、何が身に付いたのか」といったことの把握にも、クラウド環境が有効に働いている。このような学校の取組の客観的な把握に、KPIを役立てている。
 
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教育DXの取組の可視化(KPI含む)
教育DXの取組の可視化(KPI含む)
 
 また、教師同士でチャット機能を使い、授業動画や実践資料を随時共有している。都合のよい時間に視聴・確認ができるので、互いにフィードバックをする機会も増えた。「浜DX交流」と呼ぶこの仕組みは授業改善の意識を高め、学びのDXに挑戦する機会を広げている。管理職もメンバーに加わり実践を見守り、価値付けながらサポートしており、職員室では「子供主体の学び」の話題が増えてきた。
 また、今年度は中学校区内の小・中学校と情報を共有し、学校の垣根を超えた効果的な授業デザインの検討を目指している。
 学校は子供たちを誰一人取り残すことなく、子供にとっても教師にとっても可能性の広がる場所である。当校のDXで「これまで」と「これから」の教育を適切に融合した学校改革を進め、令和を生きる子供たちの幸せを求め続けていきたい。
 
 
GIGA StuDX推進チームより
 1人1台端末とクラウド環境を活用しながら、自ら考え判断できる子供の育成を図る取組が報告されています。授業では、教師が必要な指導を行った上で、子供が主体的に学ぶことができる手立てがとられています。また、校務DXを推進することで、教師がクラウド活用の利便性を実感し、その知見を授業や子供に還元する実践が広がっています。
 さらに、端末の持ち帰りを日常的に進めていることで、家庭でも子供自身がクラウドを活用することの有用性を実感している姿が見て取れます。互いにつながっていることが分かっているからこそ、どのような場面でも、子供たちが自主的に行動することができたことが報告されています。
 こうした実践を参考にしながら、各地域においても実態に応じて、1人1台端末とクラウド環境を有効に活用していただきたいと思います。

(監修:GIGA StuDX推進チーム)