学校の取組例

東京都立町田高等学校

 

GIGAスクール環境と1人1台端末を活用した

変革への挑戦
~GIGAスクール環境がもたらす教師と生徒の相互関係~

 
【中等教育資料 令和6年11月号記事】(文責:統括校長 南斉道雄)
  東京都立町田高等学校(以下、「町田高校」)は「自主・自律」「文武両道」「伝統と創造」を教育目標とする地域の伝統校である。東京都教育委員会の進学指導特別推進校の指定を受け、生徒の主体的な進路実現を目指して、1人1台端末の導入前から、授業等における端末の活用を開始している。以来、学校の特色として先進的にICT活用に取組み、毎年全国の高校から視察を受け入れてきた。
(令和6年11月5日掲載)

 
-学習スタイル・授業スタイルの変革
-組織的な活用推進


 
 

学習スタイル・授業スタイルの変革

 「端末を文房具のように使いこなす」のが町田高校。生徒はタッチペンを用いてノートの替わりに端末を使用している。プリントを配布しても、それをカメラで画像として取り込み、タッチペンで書きこんでいく。ノートやプリントもデータで提出する。そうすることで紛失が防げる上に、試験前に提出しても、いつでもそれが確認できるため、学習に支障がない。委員会活動や部活動においても、生徒は自主的に連絡やデータ共有の手段として端末を日常的に活用している。
 生徒の端末の活用が日常的になるに従い、教師の授業スタイルも変化していった。紙のプリントがデータ配信となり、予習課題や確認テストも配信されるようになった。小テストが配信され、タッチペンで入力して提出する風景が当たり前となった。授業形態も端末を活用した対話的な学びが多くみられるようになっている。
 授業における端末活用の一例を紹介する。教師はまず、予習課題を配信する。課題には教師作成の説明動画へのリンクが埋め込まれている。授業では、提出された課題への取り組み状況を踏まえ、つまずきやすい点などについて解説する。解説の後は、同じ取り組み方ができる問題や素材を配信し、考え方の定着を図る。途中、数人の生徒に考え方のヒントになりそうなことを発言してもらい、全体へと還元する。生徒は個人的に、あるいはグループで作業を進めながら、思考を深めたり広げたりしていく。教師の端末には各生徒の進捗状況や取組の様子がリアルタイムで反映されるため、必要に応じて個別の支援につなげたり、デジタル化した生徒のノートをスクリーンに投影して、全体への共有を行ったりすることができる。授業後は確認テストを配信する。
 
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グループで相談しながら配信された問題に取り組む(数学科)。
 
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作図ソフトでは数値を変えることで図形が変化し、動的に理解が進む(数学科)。
 
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提出された生徒のワークシート。タッチペンで書き込めるためイラスト等も描くことができる(国語科)。
 
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生徒の学習進捗状況がリアルタイムで表示される。個々の画面を表示することもできる(英語科)。
 
 

組織的な活用推進

 町田高校ではICTの活用に長けた教師だけがこうした授業をしているわけではなく、学校全体で組織的なICT活用を図っている。会議はすべてペーパーレスであり、教材は教科内で共有している。新たに異動してきた教師はまず端末の活用研修を受ける。その後、授業での活用方法に関する研修、教科ごとの授業力向上研修等を通じて、すぐに「ICTの町田高校」の教師となっていく。何より、教師が何も指示しなくても生徒が端末を開く状況で、教え込むような形態の授業でよいはずがない。教師が端末の活用を通して生徒の学習理解を促進し、生徒が教師の授業への意識を刺激する相互関係こそが、DX推進の鍵となるのではないだろうか。

 
GIGA StuDX推進チームより
 学校全体でICTの活用を推進していく姿勢が見られます。新任者への研修や教科での教材共有など、教師がともに取り組む体制が組織的に構築され、業務の効率化などにもよい影響を与えていると思われます。個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実へ向けて、今後一層端末活用の取組や工夫が加速し、学校としての知見が蓄積されることが期期されます。

(監修:GIGA StuDX推進チーム)