学校の取組例

山梨県甲州市立塩山中学校

 

GIGAスクール環境と1人1台端末を活用した

「主体的に学ぶ心豊かな生徒の育成」
~ICT端末の効果的な活用による生徒主体の授業づくり~

 
【中等教育資料 令和6年10月号記事】(文責:校長 那須丈彦)
 甲州市立塩山中学校(以下「塩山中」)は、山梨県甲州市塩山地区の中心部に位置する。郊外に桃や葡萄の果樹地帯が広がる甲州市では、商業、農業がともに盛んな上、学区内には史跡も多く、歴史と文化に満ちている。創立77年目を迎える塩山中は、伝統的に教育的関心が高い保護者の積極的な理解と協力を得て、学校・家庭・地域で連携しながら更なる飛躍を目指して教育を推進している。
 塩山中は昨年度から、ICT端末を活用した「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実に取り組んできた。本年は、地域に根差した教育を目指し、市の教育基本目標に基づき策定された「夢をかなえる学びのプロジェクト」に沿って「授業改善」を校内授業研究の主題に据え、取り組んでいる。
(令和6年10月9日掲載)

 
-1人1台端末の活用方法と「一方向型授業」から「複線型授業」へ
-まとめ


 
 

1人1台端末の活用方法と「一方向型授業」から「複線型授業」へ

 コロナ禍以降、1人1台端末の活用は急速に進んだ。当初、塩山中では端末をリモートでの授業のツールとしてのみ活用し、従来の一方向型の授業を画面越しに行っていた。だが、1人1台端末や高速大容量ネットワーク環境の整備に伴い、生徒の端末活用に伴う情報モラルやセキュリティの問題、汎用的なクラウドツールの活用方法など、校内では不安や疑問の声が上がるようになり、どのように授業を進めて行くかが課題となった。こうした課題に挑戦すべく、令和5年度にはリーディングDXスクール事業の指定を受けるに至り、塩山中の端末活用はこの1年で大きく変化した。
 変化の分岐点の一つは、学校DX戦略アドバイザーである山梨大学・三井一希准教授のアドバイスである。「従来の概念にとらわれず、思い切った授業をしてください。」という言葉をきっかけに、「教師が黒板に問題や説明を書き、生徒がノートに書き写す授業」からの脱却に挑戦しよう、と教師の意識が変わった。はじめは不安も大きく、試行錯誤の中での授業展開であったが、教師が担当教科を越えて情報交換をしながら、新しい学習形態や汎用的なクラウドツールのより良い活用方法を模索した。
 もう一つの分岐点は、先進校の視察である。視察前は教師が個々のイメージをもとに「複線型の授業」を行っていたが、視察で実際の授業を目の当たりにし、そのイメージに教科の観点を加えた具体像がもてるようになった。現在塩山中では全教科共通で、「本時の学習」について「めあて」「評価(ルーブリック)」「本時の流れ」を授業前に提示し、生徒がそれを確認後、各時間の各々のゴールを設定した上で学習に取り組んでいる。教科によっては、進度も学びの形態も、生徒が選択する形が作られてきている。しかし、こうした学び方が定着する中で、教師の生徒への支援はどの程度が適切か、という課題も出始めており、校内授業研究が次の段階へ進みつつあることが感じられる。
 ※ 学校DX戦略アドバイザー:ICTの活用促進に向け、全国の学校設置者等を対象に、国費で派遣する専門性を有した有識者のこと
 
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全教科共通して、授業の「めあて」「評価(ルーブリック)」「本時の流れ」を授業前に提示し生徒が事前に学習内容を把握する。
 
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全学年共通した道徳のデザインシート(振り返り)を使用。生徒が他者の考えを参照することができる。
 
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活動は、個別かグループかを必要に応じて、生徒が自由に選ぶ。クラウド上では、他者の考えが参照できる。
 
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学習した文法や単語を使って英文を作成し、実際に声に出して撮影し、提出する。
自分で確認できるだけでなく、教師が評価・アドバイスする。
 
 

まとめ

 これらの実践から得られた成果を財産として、今後も生徒が自らの学びに主体的に取り組み、成長する姿を支援するべく、より良い教育環境の構築に向けて研鑽と実践を積み上げていきたい。

 
GIGA StuDX推進チームより
 地域の教育目標や学校における問題意識を明確にしたうえで、教師が一体となり授業改善に取り組んでいる様子が見られます。ICTを活用した先進的な授業実践を行う学校に学びながら、変化を恐れず、「思い切った」授業改革に着手することで、確実に歩を進めています。

(監修:GIGA StuDX推進チーム)