学校の取組例

栃木県壬生町立壬生東小学校

 

やってみようから、より効果的な活用へ

 
【初等教育資料 令和6年7月号記事】(文責:校長 金久保雅彦)
 本校は、令和5年度に文部科学省リーディングDXスクール事業指定校となった。1人1台端末活用のイメージはあるが、何から始めればよいか、当初は手探りの状態であった。そのため、まずは先進校の取組を参考にすることから始め、試行錯誤を重ねた。ゆえに本校の取組はシンプルであり、多くの学校で、すでに行われてきたことばかりかもしれないが、取組について紹介する。
(令和6年7月10日掲載)
   
-「できることからやってみよう」
- 教師の意識を変えた校務DX

 

「できることからやってみよう」

・学習に見通しをもち、協働的に学ぶことができる情報共有
 単元ごとに振り返りシートを作成しクラウド上で共有している。授業ごとの個人のめあてや、今までの授業の振り返りをシートに記入するので、クラス全員の学習の過程を一覧で見ることができる。そのため、自力でめあてを立てることが難しい子供も他者を参照しながら考えることができるようになるとともに、意見の交流も活発になった。また、学習の過程が蓄積されるので、単元を通してどのように学んだかも可視化され、自分の学び方や学習したことをより確認しやすくなった。
 
・個別最適な学びを支える教科書を読解する技能
 教科書の内容を教師が説明し、板書するような授業から、子供が主体的に学び取る授業への転換を図ってきた。その基礎の一つとなるものが子供の教科書を読解する技能である。そこで資料と本文を結び付けて教科書の内容を把握する活動を、複数の教科で繰り返し取り入れた。

 
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デジタル教科書から情報を読み取る様子
 
・長期休業中の学習課題の共有
 長期休業中の学習課題の取組が共有できるように、クラウド上に活動する班ごとのチャットグループを用意した。クラウド上ではスライドも共有しているので、子供は長期休業中であっても協働して作業を行えるようになった。時間と場所を選ばず、それぞれのペースで課題に向かうことが可能になったため、子供が意欲的に取り組むことができた。また、教師も長期休業中の学習の様子が分かり、休業明けの指導に生かすことができた。

 これらの他にも、「できることからやってみよう」を合言葉に様々なことに挑戦してきた。子供が主体的に学べるよう、授業改善に粘り強く取り組むうちに、端末とクラウドが授業の中で機能し始め、子供が主体的に端末やクラウドを活用する場面が多く見られるようになった。以前は、教師が効果的だと考える場面で限定的に端末を活用していたが、子供が自分の課題解決のために、自分のペースで端末を活用して情報収集、他者との協働を行ってきたことで深め合うことができる授業に変わってきている

 

教師の意識を変えた校務DX

 1人1台端末とクラウド環境を学習基盤とし、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を目指した授業改善を進める中で、当初は、端末を活用した授業を展開していくことに戸惑う教師が大勢いた。
 そこで、端末活用の効果や便利さに気付き、授業に活用してもらうために校務DXを進めた。校務において煩雑と思われる仕事の洗い出しを行い、クラウドを活用してどのように改善できるかを考え、取り組んだ。この結果、少しずつ便利さを実感してもらうことができ、授業改善が進んできている。
 
・出席・遅刻連絡
 令和4年度当初はコロナ禍であり、朝は欠席や遅刻の電話対応に多くの時間を教職員が費やしていた。受けた連絡を付箋紙や内線電話で伝達をしていたため、多忙な毎朝を過ごす教職員の姿が見られた。この状態を解消するべく、欠席・遅刻連絡にアンケート機能を活用することとした。保護者は連絡帳への記載や電話ではなく、短時間で学校に連絡ができ、教師も学校のどこにいても連絡を確認することができるようになり、朝の時間に余裕ができた。
 
・職員会議等のペーパーレス化
 以前の打ち合わせや会議では、事前に議題になる案件を回議し、決裁を受け、担当者が印刷した紙を各机に配布していた。担当者の負担を軽くするため、情報をクラウドで管理し、打ち合わせや職員会議をペーパーレスで行うこととした。これにより、インクや紙の代金を前年比20%削減し、印刷・配布に要した時間も短縮できた。
 
・チャット機能を使った連絡
 内線電話を使用せずにチャット機能を使うよう推奨した。教師はそれぞれのタイミングで情報を得られるようになり、連絡漏れが無くなった。

 この他にも、校務用のポータルサイトの作成や、校務に関わる資料のデジタル化、校内研修でのクラウドの活用等を行い、校務の効率化を図った。
 令和5年度は、こうした取組に挑戦し、教師がインプットとアウトプットを繰り返すことにより、実際に、端末とクラウドを十分に活用することの大切さを実感することができた1年間であった。これからも、よりよい環境づくりとともに、授業改善へ向けての努力を続けていきたい。

 
GIGA StuDX推進チームより
 校務での端末活用が進むことで、教師が効果を実感し、授業改善につながることを目指した取組が報告されています。校務が効率化されることで、教師の負担が軽減し、より多くの時間を授業改善のためにかけることができるように工夫されています。
 また、クラウド環境を活用した学習の見通しが、協働的な学びを促進しているという実践が行われています。めあてや振り返りをクラウドで共有することで、子供は他者を参照でき、幅広い視点に気づいたり、自分の考えに自信をもったりすることで、より主体的に学べるようになっています。
 今回報告された実践は、どの学校でも使用できる標準的なクラウドツールを、授業と校務の両方で活用しています。豊富な先行事例を参考にしながら、子供が主体的に学ぶ授業実践に取り組んでほしいと思います。

(監修:GIGA StuDX推進チーム)