学校の取組例

大分県玖珠町立くす星翔中

 

GIGAスクール環境と1人1台端末を活用した

子供の安全と学びの保障の両立

 
【中等教育資料 令和6年6月号記事】(文責:校長 山香昭)
 本校は、平成31年4月に玖珠町内7校の中学校を統合して開校した町内唯一の中学校である。校区は町全域に及び、遠方から通学する生徒のために12台のスクールバスが運行されている。玖珠町は大分県の中西部に位置し、九州山地に属しているため、大雨や積雪の影響を受けやすく、悪天候時には、スクールバスの運行が停止し登校が困難になる地域もある。(令和6年6月3日掲載)

 
-2日前には休校を決定 ~1人1台端末の授業利用と持ち帰りの日常化により可能に~
-日常的な端末活用のメリット
 

2日前には休校を決定 ~1人1台端末の授業利用と持ち帰りの日常化により可能に~

 玖珠町は、GIGAスクール構想以前から教育の情報化に積極的に取り組んできた。令和2年9月には、1人1台端末の配備を完了し、日々の授業に加え、家庭学習にも積極的に活用している。端末の活用に当たっては、当初より教員間での研修を心がけてきた。現在では、悪天候が予想される場合、休校の判断を早々に行い、全ての教職員がオンラインによる授業の準備を進めている。特に、初めてオンラインによる授業を行う教員に対しては、経験豊富な教員が機器操作だけでなく、マイク音量や話す速度等、細かにノウハウの共有やアドバイスを行っている。また、事前に教員間で模擬授業を行うことで、他の教員が生徒の立場で授業に参加し、生徒の意見を引き出すためのチャット機能の活用、アンケート機能を使った「振り返り」とその共有、小テストの在り方等を確認できている。こうした取組の結果、オンラインであっても普段と大きく変わらない授業を実施することができている。他にも、積雪等の影響で通勤が困難な教員が自宅から授業を行ったり、出張の際などに学校外から朝の会や生徒の健康観察を行ったりすることもできている。オンラインでの授業後に実施した生徒へのアンケートには、「家だと気が緩むかと思ったけれど集中して取り組めた」、「みんなと授業ができてよかった」など、日頃と同じように友達と学べたという感想が多く、普段は授業に出席することが難しい生徒も参加できていた。
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事前の模擬授業で,授業についての協議が増え,自然と個別最適な授業に関する学び合いが行われる(左)。単元計画,本時の流れの明示など,オンライン授業のノウハウから,通常の授業の在り方を探る(右)。
 
 授業における端末の活用を不断に進めてきたことで、端末を介してつながり、学び合う下地が、生徒には着実にできている。その成果は授業のみならず、様々な場面に及んでいる。インフルエンザの流行により、文化祭前日まで学級閉鎖を余儀なくされた学級では、生徒が各家庭からオンライン会議やチャット機能を使った話合いを行っていた。普段は意見を出しにくい生徒が積極的に発言したり、他の生徒の意見に静かに耳を傾けたり、チャット機能でのやり取りやスタンプを用いて反応したりするなどの様子が見られた。こうした取組を通し、文化祭当日は少人数ながらも一丸となり堂々とした歌声を披露し、大きな感動を与えていた。
 

日常的な端末活用のメリット

 生徒と教職員の安全確保のための迅速な休校判断において、オンラインによる授業を行えることは、継続した学びの保障につながり、教育にとって大きなメリットである。オンラインによる授業の準備を進める過程で、教科を超えた授業研究がより活発に行われるようになり、1人1台端末を活用した日常の授業の在り方にも良い影響が現れている。今後も授業や生徒会活動での端末活用、端末の持ち帰りによる学習活動等を積極的に進め、日常的な実践を深め、より効果的な教育活動に取り組みたい。
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オンラインでの朝の会に参加し,生徒の様子を確認する学級担任。学校外からでも確認ができる(左)。一人一人の表情をゆっくり見ながら健康観察ができるのは,オンラインの良さである(右)。

 
GIGA StuDX推進チームより
 悪天候等による登下校の困難が見込まれる時に、オンラインによる授業にスムーズに切り替えて、教職員や生徒の安全確保と学習の継続を両立させている取組です。こうした取組の背景に、教職員と生徒が1人1台端末を授業で活用するだけでなく、ホームルーム等での教師と生徒との交流や生徒間の交流、持ち帰り学習での利用など、様々な場面で端末を日常的に活用していることが伺えます。平時からの取組の積み重ねが、日常の授業改善、いざという時の活用を可能にしている事例です。

(監修:GIGA StuDX推進チーム)