学校の取組例

埼玉県久喜市立鷲宮中学校

 

GIGAスクール環境と1人1台端末を活用した

「複線型の学び」のすすめ

~「個別最適な学び」の実現に向けて~
 
【中等教育資料 令和6年4月号記事】(文責:校長 青木真一)
 GIGAスクール構想が約3年前に本格的に開始し、久喜市立鷲宮中学校(以下、「鷲宮中」)は段階的に授業スタイルの変革を遂げてきている。1人1台端末の導入期を終えた今、「2nd GIGA」を見据え、「従来のやり方の中で、どこでICTを効果的に使うか?」を超えて、「デジタル学習基盤を生かした授業スタイルへの変革」を目指している。(令和6年4月1日掲載)
 
- 1人1台端末がもたらす授業スタイルの変革
- 「複線型の学び」のすすめ~学び方を学ぶ~
- 教育DXを前向きに受け入れ、取り組むことの大切さ
 

1人1台端末がもたらす授業スタイルの変革

 最初に、鷲宮中のGIGAスクール構想は、「学校(教室)でないと学べない」という既存の考え方を疑い、日常的にオンライン配信を実施することで学びの場を拡大した。特に、様々な理由で教室に行けない生徒にも、汎用的なクラウドツールで実現可能な「令和の鷲中教育」を提供し、希望する生徒に全授業を配信している。また、資料や課題もクラウド上で管理し、「いつでも、どこでも、誰でも、何度でも」学習に取り組める環境を構築している。
 さらに、令和の時代における「1人1台端末を活用した個別最適な学び」の実現に向け、「黒板とチョークとトーク」の昭和・平成の授業スタイルからの脱却に取り組んでいる。文部科学省リーディングDXスクール事業指定校に指定されたことを契機に先進地域を視察し、生徒一人一人の学びたいことやペースが異なるということに改めて気が付いた。その視察で学んだことを生かし、一人一人の学び方に寄り添っていく「複線型の学び」を導入した。
 
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学びの場を拡大するオンライン配信は、全学級全授業で実施している。学校を欠席した生徒の、「教室の様子がわからない」という不安を解消できる(左)。チャットなどを活用した「白紙共有・他者参照」で、生徒は「友人から」も学ぶ。教師は生徒の進捗状況を把握し、支援の対象・方法・手段を決定する(右)。
 

「複線型の学び」のすすめ ~学び方を学ぶ~

 授業では、様々な理解度の生徒が混在するのは当たり前なので、講義型の授業のような「主体が教師である授業」から、1人1台端末を活用した「個別最適な学び」に切り替えようと教師たちが試行錯誤している。「生徒一人一人が主体となる学び」のためには、「教師が教える」から「生徒が学ぶ」という、教師の意識改革が必要である。鷲宮中では「複線型の学び」を導入する過程で、学習の理解が不十分な生徒が「自分でどうまとめればいいか分からない」という課題に直面した。このような生徒に対しては、社会に出てからも時代の変化に対応できる新たなスキル獲得が求められることを考慮し、チャット機能を活用し意見を共有したり、白紙の状態でプレゼンテーションソフト等のデータを共有(白紙共有)し、他者の考え方を参照(他者参照)したりすることで、自分の「学び方」をよりよい方向へ変化させることに挑戦できるようにしている。
 
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学習活動を生徒に委ねてみませんか?教師の予想をはるかに超えて生徒は育つ。それをどう仕掛けるかは教師の創意工夫であり、試行錯誤である(左)。活動は、原則、個別。必要に応じて、生徒は協働を選択することも自由。クラウド上で友人の意見をいつでも見られるので自然と協働的な学びにつながる(右)。
 

教育DXを前向きに受け入れ、取り組むことの大切さ

 社会の変化に合わせ国の教育自体も変わっている。「誰一人取り残さない授業であるか」「学習が苦手な生徒を考慮した授業になっているか」「学習が得意な生徒にとっても、さらに追究したいと思える学習課題になっているか」。これまでの学校は、教師の知っている山で、登る練習をしていたとすると、生徒がこれからの社会で登る山は未知の山である。それを踏まえ鷲宮中では、学びを生徒に委ね、自分にあった学び方で、自分なりの理解や考えの形成につなげてほしいと願っている。その学び方を高速かつ容易に可能にするのが、1人1台端末である。さて、できない理由を考えるよりも、どうしたらできるようになるか一緒に考えませんか。

 
GIGA StuDX推進チームより
1人1台端末を活用することで、「個別最適な学び」を実現しようと教師が試行錯誤する中で、生徒が汎用的なツールを用いて個別に取り組みながらも、クラウド上で他者の考え方を参照し、自分の学び方をよりよくしようとする様子が報告されています。校長のリーダーシップのもと、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実に向けて、教師一人一人が1人1台端末導入による学びの変化を前向きに受け止め、授業改善につなげている取組です。

(監修:GIGA StuDX推進チーム)