学校の取組例

東京都千代田区立九段中等教育学校

 

GIGAスクール環境と1人1台端末を活用した

生徒の主体性の育成


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 千代田区立九段中等教育学校(以下、九段中等)は、「豊かな心 知の創造 未来貢献」を教育目標として掲げ、生徒の可能性を伸ばし、社会に貢献できる人材育成に取り組んでいる。今回は、1人1台端末を日常的に活用した学習活動に取り組む生徒の姿と、日々挑戦する教師の姿を紹介したい。(令和6年2月1日更新)
 
- クラウドの特性を理解して、主体的に1人1台端末を使う
- 日常的な1人1台端末の活用
- クラウドでの自由な参照が話合いを活性化する
- 自由に情報にアクセスできる環境づくり
 

クラウドの特性を理解して、主体的に1人1台端末を使う

 4年生(高等学校1年生)の社会科「歴史総合」の授業では、学習内容に関するテーマについて、グループで調べたことをスライドにまとめ、クラス全体に発表し、他の生徒からの質問に答えるという活動が行われていた。発表内容は、学習内容に関わる複数のテーマの中から、興味・関心に合わせて生徒が選択している。
 自ら選択したテーマの発表に向けて、生徒は授業時間だけでなく、休み時間や放課後、自宅に帰ってからの時間を使い、自分のペースで資料を作成している。このような取組を支えているのが、クラウド環境である。資料を作成する過程で、生徒はクラウド上で資料の共同編集や、チャット機能を活用して参考になる URL や資料作成の進捗状況の共有等を行っている。授業者が「生徒に対して、チャット機能を使い進捗状況の共有などを行うよう指示したことはありません。」と語るように、生徒はクラウドを主体的に活用し、協力して資料を作成している。また、生徒は疑問に思ったことなどについても、インターネットで調べるなど、自分のタイミングで1人1台端末を活用していた
 
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 クラウド上で発表資料を共有することで、手元でも確認できる(左)。
 また、自分の関心や疑問に思ったこと等に合わせて自分のペースで資料を確認できる(右)。

 
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 1人1台端末に加えてスマートフォンで調べる生徒もいる(左)。
 発表を聞きながら疑問に思ったこと等をチャットに入力したり、随時調べたりする(右)。

 テーマの選択から、時間の使い方、コミュニケーションツールの使い方に至るまで、生徒が主体的に学びを調整できる背景には、生徒に学びを委ねる授業づくりとともに、生徒が実際に共同編集をしたり、チャット機能を使用したりすることを通して、クラウドの特性や活用のメリットを理解していることがある。生徒は、「発表に向けて役割分担を自分たちで行い、クラウド上で共同編集することで補完し合いながら学べています。毎回、質疑応答も活発で、色々な視点で考えながら楽しく学べています。」と話してくれた。
 
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 資料や過去の質問等、クラウドでやりとりした情報はいつでも参照できる(左)。
 質疑応答では、分担して調べて答えたり、クラス全員で議論したりするなどして学びを深める(右)。
 

日常的な1人1台端末の活用

 九段中等では、生徒の1人1台端末に過度な使用制限は設けていない。生徒が自由にクラウドや端末を活用し、日常的に様々な情報にアクセスできるため、普段の学校生活においても、やってみたいことに主体的にチャレンジできる土壌がある。例えば、委員会活動でも、学校の備品貸出簿をデジタル化したいと提案し、プログラミングで実現する生徒も現れるほどだ。日常的な1人1台端末の活用が、クラウドや端末の特性についての理解を深めることにもつながっているのだろう。
 

クラウドでの自由な参照が話合いを活性化する

 4年生(高等学校1年生)の理科「生物基礎」の授業では、単元全体の学習内容や時間数などが示された資料を使って学習の見通しをもつことから、単元がスタートする。学習支援ソフトで、その単元で使用する資料や参考となる動画のURL等が教師から生徒に共有されており、生徒のペースで学びが調整できるように工夫されている。
 本時では、単元の内容に関係する「問い」を立てるため、班で話し合い、その結果を表計算ソフトのシートで共有する活動が行われた。この共有されたシートは、他の班の立てた「問い」だけではなく、他クラスのものも参照できるように作られている。このように他クラスや過去の授業の成果物等を、時間や空間を越えて容易に参照できるのもクラウドの良さである。授業者が「自由に参照できることで話合いが活発になります。一人一人の考えが広がるだけではなく、自分の考えを発信することが苦手な生徒や、自分にとって難しいと感じる学習内容に対して身構える生徒にとってハードルが下がればと期待しています。」と語るように、授業中、協議をしている生徒の表情からは、終始、安心して学んでいる様子がうかがえた。1人1台端末を使い、クラウド上で情報を共有することでこれまで以上に生徒の興味や関心が高まり、コミュニケーションの活性化につながっているのだろう。
 
 
 話し合いながら自分の考えをまとめていく際、クラウド上の他者の情報も参考にする。

 
 
 話合いで立てた「問い」を表計算ソフトで随時共有するとともに、他者の考えと自分の考えを比較することで新たな考えが生まれることもある。
 

自由に情報にアクセスできる環境づくり

 クラウド上で自由に情報の参照ができることにより、教師のコミュニケーションも活性化する。九段中等では、学習支援ソフト上の各授業の情報を全ての教師がいつでも閲覧できるように設定されている。これによって、教師は、他の教師の授業実践や新しい取組をいつでも参照できる。職員室では、授業づくりについての話合いが教科等を越えて活発に行われるようになったという。
 九段中等では、クラウドで共有される情報を必要な時に自由に参照し、授業づくりについて活発に話し合える環境が教師の学びを活性化し、それが生徒の学びの活性化につながっている。野村公郎校長は、「本校では、生徒も教師も、何事に対しても“どうしたら実現できるか”を念頭に置き取り組んでいます。そして、教師は目の前の一人一人の生徒のため、やれることにどんどん挑戦しています。1人1台端末やクラウド環境等の活用にも、好奇心をもって挑戦してほしいと思っています。」と語った。1人1台端末やクラウド環境を日常的に使うための基盤には、生徒も教師もそれぞれのアイディアの実現に向けて挑戦できる環境があるのではないだろうか。
 
 
 他クラスの情報を参照できることで視野が広がり、話合いがより活性化する(左)。
 学習支援ツール上の各授業の情報を全ての教師が参照でき、授業実践が常に共有されていることで教師の学びも活性化している(右)。

 
(文責:GIGA StuDX推進チーム)