有識者インタビュー

GIGAスクール構想 × 年度更新
(新潟市教育委員会 指導主事 片山敏郎 氏)


 1人1台端末を日常的に活用していく上で、端末やアカウント等の年度更新は避けて通れないものです。今回はこの作業をスムーズに進めていくための大切なポイントを新潟市教育委員会の片山敏郎指導主事に伺いました。
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― 年度更新をする目的・意義
― 年度更新をする際に必要な準備やその時期
― 教育委員会と学校の役割分担
― データを管理する上での留意点


 

年度更新をする目的・意義

『新年度からのスムーズな運用だけでなく、子供たちの成長の機会にする』


― 年度更新をする目的・意義はどのようなことでしょうか。

 年度更新の目的・意義は大きく2つあります。1つ目は、端末を新年度からスムーズに使えるようにすることです。子供たちの日常使いを妨げないことを前提に考えると、年度末もギリギリまで授業等で使えるようにしておき、新年度の始めからもすぐに使えるようにしておくことが重要です。しかし、これが難しいところでもあります。
 2つ目は、子供たちの成長の機会にすることです。年度更新は、1年の節目の時期に行います。1人1台端末に残された学習履歴を基に、今までの学びを振り返ることで、子供たちは自分の成長を自覚することができます。また、端末を引き継ぐ場合には、次に使う人のことを思いやりながら端末の清掃等を行うことで、心情面の醸成にもつながります。ですから、新年度に行う「GIGA開き」等で、端末を新たに使い始める際に「よりよい1年間にしていきたい」という思いを子供たちが持てるようにすることも大事なことです。


 

年度更新をする際に必要な準備やその時期

『教育委員会は、できるだけ早く現場の先生たちに見通しを示す』


― 年度更新をスムーズに行う上で、どの時期にどんな準備をするのがよいでしょうか。

 子供たちが端末を使えない期間をできるだけ短くするために、教育委員会が見通しをもって計画を立て、現場への見通しを示すことが何よりも重要だと思います。そのためには、遅くとも1月の早い時期には、年度更新の基本的な考え方や方法などを周知していくことが必要です。ただ、端末の物理的な移動については、教職員の人事異動が確定した後の3月末頃に実施するため、非常にタイトなスケジュールになります。ですから、ある程度のざっくりした方向性だけでも、1月に現場へ周知しておいて、3月末に最終確定をするという流れになると思います。これに関しては、計画通りにいかないことも多く、難しいところです。
 また、新1年生や新規採用職員のアカウントの作成や異動に伴うアカウントの変更についても、非常にタイトなスケジュールになるので、可能であれば校務支援システム等とデータ連携をするなど、やりやすい環境を整えていく必要があります。代表的な校務支援システムは、学習eポータルと名簿のデータを連携できるようにバージョンアップを進めていますし、中には、すでにデータ連携ができており、年度更新の負担を軽減している自治体もあります。データ連携ができるかどうかは、作業量に大きな影響が出ますので、技術進化の動向を注視しながら、校務支援システムの更新計画も視野にいれておく必要があります。教育委員会はよりよい方法を模索しながら、必要な予算を獲得できるように改善を繰り返していくことが大事だと思います。
 卒業生や転校生のアカウント管理についても、データを個人のクラウドに移動させる方法を教育委員会や学校が子供たちに早めに示してあげることが重要です。そうすることで、子供たちは、ゆとりをもってこれまでの学習を振り返りながらデータの移管作業ができます。
 さらに、年度末は先生方にとって特に多忙な時期ですので、働き方改革という面からも先生方の負担をいかに少なくしていくかが大切だと思います。
 

『見通しをもつとともに、場合によっては国の事業の積極的な活用を!』


― 年度更新が遅れる原因としてどんなことが考えられますか。

 やはり教育委員会で見通しがもてていないのが大きな原因ではないでしょうか。だからといって、教育委員会だけを責めるのも酷であると思います。自治体の規模にもよりますが、多くの自治体では、様々な業務とICTに係る業務を同時に担っており、専業としてやる人がいない状態です。ただ、昨年度に比べて、年度更新に向けてすでに動き出している自治体が今年度は多いと思います。それは、昨年度までの経験が積まれているため、戸惑いが少なくなっているからではないでしょうか。
 しかし、昨年度にはなかった業務も増えてきています。例えば、学習eポータルです。来年度の始めには全国学力・学習状況調査で使う予定なので、全国の各自治体は令和4年中に登録作業を申請しています。この学習eポータルの設定が完了してすぐに年度更新がやってくるわけです。そこを見落としている自治体が出てくるのではないかと懸念しています。そういうときには、ICT活用教育アドバイザー事業(※)やGIGAスクール運営支援センターなどを有効に活用することも大事だと思います。我々アドバイザーも、一生懸命に頑張っている自治体の担当者を応援したいと思っています。
※今後「ICT活用教育アドバイザー事業」は「学校DX戦略アドバイザー事業」と名称変更予定。(R4.11.28時点)
 
 
 
GIGAスクール運営支援センターの機能強化(令和4年度文部科学省第2次補正予算資料集P56)
 

教育委員会と学校の役割分担

『自治体では対応しきれないところを学校が担う』


― 年度更新を進めるにあたり、教育委員会と学校でどのような役割分担をしたらよいでしょうか。

 まず、教育委員会は「いかに学校の負担を軽減できるか」だと思います。教育委員会が全てを処理できれば一番いいと思いますが、自治体によっては難しいのではないでしょうか。だからこそ、自治体の計画力や金銭的リソースによって役割の分量が変わってくるのだと思います。例えば、ICT支援員が担保できるのであれば、かなり細かいところまで自治体でやれるわけです。多くの自治体では、そういうプロフェッショナルの力を借りながら計画をし、それでも対応しきれないところを学校が担うという考え方が基本になると思います。

 

『子供のリテラシーが高まれば、年度更新作業もスムーズに』


― 小学校の低学年に対して、アカウント管理や年度更新に関してどのような取組ができるでしょうか。

 自治体によると思いますが、ICT支援員の力が、非常に重要だと思います。実際「より多くの時間、小学校1年生や2年生へ支援に入ってほしい」という要望がたくさんあります。年度初めのアカウント設定や初期登録の設定が済んでいても、初回のログインはIDやパスワードを入力しなくてはいけないので、特に支援が必要です。
 また、「子供たちに情報活用能力を育成していく」という視点が非常に重要です。子供自身である程度のことをできるようにするためには、端末の活用を日常化しリテラシーを高める必要があります。日頃から教科の中で活用を促していくと、段々使えるようになっていきます。学校によっては1年生でも端末上で思考ツールを使って学習しています。子供のリテラシーが高まると、年度更新作業もスムーズになります。そのように積極的に端末を活用している学校では、小学校2年生でも年度更新作業を自分だけでやっています。発達段階に合わせて教科等で活用し、適正な支援をしながら子供たちの活用スキルを高めていくことが大事です。自分のデータをクラウドの移管したり、整理整頓したりする活動も情報活用能力の育成に繋がります。


 

データを管理する上での留意点

『データを整理し、学びをポートフォリオとして残す』


― 子供たちと一緒に進める上での留意点はどのようなことでしょうか。

 気を付けなければならないのは、子供にデータを消去させても、OSの仕様によっては、データが残ってしまっている場合があることです。例えば、アプリ内のデータは消したけれど、ブラウザの検索履歴やメモ帳などに同じデータファイルが保存されていた場合などです。その結果、意図せず情報漏洩につながることもあり得ます。ですから、子供たちが必要なデータを取り出したあとは、子供たちを守るために、最終的には大人の手でリセットをかけたり、確認したりする作業もしっかりと行う必要があります。また、データが残っていた場合には、情報漏洩によってどんなリスクが発生するのかを子供たちへ指導することも大切です。
 さらに、1年間あるいは数年間の学びの履歴が端末やクラウドに残っているので、自分の学びの足跡を今後も見えるように保障してあげることも大切です。学年が変わる節目の時期に、データを整理するとともに自分にとって必要なデータだけを残して、学びのポートフォリオとして宝物にしていけるように指導することも大事ではないでしょうか。
 

 


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