学校の取組例

「学校全体で校務のDXに取り組む」練馬区立関町北小学校

~『職員室をクラウド化します』~

 
 
 
 
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【目 次】

1.クラウドの特性を活かした校務のDXの取組(*タイトルクリックでリンク先に飛ぶことができます)

 (1)
標準仕様のソフトウェアを活用した「連絡帳」と「学級だより」のクラウド化について
 【学習支援ソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフト】
 (2)標準仕様のソフトウェアを活用した効果的な「データ連携」(連絡帳と週案簿の連携)について
 【表計算ソフト、共同編集機能】

 (3)標準仕様のソフトウェアを活用した「保健板」(健康観察表)のクラウド化について
 【メールフォーム機能、表計算ソフト】
 (4)標準仕様のソフトウェアを活用した「個人面談」日程調整のクラウド化について
 【メールフォーム機能、表計算ソフト】


2.クラウドの特性を効果的に活用した校内研修の取り組みについて(*タイトルクリックでリンク先に飛ぶことができます)

 (1)クラウド型校内研修について
 (2)わずか半年で校務のDX化が進んだ理由とは

3.学校及び教育委員会、有識者からのコメント(*タイトルクリックでリンク先に飛ぶことができます)

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練馬区立関町北(せきまちきた)小学校では、標準仕様で使えるクラウドソフトウェアを校務のDXに積極的に活用しています。また、「クラウド型校内研修」では、GIGAスクール構想時代の新たな視点を提供しており、いずれも大変参考になるものでした。
 関町北小学校が校務のDX化を推進するきっかけになったのは、4月の最初の職員会議での「今年は、職員室をクラウド化します。」という管理職からの言葉でした。
 この日から、副校長先生を中心に校務のDX化が始まりました。
 
 今回は校務のDXに取り組む小学校の取組を紹介します。(令和4年12月27日掲載)

 

1. クラウドの特性を活かした校務のDXの取組

(1)標準仕様のソフトウェアを活用した「連絡帳」と「学級だより」のクラウド化について
 【学習支援ソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフト】


 
  関町北小学校では、GIGAスクール構想における標準仕様のソフトウェアを効果的に活用しています。例えば、プレゼンテーションソフトで写真や動画も含めた「学級だより」や表計算ソフトで「連絡帳」を作成して、学習支援ソフトで配信しています。「学級だより」をクラウド上で配信することで、写真や動画をたくさん掲載できるので、保護者は具体的な活動や様子をこれまで以上に把握することができます。
 また、「連絡帳」は、先生方の「週案簿」等と連携できるように作成されているので、働き方改革にもつながっています。
 
  (2)標準仕様のソフトウェアを活用した効果的な「データ連携」(連絡帳と週案簿の連携)について
   【表計算ソフト、共同編集機能】

 
  「連絡帳」は、先生方が作成する「週案簿」と連携しているので、表計算ソフトの関数によって「週案簿」に記載した内容が「連絡帳」に自動転記されるようになっています。
  また、「週案簿」はクラウド上で教職員全員と共有されているので、「共同編集機能」を活用して同時に記入することができるとともに、入力した内容は自動的に子どもたちの連絡帳にも転記されるようになっています。
 そのため、教員や子どもたちへの連絡事項がリアルタイムで共有できます。
 学校行事等の急な変更があった場合や先生方が急遽休みになってしまった場合でも、共有した週案簿で授業予定等を確認することができます。
 これまで「あったら便利」と思っていたことを、標準仕様のソフトウェアの機能のみで「仕組み化」し、それが働き方改革にもつながっているということが関町北小学校の取組の素晴らしいところです。

*「共同編集機能」とは、クラウド上で一つのファイルを共有された複数の人で同時入力することができる機能

 

 
(3)標準仕様のソフトウェアを活用した「保健板」(健康観察表)のクラウド化について
     【メールフォーム機能、表計算ソフト】


 関町北小学校では、欠席届等も「クラウド化」しています。
   欠席等がある場合は、保護者がアンケートフォームに入力し、学校へ送信します。送信されたデータは、学年・学級ごとに自動的に整理・表示できるように設定しているので、紙の保健板(健康観察表)を保健室・職員室へ運ぶ等の必要性がありません。
  
また、欠席等のデータは管理職や養護教諭にもリアルタイムに共有されているので、同時に確認することができるなど、大きなメリットがあります。
  この学校では、
デジタルだけで完結するのではなく、養護教諭がダブルチェックを行うなど、漏れや誤り等がないように確認する事も大切にしています。

 

(4)標準仕様のソフトウェアを活用した「個人面談」日程調整のクラウド化について
    【メールフォーム機能、表計算ソフト】
 
 「個人面談」の日程調整も、紙からデジタルにクラウド化(仕組み化)をしたことで、保護者も自宅等で簡単に予定を入力できます。さらに、「アンケート機能」を用いて集めた情報は、クラスごとに「表計算ソフト」へ自動的に振り分けられるように設定しており、教員はそれを基に調整すればよいので、作業時間を大幅に削減することができました。
 単に紙からデジタルへ「クラウド化」しただけではなく、集めたデータを利活用できるよう「仕組み化」することで、先生も保護者も使いやすいデジタル環境を構築していました。
 例えば、「アンケート機能」を用いて集めた情報は「表計算ソフト」を使って、自動的に一覧表になるように設定されていて、それをもとに教員が調整することで、作業時間を削減していました。
 

2. クラウドの特性を効果的に活用した校内研修の取り組みについて

(1)クラウド型校内研修について
 
 関町北小学校では、「クラウド型校内研修」を実施しています。これまで課題があった、研修時間の確保や指導者の選定、研修内容の検討等を「クラウド型校内研修」へシフトすることで、解決することができました。
「クラウド型校内研修」とは、校内の先生が講師になって、教科の学習指導や学級経営、機器の操作など、先生方の強みを生かした動画を作成し、校内のポータルサイトにアップロードして共有したものを、自分の都合に合わせて受講するオンデマンド研修です。動画は年内に各自、1本はアップロードすることを目標に取り組んでいます。
 先生方は動画作成の経験を学級指導や教科指導に活かすだけでなく、作成の過程で互いに動画を見合ったり教え合ったりするなど、同僚性を高めることにつながっています。

 

(2)わずか半年で校務のDX化が進んだ理由とは
  校務のDX化が急激に進んだ理由について、ICTが得意ではなかったベテランの先生に伺いました。
 「管理職からの、"失敗してもいいからやってみよう”」という声かけが大きかったです。その声かけに若手の先生が反応し、若手の先生が中堅やベテランの私たちにも教えてくれました。
 教員は、だれからでも学ぶ姿勢が大切だと思います。私たちの学校は、管理職の全面バックアップの下、こういう意識をもった教職員集団であることが強みであり、それが、校務のDX化が進んだ理由かもしれません。」
関町北小では、校務の中でDX化が進み、そこで得た経験やスキルを授業での活用へとつなげていっただけではなく、若手もベテランも教職員が一丸となって協力する風土が形成されていました。
 わずか半年で校務のDX化が進んだ理由が、学校の雰囲気からもよく伝わりました。  

3. 学校及び教育委員会、有識者からのコメント

【関町北小 副校長先生のコメント】
 
「職員室をクラウド化します!」宣言の背景には、ファイル保存の問題がありました。
 個人情報等を扱う「校務環境」、インターネットから情報が得られる「インターネット環境」、GIGAスクール構想で新たに導入された「クラウド環境」、教員はこの3つの環境を使い分けねばなりませんでした。この3つを統合し解決できるのはクラウド化しかなかったのです。
 しかし、順調にクラウドへ移行したかというとそうではありませんでした。これまでの大量のファイルを移動する労力はもちろんですが、「従来のままでいいじゃないか」「変える必要があるのか」という雰囲気を感じずにはいられませんでした。
 そんな中、主幹教諭や主任教諭等のミドルリーダーが「とりあえずやってみようよ」という雰囲気へと変えてくれたことをきっかけに、若手やベテラン教諭も追随し、大きな流れをつくってくれました。
 ICTは人間の能力やこれまでの関係性を増幅させるツールです。日々の学級経営や学校経営が重要になってきます。今後も、子どもたちや教職員と正面から向き合い、信頼関係を築き、確固たる絆を土台にしながら、ICTを活用して更なる飛躍をしたいと考えています。


【関町北小 校長先生のコメント】
 「職員室のクラウド化」は働き方改革と一体であると捉えています。クラウド化することにより今まで縛られていた時間と場所の制約がなくなり、いつでもどこでも仕事をすることができます。また、本校では「イクボス宣言」の下、サービス残業や休日出勤をなくし、互いに尊重し合い積極的な休暇を取得する環境が整いつつあります。
 1月の新校舎落成に合わせて、真にクラウド化された執務室「メディアセンター」が完成予定です。机を置かず、タブレットを使用しながらスタンディング形式で仕事ができるとともに、備え付けのプロジェクタへ容易につなげることができるので、時には大きくスクリーンに映して話し合うことも可能です。仕事とプライベートが両立でき、笑顔があふれる学校にしたいと考えています。


【練馬区教育委員会のコメント】
  練馬区教育委員会は、「ICTを活用した教育内容の充実」、「教員全体のICT活用能力の向上」を目標に掲げ、学校とともに様々な取組を進めています。
 昨年度作成した「教育ICT実践事例集」では、GIGAスクール時代の新しい学びのあり方を念頭に、ICTを活用した授業づくりのポイントとともに、ICTの特性を活かした校務の効率化について、各校の事例を紹介しています。
 関町北小学校をはじめ一部の学校では、クラウドの利点を活用した積極的な校務改善が管理職のリーダーシップのもと進んでおり、教育委員会としても具体的な実践の方法を広く全校に周知し、各校の取組を支援していきたいと思います。


【東京学芸大学 高橋 純教授(有識者)のコメント】
 GIGAスクール構想によって標準的に整備されたクラウド環境を用いて、校務を改善する取組です。
 GIGAスクール構想といえば授業のみ、校務の情報化といえば校務のみと、別々に考えては仕事が増える一方です。   子供、保護者、教員など、1人1台の情報端末を持つ時代ですから、学校教育の質の向上や改善のために、ICTもうまく活用しながら、総合的に考えなければなりません。
 その一歩として、関町北小の事例は、まずできることから取り組んでいる好例と言えます。
 文部科学省では、校務系、学習系のネットワーク統合を前提に、今後の学校における情報化の在り方が話し合われています。
 古い活用法や発想からの転換が求められていますし、過去の経験や知識に基づき「効果的なICT活用法とは何か」と議論を続けることよりも、端末をどんどん活用をして、慣れていくことの方が重要です。
 そこで「1)試しにやってみる 2)良かったら続けてみる 3)駄目ならやめる」くらいの気持ちで進めていくことがポイントです。
 当然、失敗はありますが「小さな失敗」や「失敗とは言えない失敗」で留めるためにも、まずは「試しにやってみる」という感覚を大事にしたいと思います。  
(文責:GIGA StuDX推進チーム)