【初等教育資料 令和8年9月号記事】 文責:校長 石上直彦
(令和8年9月23日掲載)
はじめに
本校の子供は、多様な他者と互いを尊重しながら思いを伝え合うためのコミュニケーションスキルの獲得や、自らの学習状況を客観的に捉えて学びを調整していくプロセスの習得に課題が見られた。そこで、研究主題を「思いやりのある自分の言葉でつながり合い、自律して学ぶ子どもの育成」とし、職員集団が互いの実践を共有して学び合ったり、協働的に授業づくりを行ったりしながら研究を進めてきた。その中で、端末を特別な道具ではなく、鉛筆やノートと同じ「文房具」として位置付け、子供が自らの学びを調整し、安心して学べる環境を教職員が整えることで、子供の個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図ってきた。具体的には、この2年間で以下のような段階を経て研究を深めている。
1.令和6年度「『個別最適な学び』と『協働的な学び』を支える足場づくり」
⑴ 学習の見通しと自己選択
算数科や理科の学習において、コミュニケーションツールに単元全体の学習の手引きや各時間の評価規準を明記したり、学習形態や学習方法を子供が自発的に選べる場を設定したりすることで、個別最適な学びの実現につなげた。
①学習の見通し
第6学年理科「生物どうしのつながり」では、個別に見通しをもって問題解決できるようにした。その際、コミュニケーションツールや学習支援ソフト上に子供と作成した単元全体の計画や問い、評価規準を明記した。これにより、子供は「今は何をすべきか」「どうすれば上位の目標まで達成できるか」を自分の端末で常に確認しながら学ぶことができ、主体的に学習に臨む子供の姿が見られた。
②自己選択
第3学年算数科「円と球」では、学習の中で誰と学ぶのか根拠をもって選択できるようにすることで、一人で困っているという子供が減り、安心して学ぶ姿が見られた。また、円の描き方の動画資料や困ったときにいつでも見ることができるヒントカードを学習支援ソフトにあらかじめ掲載しておくことで、子供一人一人が自分のタイミングでヒントを活用することができた。これにより、主体的に課題に取り組む姿が増え、自律して学ぶ子供の育成につながったと考えられる。
⑵ 他者参照
社会科や理科の学習において、表計算ソフト等を活用して互いの進捗状況の可視化を行った。この環境を教職員が整えることで、子供は、困っている人に進んで教えたり、早く進んでいる人にヒントをもらいにいったりするなど、自分たちで協働的に学ぼうとする姿が見られた。
また、各教科等の単元末のまとめや図画工作科の作品づくりをする際、子供が、自身のまとめや作品の途中経過を学習支援ソフト上にアップし合うことで、優れた構成や表現の過程を相互に参照することができ、学びの支えとなった。
2.令和7年度「誰もが安心して参加できる授業づくり」
⑴ 「支援カード」の活用
令和7年度はUD(ユニバーサルデザイン)の視点を全面に取り入れ、誰もが安心して参加できる授業づくりと、それを支える組織文化の変容に取り組んできた。まずは全教職員が共通して活用できる「UDスキルブック(教職員用)」を作成し、授業の「視覚化・焦点化・共有化」を意識した支援を展開した。令和6年度に取り組んできた「学習の見通しと自己選択」や「他者参照」に加えて、子供が自己調整しながら学んだり調べたりする際に活用する「学び・調べスキルブック(児童用)」や協働的に学ぶ際に使用する「つながりレベル表(児童用)」などの支援カードを作成し、授業の中で活用してきた。例えば、合意形成を目指す学級活動⑴においては、クラウド上の「つながりレベル表」を基にして、子供一人一人が今日はどのような伝え方や聴き方をするのかというめあてをもって話合いに参加した。このように支援カードを参考にすることで、どのように発言したらよいのか、また、どのように反応したらよいのかが分かり、安心して話合いに参加することができた。
⑵ 校務用サイトやチャット機能の活用による「同僚性」の構築
教職員間では、Webサイト作成サービスを活用した校務用ポータルサイト「面影職員室」を構築し、欠席情報等を迅速に共有したり、職員会議資料及び研究の進捗状況等がいつでも閲覧できる環境を整えたりした。また、多忙な教職員同士が、互いに授業を直接参観する機会が確保しにくいという課題を解決するために、チャット機能を活用した。研究に関連した「支援カード」を活用した実践や、効果的なICT活用の手応えがあった実践等について、「板書写真」に一言ポイントを添えてチャット機能で共有し合うことで、場所や時間に縛られずに、教職員同士においても授業実践の他者参照が可能となった。さらに、全体授業研究会の研究協議においてもクラウドで意見を即時共有し、リアルタイムで可視化を行うことで時間短縮、質の高い協議へと深化させることができた。
⑶ 専門家による伴走支援
本校の研究推進には、文部科学省の学校DX戦略アドバイザーが継続的に関わってくださった。同アドバイザーが本校で指導助言してくださった「学力の積み上げモデル」は、本校の研究の理論的支柱となっており、このモデルに基づきながら現在も継続的に研究を進めている。令和7年度には、これらの成果を「第56回中国地方放送教育研究大会」にて公開し、全国的な視点から本校の実践について客観的な評価を得ることで、本校の実践を更に深化させることができた。令和8年度は、これまでの研究で培ったICTや対話のスキルを土台とし、算数科を中心とした「スキル活用による基礎学力の定着」へと研究のステージを移行し、更なる授業改善に取り組んでいる。
※ 学校の授業等の様子は、学校HPからご覧いただけます。
(監修:GIGA StuDX推進チーム)