学校の取組例

愛媛県四国中央市立川之江小学校

教育DXの先に見えたもの
~川之江小学校が歩んだ3年間の軌跡~

【初等教育資料 令和8年8月号記事】 文責:愛媛県四国中央市立川之江小学校長 神野茂
(令和8年8月26日掲載)

はじめに

文部科学省「リーディングDXスクール事業」で研究指定を受けた3年間、私は近隣校の校長として、四国中央市立川之江小学校が劇的に変貌していく姿を一番近くで見守ってきた。そして現在、川之江小学校の校長として、かつては戸惑いもあった現場がいかにしてイノベーションを成し遂げたのか、教育DXの先に何が見えたのか、その3年間の軌跡を振り返ってみたい。

1年目:テクノロジーを「自律」して使いこなす心の土台づくり

1年目は、リーディングDXスクール事業のキックオフからICTを学びにどうつなげるのか、校内外での教員研修を通じて取組を模索していた。その年、本校は市内人権・同和教育研究大会の会場校となっていた。そこで、人権教育をDXで変革することに挑んだ。「デジタル・シティズンシップ教育」の本格導入である。デジタル・シティズンシップ教育の研究を行う一般社団法人の直接指導のもと、デジタル・シティズンシップを本校の教育課程に位置付け、実践を進めた。公開授業では、子供自身のデジタル社会との関わりやそこでの振る舞いを可視化し、「立ち止まる・考える・行動(相談)する」の3ステップに基づく主体的な気付きを深めることができた。保護者学習会も継続して実施し、学校と家庭が一体となったデジタル・シティズンシップ教育の基盤構築に努めた。端末を躊躇せず正しく使うことをベースに、授業改善に向かう方向性が確立してきている。1年目の3学期からは、「ICTを活用した協働的な学び」に重点を絞り、全ての学年での実践をスタートした。
ICTを活用した協働的な学び
ICTを活用した協働的な学び
研究主題を「主体的に学び合う児童の育成~ICTを活用した協働的な学びを目指して~」とし、対話を重視した協働的な学びの授業デザインについて、一単元を通して実践・共有する取組を以降3年目に至るまで継続してきた。

2年目:授業改善と最先端テクノロジーへの挑戦

2年目は、授業改善に主眼を置き、ICT活用の質的向上を果たす「実践フェーズ」へ突入した。そんな本校の実践を加速させたのが、GIGA StuDX推進チームの方や東京学芸大学の先生との出会いだった。GIGA StuDX推進チームの方に来校いただいた際には、各学年の取組発表を若手教員が行ったことで、教職員のモチベーションが向上した。
また、東京学芸大学の先生は、他県でのリーディングDX公開授業での出会いが縁で、ARスポーツやメタバースダンスといった先進的な実践について、直接ご指導をいただくことができた。一見華やかな活動の根底には、誰一人取り残さないインクルーシブ教育の実現やAIを活用した思考の深化という深い学びがあった。
1月のリーディングDXの公開授業では、200名を超える参加者を得て、5つの授業を公開した。第1学年は端末で冬の楽しみを紹介し合い、第4学年は音楽科と国語科の教科横断学習を実施。第6学年の国語科では黒板に思いを綴り、デジタルとアナログの融合を目指した。
アナログとデジタルのベストミックス
アナログとデジタルのベストミックス
また、ARスポーツで躍動し、メタバース空間で北海道の学校とダンス交流する姿もあった。場所を越えてテクノロジーを使いこなし、考えを広げる子供たちに未来の教育を確信することができた。
令和7年2月、本市教育委員会と東京学芸大学の間で包括的な教育連携協定が結ばれた。本校で生まれた小さな種が、市全体に広がることで開花し、持続可能な仕組みとして結実した瞬間であった。

3年目:日常化へ、そして未来へのバトン

最終年度は、指定校も4校に増え、これまでの実践を共有しつつ、それをブラッシュアップしながら取組を進めていった。本校でも主幹教諭を中心に授業改善の筋道を明確にして焦点化した取組を推進していった。さらに、「子供の実態に合わせた必要感のある課題設定」「対話や気付きの質を高める工夫」「次の学びに活かす振り返り」の3つにポイントを絞り、実践の共有を進めた。課題設定では、教科等横断的に学びを有機的に結び付け、対話の工夫では、シームレスな共同編集を可能にするなどICTの効果的な活用のアイデアの実現に努めた。振り返りでは、ICTの活用について独自のルーブリックを活用した。こうして、令和8年1月には、本校を含む指定校4校で授業改善の取組を公開することができた。また、全体会では文部科学省・主任視学官のご講演もいただいた。

おわりに

令和8年2月には四国中央市の全ての小・中学校で、全国初となる全教職員への「校務用スマートフォン」支給と次世代型校務ネットワークの構築が行われた。学校を全面的に信頼し、決してブレーキを踏まない本市教育委員会の方針と、ICTを活用した考え得るフルスペックの環境整備が、教職員自身のICTリテラシーを自然に高めていくことにつながっている。
とはいえ、教育DXとは、単に便利な道具を取り入れることだけではない。教職員のウェルビーイングを確立し、授業改善により子供たちが主体的に学ぶ「学校文化」そのものを変革することである。今後も本校では、子供たちの笑顔と教職員のやりがいにつながる取組を継続していきたい。挑戦は、いつからでも、どこからでも始められるものと考えている。
(監修:GIGA StuDX推進チーム)