学校の取組例
奈良県奈良市立佐保小学校
「点」から「つながり」の学びへ
~デジタル学習基盤が支える主体的な学び~
【初等教育資料 令和8年6月号記事】 文責:校長 皿木博幸
(令和8年6月17日掲載)
本校の目指す子供像
本校では、令和5年度より「一人ひとりの学びを確かなものにし、共に学び合う姿を育てる」ことを研究主題とした。子供たちの学びを、一人の子供の学びの過程に着目した時間的な視点と、たくさんの子供たちが共に学ぶ空間的な視点とを結び付け、「点」ではなく「つながり」として捉え直し、一人ひとりの学びのより一層の充実を目指している。令和6年度より文部科学省の「リーディングDXスクール事業」に参画し、デジタル学習基盤を効果的に活用した授業改善や情報活用能力の育成を校内全体で推進している。
取組を支える2つの柱
⑴ 子供中心の授業づくり
学びを「つながり」として捉えるため、単元全体を見通した教材研究を重視し、「教師が何を教えるか」という授業観から、「子供たちがどう学ぶか」という授業観への転換を進めている。デジタル学習基盤を活用し、単元全体の学習計画を子供たちと共有することで、子供たちは見通しをもって学ぶことができ、日々の振り返りを通じて学びの自己調整が可能になる。また、他者の学びを参照することで、学びを言語化し関連付ける力が育まれている。さらに、子供たちが単元や教科の枠を超えて学びを関連付ける姿へとつながっている。
⑵ 情報活用能力の育成
取組を進める中で、デジタル学習基盤を子供たちが主体的に活用するためには、情報活用能力の育成が重要だと感じた。そこで、情報活用能力の育成を、教科等横断的かつ日常的な学習の中で進めることにした。情報を収集・整理・分析する必然性が生じるよう、授業内で子供たちが触れる情報量を増やすなど、教師側が意図的な仕掛けを行い、その中で子供たちが主体的に選択・決定できるような授業デザインを意識した。また、日常的な文字入力でタイピング技能の習得も図っており、本校の子供たちの実態に応じて校内で作成した「情報活用能力の体系表」が、これらの系統的な指導の確かな拠り所となっている。
リーディングDXスクール事業での2年間
⑴ 1年目(令和6年度)の模索期
当初、教師間で授業におけるデジタル学習基盤の活用に対する理解に差があった。しかし、先進地視察を通じて目的は「ツールを使うこと」ではなく「子供の学びの質を高め資質・能力を育成すること」にあるという認識が深まり、取組が前進した。
授業実践では、算数科などで表計算ソフトを活用して学習課題を一覧化し、単元の見通しを共有できるようにした。これにより、子供たちは自らの進捗を確認しながら、学習のペースや方法を自己決定し、個人で課題を追究したり、協働的に学んだりする姿が見られた。教師は伴走者として、進捗状況を見取り、個別の支援や交流の促進を行うことで、子供中心の学びを支えた。
これらの試行錯誤と実践の積み重ねを基に、令和7年2月10日には中学校区全体での公開研究会を実施し、全学級で授業を公開した。全体会では大学院教授及び学校DX戦略アドバイザーから次年度につながる示唆をいただき、本校の取組を見つめ直し、更なる進展に向けたよい機会となった。
⑵ 2年目(令和7年度)の発展期
令和6年度の取組を通じて、教師にとっても、子供にとっても端末の活用が日常化してきた。授業改善をより一層推進するために、2年目の取組の柱となったのが、デジタル学習基盤を前提とした「振り返り」の充実である。単に授業の感想を記述するのではなく、「自らの学びを振り返り言語化し、次の学びにつなげること」を子供たちと共有し、振り返りを学習活動に位置付けた。
具体的には、振り返りの記述をデータで蓄積し、自己参照や他者参照を可能にした。これにより、子供たちは他者の記述を参考に自分の振り返りを改善したり、単元全体を通して学びをつなげたりする力が育成された。教師も振り返りを分析することで、個々の学習状況を把握し、適切な支援を行うことができた。
さらに、他者の考えに触れ、学びを深めるため、生成AIも活用している。子供たちの振り返りをインフォグラフィックとしてまとめ、次時の授業の冒頭で提示することで、対話的な学びを促進することができている。
これらのデジタル学習基盤を前提とした取組は、これまで教師が「やりたかったができなかったこと」を実現し、学校全体として授業改善の取組をより一層推進することができた。
一体的なクラウド活用
校務においては、チャットツールでの連絡や共同編集、校内ポータルサイトによる情報一元化など、教職員がクラウドの利便性を体験的に理解している。そして、それらを授業改善にもつなげている。特に、チャットツールの活用により、委員会活動が時間や場所を選ばず継続的に行えるようになり、子供主体の活動につながっている。
授業でも、校内ポータルサイトの考え方を応用した「児童用ポータルサイト」を運用し、子供たちの情報の取扱いを円滑にすることで、思考や対話といった本質的な学びの時間の確保を可能にした。このように、校務と教育を切り離さず「いかに両者をつなげるか」という点に主眼を置いて校務DXを推進している。
今後に向けて
本校が目指すのは、「一人ひとりの学びを確かなものにし、共に学び合う姿」である。その実現に向けて、デジタル学習基盤を最大限に活用し、今後も主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を推進していきたい。
(監修:GIGA StuDX推進チーム)