【中等教育資料 令和8年5月号記事】 文責:校長 千田庸介、教諭 下城守貴
(令和8年6月3日掲載)
熊本市では教職員に2種類のアカウントが付与されている。授業デザインに合わせて選択し活用している。
OS 提供のクラウドストレージを活用し、文書作成ソフト上で役割分担しながらリアルタイムに共同編集を行う学習場面。
時間を管理しながら問題に取り組む様子。紙と鉛筆、タブレット端末を使い分けて学習を進めている。
夏の小中合同アプリ教員研修の様子。講師は職員が担当。複数のアプリから選択してグループで学び合った。
数学科の授業。OS 提供の学習支援ソフトで単元の流れや難易度別の演習問題が共有され、自分のペースで学び方を選択できる。
令和6年度までと令和7年度の数学科の授業について比較したアンケート。生徒からは肯定的な意見が多数みられた。
(令和8年6月3日掲載)
柔軟なデジタル学習基盤が支える授業改善
桜山中学校では「リーディングDXスクール事業」及び熊本市STEAM教育研究指定校として、授業のICT活用と校務DXの両面を継続的に進めてきた。授業では、生成AI・クラウド・デジタル教材等を目的に応じて組み合わせ、ICTを基盤にした学びのデザインを積み重ねている。校務面でも、学校連絡アプリの活用により欠席連絡の一元化や別室登校生徒の情報共有をリアルタイム化し、業務効率化と生徒理解の深化を同時に進めている。また、熊本市が採用するタブレット端末の環境では複数のクラウドストレージを利用でき、多様な授業支援アプリも整備されている。これにより教師は授業目的に応じて最適な手段を選択し、設計から振り返りまで一体的に運用できる。クラウドの共有フォルダでの共同編集や、学習支援ソフトによる指示・資料・課題の一元化が、学習の可視化と協働を強く後押ししている。


「学びのエキスパート」を育てるUDLの視点
現在、本校が重点項目としているのは「生徒が主体的に学びを調整できる環境づくり」である。CAST(Center for Applied Special Technology)が提唱しているUDL(学びのユニバーサルデザイン)の視点を参考に、生徒が“学びのエキスパート”として自らの学び方を選択できる授業構造を目指している。校内研修では、ツール操作から入るのではなく「どのような学びを実現したいのか」という原点に立ち返り、デジタル・アナログを問わず教師が自分の授業観に合った方法を選べるよう工夫している。この方針は、熊本市の柔軟なICT基盤と相まって、実践へつながる大きな原動力となっている。


「選択」が日常化した数学科の授業実践
この方針のもと、大きな変化が可視化されたのが数学科の授業である。学習支援ソフト内で難易度別の演習課題を提示し、生徒が自分の理解度やペースに応じて選べる仕組みを構築した。生徒は「何を、どの難度で、どの方法で、誰と」学ぶかを自ら決定する。取り組み方(個人・友達・教師)を選び、調べ方も教科書、友達・教師への相談、インターネット、生成AIなどから状況に応じて選ぶ。従来の一斉進度中心の授業から、個々の学習状況に応じて進め方を調整する授業へと転換が進み、選択を伴う学びが日常化している。


教師の選択肢から生徒の選択肢へ
授業後のアンケートでは、「自分のペースで進められる」「難易度を選べる」など、主体的な学びに関する実感が多数示された。一方で、「進度が速いと追いつきにくい」「演習時間が長いと集中が切れる」といった改善点も挙がった。これらの声を出発点に、評価・改善・再設計の“学びの循環”を次の授業デザインに反映している。本校の取組は、ICT活用そのものが目的ではなく、生徒の学びにどのような選択肢を提供できるかという本質的な問いに立ち返りながら進められている。今後も、教師の選択が生徒の選択を広げ、生徒が自ら学べる授業デザインを推進したい。
(監修:GIGA StuDX推進チーム)