学校の取組例

福井県小浜市立雲浜小学校

教育DXで授業デザインの変革へ
~主体的に問題解決に取り組む子供の育成を目指して~

【初等教育資料 令和7年11月号記事】(文責:校長 堂前裕美)
(令和7年11月19日掲載)

はじめに~弱みも強みに~

本校は、令和6年度にリーディングDXスクールの指定を受け、教師のICT活用スキルを含む学校の強みと弱みを全教職員で整理するところからスタートした。
小浜市では昭和40年代から、学習の主体を子供におき、1時間の授業過程を子供側からの視点に立って3段階(①チャイムが鳴ったらする仕事、②新しい仕事、③次時の計画)で構成する「学習」の授業研究が継承されている。本校では多少の形骸化が認められるもののその理念を大切にしており、「主体的に問題解決に取り組む子供の育成」のための授業研究として再構築できないかと考えていくこととなった。
学級全体で本時の見通しを共有する様子
学習係が中心となって、本時の学習内容の見通し(実験の方法)を学級全体で共有
一方で、GIGA第1期として「とにかく端末を使ってみる」という流れに懐疑的な教師もおり活用頻度に学級差があった。しかし、その背景には学びのねらいを大切に、目的をもって使わせたいとの教師の強い思いがあった。
このような状況の中、学校DX戦略アドバイザーが本校を訪れた際の「DXといえども、これまで積み重ねてきた研究や学校風土を土台に教師一人一人の個性・強みを生かした授業づくりを」との言葉で、本校実践に教職員間での共通認識をもち、「伝統的な学習と教育DXのミックスを手段とした研究を」との方向性が固まっていった。

「雲浜型3S学習」の模索

「主体的・対話的で深い学びは、1時間1時間の授業改善と共に、内容や時間、学び方についてまとまりと見通しをもつことが大切なのではないか」。
まさに『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説総則編』に述べられていることを、改めて問い掛けることとなった。この点を踏まえ、子供を主語にするために、これまで教師が自身の指導のために作成していた学習指導案を「学びプラン」として作成した。プランには課題設定、学習形態、学習方法の3観点について何をどこまで子供に委ねるのか、授業者としての意図を明確にする欄も設けることにした。特に単元計画部分は子供と表計算ソフトやプレゼンテーションソフトで共有。共作とした。子供と共有する学びプランも実践を重ねるにつれて教師の創意が生まれ、教師同士の対話の話題ともなっていった。
学びプランの例
子供と共有する学びプランの一例
従来の3S学習では「一人調べ(自力個人学習)」と「みんな調べ(集団学習)」は時間を区切ってきた。しかし、端末のチャットや共同編集機能による他者参照の可能な環境により、自力で自分の考えをもちづらかった子供が学習に参加できたり、自分と同じ考え、異なる考え、もっと深く聞いてみたい考えなど子供自身が目的意識をもって関わり合えるようになったりした。つまり、一人調べとみんな調べが同時並行に進められ(複線型)、学びの目的達成と時間的効率化の両方の実現につながった。
さらに、3S学習の③次時の計画段階での振り返りを学びのログとして活用した。子供が入力した振り返りデータは座席シートに反映され、仲間の振り返りを参考にしたり、個別のシートでこれまでの振り返りを一覧にすることで自身の変容に対してメタ認知を働かせたりすることにつながった。また、教師も子供一人一人の学びやつまずきを瞬時に見取ることができ、次時の指導に役立てた。
このように伝統の3S学習を、より主体的に子供が学びに向かうよう、見通しと複線型対話の充実を目指した「雲浜型学習」として更なる進化をさせていきたい。
雲浜型3S学習の説明図
雲浜型3S学習

校務DX・研修DX

端末活用の授業の有益性を教師自身が実感することも大切である。クラウドを活用したチャット機能による情報伝達、各種指導計画表など必要な情報の集約、検索に便利な「雲浜小学校教職員ポータルサイト」の運用など、教頭、教務主任らを中心に校務DXを進めるとともに働き方改革につなげていった。
授業研究会や先進校視察の様子をどこにいても視聴したり、コメントを共有したりできることで研修の効率化を実感できた。

地域(市内の小・中学校等)と共に~情報発信と情報共有~

保護者や地域からの理解、近隣の小・中学校との共有・連携も重要である。PTA総会や家庭地域学校協議会、学校からの通信で従前からの改善点などの説明を行うとともに、学校開放日等の授業参観、学校ブログで授業での子供や教師の姿を公開し、本校の学びへの理解を進めている。また、Webサイト「雲浜小学校DXへの取組」を開設し、授業・研修・校務のDXに向けた取組の情報発信を行った。市内小・中学校DX推進委員会のチャットグループにその内容を発信していくことで他校からも取組情報を得られ、小浜市内に教育DXの動きが加速されたように感じている。
➤ 雲浜小学校DXへの取組(外部リンク)

さいごに

「リーディング」の役目は十分果たせたとは言い難いが、本校の教育DXは、雲浜型学習で、単元全体と一時間ごとの見通しを子供と共創する授業デザインとなりつつあることが総括された。教育DXの推進は、デジタル学習基盤の「日常的な活用」と深い学びに向かうための「教科等の本質を踏まえた授業デザインと更なる教師の指導性が重要である」ということを教職員で再確認できたことは大きい。令和7年度も本校なりの歩みで、学びの質向上を目指して取り組んでいる。
(監修:GIGA StuDX推進チーム)