学校の取組例

富山県富山市立芝園小学校

 

「自立した学び」の実現に向けて
~「芝園スタイル」の実践から~

【初等教育資料 令和7年7月号記事】(文責:校長 杉林千里)
(令和7年8月26日掲載)

 
-「主体性のある子どもの育成」を目指して
-クラウド活用による「芝園スタイル」の活性化
 -(1)学習過程や振り返りの記録・蓄積・共有
 -(2)一人一人の学びの「見える化」
-子供の「自立した学び」を追い求めて
 
本文中の*印部分(*1~8)の資料は、次のリンクから、参照ください。
      動画
 
 

「主体性のある子どもの育成」を目指して

富山市では「主体性のある子どもの育成」を目指し、問題解決的な学習(PBL)に取り組んできた(*1)。令和3年度には1人1台端末が導入され、学習に時間的、空間的な制限等がなくなった。このことにより、子供の学習の自由裁量、協働の機会を増やし、その範囲も拡大させることができるようになった。それは、授業の構造を変革することを可能にした。
伝統的に取り組んできた「問題解決的な学習(PBL)」に「端末(ICT)のよさ」を掛け合わせ、本校では令和3年度より新しい授業のスタイル「芝園スタイル(PBL×ICT)」に着手し、研究を進めている。
「芝園スタイル」とは、子供一人一人が課題をもち、その課題を自らの力で解決していく複線型の授業(図及び動画を参照)であり、この学習によって「『個別最適な学び』と『協働的な学び』の一体的な充実」の実現につながっている。
また、今回の端末導入で、「クラウド活用」により「共同編集機能」を使用できるようになった。この機能が本校の子供一人一人の自立した学びのために不可欠な存在となっている。
 
図 「芝園スタイル」における複線化の類型
図 「芝園スタイル」における複線化の類型
 
 

クラウド活用による「芝園スタイル」の活性化

 「芝園スタイル」では、子供に「何を(学習課題)、どのように(学習過程)、誰と(学習形態)」学ぶのかを委ね、子供がそれらを自己決定し、自らの学びをつくっている。自立した学びを可能にするためには、課題が明確であることや課題解決への見通しがあること等が大切であることは自明である。また、考えが独りよがりにならないように、そして考えの深化・発展のためにも仲間との議論等をする場、いわゆる協働が必要である。これらを子供自身が自らの判断で進めていけるように、必要な情報を提供できるのが「共同編集機能」(ただし共同編集機能には、同期的な両方向の活用と片方向「他者参照」の活用がある)である。本校では、教師が育てたい資質・能力や子供の実態、教科等の本質や特性を見極め、複数の「共同編集機能」を組み合わせることで、子供が自己決定していくことができる環境を整えている。本稿では、とりわけ「他者参照」に絞り活用例を紹介する。
 
(1)学習過程や振り返りの記録・蓄積・共有
自分の学習状況をメタ認知したり、目的に応じて学習形態や協働する相手を決めたりすることができるように表計算ソフト(*2)に確認する項目を入れて使っている。
また、自身の課題や活動内容、振り返り、次の課題を明確にして、見通しをもって追究できるようにするために、「振り返りシート(*3、*4)」にもこのソフトを使っている。この「振り返りシート」は、教師にとっても個に応じた支援を明確にするため重要な情報源となっている。
 
学習状況や学習形態を共有する表計算ソフトの画面キャプチャ
学習状況や学習形態を共有
 
 
(2)一人一人の学びの「見える化」
子供が追究を停滞させず頭をフル回転することができるように、一人一人の子供の追究の方向性に合わせ、教師は提供する情報を多様に準備している。この情報の一つとして「他者参照」の機能(文書作成、描画、電子ホワイトボード等)を生かしている。
学習課題や関心のあるテーマを一覧(*5)にしたり、仲間の考えや成果物等(*6)をいつでも他者参照できるようにしたりしている。時には、白紙の段階から共有し(*7)、また、チャット機能(*8)も取り入れるなど、目的に応じた工夫をしている。
 
各自の課題やテーマを一覧にして共有した画面のキャプチャ
各自の課題やテーマを一覧にして共有
 
このような活用によって、全員がアウトプットの機会を得ることができ、教師も仲間も互いに誰がどのような考えをもっているのかを把握でき、理解し合うことができる。そして、今まで気付かなかった仲間の考えの素晴らしさに出合うことができる。
 
 

子供の「自立した学び」を追い求めて

このような学習の成立には、学び方を継続的に指導することや子供に「自ら学ぶ」という意識を日頃から醸成していくことが重要である。そして、子供が共に学ぶ仲間と協力したり切磋琢磨したりすることで、よりよい学びを全員で創っていくことのよさを実感できる経験を蓄積していくことも大切である。
休み時間に校舎を巡回していると、子供がホワイトボードの前で議論している姿を見かけることがある。子供は「芝園スタイル」で学び、自ら学ぼうと成長してきている。今後も、子供の自立した学びを支え、一人一人の自己実現のため、全教職員が一丸となって努力していきたい。
 
ホワイトボードで協議をする子供の様子
子供の学ぶ姿が変容
 
 

(監修:GIGA StuDX推進チーム)