学校の取組例
群馬県吉岡町立駒寄小学校
プロジェクトH~新たな学びのステージへ~
※「H」は、HiBALIの頭文字
【初等教育資料 令和7年5月号記事】(文責:校長 山﨑 栄寿)
-はじめに(令和7年5月23日掲載)
-「子供が主語の授業」
-駒寄小の挑戦と光明
-(1) 石垣づくり
-(2) 天守閣づくり
-布石を軽んすべからず
-駒寄小モデルの顛末
-結びに
はじめに
群馬県吉岡町教育委員会は新しい学びのステージに向け、令和2年度に「HiBALIプラン」を策定した。プラン1.0のハード面の環境整備に続き、翌年度のプラン2.0では、教職員のICT活用におけるスキルアップへと本格的な運用を開始した。令和5年度にはプラン3.0で「子供を主語にした学校づくり」を掲げ、ICTを日常的なツールとした授業改善が進められた。
(監修:GIGA StuDX推進チーム)
「子供が主語の授業」
これまでもICTを活用することで子供の主体性を引き出す授業を実践してきた。だが、それは1人1台端末での情報の共有や協働、各種アプリを教師主体で取り入れたものであった。そのような中で、リーディングDXスクールの指定を受けて視察に赴いた学校から学んできたのは「子供が主語の授業」だった。視察に同行した教師たちは、新たな視点を得て授業改革に踏み出した。試行錯誤の中から生み出された授業は、「子供が主語の授業」であり、単元を通してその姿勢は貫かれていた。このような授業を追求すると、学び方は個別最適になり、同時に必要感のある協働が生まれるようになってくる。
駒寄小の挑戦と光明
令和5年度に私は本校に赴任した。新しい学びに興味・関心をもち、実践を目指す教職員がたくさんいた。しかし「教える授業」から「子供が主語の授業」に移行するには不安も大きかった。そこで、教師の不安を払拭するために、計画的に研修を進めることにした。
(1) 石垣づくり
子供が主語の授業では、教師はファシリテーターでなければならない。本校は令和3年度から群馬県「先進プログラミング教育モデル校」として授業実践を行っていたため、既にファシリテーターとしての教師の役割が確立しており、必要なことを子供に伝え、まずは子供の試行錯誤に委ねる。こうした現状を踏まえ、更に「子供が主語の授業」づくりについて理解を深めるため、夏休みに講師を招いて研修を実施し、その理念体得を目指した。
(2) 天守閣づくり
「子供が主語の授業」づくりの方向性を模索する中、静岡県吉田町への視察は、有効な手立てを見いだすことにつながった。
それは、プレゼンテーションソフトを利用して、単元計画や本時の授業の流れを示し、子供が「見通し」をもてるようにすることだ。クラウドで共有しており、子供は単元計画や授業の流れをいつでも確認することができる。教師がクラウドを通して本時の課題を提示したあとは、子供がめあてや学び方、学ぶ場などを自己決定する。そして、振り返りで自分の学びの到達度を確認し、次時のめあてを立てていく。こうした「見通し」をもたせる工夫は、学年や発達の段階に応じてアレンジして提示する。
このような取組を進め、11月には町立小・中学校3校の教職員を招いての研究授業を実施した。1年生の算数科では、子供たちは繰り下がりのある引き算の計算の仕方を自分で見いだし、困っている友達に教える姿も見られた。別の学級の国語科の授業でも、単元の目標の達成に向けた適切な対象と方法を自己決定することができるなど、充実した学びに取り組むことができていた。この研究授業によって本校の教師に「子供が主語の授業」づくりについて、確かな方向性が見えてきたように感じた。令和6年2月には近隣市町村に対し、授業観を新たにした教師の姿、子供の主体的な学びの姿を伝えるべく、公開授業を実施した。吉岡町の教育界に、新しい風を届けることができたように感じている。
それは、プレゼンテーションソフトを利用して、単元計画や本時の授業の流れを示し、子供が「見通し」をもてるようにすることだ。クラウドで共有しており、子供は単元計画や授業の流れをいつでも確認することができる。教師がクラウドを通して本時の課題を提示したあとは、子供がめあてや学び方、学ぶ場などを自己決定する。そして、振り返りで自分の学びの到達度を確認し、次時のめあてを立てていく。こうした「見通し」をもたせる工夫は、学年や発達の段階に応じてアレンジして提示する。
このような取組を進め、11月には町立小・中学校3校の教職員を招いての研究授業を実施した。1年生の算数科では、子供たちは繰り下がりのある引き算の計算の仕方を自分で見いだし、困っている友達に教える姿も見られた。別の学級の国語科の授業でも、単元の目標の達成に向けた適切な対象と方法を自己決定することができるなど、充実した学びに取り組むことができていた。この研究授業によって本校の教師に「子供が主語の授業」づくりについて、確かな方向性が見えてきたように感じた。令和6年2月には近隣市町村に対し、授業観を新たにした教師の姿、子供の主体的な学びの姿を伝えるべく、公開授業を実施した。吉岡町の教育界に、新しい風を届けることができたように感じている。

学び方や学ぶ場を自己決定する
布石を軽んずべからず
一方で、こうした大きな改革や業務改善をするに当たっては、保護者からの理解を得ることも重要である。学校だよりで運営方針や従前からの改善点、その理由等を丁寧に説明した。ICTの必要性を説明するため、文部科学省の資料も活用した。さらに子供や教師の姿を学校ホームページで、写真や動画、コメントと共に伝えていくことで、保護者に説明した内容や、新しい学びへの理解を促進している。また、保護者からの要望や行事後のアンケートには、一つ一つ真摯に回答し、保護者の視点も取り入れて改善を進めた。こうした日々の取組が功を奏してかCBTの実施や通知表のデジタル化などについて、理解を得られている。
駒寄小モデルの顛末
HiBALIプラン4.0となった令和6年度の研修のキーワードは「選択と自己決定」である。高学年では9教科を教科担任制にし、「子供が主語の授業」を実践している。教師からは、「より専門性を生かした教材研究につながる」と好評である。また、多くの教師と関わることは、思春期の子供にとって心理的な安全にもつながっている。
6年生の国語科の授業を参観した際は、自分の言葉で堂々とスピーチする子供の姿を目の当たりにして、自分の考えをまとめるまでの学習過程の充実ぶりを想像することができた。「子供が主語の授業」を通して、資質・能力を身に付けていく姿を見ていると、デジタルとアナログを、バランスよく融合し、丁寧な見取りや対話を通して豊かに学ばせることで、不確かな時代を切り拓くたくましい人材を育てられると確信できる。同時に、保護者の満足感や信頼、子供の変容、教職員の業務改善などの効果は計り知れないほどである。
より主体的に子供が学びに向かう授業づくりや、教科担任制の在り方の検討、4年生への教科担任制の拡大、発達の段階に応じた情報活用能力の育成、子供が主語の学びと学力の分析、探究学習の充実など、次年度以降も新たな挑戦は続く。これまでの取組をより充実すべく、子供や保護者、教職員と共に、新たな学びのステージに向けて挑戦を続けていきたい。
「HiBALI」・授業の様子等の具体的な内容は、駒寄小学校HPからご確認いただけます。
https://www.komayose.yoshioka.ed.jp/hibali新しい教育へ
6年生の国語科の授業を参観した際は、自分の言葉で堂々とスピーチする子供の姿を目の当たりにして、自分の考えをまとめるまでの学習過程の充実ぶりを想像することができた。「子供が主語の授業」を通して、資質・能力を身に付けていく姿を見ていると、デジタルとアナログを、バランスよく融合し、丁寧な見取りや対話を通して豊かに学ばせることで、不確かな時代を切り拓くたくましい人材を育てられると確信できる。同時に、保護者の満足感や信頼、子供の変容、教職員の業務改善などの効果は計り知れないほどである。
結びに
「HiBALI」・授業の様子等の具体的な内容は、駒寄小学校HPからご確認いただけます。
https://www.komayose.yoshioka.ed.jp/hibali新しい教育へ
(監修:GIGA StuDX推進チーム)