スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会(第2回) 議事録

1.日時

2026年6月10日(水曜日)11時00分~12時30分

2.場所

オンライン

3.議題

  1. 米谷委員からの御説明
  2. 放送事業者等からの意見聴取
  3. 自由討議

4.出席者

委員

内山委員、岡部委員、髙橋委員、冨山委員、米谷委員

文部科学省

浅野次長、籾井審議官、吉屋参事官(民間スポーツ担当)

総務省

豊嶋情報流通行政局長、佐伯同局放送政策課長

5.議事録

(1)米谷委員からの御説明
ー米谷委員からは以下の説明があった。
・「スポーツへのユニバーサルアクセス」とは、国民的関心の高いスポーツ行事を追加的な経済的負担なく広く視聴できるようにする政策理念であり、1950年代に英国で確立され各国に伝播している。
・各国制度は共通理念を持ちつつも、視聴機会保障と市場原理のバランス、放送か配信かといった点で制度設計が異なっている。
・英国では、国民的関心行事の権利の排他的取得を制限し一定の価格抑制効果が見込まれる一方、商業的自由への制約との指摘がある。
・イタリアでは、国民的関心行事は地上波放送での放映が適格とされ、非地上放送事業者が権利を取得した場合にはサブライセンスを提案する義務が課されている。
・韓国では、地上波放送3社がユニバーサルアクセス確保のため地上波放映が必須として政府に見直しを訴えており、政府も制度改正方針を発表している。
・タイでは、2024年W杯での公的資金による放映権料補填に批判が起き、2025年5月にW杯本大会が国民的関心行事から削除された。

(2)スポーツ団体からの意見聴取
一般社団法人 日本民間放送連盟
―民放連からは以下の発言があった。
・民放はこれまで無料でスポーツ中継を提供し、スポーツの普及・発展に貢献してきた。
・経営資源が限られる中で、放映権料の高騰が大きな課題であり、他番組制作への影響を懸念している。
・放映権取得は収支や編成、視聴者ニーズを踏まえて各社が判断しており、経済合理性だけでは決めていない。
・現状ではジャパンコンソーシアム等の枠組みにより、国際大会は広く放送され、視聴機会は実質的に確保されていると認識している。
・有料配信独占の事例では地上波放送を求める声が強く、国民的スポーツを誰もが見られる環境を整えることが重要である。
・放映権取得は最終的に放送事業者の判断によるべきであり、民放事業者は民間企業である以上、適正な収支確保を目指しつつ最大限視聴者の期待に応えたい。

日本放送協会(NHK)
―NHKからは以下の発言があった。
・オリンピックやW杯等は多くの国民が視聴できるべきであり、アクセス確保は公共放送の重要な役割である。
・単独・複数の放送局の協力など権利獲得の枠組みは様々であり、W杯においてはジャパンコンソーシアムを組織して、権利の獲得やコンテンツ制作において協業してきた。
・特定事業者の提供範囲の問題ではなく、国民全体として広くスポーツにアクセスできるかが重要であり、OTT等と互いに権利を分け合い公共的価値を確保する意義がある。
・放送や配信、SNSなどの複数の接点が重なることで、結果として大会に触れる層が増加するという見方もある。
・受信料で運営されているNHKとしては権利獲得のために、無制限に支払うことは出来ない中、OTT参入等による競争環境の変化により、国際的な権利市場で価格上昇が続く構造となっている。
・放送と配信の権利を分割販売する海外事業者との商習慣の違いもあり、権利交渉上の難しさが存在している。
・財源的制約や市場環境の変化を踏まえ、合理的かつ持続可能な形で権利を取得し、アクセス確保の公共的使命を果たすことが重要である。
・仮にユニバーサルアクセスが導入される場合にも、NHKとしては、他コンテンツ予算への過度な圧迫は避ける必要があり、受信料を財源とするNHKの予算と編成には限りがある。その上で、各大会の公共性や費用対効果を見極めて交渉できる環境が整うかを注視していく必要がある。

(3)自由討議
―自由討議では、以下の発言があった。
・近年、ネット配信事業者が競争力を高め、圧倒的な資金力で独占的な有料放送を始めるようになってきている。
・過去のJリーグの事例において、全権利(地上波、ネット配信)を求める配信事業者に対しテレビ放映権を留保した背景には、ユニバーサルアクセスの問題や将来の普及への配慮(子どもをはじめ、すべての人たちが簡単に無料で見られる)による自己抑制が働いた。
・スポーツコンテンツは供給側に競争原理が働かないため構造的に市場の失敗が起きやすく、世界的な経済成長に伴い価格高騰はさらに進むと考えられる。
・特に子どもたちが自由に無料で見られることがスポーツ振興上きわめて重要な意味をもつので、市場原理と同時に公共の福祉もクリアできれば良いが、市場原理に任せておけばうまくいく状況は今後なくなるため、市場の失敗の調和的解決に向けた政府部門の介入デザインについてどの国も苦労している。
・市場原理を上手に活用しつつ、中長期的なスポーツ発展振興を導き出すためのマーケットルールのリデザインが求められる。
・海外では有料配信事業者の中継権独占と中継料高騰が、消費者への契約料の値上げにつながり、それが国民の不満を招いている。巡り巡って他へ影響を及ぼす問題として考えておく必要がある。
・制度論においては「知る権利」に対する国家介入の是非の問題となるため、何を対象に誰が決めるのかという極論とならない慎重な議論が必要である。
・独占市場での価格高騰に対し、理論経済学にあるような、合理的オークションルール等(VCG オークションとか一般化セカンド・プライス・オークションとか)の検討がなければ、資金力に依存する構造となっていく。
・スポーツ団体にとっての最優先事項が「目先の現金」か「露出」かについて、改めて考えの整理があっても良いのではないか。
・ネット視聴の進展により若年層でオンデマンドやハイライト視聴の志向が高まっており、リアルタイム視聴の比重低下を超長期的な動きとして検討に入れるべきである。
・市場原理においては無料であるほど視聴者は増えるが、ルールのない状態では高く売る方向に進むのが原則である。
・有料放送が高額化しすぎると視聴者が減少し、将来の普及・育成に問題が生じるという判断にスポーツ側が至るまでには時間がかかる。
・バランスをとるためにユニバーサルアクセス的なルールを設けるのは、これがナショナルインタレスト(国民の利益)に基づくものということを誰かが判断するのであれば、そのようなルールを設けることがおそらく唯一、市場の原理に100%支配されずにスポーツをうまくバランスよく伸ばしていける方法だと考える。
・需要と供給のバランスをとるメカニズムを通じて、スポーツの普及・育成を主導するビジョンとリーダーシップが重要である。
・放送政策の基本原則である放送の自主自立と、ユニバーサルアクセス制度との間には、一定の緊張関係がある。
・ユニバーサルアクセス制度には、視聴者・スポーツ団体・放送事業者等の利害を調整する意義がある一方、日本におけるスポーツの公共的価値や、何をもってユニバーサルアクセスが確保された状態とするのかについて社会的な合意を形成する必要がある。例えば、「経済的負担なく」(資料 1、p.4)視聴できる状態についても、その具体的な定義は各国の市場構造や視聴習慣によって異なる。
・海外では個人のYouTuberが放映権を取得し無料配信する事例も出てきており、今後買い手が多様化していく状況にある。

―その他
番組制作費と放映時間帯、スポーツ中継における収益と視聴者数の関係、ユニバーサルアクセスの対象となるイベント範囲やナショナルインタレストの考え方、市場制度や制度設計(各国事例・競争政策)の影響、国民的関心と対象大会の選定、放送とネット配信の競争環境、市場の失敗とスポーツ振興、入札パッケージと放映権交渉、公金投入とユニバーサル・アクセス制度、等についての発言があった。

お問合せ先

スポーツ庁参事官(民間スポーツ担当)

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(スポーツ庁参事官(民間スポーツ担当))