第1回運動・スポーツ中の安全確保対策に関する検討会 議事録

1.日時

令和7年6月9日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省15F1会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)及びオンライン ※ハイブリッド開催

3.議題

  1. 検討会の背景、趣旨目的、進め方
  2. スポーツ団体の安全に関する取組
  3. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

・江橋 千晴
 (公益財団法人日本スポーツ協会事務局次長兼スポーツ指導者育成部長)
・荻野 雅宏
 (足利赤十字病院脳神経外科部長)
・小田原一記
 (公益財団法人日本レクリエーション協会専務理事・事務局長)
・笠原 政志
 (国際武道大学教授/日本アスレティックトレーニング学会副代表理事)
・金岡 恒治
 (早稲田大学スポーツ科学学術院教授)
・川原  貴
 (一般社団法人大学スポーツ協会副会長)
・柄澤 宏之
 (公益財団法人新潟県スポーツ協会専務理事)
・北村 光司
 (国立研究開発法人産業技術総合研究所人工知能研究センター主任研究員)
・栗山陽一郎
 (TMI 総合法律事務所パートナー弁護士)
・小菅  司
 (公益財団法人日本スポーツ施設協会専務理事)
・斉木 一明
 (独立行政法人日本スポーツ振興センター災害共済給付事業部長)
・下光 輝一
 (公益財団法人健康・体力づくり事業財団理事長)
・祐末ひとみ
 (神戸親和大学教育学部講師)
・田口 禎則
 (一般社団法人日本トップリーグ連携機構理事/事務局長)
・長澤 高史
 (公益財団法人スポーツ安全協会事務局次長兼事業部長)
・中嶋 耕平
 (国立スポーツ科学センター副所長/スポーツ医学研究部門長)
・長島 公之
 (公益社団法人日本医師会常任理事)
・能瀬さやか
 (国立スポーツ科学センタースポーツ医学研究部門婦人科契約研究員)
・細川 由梨
 (早稲田大学スポーツ科学学術院准教授)
・本間 基照
 (MS&ADインターリスク総研株式会社/関西大学非常勤講師)
・三上 真二
 (公益財団法人日本パラスポーツ協会参事)
・村上 佳司
 (桃山学院大学人間教育学部教授)
・山田 陽介
 (東北大学大学院医工学研究科スポーツ健康科学分野教授)
 

文部科学省

総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課

オブザーバー

こども家庭庁 成育局安全対策課
消費者庁   消費者安全課
経済産業省  商務情報政策局 商務・サービスグループ参事官室、商務・サービスグループ消費・流通政策課、商務・サービスグループ文化創造産業課、商務・サービスグループ政策課
国土交通省  都市局公園緑地・景観課

6.議事録

運動・スポーツ中の安全確保対策に関する検討会(第1回)
令和7年6月9日(月曜日)

 

【事務局】 
 定刻になりましたので、ただいまより、運動・スポーツ中の安全確保対策に関する検討会の第1回を開催します。皆様、お忙しい中、御出席いただき、誠にありがとうございます。本日、進行を務める株式会社NTTデータ経営研究所の小暮です。よろしくお願いします。本検討会の模様はYouTubeにて、ライブ配信しています。また、議事録作成のため、会議の様子は録音していることを御了承ください。本日は報道関係者も御同席しています。
 開催に当たっての御連絡です。本検討会は対面とZoomによるウェブの、ハイブリッド形式の会議です。オンラインで御出席する委員は御発言するとき以外はミュートにしてください。本日、対面での御出席は19名で、オンラインでの御出席は4名です。勝田隆委員と菅原哲朗委員は御欠席です。また、本日はスポーツ庁より、室伏長官方が御出席しています。さらにオブザーバーとして、文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課、こども家庭庁成育局安全対策課、消費者庁消費者安全課、経済産業省商務情報政策局商務・サービスグループ参事官室、商務・サービスグループ消費・流通政策課、商務・サービスグループ文化創造産業課、商務・サービスグループ政策課、国土交通省都市局公園緑地・景観課もウェブで御出席しています。委員は設置要綱の構成員のとおりですが、後ほど、それぞれに御発言をお願いします。
 初めに、室伏長官から御挨拶をお願いします。
 
【室伏スポーツ庁長官】 
 皆様、こんにちは。御紹介いただいたスポーツ庁の室伏です。第1回運動・スポーツ中の安全確保対策に関する検討会がこのように多くの関係者の皆様に集まりいただき、また、行政もスポーツ庁はじめ、これほどそろって会議体を行うことはこれまでありませんでした。それ故、大変、素晴らしい取り組みになると期待しています。また、ちょうど暑くなり始め、これから、熱中症も大きな問題になってきます。これまでスポーツ庁からは、次長名で各教育委員会、そして、自治体のスポーツ関連部局に、熱中症に気を付けるように、十分に配慮するようにと書簡を送っています。しかし、実はサイエンティフィックな観点で発出するようなことは行われていない可能性があります。
 この会議体は熱中症だけではなく、サイエンティフィックな観点で様々なスポーツを安全に行うための会議体です。様々な観点から人々を守るために、最終的にはこの会議体が提言をして、人々がスポーツをやめてしまわないように、また、スポーツを安全に行っていけるように、さらには、尊い命を守ることにつながることが一番大切だと思います。
 運動・スポーツ中の事故防止はスポーツ団体、指導者等、関係者の皆様が取り組みを進めていますが、十分な対策が講じられず、事故につながるケースがあり、依然として、様々な事故が発生しています。その防止と安全対策の徹底が重要な課題です。また、指導者による上限関係等を背景とした暴力、ハラスメントも、残念ながら、いまだに発生しており、国際的にも重要課題となっています。つい先日、IOCでも国連とコラボレーションし、ハラスメントやサステナブルデベロップメントゴールズに向けて、一体的に取り組むようなセッションも行われていたようです。
 加えて、現在、ニュースにもなっていますが、ドーピングが容認される競技会に対して、各方面から非難の声があり、クリーンで安全なスポーツ環境を守るための国際的な動きも広がっています。スポーツにおける安全を確保するため、日本はこうした世界の変化の潮流も踏まえ、必要な取り組みを進めていくことが重要です。スポーツ庁では熱中症予防をはじめとする、スポーツ安全の取り組みを進めていますが、安全対策のさらなる徹底を図るために、正しいスポーツ医科学の知見を踏まえながら、運動・スポーツ中の安全確保に関する包括的な取り組みを進めたいと考えています。そのため、有識者の皆様に参集いただき、運動・スポーツ中の安全対策に関する課題と必要な取り組みについて、検討するため、運動・スポーツ中の安全確保に対する検討会議を設置しました。本検討会議でまとめた方向性を踏まえ、スポーツ庁として安全対策に関するガイドラインを制定します。本検討会はスポーツ関連団体、学識経験者の皆様、そして、関係省庁が参画していますが、皆様の専門的な知識と経験に基づき、正しいスポーツ医科学の知見を根拠とする、建設的な御議論をお願いします。
 本年はスポーツ庁が設置されて10年です。この節目を機会に、スポーツ指導における暴力、ハラスメント問題を含め、あらためて、運動・スポーツ安全確保に向けた取り組みを強化し、国民が安心して、安全に運動・スポーツに取り組める環境を整備することは、今後のスポーツ振興においても、極めて重要です。本検討会議が実りある御議論を通じて、運動・スポーツ安全に大きく貢献することを祈念しています。
 そもそも論も少し付け加えます。日本はあるところで体育からスポーツという流れができた時期があったと思います。ここでの体育はどちらかというと、教育制度の中の学校教育で、教育制度の上に成り立ってきました。これはこれで素晴らしいところもありますが、一方で学問的なものやサイエンス的な体系に欠けているところがあったかもしれません。その中で体育からスポーツと名称だけが変わった現状もあるかもしれません。この会議の中でそこまでいけるか分かりませんが、もしかしたら、体育の再定義やスポーツの再定義もする可能性があります。教育的な考えだけになると、ハラスメントもそうかもしれませんが、かつては水も飲ませないという問題がありました。そうではなく、サイエンティフィックな観点で、どのように伸ばしていくか、どのように安全に運動を行うか、健康増進に取り組むか、今まさに、先生方の知見を賜り、これらを考え直すときかと思います。ぜひ、忌憚のない御議論を、遠慮せずにお願いしたいと思います。以上です。
 
【事務局】 
 続いて、議事に入る前に資料を確認します。事前に資料1、2を送付しています。資料の不足等がありましたら、事務局までお願いします。議事に入ります。議事1は本検討会の背景や趣旨、議論の進め方です。スポーツ庁中村健康スポーツ課長より御説明をお願いします。
 
【中村健康スポーツ課長】
 本日は資料1と資料2を御用意していますが、私からは資料2に基づき、この検討会を進める上での背景と、今後の御議論の進め方について、簡単に御説明します。資料2の2枚目を見てください。これは一部のデータではありますが、スポーツ中の事故や障害についての件数を示しています。左側が学校の体育活動における共済給付のデータとスポーツ安全協会で行っている安全保険の給付データです。年間40万件や17万件という件数の障害なり、外傷なりが発生しています。右側はこれらのデータには含まれないものがほとんどだと思いますが、警察庁と消防庁でまとめている山岳事故と水難事故、熱中症の件数です。件数自体の多さより、重篤性という観点から見ると、死亡事案や行方不明事案が非常に多いことが分かります。このようなものも背景として踏まえ、この検討会の御議論を進めていければと考えています。
 3ページでは、これまでJSCやJSPO、スポーツ安全協会を含め、様々な団体による取り組みがあり、その中でガイドブックやマニュアルが作られてきたことを示しました。この検討会での御議論を進めるに当たってはこれらのこれまでの知見も十分に踏まえ、検討を進めていく必要があります。このページはそれぞれのガイドブック、マニュアルで、どのようなことが扱われているか、概要だけをまとめました。今後、検討を進める際には既存のものには、どのようなものがあるのかを整理しながら進められるよう、簡単に御紹介しました。
 4ページからがこの検討会の中身に関するものです。先ほど室伏長官からも話があったように、この検討会の目的は最終的に国、スポーツ庁として包括的なガイドラインを作成することです。そのガイドラインを作成するに当たり、現状の課題整理をして、必要な対策を取りまとめていきます。その取りまとめたものを基に、スポーツ庁でガイドラインを策定しますので、その方向で御議論を進めたいと考えています。その際の御議論の要素を下の(1)から(3)まで簡単に示しました。
 (1)運動・スポーツ中の事故を防ぐための必要な対策として、1点目は運動・スポーツの実施方法そのものに関するものです。これは練習や競技の方法等、特に子どもや女性、障害者等、留意が必要な対象を含めて、論点として考えています。2点目はスポーツに関する大会・イベント・教室の開催に関するものです。これは安全管理の体制や主催者がどのような対策を講ずるべきかという論点です。3点目が運動・スポーツの指導者に関するものです。これは運動・スポーツを指導する際の安全確保に必要な知識や技術にどのようなものがあるのか、また、指導者養成においてはどのような取り組みをするべきなのか、指導上の留意点にはどのようなものがあるのか、これらを論点として考えています。4点目は運動・スポーツを実施する場所としての施設に関するもので、施設自体の安全管理の体制や、施設の要件、施設として実施するべき対策とは何かという論点です。5点目はスポーツを実施するもの自身がどのようなことに留意するべきかで、これも論点になると考えています。これが大きな1点目です。
 もう一つの検討課題は運動・スポーツ中に発生した事故の把握についてです。冒頭、保険や共済の件数を御紹介しましたが、ここで十分にカバーできていないものもあると思っています。特に社会人がスポーツをする場合等で、その実態をどのように把握するかという難しい問題もあります。このような事故の把握や対応をどのようにしていくべきかが二つ目の論点です。
大きな3点目は、取り組みを進めるに当たって、国や関係団体、競技団体等がそれぞれどのような役割を果たすべきかで、それもこの検討会で整理できればと考えています。
 5ページは検討を進める際の留意事項をまとめました。皆様も承知のように、スポーツといっても多種多様な種目がありますので、種目ごとに個別具体的な議論をすると切りがありません。この検討会では種目ごとの具体的な内容というよりは、共通して取り組むべき事項を包括的に定めることを想定して、御議論を進められればと考えています。この検討会でまとめたものを基に、国で包括的なガイドラインをつくり、種目ごとの対応は各競技団体等で定めること想定し、御議論を進めたいと思います。
 2点目として、検討会では全ての運動・スポーツを網羅する予定ですが、優先順位も念頭に置きながら、事故の発生状況や発生頻度、重篤性等も考慮しながらの御議論が必要だと考えています。今後の御議論において、それらも整理できればと思っています。
3点目として、先ほども言ったように、既にあるガイドブックやマニュアル、それから、関係省庁もガイドラインを作っているので、それらとの整合性にも留意しながら、御議論を進めたいと考えています。
4点目として、御議論を進める中で何か特定のものについて、掘り下げた検討が必要になった場合は、別途、ワーキンググループを設置して御議論することも想定しています。
 最後の6ページは今後、どのようにこの検討会を進めていくかについてです。まず、御議論の前提の整理が必要だろうと考え、実際に運動・スポーツ中に発生している事故や障害の傾向、特徴の分析、それから、競技団体を含めたそれぞれの団体でどのような取り組みをしていて、その中でどのような課題があるか等、議論の前提として整理できればと思っています。
その上で、検討における基本的な考え方、何を御議論するかという論点の整理をし、検討対象を明確にしたいと考えています。検討対象として、5つほど挙げていますが、例えば、対象者は子どもから大人、高齢者に至るまで、全ての年齢を対象にするのか、また、レベル別にトップアスリートから一般人まで、様々なレベルでの運動がありますので、どのようなものを対象にするかという整理が必要です。それから、対象とする運動・スポーツの種類としては、それこそ、競技スポーツからウオーキングのような日常的な身体活動まで、幅広くありますので、この検討会でどこまで御議論するのかという整理も必要です。
 3点目の活動累計としては、競技大会、運動部活動、実業団の活動から、町中での運動教室やジム等、様々な活動がありますので、それもどこまで御議論が必要かを考えなければいけません。施設としては、スポーツ施設は当然に対象になりますが、商業施設や公共施設、教育施設等、様々なものがあります。公園等も含めて、どこまで御議論するかという整理が必要です。最後に対象とするリスクとして、スポーツ中の事故等に加えて、室伏長官からも話があったように、暴力行為やハラスメント等、身体的ではない、精神的な安全もどのように御議論に入れていくかも整理が必要だと考えています。このような整理をしながら、各論点についての検討を進めていきたいと思います。以上が背景と進め方についての御説明です。現時点で質問等があればお願いします。(質問等がないことを確認)
特にご質問はないようですので、議事を進めさせていただきます。
 
【事務局】
 議題1はここまでとして、次の議題に移ります。第1回の検討会では各構成員のバックグラウンド等や御意見を聞きたいと考えています。先ほどスポーツ庁より御説明があった検討の趣旨を踏まえ、1人3分程度で御意見をお願いします。マイクは2人に一つ、御用意しています。話す際にはマイクをオンにして、話し終わったらオフにしてください。それでは50音順に発表をお願いします。江橋委員からお願いします。
 
【江橋委員】 
 日本スポーツ協会の江橋です。よろしくお願いします。私たちの日本スポーツ協会は個別の競技ではなく、スポーツ界全体を見渡して、どのように取り組んでいくかを中心に話せると考えています。その中で、国民スポーツ大会や日本スポーツマスターズ等の大会の開催、スポーツ少年団や地域スポーツクラブ等、地域スポーツ活動の場を提供すること、また、そのような活動を支える指導者を育成する、このような形で先ほど御説明のあった、検討の目的の多くに、私たちが関わっています。本日、御出席の先生方にも日頃から協力いただいている方もたくさんいて、専門家の支えがあって取り組めている面もあります。私たちとしてはそのような先生方の知見でまとめたものを、いかにスポーツの現場に周知、浸透させていくかという部分に尽力できるのではないかと考えています。
 ただ、先ほど室伏長官の話にもあったように、非常に残念なことですが、指導者による不適切な行為が発生しています。私たちはこのような行為を根絶するための相談窓口を設置し、処分をしています。一方で、啓発活動として「NO!スポハラ」活動を行い、取り組んでいます。この「NO!スポハラ」活動は、もともとは2013年にスポーツ4団体で、スポーツ界における暴力行為根絶宣言を出したことを継承し、現在は日本オリンピック委員会、日本パラスポーツ協会、日本中学校体育連盟、全国高等学校体育連盟、UNIVASが参加して、取り組んでいます。これらの活動も安全な環境を提供することだと思っており、弁護士の先生方にも協力してもらっています。広く関わりがあるものですから、これに特化してということはなかなかありませんが、先ほども言ったとおり、広く浸透させることに尽力したいと思います。よろしくお願いします。
 
【荻野委員】 
 荻野雅宏です。恐らく、今回のメンバーでは唯一の脳神経外科医だと思います。現在は栃木県の足利赤十字病院に勤務していますが、この他に、母校である慶應義塾大学と、つい先日までは獨協医科大学病院の脳神経外科に勤務していました。スポーツ現場における、中枢神経系の外傷の管理、対処や復帰、あるいは引退勧告等、結果的に、そのようなことに30年以上関わっており、現在は日本脳神経外科学会と日本脳神経外傷学会という、脳外科の学会の、スポーツ脳神経外傷の検討委員会の責任者、それから、日本臨床スポーツ医学会というスポーツ医学の学会の、脳外科部会の部会長をしています。このような肩書から、声を掛けていただいたと思っています。
 先ほどトップアスリートであり、なおかつ、科学者でもある室伏長官から、サイエンティフィックに期待という言葉があり、非常に心強く思っていますが、なかなか科学的なデータが出にくいところがこの領域の難しいところです。皆様の知見や御経験を、ぜひ、教えてください。
 私たち、脳外科の学会としては医師向けの提言を作っています。また、臨床スポーツ医学会として、それは非医療従事者にも分かるように提言を作っており、それを定期的に改訂する必要があるため活動しています。先ほど中村課長の御説明にあったように、誰を対象にするかは非常に大きな問題です。恐らく、このような会がつくる、総論的な1番目のレイヤーがあり、それから、競技団体や学校等、主催する団体がつくるセカンドレイヤーが総論を受けてどうするかを考えます。しかし、その先には、きょう、私はどうするのかという問題が必ず出てきます。いくら厳しいと思っても、次の試合のパフォーマンスで来期の契約が決まる、あるいは進学が決まるという状況は起こり得ます。この話はいろいろなところでしていますが、最終的には現場に裁量権があることを、最近はむしろ、強調するようにしています。そこの部分を国が出す指針に盛り込むことは難しいだろうと思いますが、逆に国から現場に知らしめてほしいです。待っていれば誰かが安全をくれるわけではないので、あなたがしようとしているスポーツにどのようなリスクがあるのかは、あなたが理解しなければいけないと、親や選手に言うようにしています。このような大きなことへの声掛けは経験がありませんので、ぜひ、期待していますし、何か役に立てればと思っています。よろしくお願いします。
 
【小田原委員】 
 日本レクリエーション協会の小田原です。よろしくお願いします。私たちの団体は全国レクリエーション大会という一番大きい大会もありますが、各都道府県でスポーツ・レクリエーションの大会を実施したり、指導者の養成をしたり、また、ウオーキングをはじめとするローインパクトの、室伏長官からはレクリエーションスポーツといったほうがいいのではないかという言葉ももらいましたが、ニュースポーツ団体といわれる団体と連携しながら事業を進めている団体です。
 指導者養成では、カリキュラムの中に安全対策のコマを入れたり、消防署や赤十字社が行っているような救急法を受けることを奨励したり、対策をしていますが、短い時間の中に安全対策のカリキュラムを詰め込んでいるので、どのようなものが適切なのか、試案しながら実施している状況です。今回、このような検討会で指針が出ることに期待しています。
 指導者が活動するときにはスポーツ安全保険等の保険に必ず入るように指導しています。対象者が前もって分からない場合は保険に入りづらいですが、社会福祉協議会が行っているイベント関係の保険等を適用することを勧め、また、私たちも日本レクリエーション協会や都道府県の協会が主催として行う場合は、団体として指導者が賠償保険を適用されるように、カバーしながら活動しています。幸いなことに、現在まで大きな賠償訴訟になること等はあまりありません。民間が実施している、レクリエーション関係の保険の実施状況を見ても、競技性の高いスポーツと比べて、レクリエーション関係は事故の発生率は低いです。しかし、ウオーキングもそうですが、実施する方たちはどちらかというと、一度、健康を損ねた経験があり、それを回復するために実施をしている方も多いのです。そのような部分で、リスクもあると考えています。ローインパクトのスポーツも、今回は範囲に入れて検討してもらえるのであれば、健康的にリスクを持っている方への対応も教えてもらい、それを取り入れていけるように考えています。よろしくお願いします。
 
【笠原委員】 
 国際武道大学の笠原です。アスレチックトレーナーをバックグラウンドにしており、スポーツフィールドでの安全管理、救急対応、ならびに、そこに関わる研究活動、および、啓発活動、人材育成等を行っています。スポーツフィールドに関わりながら研究活動をしている中で、日本スポーツ協会やいろいろところと共同で調査をしたときに、例えば、日本スポーツ協会と4000人の指導者に調査をしたところ、安全管理に関する興味関心が高い方々は多いという回答でしたが、いざ、対応するときに自信を持ってできるという方は半数にも満たないという現状でした。指導者の方々の危機管理意識は高いが、それに対して情報が届いていないという課題を感じながら、啓発活動を行っています。
 また、学校現場では運動部活動が盛んな中で、怪我も多いです。学校現場であれば、危機管理マニュアルを選定しなければいけないのですが、その中に体育スポーツに関しての事項があるかという調査を科研費で行いました。結果は70パーセントの先生方がスポーツに特化した安全管理マニュアルは作っていないという回答でした。その理由としては、知らない、分からない、作り方が分からないことが挙げられ、その生の声を聞いて、そのような方々に情報を届けるようなこともしています。安全管理で言うと、早期対応するためにどのようなことができるかを考え、私たちは緊急時対応計画を作りましょうと啓発しています。諸外国では必ずありますが、日本ではなかなかなく、全国高等学校体育連盟と協力するときに 必要性を切に感じています。専門の方々が協力することで何らかの対策が取れることは非常に有意義だと思っていますので、私ができることは協力したいと思っています。よろしくお願いします。
 
【金岡委員】 
 早稲田大学の金岡です。もともとは整形外科医で脊椎外科として背骨の手術をしていました。スポーツ医学を並行して行っており、主に水泳選手のケアをしてきて、水泳の競技大会に帯同したり、水泳の現場に関わったり、その関係で日本水泳連盟でも役職をして、医科学委員長をしていました。
 スポーツ医学の大きな柱にはコンディショニングとスポーツセーフティーがあります。コンディショニングは個々の選手に対するコンディションを高め、怪我を予防したり、パフォーマンスを上げたりする取り組みですが、もう一つの大事な柱であるスポーツセーフティーはスポーツ界をより安全にするための取り組みです。そのスポーツ種目が安全でなければ、そのスポーツ種目は繁栄しませんので、スポーツの安全は非常に重要な要素だと思っています。
 私自身は先ほど言ったように、水泳のフィールドと脊椎を見てきましたが、水泳における一番大きな問題は飛び込み事故による頸随損傷です。十数年前まではその頻度は多く、その辺りのデータはJSCからいただきました。学校における飛び込み事故を予防する取り組みとして、いろいろな活動をしていました。そのひとつは、正しい飛び込み方法を教えることでした。日本水泳連盟と一緒に、正しい飛び込みの方法を研究し、それを普及しました。それとともに、学校での水泳の授業で先生が安全な飛び込みを教えることは難しいだろうということから、体育の授業では飛び込みを教えないことにするという対応で、学校での飛び込み事故は減っています。実際にかなり減って、現在では年間に数人しかいない状態まで減っています。これは素晴らしい結果だと思いますが、心のどこかには、飛び込みの方法を身に付けずに、学校ではないプールで飛び込んで、事故を起こしている人もいるのではないかという、少しの心配な気持ちがあります。
 このことから、先ほど中村課長が言っていたような、全ての世代、全ての年代が全ての環境において、安全な状況にすることの難しさは非常に強く感じています。また、それをしないと意味がないとも感じています。非常に難しい課題だと思いますが、取り組んでいかなければいけない課題だとも思います。現在、自分自身で、結局、一番大事なものは何かと考えると、安全に対する個人個人の意識です。これをするのは危険かもしれないという、少しの恐怖心を持ったり、想像力を働かせて、これをしたらこうなるのではないかと考えること、それが備わった人間を育てること、つまり、教育が一番大事なのではないかとも思っています。非常に幅広く、難しい課題だと思いますが、この検討会で分かることもあると思いますので、楽しみにしています。よろしくお願いします。
 
【川原委員】 
 川原です。内科のスポーツドクターで長年、スポーツ事故や怪我の予防に携わってきました。現在はUNIVASで安全安心委員会の委員長をしていて、先ほど御紹介がありました、安全安心ガイドラインを作成しました。これは大学が運動部に対し、どのような指導をして、大学として、どのような体制を取るべきかというガイドラインと、もう一つは競技団体がどのような体制、指導をするべきかというガイドラインです。認証制度があり、このガイドラインに沿っているところには認証を付与しています。例えば、大学で事故があって、大学が訴えられ、損害賠償をしなければいけない場合、認証がある大学にはUNIVASの負担で保険を付け、1件につき、3億円、1人につき、1億円の補償をします。また、裁判にならなくてもトラブルが起きて、学内で専門家を呼んで対策を立てなければいけない場合には、その費用を300万円まで補償します。競技団体に対しては賠償保険に加えて、主催試合、主に大学選手権の指定した試合については、認証を受けていれば、医療スタッフの配置をUNIVASが費用負担します。これらを行い、ガイドラインを普及しています。これからは個々の運動部レベルでどのような体制を取るべきかというガイドラインを作ろうと思っています。
 以上は体制の話ですが、具体的な重大事故や怪我については、どのような怪我がどのように発生しているかの統計を取り、分析し、対策を出します。それによって、事故が減るのか、減らないのかを調べ、減らなければ、その要因を追求するというサイクルで減らしていきます。実際に重大事故については、それがかなり機能しており、突然死は学校管理下のデータを基に、日本スポーツ振興センターが長年、予防に取り組んでいます。AEDの普及もありますが、以前は100件以上あった心臓性突然死が現在は10件程度まで、激減しています。
 熱中症については日本スポーツ協会で30年以上前から運動指針を出していて、現在は学校管理下での死亡はほぼなくなりました。時々、一例あるかないかで、以前の多いときには、年間13人ほど、部活動で亡くなっていましたが、現在はほぼありません。頭の事故については、私は日本アメリカンフットボール協会に長年、携わっていて、1980年代には毎年、死亡者が出ていて、年によっては3人ほど死亡していました。これも30年以上、ずっと対策をして、現在はほぼありません。
 このような重大事故は、例数は少ないですが、要因が特定しやすく、対策も採りやすいです。ところが一般の怪我については、日本スポーツ振興センターのデータを見ると、ほとんど減っていません。人数が減っているので減っているように見えますが、人数当たりで見ると、むしろ増えています。スポーツ外傷には使い過ぎによる障害と突発性の外傷がありますが、使い過ぎの障害は研究しやすく、競技特性によって、相当、研究されています。突発性の外傷は要因が多過ぎて、特定が非常に難しいです。これは大規模な前向き研究を行わなければ、難しいです。世界的にもそのような方向に進んでいて、ノルウェー等は国の機関として外傷予防センターがあり、そこで研究しています。一般の怪我を減らすにはナショナルレベルで、外傷研究センターをつくらなければ減らないのではないかと思っています。以上です。
 
【柄澤委員】 
 新潟県スポーツ協会専務理事の柄澤です。地方のスポーツ協会として、このような検討会のメンバーに選ばれたことは光栄です。当協会が管轄し、連携協働している市町村のスポーツ少年団、そして、近年話題の、中学の運動部活動の地域移行の主役となるべき総合型地域スポーツクラブ、各競技団体、市町村スポーツ協会等、それらの団体とは様々な場面での交流や研修会議での場において、地方におけるスポーツの練習や大会運営の安全面にかかるリスク、その課題、施設の問題点等の御意見をいただいているところです。
 また、先ほど室伏長官からも話があった、ハラスメントについても、スポーツ協会でスポーツハラスメントの相談窓口を開設しており、結構な頻度で相談が寄せられています。そのような現場の状況や要望、課題等を踏まえて、この検討会の御議論に貢献できればと思っています。
 当県でもスポーツ中の安全確保にかかる、一番大きな課題として挙げられているのは熱中症対策です。先ほど言った、管轄しているスポーツ少年団やクラブ、加盟競技団体等にも注意喚起を行っています。それを受けて、それぞれ、注意喚起を受けた団体側でも、練習時間を少しでも涼しい時間にずらしたり、大会日程を、月を変えて再構築したり、屋内競技であれば、蒸し風呂の中でするよりも、冷房付きの施設を選んで行うような努力をしているようです。しかし、新潟県は雪国ですので、季節的、天候的な要因があります。冬になるとほぼ屋外施設が使えなくなる可能性が非常に高く、その分を涼しい季節にしようとすると、大会運営が重複してできなくなるという問題があります。
 また、新潟県は南北に長く、海岸線だけでも300キロメートル近くあります。その県内を1地区に集めて大会をするとなると、移動にかかる時間や距離もありますので、早い時間や遅い時間に大会をすると、集合に問題が出てきます。そのような課題がある中で、冷涼な時期や時間に利用者が集中しがちな施設を確保するなど、対応をしていますが、そもそも冷房完備である体育館等の施設が、全体的に不足している状況があり、対応にも限界があり、皆様、苦慮しているという声を聞きます。
 先ほどの話にもあったとおり、一番の安全策はスポーツをしないことになってしまいますが、そのようなわけにもいきません。その課題の中でいかにして、スポーツをしていくかを考えていますが、冷房付きの施設を増やすには巨額の予算が必要だったり、距離的なものは解決が困難だったりします。そのような課題が少しでも解決するよう、一助になれるよう、この検討会にも精いっぱい取り組みたいと思うので、よろしくお願いします。
 
【北村委員】 
 産業技術総合研究所の北村です。恐らく、この研究所の名前を聞いたことある方はあまりいないと思いますが、経済産業省傘下の国立研究所です。その中で私は子どもの事故予防や高齢者の事故予防という観点でずっと研究をしています。特に子どもの事故に関しては学校の体育や部活動での事故について、予防の取り組みをしています。具体的には事故データの統計の分析をしたり、場合によっては学校と連携をして、子どものスポーツ中の動きなどをデータ化して、どのような条件で事故が発生しているのかを解析をしたりして、対策を提案するという研究をしています。
 そのような活動をしていく中で難しいと思うことは、いい対策法ができたとしても、いろいろな理由で広まらなかったり、活用されなかったりする場面があることです。それはスポーツに関わる、いろいろな仕組みが関連していると思っています。例えば、野球ではイレギュラーのバウンドでボールが目にぶつかって、失明するという事故があります。一方で、スポーツ中に使える、保護をする、眼鏡のようなもので対策できることが分かってきています。製品側としては、スポーツ製品にも付いているSGマークという安全な製品を示すマークがあり、あちらもスポーツ用眼鏡に(****カンシャ@01:04:50)できましたが、実際に、練習中にそれを使うかというと、なかなか広まりません。聞いてみると、大会や公式の試合では付けてはいけないルールになっているので、練習中に使っていたとしても本番では使えないので広まりません。先ほどのプールでの飛び込みも、実は同じことが学校で起きていて、授業中は禁止になっているのでしませんが、地域の大会等に出るときは飛び込まなければならないので、放課後の練習中には飛び込ませていて、事故が起きるという、アンバランスなことが起きています。
 それ以外の部分に関しても、いい対策や危険性を伝えられたとしても、仕組み上や予算面の理由等でできないことが多いです。ですので、今回のガイドラインも誰向きかを明らかにする必要があり、その対象の人がそれを見たときに、実際にアクションを取れるようなものになっているかが大事です。大事なことは書いてあるけれども、実際にはどのようにするかしか書いていないと、その先にはつながらないので、そこが大事だと思っています。
 先ほどの川原先生の話にもあったとおり、私も非常に大事だと思っていることは、事故のデータ等、課題のデータをしっかり分析して、アクションを取り、実際に対策をしてみて、それを評価し、結果がよかったかどうかという、ループを回すという仕組みが、現在は個別に小さくはあると思いますが、全体を通してそれを行う仕組みがないことが難しいところだと思っています。先ほど川原先生の話にもあったように、分野は違いますが、交通事故の分野では交通事故のデータがしっかりデータ化されて、警察がかなり詳しいデータを記録して、対策を検討し、実際に実施して、かなり事故の件数が減ってきています。スポーツの分野に関しても、事故のデータを一元的に管理して、分析して、対策を検討し、検証するというループを全体として回せるような機関があることが大事です。私はこの中では専門分野が違うと思いますので、そこの知見をうまく提供しながら検討できればと思っています。よろしくお願いします。
 
【栗山委員】 
 弁護士の栗山です。私は運動・スポーツ中の事故が実際に起きてしまった後の初動対応や事故対応、あるいは実際に裁判になったケースの代理人となったり、実際に問題になった運動・スポーツ中の事故の内容を纏めたガイドラインやマニュアルを作成したりするなどの仕事をしています。北村委員からもお話があったように、今後、ガイドラインを作成するに当たり、実際にアクションを取れるガイドラインが必要だと考えます。
そのため、今回作成するガイドラインについて医科学の専門家の方々の御意見も踏まえつつどこまでを射程範囲とするのかをこのスタートのタイミングである程度決めた上で進めるのが良いと思っています。
 というのも、資料2の4ページには「国としてスポーツ安全に関する包括的なガイドラインを作成する」という記載がありますが、これはかなり広い範囲の話です。他方で、資料1設置要項「1.趣旨」では、「運動・スポーツ中の事故防止の対策を包括的に求めるガイドライン」という記載があります。これらの記載から、「包括的な」ガイドラインの作成が必要であるという背景があって本検討会が設置されたと考えますが、その中で、先ほども話がありました、暴力、暴言、ハラスメント、ドーピング等まで射程に入れるとすると、相当広範なガイドラインになると思いました。どういったものをガイドラインの対象に含めるか、含めないかという御議論も必要かと思いますし、含めるとしてもそのバランスも考えなければいけないと思います。また、男性、女性、障害者、さらには子どもからプロアスリート、高齢者等、誰に向けたガイドラインとするのかも御議論が必要と考えます。運動・スポーツ中の事故を起こさない部分にフォーカスしていくのか、もう少し広げていくのか、また、ガイドラインの対象者を誰にするのかなどは、最初に整理をするのが良いと考えています。また、ガイドラインの内容についても、事故を起こさないという部分にフォーカスしていくのか、それとも、実際に安全が脅かされてしまった後の責任の所在や事故発生後の対応や保険、補償といった点にもフォーカスしていくのかも明確にした上でガイドラインの策定に入るのが良いかと考えます。
 2点目として、特に子どもの運動・スポーツ中の安全に関わる問題で、先ほど部活動の地域展開の話も出ていましたが、今後子どもの安全に対して責任を負う主体が地域に移る中で運動やスポーツがなされていくことが予想される中で、ガイドラインを作成するにあたっては、部活動の地域展開も考慮しなければならないと考えています。いろいろなクラブに所属する子どもが、同日に複数のクラブで激しい運動をしたときに、果たして、いずれのクラブがこどもが激しい運動をしてきたことを把握して安全確保を図るのでしょうか。その際クラブ同士の情報連携等の問題も考える必要があるのではないでしょうか。
いずれにしても、他にもう1名の弁護士の先生がいらっしゃいますけれども、法的な部分やガイドライン、マニュアルの作成経験から、少しでも皆様のお役に立てればと思っています。どうぞよろしくお願いします。
 
【小菅委員】
 日本スポーツ施設協会の小菅です。当協会は法人名称の示すとおり「体育・スポーツ施設の充実及びその効果的な運営の促進を図る」という、体育・スポーツ施設に特化した観点からスポーツの振興・推進に寄与することを目的とした法人です。4つに区分した公益事業と2つに区分した収益事業を行っています。
施設の安全確保に関連する事業としては、安全で快適なスポーツ活動の推進者を養成する事業を行っています。具体的には、プール施設の安全管理や事故防止及び指導を行う「水泳指導管理士」、スポーツ施設のリスク管理やトレーニング指導を行う「トレーニング指導士」、屋内・屋外施設を問わずスポーツ施設全般の維持管理を行う「スポーツ施設管理士」、スポーツ施設全般のマネジメントを行う「スポーツ施設運営士」、日本スポーツ協会との共同認定で、地域スポーツクラブ等においてフィットネスの維持向上のための指導助言を行う「スポーツプログラマー」、また、CPR&AEDの取扱や外傷、熱中症、環境障害及び酸素救急法の対応等の知識を有し、施設利用者の不測の事故等の発生時に迅速的確に対応できる「スポーツ救急員公認インストラクター」養成などがあります。運動・スポーツに関する指導者というより、施設の維持管理運営者として、安全安心で持続可能なスポーツ施設づくりのための資格者養成が主であるといえます。
スポーツ施設は、健康の保持増進、美容や痩身のため、アスリートとして更なる競技力向上を目指すなど利用目的は様々ですが、いずれの場合でも通常より心拍数も上昇し、また事故発生の蓋然性が高い場所といえます。運動・スポーツによる事故には様々な要因が考えられますが、文科省・国交省策定による指針や消費者安全調査委員会の報告書で紹介されているように、プールの排水設備等に起因する事故や体育館のフローリングの劣化等に起因する事故など、施設の瑕疵、安全管理不足など、外部要因に起因する重大事故が残念ながら繰返し発生しています。健康の維持増進を図る目的の場で生命を危険にさらしてはなりませんし、トップアスリートを目指す目的の場で選手生命を失ったり、生命まで失うようなことは絶対にあってはなりません。そのような観点から多様な施設の安全管理の内容を講習内容に取入れています。
先ほど川原先生の話を聞き、関連することを思い出しました。私は以前、災害共済給付事業に携わっていたことがあります。学校の管理下では、自損事故による医療費件数が大多数を占めています。昭和57年頃の加入者は2,600万人ほどでした。昭和58年には学校の管理下での死亡見舞金給付件数が過去最多の295件、昭和56年に障害見舞金給付件数が過去最多の1,625件であったと記憶しています。それが平成の元号改正とともに、死亡件数は100件を下回り、令和5年度のデータでは、死亡見舞金給付件数が36件、障害見舞金給付件数が308件ということです。児童生徒等の減少により、現在の加入者数が1,600万人を下回り、当時から1,000万人減少していますが、死亡、障害といった重大事故の発生は児童生徒等の減少率よりもはるかに下回っています。これは、AEDの普及や重大事故を防止するという観点からの取組の表れではないかと思います。
事故を恐れるあまり精神身体にとって有用な運動・スポーツの実施に対して消極的になってはなりません。国立スポーツ科学センターの関係者もいらっしゃいます。スポーツ施設、設備、用器具等による外部要因に起因する事故以外の運動スポーツ実施者自身の内的要因に基づく事故防止に関して、医科学情報に基づくトップアスリートのサポートを通じて得た知見を活用した安全確保策に期待するところがあります。長くなりますのでこのへんで終わりにしたいと思います。
 
【斉木委員】 
 日本スポーツ振興センター災害共済給付事業部の斉木です。よろしくお願いします。先ほど小菅委員から災害共済給付に関する詳細なご説明がありましたので、重複を避けつつ補足し、私たちの業務についても伝えられればと思います。私たちの、事業部の名前のとおり、私がしている業務は災害共済給付制度の運営と、その災害共済給付で得られた事故情報を活用し、学校の関係者に事故防止情報の提供を行っています。そもそも、私たちが行っている災害共済給付制度は、日本スポーツ振興センターと学校等の設置者と契約を締結し、学校の管理下で発生する、児童・生徒の負傷、疾病や障害、死亡等の災害について、災害共済給付を行う仕組みです。
 この災害共済給付制度は医療機関でかかった費用の医療費や、怪我をして、最終的に後遺症が残った場合、等級的には1級から14級の分別があり、その障害の程度によって、障害見舞金を給付し、さらに亡くなった場合には死亡見舞金を給付する制度です。私たちの制度に加入できる学校種は幼稚園、幼保連携型認定こども園、小中学校の義務教育、高等学校、高等専門学校、高等専修学校、保育所等ですので、私たちの持っている情報のフィールドは子どもが中心です。年間加入者数は令和5年度の実績では1575万人で、災害給付は年間約80万件です。
 その中でも私たちがデータを集計してみると、やはり、体育活動中の事故が一番多く、分類すると、運動部活動が多いです。その他は、学校では体育を行っていますので、体育での事故も多いです。その部活動にクローズアップし、掘り下げると、運動部活動が11万件で体育による事故は7万件です。体育でも同じような傾向ですが、その部活動の中でも小中学校の部活動では球技が一番多く、球技の中でもバスケットボール、サッカー、バレーボール、野球が多い傾向です。このようなデータを事故防止のために各学校に情報提供していますが、私たちとしても、気持ちは皆様と一緒です。少しでもスポーツを実施する子どもや大人の痛ましい事故を減らしていきたいと考えています。
 先ほど突然死の話題も出ましたが、私たちとしても、体育の授業中や部活動中の突然死は、AEDが普及したとしても、まだまだ発生しています。私たちは有識者を募り、事故防止調査研究委員会を立ち上げ、事故防止の啓発資料を各学校に提供しています。その有識者の知見を生かした事故防止情報を学校現場に周知し、1人でも子どもを救っていくことが私たちに課せられている命題だと思っています。今回は子どもの事故にかかわらず、社会人や高齢者もターゲットにしていくのかもしれませんが、その中で私たちがつかんでいる事故防止情報を共有し、力を発揮していきたいと考えています。以上です。
 
【下光委員】 
 健康・体力づくり事業財団の下光です。私たちの財団は健康運動指導士という運動指導者を養成する団体です。全国に4万人ほどいて、主に健康増進施設やスポーツジムで働いています。ただ、指導の対象となる人たちは中高年で、リスクのある人たちに対する運動指導が多く、これまで、カリキュラムも救急処置とメディカルチェックについて、しっかり教えてきました。きょうの議題の中にあるような、スポーツ全体の安全確保対策や運動・スポーツ中に発生する様々な問題等について、カリキュラムの中に取り入れられていないこともあり、今回は勉強させていただき、取り込んでいきたいと思います。
 私は大学に勤めていたときは、循環器内科と公衆衛生に携わっており、過激な運動・スポーツのメディカルチェックや研究をしていました。皆様が知っているトライアスロンレースはフルトライアスロンでスイムが3.2キロメートル、自転車が160キロメートル、その後にフルマラソンを行います。朝にスタートをして、夕方以降にゴールする過酷なレースです。そのようなレースに趣味で参加する方々が増えています。本当のアスリートが参加するのはいいのですが、趣味で参加する方たちには医者や弁護士が多く、過酷なレースに出て、死亡事故が起こっています。特にスイムで亡くなることが多いです。
 この過酷なレースがエスカレートし、フルトライアスロンが2倍になったダブルアイアンマントライアスロン、最後は10倍ほどになったデカスロンという、毎日、泳ぎ続けたり、走り続けたりするレースがあります。また、有名なものはスパルタスロンといって、アテネからスパルタまで250キロメートルを走り続けるものがあります。これもメディカルの人たちが付かず、1人で走ります。そのような過酷なレースをすると、生体内のいろいろな酵素が、心筋梗塞の何倍もの酵素が体の中に出てきます。ゴール時には脱水状態で立っていられません。走っているときは足が動いていますから、ポンプ作用があり、血が心臓まで行きますが、走り終わって、インタビューなどを立って行うと、皆、失神してしまいます。分かっている人は寝転んで、足を上げてインタビューを受けます。そして、そのまま、1リットルから2リットルの水分補給をします。そうすることで皆様、元気になり、帰っていきます。そのような過酷なスポーツがあり、自分はどのようになってもいいという人たちがいます。そこまでこの検討会で検討するかは皆様の考えを聞きたいと思いますが、そのような経験もありますので、何か参考になればと考えています。よろしくお願いします。
 
【祐末委員】 
 神戸親和大学の祐末です。このような会に参加することは初めてなので非常に緊張しています。私は専門が医科学というわけではなく、前職の都道府県スポーツ協会で総合型地域スポーツクラブを育成する仕事に10年間、携わっていました。今回はこのような安全確保のガイドラインの話に参加させていただいていますが、総合型や地域のスポーツクラブは日本スポーツ協会やスポーツ安全協会がかなりの回数の研修をしているため、意識は高くなってきています。しかし、現場がほぼ小学校や中学校の体育館やグラウンドを活用する地域スポーツという中で、運営は自治で行うことが少しずつ日本でも定着してきていますが、管理という面では自治の中で行うことが非常に難しいことを痛感しています。
 具体的には、現在、小学校も体育館に冷風機やスポットクーラー等が入っていますが、そのスイッチを押すことはクラブに任されている状態です。危険数値は出ていますが、そこに金銭が発生したときに、クラブがどの時点でスポットクーラーのスイッチを入れるかを決めることは判断が難しいです。運動を実施させる、マネジメントするところと管理するところは分けて考えなければいけないと思います。公共施設であれば、指定管理者がマネジメントを行いますが、小学校や中学校は使う主体がそこも担います。今回のガイドラインを作成し、そのガイドラインを地域に落とし込むときに、管理することも同時に考えられると、実際にリスクマネジメントが生きてくると感じています。専門的な知識というよりは現場について、こちらで貢献できればと考えていますので、これからよろしくお願いします。
 
【田口委員】 
 日本トップリーグ連携機構です。私たちの団体は12リーグの、団体ボールスポーツ競技を束ねている組織です。プロ野球以外の団体スポーツが全て、加盟しています。今回の安全確保対策に関する検討会には専門分野の方がたくさんいるので、そのような部分については皆様のほうが見識は高いでしょう。競技団体側の、特にトップアスリートを抱えている立場で、現在、私たちはトップアスリートが子ども時代にどのような運動遊びをしていたかを、1000名以上のトップアスリートにアンケートを採り、この夏のスポーツ学会で発表する予定です。
 現在の子どもたちがどのような環境に置かれているのかを様々なところでもっと研究するべきではないかと思っています。私たちはボールゲームフェスタという、全国の子どもたちに運動する機会を与えるイベントを毎年全国40カ所で行っています。もう10年になりますので、500カ所以上の市町村に行っています。その中でよくあるのは考えられないような怪我です。手が付けない、ボールが顔に当たってしまい、鼻血が出る、歯が折れるなど、そのようなことが多くあります。これは、親も幼少期の子どもを遊ばせる方法や運動させる方法も知らないために、このようなことが起こるのではないかと考えます。また、このようなガイドラインがあり、怪我が少なくなったといいますが、実を言うと、子どもたちがそのような体験をする機会がなくなっています。ですので、先ほども話があったように、危ないことをしていないので、これ以上すると、怪我をすると分からないから怪我をしてしまいます。このようなことをどのように行うかを考えなければ、ガイドラインを作っただけでは難しいと思います。先ほど資料を見て、ガイドラインやマニュアルがこれほどたくさんあることは知らなかったのですが、これほどのものがあれば、まさに何もいらないのではないかと思うほどです。けれども、まだ起きていることを考えると、違った観点が必要なのではないかと、トップリーグの組織にいながら感じます。
 それから、自分もサッカーをずっとしてきたので分かるのですが、先ほど室伏長官が言っていたように、体育の世界からするとお金がかからない、スポーツをすることは無料だという時代から、受益者負担で安全のところにも何かしら利用者が負担をするような時代をつくらなければならないのではないでしょうか。公共や自治体がそこを担っていたら、疲弊してしまい、運動はしないほうがいいという結論になってしまいます。このように、様々な方向性で勉強しながら、私たちはトップアスリートを抱えていて、トップアスリートが持っているのは唯一、プロパガンダの力だと思いますので、選手たちがそのようなことを発信できるような仕掛けを皆様と一緒に研究できればと思っています。今後もよろしくお願いします。
 
【長澤委員】 
 スポーツ安全協会の長澤です。よろしくお願いします。当協会はスポーツ等の活動の普及、奨励、活動中の安全確保、そして、各種事故に対処する、補償制度としてのスポーツ安全保険の運営を通じて、スポーツ活動等の普及振興に努めています。スポーツ安全保険は、文化活動も含めますが、スポーツ活動等を行う団体向けの保険制度で、団体での活動を中心に、安い掛け金で手厚い補償というキャッチフレーズで、提供しています。おかげさまで幅広い世代が利用しています。令和6年度は団体の数は約20万団体、加入者数は約774万人です。事故も先ほどの資料にもあったように、年間約17万件の事故が発生しています。私たちとしては、この膨大な加入データや事故データを活用して、事業の一つである安全に関する事業にも力を入れていますので、今回、声を掛けていただいたことは大変ありがたいと思っています。また、微力ながらも役に立てればと思っています。
 安全確保に関して、まだまだですが、私たちが取り組んでいることを2点、御紹介します。一つはこの膨大な事故データと加入データを最新の技術を使い、いかに有効活用し、価値提供を行うかです。保険の加入手続きは、従来は紙での加入手続きでしたが、2年前にインターネットに統一し、リアルタイムで加入状況を把握できるようになりました。事故データは怪我をした方の年齢、性別、事故日、怪我の部位や症状、事故状況についてもデジタルデータで持っています。ただ、こちらの事故データについて、特に事故状況についてのテキストデータには精度に大きなばらつきがあります。これらを生成AIなのか、テキストマイニングなのかは分かりませんが、最新の技術を使いながら、より活用しやすくできないかと検討しています。
 2点目はパーソナライズというか、活動する個々人の属性やニーズに応じた価値提供ができないかと考えています。スポーツ安全保険は団体向けの保険ですので、加入の手続き自体は団体の代表者が取りまとめて行うため、一人一人の加入者には怪我がなければあまり接点がありません。このような情報のディストリビューションの課題に対して、個々人の加入者との接点を確保するツールとして、昨年の冬に、スポあんアプリというアプリを開発し、提供しています。個々人に対して、いろいろな情報提供ができないかを考え、進めつつ、スポあんアプリの普及を図っています。基本利用料は、スポーツ安全保険に加入している団体、および、加入者は無料で利用できます。このような取り組みを通じて、安全確保に関する有益な情報にタイムリーにコンタクトできるインフラづくりの一端を担えればと考えています。よろしくお願いします。
 
【中嶋委員】 
 国立スポーツ科学センタースポーツ医学研究部門の中嶋です。よろしくお願いします。トップアスリートの外傷、障害、あるいは疾病について、取り組んでいる組織ですので、非常に限られた世代の方々について、研究しています。その代わり、より細かく、診断や治療、あるいは、治療について、いかに早く回復するかなどに取り組んでいます。また、予防についても取り組んでいて、それらの効果を検証するためにはサーベイランスが必要で、近年、特に競技スポーツの中でサーベイランスの調査項目の標準化に向けた取り組みが盛んになっています。
 このような限られた世代、カテゴリーの中でも必要なことは、まず、集計です。サーベイランスを行い、その後、分析し、介入して、その効果を検証するというルートを回していくことが重要です。特に自動車事故に関しては、保険会社と警察で、かなり効果の検証ができていて、着実に成果も上がってきています。スポーツに関しても同じようなことがいえると思います。私たちはトップアスリートの外傷や障害がメインですが、ハイパフォーマンスからライフパフォーマンスへと、私たちのところで回している知見が広く生かされればと思っています。
 この中で常々感じていることは、知識と実践です。事故を予防するための知識は重要ですが、技能の実践という機会が損なわれていると、十分な効果が出ません。それがいわゆるスポーツの実施で、なぜ運動をしなければいけないかが非常に重要で、何のためにスポーツをするか、運動をするかがしっかりと国民に伝わることが必要です。現在は人生100年時代ですが、100年生きていく上で必要な運動機能と体力、習慣と併せて、知識を身に付け、その上で、実際にスポーツを実施する上で安全を担保することを伝えていく必要があります。スポーツ中の事故を防ぐことは大事ですが、できれば、なぜスポーツをするかも含めて話ができるといいと思っています。最近はスポーツを行う人、あるいは子どもたちのリテラシーも向上しているので、根性論だけではなく、理論もかなり浸透してきています。しっかりと正しい知識を身に付けることに貢献できればと思っています。よろしくお願いします。
 
【長島委員】 
 日本医師会常任理事の長島です。日本医師会は全国に17万7000人の会員を持ち、病院や診療所で医師として勤務しています。その中で地域においてはかかりつけ医や健康スポーツ医として、学校では学校医として、職域では産業医として、あるいは介護等、様々な場面で、まさに運動・スポーツ中の安全確保対策に直接的に関わっています。例えば、事故防止・安全確保という観点では、学校医や産業医が全体的な健康管理や環境管理に関わっています。また、地域におけるかかりつけ医は、特に最近は病気を持った方も様々な運動・スポーツをする機会がありますので、メディカルチェックを行い、リスクを踏まえて適切な指導を行うことが事故の予防につながります。
 さらには、地域で開催される、様々なスポーツイベントには、日本医師会の健康スポーツ医の多くが救護医として参加しています。まさに現場における初期対応に当たっています。加えて、当然ながら、地域の医療機関は実際に事故等が発生した場合の初期治療、および、その後の治療やリハビリテーション、全てに関わっています。その中で重要なことは、医学的な安全性や有効性について、しっかりと根拠があり、それに基づいて行われることです。その観点では、国によってしっかりとガイドラインが制定されれば、日本医師会はかかりつけ医や健康スポーツ医に対する研修を行うことや、様々な文書を送る仕組みを持っていますので、周知や研修に貢献できると思っています。
 最後に今後の検討の進め方ですか、まずは検討の前提について整理しなければ進めないと思っています。実態や事故の傾向、特徴を分析したり、現状で行われている取り組み状況、課題を整理したりすることが必要です。例えば、全体に共通する部分、基盤となる部分はどこなのか、あるいは、個別性が高いところはどこなのか、これらを踏まえなければ、どのような対策をするか、何を優先するかは考えられません。ただ、優先する場合には、例えば一つは頻度や絶対数、重症度や社会的影響度が大きいもので、もう一つは実現可能性等、そのような観点から優先順位を決めるべきと考えています。
  
【能瀬委員】 
 国立スポーツ科学センターで産婦人科医をしている能瀬です。私は競技レベル問わず、女性アスリートの診療、また、支援、研究等を行っていますので、専門を踏まえて、3点コメントします。
 1点目はガイドラインを作成するに当たって、男女の身体の特徴を考慮した指導、実施、そして、環境整備に関する文言の記載が必要だと感じています。女性は月経の有無、月経周期と障害の関連、妊娠・出産に伴う身体の変化を考慮したスポーツ実施が必要であり、性差を考慮した指導に関する記載が今後、問われるのではないかと思います。また、環境に関わる部分では、スポーツをするにあたり、授乳室の整備がされていない施設が多いです。また、これは男女問わず必要かと思いますが、託児室の整備もスポーツを行う上で安心に関わる点だと感じています。
 少し具体的な内容になりますが、2点目は診療をしていると過度な低体重や低栄養の方の運動に関する規定の必要性を感じます。先日、日本肥満学会が中心となり、6学会が合同で女性の低体重・低栄養症候群「FUS」という提言を出しました。また、国際競技連盟ではスポーツクライミングが積極的に行っていますが、IOCのREDs(relative energy deficiency in sport)の合同声明を基に、競技中の怪我や病気のリスクを評価するために、事前にBMI等を用いた、低体重の選手の参加基準を設け、アスリートの健康を守る取り組みをしています。アスリートの診療をしていると、競技レベルに関係なく、BMIが13や14の、本来なら入院レベルの選手がスポーツを続けているという現状を多く経験します。重要な選手ほど病識が乏しく、継続して通院をしないため、医療従事者がスポーツ参加を中止することが難しい状況です。一方で、現場では指導者がこのような選手を出場させてしまっていることから、スポーツ実施中の疾病、障害予防という観点で、FUSの提言が出たタイミングと合わせて、健康を守るために競技レベル、競技種目問わず同意が得られるようなレベルの極端な低体重・低栄養に関する規定も必要だと感じています。
 最後に、最も大事なことは自己管理と自然環境への対応、判断を促すような教育や指導が必要だと思います。自身の体力レベルや能力を自身が理解して、スポーツに関する自己管理を行うことや自然環境への対応や判断能力を養うような教育や指導が必要だと感じています。以上です。
 
【細川委員】 
 早稲田大学の細川です。私は資格背景としては米国の公認アスレチックトレーナーを保有しています。まさにスポーツ環境における安全安心は私の一番大事にしている研究分野の一つでもあるので、今回はこのような委員会に招いていただき、ありがたく思います。
 私の部門的な専門としては、主に労作性熱中症を取り扱うことが多いですが、熱中症に限らず、先ほどから何度か話題に上がった、脳振とうや、あるいは、急性心停止に対するcardiac emergencyです。私たちの業界では競技種目、競技レベル、競技をするコンテクストに限らず、Head、Heart、Heatと呼ばれる、命に関わるトリプルHは、基礎的な教育や、選手本人もそのような場面に直面したときにどのようなアクションを取るべきかなど、一般的な教養の底上げを図るべきだと思います。
 私は日本に帰国して7年が経ちますが、米国ではこのようなスポーツに関わるデータドリブンなルール変更やポリシーの変容を起こすことによって、実際に安全を担保することができるのかに注目して研究してきました。実際に予算や人材の制限があって、できないところに対して、私たちができることは、NFや、今回のスポーツ庁もそうですが、トップダウンの、スポーツの実施の在り方を示すことです。公式戦やトーナメントスケジュール等、マクロなスケジュール感や、このような時はスポーツができて、このような時はできないという、一番担保されなければいけない基本の安全基準がスポーツの実施の在り方としてトップから出ていれば、学校やチームクラブはそれに合わせて練習やトレーニングを積みます。ですから、現在あるデータに基づき、リスクを明らかにすることが必要です。
 また、そのリスクに傾向が見られるのであれば、熱中症のトピックでは大変分かりやすいですが、公式戦を実施すべきではない時期が今後、日本でもあるのかもしれないという話や、それを実現するために追加でどのようなリソースを確保すれば、安全を担保できるのかなど、その辺りのエビデンスは、エリートレベルの競技者においては暑くても競技をしているという実態が実際にあります。データも豊富にありますので、それを一般の様々なレベルで、どこまで落とし込むことが可能なのかを今後、皆様と具体的に議論することができたら、室伏長官が言うような、データに基づいた更なるアップデートが様々な健康被害というか、私たちが関心を持っている重篤障害になり得る、外傷、障害について、応用できるのではないかと思っています。
 今後の会議の進め方として、先ほどから他の委員の言っていたことにも強く共感しますが、もう1点、忘れてはいけないことは、実装の起点となる方が誰なのかについても、併せて考える必要があります。学校現場で教員に任せることが実現可能なのか、指導者のレベルはどうなのか、保護者は取り組む必要があるのか、アスリート本人にできることはあるのか、場所や競技レベルによって様々だと思います。海外の事例では、全ての運動部活生は部活に参加するに当たって、このような教育を毎年受けなければ、参加名簿に載ることができないなど、整備がされています。米国では脳振とう教育や熱中症教育が義務付けられている州もあるほどです。誰に何を教育して、誰に何を実装させ、具体的なものが必要なのか、それともトップダウンの制度改正で、そもそもそのような時期にスポーツをしないことを規定するのか、いろいろな形はあると思いますが、いずれにしても、それぞれのあるべき姿を実装するにあたり、どのステークホルダーの協力が必要なのかも合わせて議論しなければ、理想論で止まってしまう懸念があります。そちらについても、皆様と議論できればと思っています。以上です。
 
【本間委員】 
 MS&ADインターリスク総研株式会社の本間です。よろしくお願いします。当社はMS&ADとあるように、三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保の保険会社のグループ企業です。当社はコンサルティング会社としては、保険事故の防止ということで、分かりやすく言うと、自動車事故の防止、労災事故の防止、事前の事故防止予防活動と、事故が起きた後の再発防止を行っています。その中の一つとして、スポーツ事故の防止、またはスポーツ施設利用者の事故防止も行っています。このような経験に基づき、資料2の3ページにある、左上の二つ目の、JSPOが出している『スポーツリスクマネジメントの実践』でこれまでの実務経験を取りまとめています。
 スポーツ事故の現状を考えるときにはデータを見ることが極めて重要です。スポーツ安全保険のデータを、分母を契約者数、分子を事故の発生件数として見ると、2パーセントほどで推移していて、直近は若干ながら、増えています。このような状況は危機的な状況と考えていますので、このような取り組みで、少しでもこの数値を減らすことが実現できればと考えています。
 スポーツ事故の防止は、他の事故防止と比べて、非常に複雑です。大きな要因としては、事故防止はソフト面やハード面が大きな事故防止の要素ですが、スポーツではこれに加えて、天候という要素があります。さらには、このソフト面、ハード面について、ソフト面は主に動きの面で、他の委員からも話があったように、種目ごとの特徴やスキル、年齢、体調等、様々な要因を考える必要があります。また、ハード面についても、競技ごとに施設が異なります。例えば、体育館、プール、道場、競技場等、いろいろな形態があります。その上に、老朽化や破損の状況、構造面、それから、動線が不適切、管理面等の要素もあります。天候面でも、気温や湿度、さらには雷、いろいろな面がありますので、このような様々な要素を体系的にまとめて、全てのスポーツに当てはまるようなマニュアルができたらとも考えています。
 いろいろな現場のコンサルティングも行っていますが、現場から見ると、皆様の御意見にもあるとおり、どうしてもスポーツを行う上で、事故防止は後順位になっていると思います。また、施設面についても、不具合がそのままになっている状況も見受けられますので、このようなところを改善できたらと思っています。以上を踏まえ、この委員会で最初に不可欠なことはデータの整備、分析です。事故の要因を体系化した上で、これに基づいて、シンプルなガイドラインと、それからこれを広く周知することが必要です。さらに、多くの人にこれを実践してもらい、先ほどの2パーセントという数字が明らかに減るような状況に繋がればと思っています。以上です。よろしくお願いします。
 
【三上委員】 
 日本パラスポーツ協会の三上です。平素より、障がい者のスポーツに理解をいただき、ありがとうございます。私たち、日本パラスポーツ協会には内部組織として、日本パラリンピック委員会があります。そのため、パラリンピックでメダルを取るための競技力向上の事業と、地域での障がい者のスポーツの普及拡大という、二つの視点で業務を進めており、今回の検討会のテーマでもある、運動・スポーツ中の安全確保という、運動レベルからトップスポーツまで幅広い対象の中で業務を行っています。今回の検討会のテーマをどのレベルで絞っていくのかという論点もあると思いますが、私も検討会で決めた中で対応していければと思っています。また、障がいといっても、身体障がい、知的障がい、精神障がい等様々で、さらに、今回の対象者を年齢的にもどのようにするかを考えると、非常に幅広くなっていきます。ですので、フォーカスポイントか決まった段階で、私たちもそこについて、できる範囲の資料を提供できればと考えています。
 とはいえ、私たちは統括団体で、日々、障がいのある方と向かい合っているわけではありませんので、それほどデータが揃っているかというと、そうではありません。これを機に、私たちの登録団体にも協力してもらい、日々の現場で起きている小さな物事も拾っていければと考えています。今回のガイドライン作成後には、色々なステークホルダーの方々にそれを知ってもらい、実践してもらうという長いスパンで考えたいと思っていますので、よろしくお願いします。
 
【村上委員】 
 桃山学院大学の村上です。よろしくお願いします。専門は安全教育、学校安全、危機管理です。先ほども話があったように、文部科学省が作成した危機管理マニュアルの手引の策定や、コロナ禍に中央競技団体(NF)がガイドラインを作った際にボクシングのガイドラインの策定にも携わりました。
 私の専門である学校安全の視点から話をいたします。文部科学省から第3次学校安全の推進計画が出ていますが、その中には危機管理マニュアルの見直しや学校安全計画の見直しが記され、それについて、実効性のあるものにしっかりとしなさいと示されています。すなわち、このガイドラインが策定された後に、どのような形でより実効性のあるものにしていくのか、また、いかに教育現場に落とし込んでいくかが重要な視点であると考えます。
 先ほど笠原委員からも話があったように、危機管理マニュアルに関して、防犯や防災については各学校でしっかりと作られていますが、スポーツ場面ではなかなか難しい部分があります。一方でこの危機管理マニュアルに全て頼るわけではなく、やはり、状況に応じて適切に且つ,臨機応変に対応しなければいけないという視点も持ちながら進めることが必要だと考えています。
 さらに、危機管理の視点で考えると、「ヒヤリハット」があります。ハインリッヒの法則では1対29対300といわれ、300件のヒヤリハットに対して、29件の軽微な事故や事件があって、1件の重大事故、事件が起こるとされています。難しいかもしれませんが、公表されている数値は実際に起こった数値です。その中に起こらなかったけれども、ギリギリで助かったことが多々あると思います。そのようなことを「見える化」することで予防につなげるこも考えなければなりません.これまでの説明はハード面でしたが、ソフト面も重要です。自分の命は自分で守ることが安全教育の基本です。このことから、子どもの危機察知能力、危機回避能力を高めることが必要であり、自分自身で判断できるような教育や指導が必要です。
 また、私自身は日本バスケットボール協会のユース育成部会で、小学生や中学生をメインとした育成に携わっています。少子化の中で子どもが減っていますので、子どものスポーツ離れをなくすという観点から、野球、サッカー、ハンドボール、バレーボール等、多くの種目と競技間連携を取りながら、スポーツの価値を高めることも、これからは考えていくべきでしょう。室伏長官の、「包括的」という言葉は、そのような意味で仰っているのではないかと考えています。
 また、室伏長官も触れられたインテグリティーの問題があります。2012年に高校のバスケットボール部で暴力により生徒が自害した事件がありました。それから10年が経ったことで、JBA(日本バスケットボール協会)では私が中心になり、小学生の保護者に対して、暴言、暴力のアンケートを行いました。具体的には、「あなたのコーチは暴力がありますか」、「暴言がありますか」などを調査しました。40項目以上の質問があり、その中には「暴言暴力があった場合にコーチに訴えることができますか」など環境面に関する質問もありました。この調査を2021年と2024年に行いました。ここで言うのも大変恥ずかしい話ですが、20254年度のアンケート結果では10パーセント未満は、まだ「暴力がある」という回答でした。また、暴言の定義は難しいですが、暴言に関しても約30パーセントは、まだ「ある」と回答されました。子どもの命を守ることや素晴らしいスポーツ環境を整えることに関しては、広範囲となりますが、暴言暴力などこれまでも大きな問題になっていても減っていない現状を考えると、更に啓発などに取り組んでいかなければいけない大きな課題だと考えています。
 先ほども、話しましたように、少子化で子どもが減り、且つスポーツ離れがある中で、スポーツは、安全に、安心に行われるというクリーンなイメージを私たちが発信するかも重要です。このガイドラインの策定をした上で、子どもたちが安心安全に活動ができて、スポーツの価値が見直されることが、このガイドラインの大きなポイントと考えます。そして、作成されたガイドラインをいかに落とし込むかも大事です。作成しただけで終わらず、いかに落とし込むかという視点も踏まえながら、議論ができればと考えています。
 
【山田委員】 
 東北大学の山田陽介です。よろしくお願いします。私は医工学研究科と医学部医学科生を教育する医学系研究科の運動学分野で教員をしています。私自身は体育教員で、医師ではありませんが、医師や医療従事者に対して、スポーツで起こり得る事故や怪我をどのように防いでいくかを授業で教えています。
 授業でも伝えていますが、スポーツをしないことが一番安全なのではないかと多くの人が言います。スポーツをしないことが人の体にとって安全なのかを考えたときに、例えば、コロナで全くスポーツをしなかったことによって、体が弱い状態になり、脆弱性が発生します。実際にその後の日常生活での疲労骨折や腰痛の発症がどのように変わるかを追った場合には、スポーツをしている人のほうが、単純に生命予後として考えた段階においても予後がいいのです。一方で、スポーツのオーバーユースによる骨折や色々な障害もあり、重度の障害に至るような事例も多いです。そこは注視していかなければいけない点で、このような検討会が開かれ、これまで以上にそのようなことを予防することは非常に有効です。
 他方で、スポーツをしなければいいという論調は違うのではないか、スポーツをすることによって、体が作られ、日常を安全に生活できるという点も、本来はスポーツの持っている重要な要素です。そのようなエビデンスも同時に出す必要があるのではないでしょうか。先ほどの御説明で、飛び込みを指導しなくなった結果として、どこで飛び込んで、どのような事故が起こっているか分からないという事例がありました。極端な話ですが、水泳の授業がなくなったら、水難事故が恐らく増えるでしょう。ここでは運動・スポーツ中の安全確保対策ではありますが、そこには出てこない水難事故や山岳での事故、あるいは、その他の事故が潜在的に増えていくのではないでしょうか。もしくはスポーツをしなくなることによって、高齢期の障害も起こりやすくなります。そのようなことを私たちの検討会から発信できることも、もう一つの重要なミッションではないかと思いました。
 医学の分野ではヘルスプロモーションという大事な言葉があります。それと同時に、多くの方があまり意識しない言葉でセーフティープロモーションという言葉もあります。健康的な生活を送るためにはヘルスをプロモーションするだけではなく、セーフティーもプロモーションする必要があるという、WHO発信の言葉です。その両方をいかに達成するかが大事です。スポーツの観点で言うと、パフォーマンスをプロモートする観点と、セーフティーをプロモートするという観点の両方で指導が行われなければいけません。また、選手がいかに自分の体を自己管理しなければいけないかが非常に大事です。私はそこをサイエンスで解決したいと思っていますが、私自身は疫学の分野で活動し、実際に調査もたくさんしてきました。どのような食事をしている人が長生きするかなどの調査もしています。
 さらに、スポーツ選手の疫学を最近、志しています。例えば、高校の部活動生を何千人と調査したときにオーバーユースによる疲労骨折等は、運動の時間強度以外に、栄養も調査しました。その結果、大きな要因は運動の時間や強度で、それが高いとオーバーユースとして、疲労骨折は当然に出てきます。競技レベルが市のレベルなのか、県のレベルなのか、あるいはインターハイのレベルなのかでは、インターハイレベルの選手のほうが疲労骨折の頻度は高いです。また、男女によって機序が違い、女性は特定の栄養素が足りない、あるいは、食べないことで疲労骨折を生み出していました。男性は全く違うところで、必要な栄養素がありました。調査をしなければ分からない部分が多くあると感じています。
 先生方の話を聞いていて、医学系の疫学ではしっかりとしたエンドポイントが取れるかが大事なポイントだと思いました。先生方の中で、例えば、災害共済給付をするときや、スポーツ安全協会で、病気だけではなく、怪我や疾病全てに対して、支払いを行うタイミングで、必ず、詳細なデータが出ることを考えると、その人たちにベースラインとして、どのようなことをしているかを聞き取りができるのではないかと考えています。例えば、最近の医学では特定健診のデータとその人の使った医療費等を組み合わせて、分析が行われているのですが、そのようなベースラインのメディカルチェックやフィジカルチェック、あるいはアンケートでも非常に面白い調査ができると思います。そのようなアンケート調査を行い、その結果として、その1年以内に怪我がどのように発生するのか、あるいは、3年以内、5年以内ではどのように発生するかを検討することによって、サイエンス的なエビデンスが、この検討会のワーキングの形でできるのではないかと思いました。私としてはそのようなことをこの検討会を通じてできればと思っていますので、ぜひ、皆様と一緒に勉強させてください。よろしくお願いします。
 
【中村健康スポーツ課長】 
 いろいろな参考になる、積極的な御意見がありました。ご意見を踏まえて、共通する課題やターゲットについて、整理させていただきます。最後に室伏長官からコメントをお願いします。
 
【室伏スポーツ庁長官】 
 山田先生が究極的なことを話していました。今回の会議は運動・スポーツ中のことではありますが、なぜ、スポーツをするのか、安全のためならしなければいいのではないかという御意見があります。私たち、スポーツ関係者はそのようなことはないだろうと思いますが、本当にさせない人がいます。これは大問題で、しないことの問題はひそかに危機が来ますので、川原先生が集計した以外のものはメンタル面も含めて、その人の生涯にわたり、影響を及ぼすことが必ずあると考えています。オーバーユースや突発的なもの等、いろいろなことがありますが、スポーツをしないことでどのようなことが起こるかが根本になければ、必ず、その御議論に戻ってしまいます。最後にそこをピン留めしてもらったので、そこはきちんと受け止めていきたいと思います。
 暴力、ハラスメントの点では、村上先生がバスケットボール協会で何回も調査し、指導者のみならず、生徒やアスリート、若い方にも調査をしていくという姿勢は大変重要です。スポーツを守っていく上で、自身の襟を正していくことに結び付かなければ、これは達成できません。時間がたつと薄まっていく案件を、このように調査をして、継続していることは素晴らしいと思います。いろいろな御意見があり、どこからどこまでかということはありますが、シンプルにしようとすると整理され、むしろ、区切ろうとすると増えてくることもあると思います。例えば、事故のデータと競技力は絶対に関係がないのかといったら、絶対にあると思います。その辺りはサイエンティストの先生方にも聞きたいところです。競技力の向上のデータと怪我をするかどうかは、一致しているものもあるでしょう。そのようなものも今後の検討案件になると思いますので、アドバイスをよろしくお願いします。
 最近、オーストラリアではアンチドーピング機構を基に、政府直轄でスポーツ・インテグリティ・オーストラリアが2020年に設立されました。スポーツの安全をいかに守っていくかという組織で、世界的にもただ競技力を向上するだけではなく、それぞれの人のウェルビーイングをどのように保っていくかに焦点が当てられていることを考えると、私たちもそのような組織化が将来、必要になってくるかもしれません。今回、先生方に御議論してもらうことによって、そのような可能性も出てくるのかもしれないと思いました。
 受ける側のアウェアネスを高めるという話もありました。学校体育現場も含めて、若い人たちにただ競技をするだけではなく、いかにして体の機能を高めるか、生理学的、運動学的な理解をした上でどのように高めていくかなどを徹底して指導しているのか、あとは解剖学的なものや生理学的なもの、運動学的なものをなしに、スポーツだけをしてはいないか、また、自分で判断して考える、自己調整能力をそれぞれが持つように指導しなければいけないというセルフアウェアネス、そして、何よりも中嶋さんがJISSで研究している、ハイパフォーマンスからライフパフォーマンスという、極限で活動しているアスリートの知見が安全にも役立つことが多くあります。世界的なルール、IFのルール、競技団体のルールも常にメディカルのトップの人たちが御議論し、選手の安全を守ることを考えていますので、このような知見も世界基準から考えていくことができると思います。この辺りも御議論して進めていきたいと考えています。いずれにせよ、多岐にわたり、素晴らしい御意見がありました。引き続きよろしくお願いします。
 
【中村健康スポーツ課長】 
 次回以降、整理しながら御議論を進めたいと思います。本日の会議はこれで終了します。最後に事務局から御連絡事項をお願いします。
 
【事務局】 
 本日は会議に御出席いただき、ありがとうございます。本検討会はこれで終了します。なお、第2回の検討会は7月28日月曜日15時に開催します。追って、正式に御連絡しますので、第2回検討会でもよろしくお願いします。
 

お問合せ先

スポーツ庁健康スポーツ課
TEL:03-5253-4111(内線:2684)

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