地域におけるスポーツ医・科学支援の在り方に関する検討会議(第3回)議事要旨

1.日時

令和4年8月5日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省16階16F3会議室 及び オンライン

3.議題

  1. 第2回検討会議の総括
  2. 地域におけるスポーツ医・科学支援の実施体制の在り方について

4.出席者

委員

岩渕健輔委員、片寄正樹委員、久木留毅委員、久保潤二郎委員、鈴木岳委員、田口亜希委員、竹内章委員、角田正史委員、鶴英樹委員、土肥美智子委員、平野裕一座長、細川由梨委員、
増田和伯委員、馬渕博行委員、三井利仁委員、森岡裕策委員

文部科学省

室伏スポーツ庁長官、角田スポーツ庁次長、星野スポーツ庁審議官、西川競技スポーツ課長、筒井競技スポーツ課課長補佐

5. 議事要旨

(1)第2回検討会議の総括

 第2回検討会議で挙げられた意見をもとに、資料1のとおり、事務局により検討事項に関する基本的な考え方が整理され、それに基づき意見交換がなされた。

検討事項1  地域におけるスポーツ医・科学支援機能の在り方について

・基本的な考え方において、健康で安全に活動することという「安全」に関する内容をより強調してはどうか。例えば各地域それぞれの現場の環境、スポーツをする環境そのものが安全であることを支援するというような観点から、これまで議論されてきた整形外科的サポートのほか、あまり焦点が当てられてこなかったトリプルH(急性心停止、頭頚部外傷、熱中症)についても、地域の拠点が中心となってその地域の方に向け実践を浸透させることもメディカルサポートに含まれるのではないか。

・「怪我をさせないための」という記載から、いわゆる熱中症等の内科的な病態のことが文字として表現されていないように見受けられ、表現の工夫が必要である。
 

検討事項2  地域におけるスポーツ医・科学支援機能の活用の在り方について

・「指導者への研修の場」という記載について、「研修」とするのか、「コーチングのリカレント教育」とするのかは重要な観点である。例えば女性の三主徴を指導者やコーチがいかに理解しているかということが重要であり、また、研究者や医療従事者は常に新しい情報を仕入れているが、コーチは自分の経験則に頼ることが多いことから、「研修」よりも「リカレント教育」をしっかりと行っていくことを国として打ち出すことがスポーツ医・科学支援機能の活用として重要であると考える。

・日本スポーツ協会(JSPO)では公認スポーツ指導者の養成を行っており、4年に1回リカレント研修を受講しないと更新できないようなシステムとしている。指導者への研修の場を既に設けている団体もあることから、その点はJSPOのシステムを最大限活用すればよいのではないか。
 また、全国への横展開を考慮する上で、スポーツ医・科学センターが立地していない地域もあり、その地域の取り扱いも検討する必要があるのではないか。

・「学校部活動をはじめとするジュニア層」や「国際大会レベルの選手層への支援や、スポーツ医・科学の知見を活用した住民の健康増進」という書き方から、対象とする層が非常に大きくなっているような印象を受ける。

・支援の実施に当たっては、ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)を参考にしつつも、内容や頻度等をパラアスリートの障害の状況に合わせるという点も入れていただきたい。
 

(2)地域におけるスポーツ医・科学支援の実施体制の在り方について

 事務局から資料1に基づき、地域におけるスポーツ医・科学支援の実施体制の在り方に係る論点等について説明があった。説明の後、議題に基づき意見交換がなされた。

○ スポーツ医・科学支援メニュー、フローについて

・支援メニューに関して、色分けされた「フィジカル・フィットネスチェック/サポート」と「メディカルチェック/サポート」はHPSCと統一化した方法で行い、それ以外は地域の実情に合わせて行うイメージを持ったが、地域との連携を考慮する上でノウハウやデータの連携は非常に重要であることから、実際に測定に携わる者としては、ある程度地域が実施する範囲を決めていく必要があると感じる。

・各地域で行われているアセスメントについて、現状は恐らくバラバラである。データの互換性は考慮しなければならないが、この会議の最終結論として、最低限の項目を定めたり、全国体力・運動能力調査と共通する項目を活用したりするような提言を出すのも一つ。

・地域のスポーツ医・科学センターは、HPSCで行われているチェックのメニューをできるだけ踏襲しようと思っているが、予算不足等により、同じ機器が備えられないことから別メニューに変えている、ということが現状ではないか。したがって、予算の問題もあるが、この会議で統一的に方向性を定めることは良い考えである。

・この会議で何らかの提言がまとめられれば、それがバックボーンとなり、都道府県が予算を獲得するために背中を押す形となるのではないか。

・フィットネスに限らず、例えばメディカルチェックの問診票等を統一化することも考えられるのではないか。

・安全・安心の観点から競技ができるような環境がそもそも整っているのかのチェックも必要ではないか。

・アセスメントの重要性をより強調した方がいい。その上で2点あり、1つはアセスメントのためのアセスメントになっていることが多いのではないかということである。サポートをするためのアセスメントであり、様々な専門家が連携をするために必要なのが選手一人一人の現状把握、アセスメントであるので、そこの視点をずらさない意味でのアセスメントの検討が必要である。
 もう1点は、トップアスリートに限らず、もう少しレベルの低い選手層及び一般の方々の健康増進に向けた啓蒙においては、HPSCに行かなければできないアセスメントを共通項にするのはあまり現実的ではない。そのため2つのレイヤーがあるべき。一つは、どこに行っても誰でもできるようなアセスメントであり、ここではセルフスクリーニングという言い方となるが、これらを共通項としてどこでも誰でもできるようなもので、まず共通言語をつくること。さらにフィジカルレベル、アスリートレベルが上がるのであれば、HPSCのような特別な施設または地方の医・科学センターでできるようなテスト、というような2つのレイヤーが必要。これらを実施するため、スクリーニング結果を活用に繋げられる人材育成が重要となる。

・在籍する県のスポーツ医・科学センターはできてから30年程が経ち、測定機器は大幅なリニューアルをしていない、できないという現状から、今の機器で対応できる測定を行うのが現実的である。国として基準となるものを示すことで、それに合わせて予算獲得に向けた財政当局との協議も可能となる。
 また、パラアスリートの測定は今現在なかなか追いついていない。測定機器もノウハウもないというような状況であり、地域においてもパラアスリートも含めた強化を行う必要があることから、国からの提言があると、財政的な協議において非常に大きなバックボーンとなる。障害者スポーツセンターとスポーツ医・科学センターとの連携、あるいは役割の分担も視野に入れていく必要がある。

・先程意見が挙げられたアセスメントの強調をこの会議でしっかりと行っておくべき。アセスメントを行うのはパフォーマンス向上のためであり、最初に行うべきものとして、スポーツ医・科学の活用を検討する必要がある。例えば、肩を故障しているのに無理やり投げさせたり、ジャンパー膝になっているのにトレーニングを続けさせたりするケースがあることは、アセスメントの考え方が浸透していないからである。アセスメントの重要性・必要性をしっかりと提言し、その上で国と地方の支援メニューの統一化について検討するべきではないか。

・スポーツ医・科学支援のフローにおいて、アセスメント後にサポートをすることは間違いのない事実だが、サポートをした後にまたアセスメントに戻るというサークルであることは、改めて明確にしておく必要がある。アセスメント後に必要なサポートをし、それがどうだったのかを再度アセスメントしてさらに次のサポートへ行くようなフローとなる。このサポートが適切であったのか、効果があったのか、あるいは安全が確保されていたものであったのか、しっかりとチェックをしながらアセスメントを位置づけることが、我が国におけるスポーツ活動の安全・安心を守るという意味で極めて重要だと認識している。アセスメントを単純な測定という意義で今後のサポートに繋げることではなく、サポートのクオリティもモニタリングしていきながら継続的にアセスメントをしていくことが、国家として安全・安心のデータベースとなり、様々なデータを蓄積することに繋がるという印象を強く持った。したがって、資料内のフロー図においても、サークル的に考えていくことを国として明確に示すことが重要。

・地方のスポーツ協会においては、HPSC等中央の機関との連携が非常に大きな課題。データの共有がうまくいっていないのは、メディカルやフィジカルの測定が統一されていないことが大きな要因であることから、統一的なものを作ることで、それに必要な機器の予算を獲得していくことに繋がる。特にパラアスリートの測定機器は地方にないため、「パラアスリートにはこういう測定メニューを」というものが示されると、それに応じて地方でも予算獲得に繋がるのではないか。県においても、東京パラリンピックに向け4年程前からパラアスリート専任研究員を常駐させ、車椅子テニスやカヌー、陸上等複数種目の選手をサポートしてきたが、障害の程度も選手により異なり、どのように測定するのか手探り状態でやっているのがまだまだ現状である。その辺りも含めて整理されるとありがたい。

・いくつかの大学と連携しながらパラアスリートのサポートをしている中で、例えばVO2 Maxや筋力を測定する場合は今ある機器をそのまま使用できるが、測定の仕方が確立されていないことが一番大きな問題であると感じている。機器的には、陸上競技のレーサーという競技用車椅子を走らせるトレッドミルは、通常のトレッドミルでは乗らないのでカスタマイズしているケースもあるが、特段変わったものを準備しているわけではなく、基礎体力を測定する上では機器を変えていない。HPSCにおいても同様と認識している。

・先日パラアスリートのタレント発掘に測定統括という形で携わった。特別な機器という点で車椅子用の体重計は必要かもしれないが、なければ通常の体重計でも応用は可能であり、椅子に移乗することができれば、そのような方法でも測定できる。また、握力の測定器においては、握ることができても5キロ未満の場合にはゼロという表示となってしまう。そこでがっかりする選手もいることから、「触診プラス」のような形で握力が全くない訳ではないということがわかるように結果を載せる等、少し工夫することで対応は可能である。

・予算を獲得することも重要ではあるが、機材を毎回アップデートしていくということではなく、測定方法を工夫するナレッジを持っている人材をどのように育成していくかも重要だと考える。

○ 支援の対象や範囲の考え方について

・パラアスリートに関しては、オリンピック選手と比べパスウェイが非常に短い特徴があり、地域で結果を出しすぐに日本代表になるというケースがある。その点を考慮し、地域で発掘された選手が、短期間にハイパフォーマンスレベルの強化に入ってきた際に、心がついていかずそのまま終わってしまうことにならないよう「都道府県大会出場レベル」にも心理サポートを加えるべきではないか。

・心理サポートに関しては、スポーツメンタルトレーニング指導士、臨床心理士等の資格の問題も出てくるのではないか。例えばスポーツメンタルトレーニング指導士になるためには、心理系の大学院修士課程を修了し、かつ、学会への参加年数や学会発表等の規定もあるが、少なくとも素地がある人材が対応することが前提である。地域の実情として、学校レベル、地域のスポーツクラブレベル、あるいは都道府県大会出場レベルの選手でも、体の成長と心の成長が合わず伸び悩んでいる選手もいることから、誰がサポートをするかという問題もあるが、地域レベルにも心理サポートを行っていくスタンスを示すことが必要。

・球技系は全国大会上位8位のレベルでもゲーム分析はかなり進んでいる印象があり、映像サポートが含まれる一方でゲーム分析が含まれないことに違和感がある。

・自身が所属するトレーニングセンターでは、映像サポートとゲーム分析を「映像サポート」という形で一くくりにし、どのようなニーズがあるか意見を聞いた上で、ゲーム分析やラーニング等適切なメニューをコーディネートしている。

・HPSCを使っている競技団体では、実際に映像を撮った人材がゲーム分析をし、フィードバックまでしているというのが実情であるが、地域のスポーツ医・科学センターが高度なボールゲームの分析まで一つ一つ提供していくのは難しいのではないか。各競技団体に任せる範囲とスポーツ医・科学センターが担う範囲を整理しなければならない。

・支援の対象について、県のスポーツ医・科学センターでは、現状小学生レベルの体力向上から、プロスポーツ選手、プロのレーサーまで幅を広げて支援しているところであるが、国が示す指針としては、赤色の学校運動部活動、地域のスポーツクラブレベルから全国大会上位8位レベルまでという認識か。県で行っているものより低い基準を国が示すことで、予算折衝にあたり「余計なところは省いていいのではないか」と言われてしまうことが想定される。

 ○ 地域への展開手法について

・高校生や大学生は、平日は授業等時間的な制約があるので、土日の中で国が示す支援メニューを十分に受けることは難しいのではないか。Eラーニング等オンラインの活用と言葉として簡潔に記載されているが、その言葉以上に現実に行っていくことは難しく、先程意見が挙げられたどこでもできるアセスメントという考え方が重要となる。

・所属するスポーツ医・科学センターでは、全国大会上位の選手やタレント発掘において、相手方のニーズに応じ、特に医科学的なスクリーニングはスポット的に行っているのが現状である。その上で今後部活動レベルまで対象が広がると、母数が莫大な数となるのでニーズに応じた対応は難しく、セルフスクリーニングやEラーニングを活用しこちらから積極的に情報発信をしてカバーすることが現実的ではないか。長官のセルフチェックのようなコンテンツを活用することで、地域にもスクリーニングが普及していくと考える。

・都道府県大会出場レベル、学校運動部活動、地域のスポーツクラブレベルの対象者には、対面の必要がないオンライン、ホームページ等を活用したスポーツ医・科学情報の発信が必要。
 一方、栄養サポート、心理サポートの対象も広がるのであれば、両者ともオンラインで対応できる内容と対面でないといけない内容があるので、ステージ分けや内容分けの検討が必要である。

・情報発信の中身として、オンラインの内容についても共通のものをつくる必要がある。

・トレーナーとしてサポートをしている立場から長官のセルフチェックについて補足すると、セルフスクリーニングのために作られているので精度が非常に高く、アスリートに限らず一般の方にも活用できるものである。一方で「PTやトレーナーと連携したスクリーニング」と記載されているように、使用するものは同じでも使い手の専門性が高ければより深みのあるアセスメントも可能である。使用する側によって深みが変えられるものというのが、共通言語としても活用しやすいのではないか。
 地方のスポーツ医・科学センターからすると、HPSCは自施設では到底できないような大層な機器を使用したテストだけを行っているイメージがあるかもしれないが、フリースペースさえあればできてしまうようなチェック項目も多くあり、それらで共通言語を作ることもできる。予算の観点や人材の観点においても、何かがないとできないものは意外と少ないということを再度見直す必要がある。

○ 実施体制の在り方について 

・地域としては予算確保も非常に重要な問題であり、また、意見が上がっている測定方法の統一化についてもコンソーシアムが担うのであれば、測定に精通した人材が必要。役割により求められる人材が変わってくる。

・国際競技力向上の中では、ハイパフォーマンスディレクターという、強化全般の統括、強化に関する予算の獲得、コーチの配置、スポーツ医・科学との連携を担う人材の考え方が出てきている。ここで言うアドミニストレーターとは、国体レベルでのタレント発掘やスポーツ医・科学のコーディネート、予算配分の検討を担うことから、まさにハイパフォーマンスディレクターであると考える。
 一方コーディネーターは、一定の専門性を持ったジェネラリストをイメージしている。地域には、国体への出場経験があり、かつスポーツ医・科学センターで働いている人材もいると思うが、そのような人材の発掘、育成については、地域から1年間HPSCに派遣することにより、測定に関する能力を身に付けるほか、様々な人材と知り合いネットワークを構築することもできるのではないか。このような人材交流に予算を付けることで、地域からHPSCに来て色々なものを学び、HPSCの知見を地域に展開していけるような人材がコーディネーターになるイメージを持っている。

・地域のスポーツ医・科学としては、予算獲得のため行政との連携に関するスキルを持つほか、スポーツ医・科学に関する知識も必要であり、加えてHPSCとの連携等全てを持っている人材が一番理想かとは思うが、実際の運用の中でそのような人材をすぐに充てることには無理があると感じている。したがって、行政関係に強い人材、予算獲得に強い人材、スポーツ医・科学に強い人材を目利きグループのように集め、コーディネートするような仕組みを作るような在り方も考えられるのではないか。

・全てを一人が担うということは難しく、時間をかければHPSCでの研修、育成もあり得る。人材育成については次回集中的に議論することとし、事務局から各人材の機能の分け方について示してもらいたい。

・「パラアスリートへの支援等、内容によっては、異なる地域のスポーツ医・科学センターが広域的に連携することも望ましいのではないか」という記載に賛同する。一つの地域ではなかなか対応し切れない部分があり、現状も対応しきれない部分は、近隣の大学やHPSCのOB、OGを頼り医科学サポートに取り組んでいるが、より発展的に全国的に展開していくことや、スポーツ医・科学センターがない地域にも広域的な形でアプローチできる方向性が示されると、より可能性が広がっていくのではないか。

・予算獲得について、公費なのか民間資金を導入していくのかという点でイメージが異なるため、認識を合わせる必要がある。

・地域の体制の在り方として「パラアスリートへの支援」と記載されているように、障害のある方も含め、対象者をしっかりと理解した支援をする必要がある。その上で専門性の高い組織を統合し、広域的に連携することが非常に重要。スポーツメディカルの中で障害と言っても幅が広く、知的障害の方もいれば、脊髄系や切断系等様々な障害を持つ方がおり、それぞれ別の専門性がある。それらを一くくりにするのではなく、その専門性を合体させていくことが、対象者を理解した上でのパフォーマンスアップに繋がると考える。

・「HPSCやNTC競技別強化拠点との連携体制を構築することにより、HPSC等の支援ノウハウを地域に展開することが重要ではないか。」という記載に賛同する。中央からの情報が共有されることはありがたく、また、パラアスリートは、身近なところで多くの支援を受けており、支援を受けやすい場所でトレーニングを積みたいという声も聞く。都度HPSCで測定し、サポートを受けるのではなく、地方でも連携して同じサポートを実施できることが望ましい。

・「パラアスリートの支援等」に記載されている内容に賛同する。その上で、そもそも施設のバリアフリーやアクセシビリティがないと使用できないパラアスリートもたくさんいる。ハード面のバリアフリーだけではなく、視覚障害者、聴覚障害者の情報のアクセシビリティという点も提言に入れておかないと、支援体制を整えてもアクセスが全くできないという面があると、大変残念である。