競技力強化のための施策に関する評価検討会(第4回)議事要旨

1.日時

2021年12月2日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省16階16F3会議室 及び オンライン

3.議題

  1. (1)競技力強化のための施策に関する評価検討会報告書(案)について
  2. (2)その他

4.出席者

委員

石野枝里子委員、境田正樹委員、杉田正明委員、田口亜希委員、田辺陽子座長、
三屋裕子委員、大槻洋也委員、尾縣貢委員、久木留毅委員、森岡裕策委員

文部科学省

室伏スポーツ庁長官、串田スポーツ庁次長、星野スポーツ庁審議官、
南野競技スポーツ課長、馬渡競技スポーツ課課長補佐

5. 議事要旨

(1)競技力向上のための施策に関する評価検討会報告書(案)について

・事務局から、資料1、2に基づき、「競技力向上のための施策に関する評価検討会報告書(案)」について説明があったのち、資料2に掲げられている各項目について、それぞれ意見交換がなされた。

<「1.東京大会の競技結果を踏まえた成果と課題」について>

・6ページの第3段落「東京大会に向けては、オリ競技・パラ競技のNOC並びに・・・」という箇所について、NPCも追記が必要ではないか。第4段落の「アスリートパスウェイ」は「アスリート育成パスウェイ」に修正するべきではないか。

・「オリ競技とパラ競技の連携は今後も更に促進」との記載があるが、オリ・パラ一体という言葉が大会前から使われていたことから、オリ・パラ一体のさらなる推進といった言葉も入れると良いのではないか。

・6ページの第2段落、「1年の大会延期、国内外での大会開催是非の議論、・・・」とあるが、大会延期期間中の各NFや団体の取組についての記載はどこかに書いてあるのか。

<「2.「競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン)」に基づく取組とその評価「(1)中長期の強化戦略プランを支援するシステムの確立」~「(3)アスリート発掘への支援強化」について>

(2)ハイパフォーマンスセンターの機能強化

[HPSCの機能強化(アスリートのデータ収集・分析、個人情報の取扱い)]
・9ページの第3段落「データの収集・分析を通じた研究やアスリート支援の充実を図るべきである。その際、個人情報取扱いに関する整理を行い・・・」という記載について、データ収集や競技団体間でのデータ一元化を進める時に、各競技団体によって個人情報の取扱いが様々であるため、個人情報の取扱いに関する指針やルールを明確にする必要があるのではないか。例えば、陸上競技の競技会の画像を撮って、それを分析して研究する際に、「私のデータは使ってくれるな」とか、強化委員会が「これはまだ出さないでくれ」というように問題になる場合がある。今後、スポーツ界としてデータや個人情報の取扱いをどうするべきか検討が必要である。

・アスリートが安心してデータを提供し、個人情報保護法や研究倫理指針をきちんと遵守した上で、研究におけるデータの安全な利活用を促進することは大変重要である。データ収集に当たって、利用目的の明示や合意を得る方法については、いろいろ考えられる。

・アスリート・データは、今後非常に重要になると思うが、アスリート目線で言うと、知らない間にデータを取られていたということもあり得ると思う。きちんと説明をしていただくとともに、アスリート側が望まないときはデータ提供を断ることができる環境をつくる必要もある。アスリートも調子が悪い時などはあまり協力できない場面もあると考えられる。


[国際総合競技大会におけるサポート拠点の設置等]
・10ページ、国際総合競技大会におけるサポート拠点設置等の記載の文末について、「~よい影響を与えた。」という結果だけの記載になっているが、今後は選手村内外それぞれの機能を踏まえたサポート拠点の使い分け等、方向性についての記載が必要ではないか。これまで様々なオリンピック・パラリンピックに関わる中で、諸外国は選手村の中と外をそれぞれうまく使っている。2014年にソチパラリンピックでイギリスのディレクターと話をした時には、パラリンピックのサポートの最重要キーワードはアクセシビリティーだと聞いた。他国ではオリンピックにおいてもアクセシビリティーをよく考えていて、例えばオランダは、リオ大会、東京大会共に、選手村の中でオリ・パラ選手がウエイトトレーニングやコンディショニング、食事を行える環境を用意していた。選手村の中と外どちらにサポート拠点を設置するかは各国の戦略によるが、中と外の機能をうまく使い分けていくこと、各大会の開催地によっても使い分けていくことが必要である。

・サポート拠点設置について、今回は国内開催であったことから、アクセスの点で大きな問題がなく、重度障害の選手も多く利用していた結果、よい競技結果に繋がった。リオ大会のときは重度障害の方がサポート拠点に向かうことが難しい状況があったため、今後は選手村の内・外の拠点を考えていく必要がある。特にパリ大会では、路面は石畳が多いこともあり、移動が長くなれば長くなるほど、重度障害の人は、サポート拠点の利用に二の足を踏んでしまう可能性があるため、村内拠点に関した記載があると良い。

・元アスリートとしての経験から、特にオリンピックでは大会直前期や期間中に現地で練習ができない場面がよく生じる。国際総合競技大会におけるサポート拠点の設置等に関して、どんな時でも練習ができる環境をつくっていただくというのは非常に重要である。基本的にJSC等のサポートは、前年度ぐらいから栄養やリカバリーの拠点を設置していただいているが、その時だけの設置となると、どのようにその施設を使っていいか分からないため、長期的な視点でサポート拠点の設置をしていただけるとアスリートとしても助かるのではないか。

・シェフ・デ・ミッションについて、国内と諸外国とで捉え方が違う場合がある。諸外国のようにフルタイムで担う場合は、4年間その仕事に従事してきた人がシェフ・デ・ミッションを継続する場合があるが、日本のようにオリンピック・パラリンピックの団長が担うような場合は期間や経験に差が生じる。オールジャパン体制で様々なことを進めていくならば、オリ・パラ一体でJOCとJPCが連携し、それをJSCがしっかり支えるようにする必要がある。

[ハイパフォーマンススポーツに関する研究の推進と人材育成について]
・10ページ一番下の大学等との連携協定の締結に関して、スポーツDXを進める観点からは、センシング技術や5G技術などの様々なデジタルを活用した技術を開発・実装している民間企業があるため、企業とうまく連携していくことも重要である。現在は強化指定選手やオリ・パラ代表選手のみのデータ活用となっているが、将来的にはジュニアの選手のデータもくみ上げて解析できることが望ましい。スポーツ審議会の基本計画部会でも、デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの創出を推進するという議論もあるため、JSCも民間企業とも連携して進めていくことが重要である。

(3)アスリート発掘への支援強化

[タレント発掘について]
・11ページについて、アスリート発掘やタレント発掘という文言が記載されているが、タレント発掘の先進国のイギリスでは、発掘の部分が5%で、残りの95%は育成にかかっているという話を以前も本会議で紹介した。発掘・育成という書き方が重要であると同時に、育成プログラムの充実が一番重要ではないか。育成プログラムの内容こそが、タレント発掘・育成事業の成否を決めるので、その辺りが伝わるような内容にしていただけるとよいのではないか。

[アスリート育成パスウェイの構築について]
・12ページ「アスリートが途中で離脱することなく・・・」という記載に関して、バレーやバスケットボールといった競技の発掘・育成・強化における一番の問題点は、指導者による暴力・暴言である。あってはならないことがまだ残っているというのも現実であり、窓口を設置したとたんに、多くの問合せがあるのが現状である。バーンアウトしてドロップアウトする人が非常に多いということもあり、その辺りも含めて施策に落とし込んで頂きたい。

<「2.「競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン)」に基づく取組とその評価「(4)女性アスリートの支援強化」~「(6)東京大会に向けた戦略的支援」について>

 (4)女性アスリートへの支援強化

[女性アスリートの健康課題への対応について]
・東大の能瀬先生等による女性アスリートの研究が進められているが、日本のスポーツ界では女性アスリートに対する科学的な理解がこれまで乏しかったということが明らかになった。JSCでも、女性アスリートのサポートを現在も実施されているが、デジタル技術の活用により、女性アスリートに負担をかけることなく寄り添った形のサポートができるような施策を検討するとよいのではないか。

・昔から問題になっているところもあるが、体操などの若年層から行うスポーツでは、パフォーマンス向上のために過度な食事療法を行ったり、早くから無理な運動をさせていたりすることが男女ともにある。女性アスリートの健康課題に関して、もう少し競技別にどう女性アスリートを守っていくかという観点で考えないといけないのではないか。

・骨密度が70歳、80歳というようなマラソン選手も結構いると聞くし、指導者の正しい理解の欠如から、選手の生理を止めたほうがいいとか食事制限したほうがいいというような、人権侵害みたいなことが意識されずに現場で横行していることもある。一方でバスケットボールやバレーのようなジャンプをする競技では、選手の骨密度は一般女性より高いこともある。やはり競技別に違いがあることを踏まえて、この点でも競技横断的にデータを取って調査、研究をしていくことが必要と考える。

・14ページの最後には、女性アスリートの健康管理への対応についてということで、ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)における婦人科外来のことが記載されている。大学や関係機関と役割分担しつつ、東大の女性外来等と連携しながら行っている。御承知のように、女性アスリートの3主徴「エネルギー不足」、「無月経」、そして「骨粗しょう症」の対策が重要だと言われており、長官から御指摘もあったように競技ごとに大きく異なるため、栄養に関するデータも含め、大学等と役割分担をし、連携して進めていくことが重要。

<3.持続可能な国際競技力向上に向けて今後さらに進めるべき取組>

[パラ競技の国際競技力向上とオリ・パラ連携]
・以前クラス分けセンターをつくってほしいということを申し上げた中で、やはり様々な選手が利用するHPSCの中につくることが一番良いと考えている。東京大会では、直前にクラス変更がありメダルを逃すことになった選手もいたので、ぜひHPSC機能強化の箇所に、クラス分けについて記載いただけないか。

・競技力強化ではないが、やはりアスリートのキャリア計画という部分も、今後進めるべき取組の中に入るのではないのかと考える。アスリートが安心して競技に打ち込めるのは、やはりその後のキャリア育成の部分もしっかり担保されているというところが必要であり、可能であれば記載いただきたい。

[優秀なコーチ・スタッフ等の配置充実]
・p17下から二つ目の「加えて、JSC、JOC・・・」という記載について、ここが肝だと考えている。指導者の暴力の話もあったが、こうした問題は、1競技団体だけに閉じて、組織が開かれていないから起きていると思う。JSC、JOC、JPC、JSPOといった統括団体も人材交流をするべき。人材交流の促進やクロスアポイントメントは重要だが、例えば日本のオリンピック競技でいうと、体操も柔道もレスリングも競泳も、コーチ、スタッフ等は大学所属の教員である。強化委員長、主要な強化委員が、大学からクロスアポイントメントで2年間、例えば競技団体に派遣できるようなシステムがあれば、強化に専念できるのではないか。

・人材交流は同じく極めて大事であると考えている。JSPOにおいてもこういった組織間の人材の交流を、人材育成計画の中に落とし込み、具体的に動き始めようとしている。

・今後、人材を育成して、NFから各PFに人材派遣することで、PFの基盤強化を図ろうと考えている。また、バスケットのBリーグから、それぞれのクラブに、スポットとして人を派遣するという取組も実施している。人材を派遣して組織の基盤強化を進めていくのは、かなり効果的であり、各クラブと各PFをつなぐということも始めている。また、各NFやJOCからだけでなく、縦・横・斜めのいろんなやり方があると思うので、いろんなロールモデルが少しずつ出てきたら御報告させていただきたい。

・陸上競技では、現在、パラ陸連などに出向して活躍いただいているケースがあり、既に人材交流の取組はなされている。大学教員の立場との両立という観点では、現在ナショナルコーチの制度がある。大学は休職をして、スポーツ庁の委託事業の制度の中で、ナショナルコーチとして報酬をいただく制度があり、そういったものをうまく活用している。

・パラ競技で一番弱いところは、オリ競技と異なり、各都道府県に競技団体の支部がないところである。最初はブロックに分けて、東北・北海道ブロックのどこかの大学がパラ競技団体と連携を始めるというように、各ブロックから少しずつパラ競技に加わっていただくと、地域の支部ができ、人材交流が進むのではないかと思う。

・JSCが中心に取り組んでいる協働コンサルは、自分の団体だけでは見えない他団体の様々な情報を得られ、指導・助言が行われるため、競技団体の強化につながる。一方で競技団体は、データサイエンティストやトレーナー、心理面のスタッフなど、専門人材を配置したくても、なかなかいい人材を見つけられないこともある。そうした専門人材をリクルートできるような仕組みがあると、競技団体にとってありがたい仕組みとなるのではないかと思う。

・HPSCでは、国立スポーツ科学センターの研究員等のデータベースを公開している。ここでは研究員の過去5年間の研究業績、専門分野を公開しており、今後は、過去に研究員が関わってきた支援も加えて公開しようと考えている。そうすると、5年で契約を終えた研究員を、各競技団体がそのサイトで人材を探すことができるようになると考えている。

・スポーツ医・科学のスタッフの育成という点では、DiTS(ディッツ/デジタル・インフォメーション・テクノロジーズ)という研修会を来年の4月からHPSCにおいて復活させる予定である。各競技団体からこの研修を受けてもらえれば、例えば、選手やスタッフのモチベーションを高めるような映像の作成方法や、分析映像の扱い方が学べる仕組みを考えている。これはまさにハイパフォーマンススポーツに関する研究の推進と人材育成に繋がると考えている。

・JSPOの公認スポーツ指導者の現場と指導者との「マッチングシステム」については、全国約19万人の資格保有者のうち、システムに登録されているのは、僅か3,000人程度ではあるが、現在、稼働させている。今後、運動部活動が地域移行になった際に対応できるよう、どういう競技の専門家が、どういう場所に、何曜日に指導に行けるといった情報を登録している。システム登録者1万人を目標に進めているところである。さらに、今後、スポーツ少年団や指導者、国体参加者、オリ・パラのボランティアなどのデータが蓄積され、活用していくことになる。ただし、先行的にスポーツ指導者の「マッチングシステム」自体は開発したものの、現実には、やはり良い指導者は口コミで広がっていくということもあり、実際はうまくいっていない部分もある。我々も広報戦略を強化して、いわゆる草の根レベルの指導者の配置にこのシステムを活用して頂けるようにしたいと考えている。


[心理面での支援]
・心理面での支援はこれから非常に重要となる。17、18ページの三つ目の丸の内容について、メンタルトレーニングやカウンセリングという言葉が並んでいるが、一番大事なのは選手自らがプレッシャーとかストレスに対してどうストレスマネジメントできるかということである。うまくマネジメントできず心が少し病んで、最終的にカウンセリングという話になっていくので、ストレスマネジメントとかセルフケア、あるいはメンタルヘルスチェックといった文言も記載し、入口と出口のところで多角的に心理面の支援ができるとよい。

・アスリート・ウェルビーイングについての取組み方は様々ではあるものの、重要な観点となるので、セルフマネジメントの記載と合わせて、記載しても良いのではないか。

・ウェルビーイングについて、もちろんアスリートが中心となるものだが、それを取り巻くスタッフやコーチも、かなりストレスを感じていると思う。そういうコーチまたはスタッフのウェルビーイングというのも、どこかに書いた方が良いのではないか。


[感染症流行時における継続的なトレーニング環境の確保]
・18ページのDXに関する記載について、感染症流行時でなくても日常的にDXを使えることが重要である。アスリートデータセンターを、今後、一層整備・運用していくことができれば、トップアスリートのみならず、より多くの者からも遠隔・オンラインで様々なデータを収集し、大きなデータベースをつくっていくことができれば望ましい。

・DX推進に必要なのは、データサイエンティストである。競技を横串的に見ることができる人材も必要であり、個々のアスリートが瞬発系の競技に向いているのか、持久系の競技に向いているのかといった特性を解析していくことができる体制づくりが重要である。

[地域における競技力向上を支える体制の確立]

・18ページの2ポツ目「PFが行う選手育成活動に対し」について、PFが行う選手育成活動の強化費の大部分は、都道府県費補助金を都道府県の体育・スポーツ協会がPFへ配分したものであり、都道府県体育・スポーツ協会の中には、スポーツ医科学委員会、スポーツドクター協議会、あるいはアスレチックトレーナーの協議会等を設置して、地域における競技力向上を下から支えている実態があり、そのような意味からも都道府県体育・スポーツ協会も、明記していただきたい。

[競技団体の組織基盤の強化等]
・19ページについて、各NFが自立に向けて自己収入の確保に努めることは当然だが、各NFと対面で向き合うことが多いため、それぞれの窮状というのもよく理解している。競技団体によっては、テレビあるいはインターネットの配信さえもなく、なかなか人気が上がらない。あるいは有料の競技会は開催ができず、興行収入を得られないところはたくさんある。そういったところが自己収入を得ようとしたときに、選手等の登録費を上げるしかない形になる。受益者負担といえばそうなるが、そうしたときに登録選手、子供たちの負担があまりにも大きくなる。その反面、今回の報告書にもNFの役割がかなり明記をされている。例えば、9ページにてNFにおいてもデータを使いこなすリテラシーを身につけるとか、12ページにも各NFにおいてエリートアカデミーの実施等を検討するということが記載されているが、なかなか収益が得られない中で、こういった事業を実施するのは厳しいことでもある。報告書の文面はもちろんこれでいいと思うが、実施段階においては、やりたくても活動ができないNFに対しては、しっかりとした支援をお願いしたい。